凡 例
ひとつの種に関して参考文献のすべてを列挙してあるわけではない.たとえば一例をあげると,フクログモの項にミノムシのミノの利用に関する文献として, この事典では[徳本・鍛冶AT82]しかあげていないが,実際にはもっとある.しかし,それらの文献についてはこの両名の論文の参考文献としてあげられているので,省略している. これと同じようなことがいくつかあるので,本事典からの孫引きで参考文献すべてを網羅することはできない.また分布については発表された採集リストのすべてを網羅しているわけではないこともお断わりしておく.
八木沼の図鑑(1986)に出ていないクモもある.その種の記述は,そのクモについて書かれた当時の文献のものであり,なかには正体不明のものもある.学名が八木沼の図鑑に一致していない種もあるが(たとえばサラグモの項),これは生態記事の書かれた当時の学名を記録しておいたためである.命名者で「YAG.」は八木沼である.
種名一覧から本文の各種へ飛ぶリンクは設定していない.設定が大変なので個人の手にあまった. 利用者各人のソフトの検索機能を活用していただければ十分な検索ができるはずである.
Acta
arachnologica 1巻〜(現在);ACと略記し,巻数・号数を示す
Atypus 1号〜100号;ATと略記し,号数を示す
Kishidaia 1号〜(現在);Kと略記し,号数を示す
Logunov,d.V.,H.IKEDA
& H.ONO,1997.Jumping spiders of the genera Harmochirus, Bianor and
Stertinius (Araneae,Salticidae) from Japan.
Bull.Natn.Sci.Mus.,Tokyo,Ser.A,23(1):1-16.〔Logunovら97〕とした.
Ono,H.,1988.A
revisional study of the spider family Thomisidae(Arachnida,Araneae) of
Japan.Natn.Sci.Mus.,Tokyo.252p.〔小野88〕とした.
Ono,H.,1998.Spiders of the genus
Heptathela (Araneae,Liphistiidae) from Kyushu,Japan. Mem.Natn.Sci.Mus., Tokyo,
(30):13-27.
〔小野98〕とした.
Ono,H.,2001.自然教育園のクモ類.自然教育園報告,33:173-200.〔小野・新海01〕とした.
Ono,H.,2002.New
and remarkable spiders of the families Liphistiidae, Argyrinetidae, Pisauridaem
Theridiidae and Araneidae (Arachnida) from Japan. Bull.Natn.Sci.Mus.,Tokyo,
Ser.A, 28(1):51-60.〔Ono02a〕とした
Ono,H.,2002. First record of the genus
Anapistula (Araneae,Symphytognathidae) from Asia. Bull.Natn.Sci.Mus.,Tokyo,
Ser.A, 28(2):61-64.〔Ono02b〕とした
Ono,H. & H.Saito, 2001. New species of the
family Linyphiidae (Arachnida, Araneae) from Japan. Bull.Natn.Sci.Mus.,Tokyo,
Ser.A, 27(3):159-203.〔Ono&Saito01〕とした
Saito,H.1992.New lynyphid spiders
of the genus Arcuphantes (Araneae:Linyphiidae) from Japan. Korean
arachnol.,8:13-31.
Saito,H. & H.Ono,2001. New genera and species of the
spider family Linyphiidae (Arachnida, Araneae) from Japan.
Bull.Natn.Sci.Mus.,Tokyo, Ser.A,
27(1):51-59.〔Saito&Ono01〕とした
新海栄一.1969.東京都産真正蜘蛛類.東亜クモ学会
新海栄一.1970.東京都産真正蜘蛛類.Atypus(54):21ー26.
新海栄一.1977.東京都産真正蜘蛛類.Acta
arachnol.(27)
新海栄一.1979.八王子市のクモ.日本私学教育研究所調査資料64.
新海栄一.1980.八王子市のクモ.同上72.
新海栄一.1981.八王子市のクモ.同上81.
新海栄一・高野伸二.1984.クモ.東海大学出版会.〔東海84〕と略記した.
新海栄一・高野伸二.1987.クモ基本50.森林書房.
〔森林87〕と略記した.
新海栄一.1998.クモ類による環境評価.Kishidaia,(74):33-100.〔新海98〕と略記した.
中平清監修.1976.学研の図鑑クモ.学習研究社.
八木沼健夫.1968.原色日本蜘蛛類大図鑑.保育社.〔八木沼68〕と略記した.
八木沼健夫.1986.原色日本クモ類図鑑.保育社.
〔八木沼86〕と略記した.
山川守・熊田憲一.
1973.丹沢山塊の真正蜘蛛類.Atypus(60).〔山川・熊田73〕と略記.
山川守・熊田憲一.1979.丹沢山塊の真正蜘蛛類.Atypus(74)〔山川・熊田79〕と略記.
山川隆,1943.蜘蛛の観察,79p.朝陽社.
吉倉真.1987.クモの生物学,613p.,学会出版センター,東京.〔吉倉87〕と略記.
なお,次の書物には生態的知識が盛られている.入手して参考にされることをお薦めする.
萱嶋泉.1987.アシダカグモ.
誠文堂新光社.
千国安之輔.1980.クモの親と子. 偕成社.
千国安之輔.1982.クモたちの狩り.
偕成社
千国安之輔.1983.クモの一生. 偕成社
千国安之輔.1989.写真日本クモ類大図鑑.
偕成社.〔千国89〕と略記
細野善熙.1943.クモの習性.(「全集日本動物誌18」講談社,1983).〔細野43〕と略記
中平清.1983.クモのふるまい.
著者自刊.〔中平83〕と略記
中平清.1992.続クモのふるまい. 著者自刊.〔中平92〕と略記
中平清.1994.私と生き物たち.
著者自刊.(クモの記事は後半約90頁.高知県産クモ目録)
中平清.1997.続私と生き物たち. 亜細亜書房.(クモの記事は40頁)
氏名を略していない人はフル・ネーム
ア行:赤羽;赤羽尚夫, 秋田;秋田米治,秋山;秋山隆史,浅間;浅間茂,有田;有田立身,安藤;安藤昭久,安念;安念嘉一, 井伊;井伊伸夫,五十嵐;五十嵐弘明,池田;池田博明,池田泉,池田千洋,石沢;石沢健夫,泉;泉宏子, 板倉;板倉泰弘,石野田;石野田辰夫,石山;石山鉄幸,稲葉;稲葉茂代,井上;井上房江,入江;入江照雄 上田;上田常一,植村;植村利夫, 大井;大井良次,大江;大江秀雄,小笠原;小笠原幸恵,大志茂;大志茂善平,大熊;大熊千代子,大河内;大河内哲二,小澤;小澤実樹,王寺;王寺幸寛,大利;大利昌久,岡崎;岡崎常太郎,岡野;岡野一也,岡本;岡本大二郎,小野;小野展嗣,
カ行:貝発;貝発憲治,景山;景山純孝,桂;桂孝次郎,加藤;加藤正世,加藤(AT81以降);加藤輝代子,加藤む;加藤むつみ,金山;金山満吉,加村;加村隆英,萱嶋;萱嶋泉, 菊池;菊池康昭,菊屋;菊屋奈良義,岸田;岸田久吉,木村;木村重仁, 工藤;工藤泰則,工藤泰恵,国見;国見裕久,熊田;熊田憲一,栗原;栗原輝代子,胡沢;胡沢新,黒沢;黒沢美房, 後藤;後藤岳志,木庭;木庭奏,小林;小林久俊,小林;小林好生(AT68),小松;小松敏宏,小村;小村忠夫,近藤;近藤昭夫,
サ行:斉藤三;斉藤三郎,斉藤;斉藤博,斉藤慎;斉藤慎一郎,笹岡;笹岡文雄,貞元;貞元巳良,佐藤;佐藤幸子,佐藤井;佐藤井岐雄,沢口;沢口由吉, 渋谷;渋谷暁子,嶋田;嶋田順一,清水;清水裕行,下謝名;下謝名松栄,城;城成治,新海;新海栄一,新海明;新海明, 須賀;須賀瑛文,杉崎;杉崎るり,鈴木勝;鈴木勝浩,杉永;杉永厚,諏訪;諏訪将良,諏訪哲;諏訪哲夫, 関口;関口晃一,
タ行:高島;高島春雄,高橋登,高橋祐;高橋祐子,高橋;高橋米夫,高野;高野伸二,田副;田副幸子,田中穂;田中穂積,谷川;谷川明男, 千木良;千木良芳範,千国;千国安之輔,千田;千田高史, 築地;築地満男,常木;常木勝次,辻本;辻本修,津田;津田公男, 徳本;徳本洋,
ナ行:仲辻;仲辻耕治, 中平;中平清,中村;中村正雄,南部;南部敏明,南宮;南宮峻, 錦;錦三郎, 野口;野口博史
ハ行:白;白甲縺C橋本;橋本理市,蓮沼;蓮沼克己,畑守;畑守有紀,馬場;馬場金太郎,浜田;浜田龍一,浜村;浜村徹三,林;林俊夫,林秀;林秀幸,原;原勝司, 日高・鈴木;日高紀子・鈴木高子,平田;平田慎一郎,平間;平間富夫,平松;平松毅久, 深沢;深沢治男,福本;福本伸男,藤井;藤井靖浩,藤沢;藤沢庸助,藤田;藤田衛,古内;古内栄一, 細野;細野善 ,堀;堀関夫,堀由;堀由起子,本庄;本庄四郎,本田;本田重義,
マ行:前川;前川隆敏,前田;前田俊英,牧;牧孝匡,桝元;桝元敏也,松井;松井均,松浦;松浦祐司,松本;松本誠治,松山;松山紘一, 宮下;宮下和喜,宮下直,宮田;宮田清司, 村田;村田浩平,
ヤ行:八木沼;八木沼健夫, 山川;山川守,山野;山野忠清,山本;山本源三郎, 湯浅;湯浅啓温, 吉倉;吉倉真,吉田哉,吉田裕;吉田裕之,吉田真
ワ行:渡部;渡部健,
(出版年度ではなく,発行年とした)
1936 AC1(1,2,3,4)
1937 AC2(1,2,3,4)
1938 AC3(1,2,3,4)
1939
AC4(1,2,3,4)
1940 AC5(1,2,3,4)
1941 AC6(1,2,3,4)
1942
AC7(1,2,3/4)
1943 AC8(1/2,3,4)
1944 AC9(1/2)
1945
AC9(3/4〕
1946
1947 AC10(1/2)
1948 AC10(3/4)
1949
AC11(1/2,3/4)
1950 AC12(1/2)
1951 AC12(3/4)
1952 AC13(1) &
AT1,2
1953 AC13(2) & AT3,4
1954 AC13(3/4) & AT5,6,7
1955
AC14(1) & AT8,9,10
1956 AC14(2) & AT10,11,12
1957 AC15(1) &
AT13,14
1958 AC15(2),16(1) & AT15,16,17
1959 AC16(2) &
AT18,19
1960 AC17(1) & AT20
1961 AC17(2) & AT21,22,23/24
1962
AT25,26/27
1963 AC18(1),18(2) & AT28,29,30,31
1964 AC19(1) &
AT32,33/34,35
1965 AC19(2) & AT36,37,38
1966 AC20(1) &
AT39,40,41/42
1967 AC20(2),21(1) & AT43,44,45
1968 AC21(2) &
AT46/47,48
1969 AC22(1),22(2) & AT49/50,51/52 &
K1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12
1970 AC23(1) & AT53,54 &
K13,14,15,16/17,18,19,20/21
1971 AC23(2),24(1) & AT55,56,57 &
K22〜28
1972 AC24(2) & AT58,59 & K29〜32,33,34
1973 AC25(1) &
AT60,61 & K35,36,37
1974 AC25(2),26(1) AT62 & K38
1975 AC26(2)
& AT63,64,65,66 & K39
1976 AC27(1) & AT67,68 & K40
1977
AC27(2),27S & AT69,70 & K41,42
1978 AC28(1) & AT71,72,73 &
K43
1979 AC28(2) & AT74,75 & K44
1980 AC29(1),29(2) & AT76,77
& K45
1981 AC30(1) & AT78,79 & K46,4
1982 AC30(2),31(1) &
AT80,81 & K48,49
1983 AC31(2),32(1) & AT82,83 & K50
1984
AC32(2) & AT84,85 & K51
1985 AC33(1),33(2),34(1) & AT86 &
K52,53
1986 AC34(2),35(1) & AT87,88
1987 AC35(2) & AT89,90 &
K54,55
1988 AC36(1),36(2),37(1) & AT91,92 & K56,57
1989
AC37(2),38(1),38(2) & AT93, 94 & K58,59
1990 AC39(1),39(2) &
AT95,96 & K60
1991 AC40(1),40(2) & AT97,98/99 & K61,62
1992
AC41(1),41(2) & AT100 & K63,64
1993 AC42(1),42(2) & K65
1994
AC43(1),43(2) & K66,67
1995 AC44(1),44(2) & K68
1996 AC45(1),45(2)
& K69,70
1997 AC46(1),46(2) & K71,72
1998 AC47(1),47(2) &
K73,74,75
1999 AC48(1),48(2) & K76,77
2000 AC49(1),49(2) &
K78,79
2001 AC50(1),50(2) & K80,81
2002 AC50(1),50(2) & K82,83
和名五十音順一覧
ア
アオオニグモ,アオオビハエトリ,アオグロセンショウグモ,アオグロハシリグモ,アカアシオニグモ,アカアシヒメグモ,
アカイソウロウグモ,アカイソウログモの一種,
アカイロトリノフンダマシ,アカオニグモ,アカオビゴケグモ,アカガネハエトリ,アカギフクログモ,アカギメキリグモ,
アカクロミジングモ,アカクロワシグモ,アカササヒメグモ,アカスジコマチグモ,アカハネグモ,アカハネヒナマシラグモ,アカミジングモ,
アキコガタナミハグモ,アギトアサヒスジハエトリ,アキホラヒメグモ,アキヤミサラグモ,アキヨシホラヒメグモ,アキヨシマシラグモ,アケボノユウレイグモ,アゴブトグモ,
アサヒエビグモ,アサヒハエトリの一種,アシグロコモリグモ,アシダカグモ,アシダカグモ科,アシナガカニグモ,アシナガグモ,アシナガグモ科,
アシナガコマチグモ,アシナガサラグモ,アシハラメキリグモ,アシブトハエトリ,アシブトハエトリ,アシブトヒメグモ,
アシフヤミサラグモ,アシマダラコモリグモ,アシヨレグモ, アズチグモ,アズマカニグモ,アズマキシダグモ,アズマヤチグモ,
アダンソンハエトリ,アヅマカニグモ,アトグロアカムネグモ,アバタムナキグモ,アベマシラグモ,
アマギエビスグモ,アマミアズチグモ,アマミウズグモ,アマミオニグモ,アマミカブトヒメグモ,アマミカヤシマグモ,アマミドクグモ,
アマミナナツバハエトリ,アマミミジングモ,アミナゲグモ,アメイロハエトリ, アライトコモリグモ,アリグモ,アリマケズネグモ,アリマネグモ,
アワセグモ,アワセグモ科,アンネンムネアカグモ
イ
イエオニグモ,イエタナグモ,イエユウレイグモ,イオウイロハシリグモ,イサゴコモリグモ,イサゴワシグモ,
イシガキアオグロハシリグモ,イシカワマシラグモ,イシサワオニグモ,イズモコガタナミハグモ,イソウロウグモ,
イソコモリグモ,イソタナグモ,イソヌカグモ,イソハエトリ,イタチグモ,イツキメナシナミハグモ,イヅツグモ,イヅツグモ科,イトグモ,イトグモ科
イナズマウラシマグモ,イナズマハエトリ,イナダハリゲコモリグモ,イナヅマクサグモ,イナヅマハエトリ,イナバナミハグモ,
イノシシグモ,イノシシグモ科,イハラフクログモ,イヘヤウズグモ,イヘヤキムラグモ,イマダテテングヌカグモ,イモコモリグモ,イリエマシラグモ,イヨヤミサラグモ,
イリエヤミサラグモ,イリオモテアシナガグモ,イリオモテケムリグモ,イリオモテヌカグモ,
イワガネグモ,イワガネグモ科,イワテハエトリ,イワマヒメグモ,イワミコガタナミハグモ,イワワキアシブトヒメグモ,インドネシア産オオヒメグモの一種
ウ
ウエノヤミサラグモ,ウエムラグモ科,ウコンフクログモ,ウスイロヤチグモ,ウスキコマチグモ,
ウスキショウジョウグモ,ウズグモ,ウズグモ科,ウスジロアズチグモ,ウススジハエトリウゼンコモリグモ,ウヅキコモリグモ,ウデナガヒナマシラグモ,ウデブトハエトリ,ウブゲワシグモ,ウラシマグモ,ウロコアシナガグモ
エ
エキスハエトリ,エゾアシナガグモ,エゾウズグモ,エゾカイゾクコモリグモ,エゾコモリグモ,エゾトタテグモ,エゾフクログモ,
エゾヤミサラグモ,エダイボグモ,
エビグモ,エビグモの1種,エビグモ科,エビスハエトリ,エビチャケムリグモ,エビチャコモリグモ,エビチャヨリメケムリグモ,エビハラフシグモエンコウグモ科,エンマグモ科,
オ
オウギグモ,オオアシナガグモ,オオクマアメイロハエトリ,オオクマエビスグモ,オオクマヒメドヨウグモ,オオクロケブカジョウゴグモ,オオジョロウグモ,オオシロカネグモ,オオスギヤミサラグモ,オオスミコガネグモオオセンショウグモ,オオツリガネヒメグモ,オオトリノフンダマシ,オオハエトリ,オオヒメグモ,オオヤミイロカニグモ,
オガサワラヒメグモ,オガタフクログモ,オガタモリヒメグモ,オキツハネグモ,
オキナワアズチグモ,オキナワウズグモ,オキナワキムラグモ,オキナワトタテグモ,オキナワナガイボグモ,オキナワホラアナヤチグモ, オキナワマシラグモ,
オスクロハエトリ,オダカグモ,オツヌグモ,オトヒメグモ,オナガアシナガグモ,オナガグモ,オナガヒシガタグモ,
オニグモ,オニノホラヒメグモ,オノアカムネグモ,オノゴミグモ,オノヌカグモオビジガバチグモ,オビボソカニグモ,オフクホラヒメグモ
カ
カイゾクコモリグモ,カガリビコモリグモ,カキイロハエトリ,カギフクログモ,カグヤヒメグモ,ガケジグモ科,カコウコモリグモカザアナマシラグモ,ガザミグモ,ガザミグモの一種,カシワフクログモ,カズサハイタカグモ,カタオカハエトリ,カタハリウズグモ,カチドキナミハグモカトウツケオグモ,カドオニグモ,カナコキグモ,カニグモ,カニグモ科,カニミジングモ,カネコトタテグモ,カネコトタテグモ科,カノウハエトリ,
カバキケムリグモ,カバキコマチグモ,カマスグモ,カミガタヤチグモ,カムラタンボグモ,カヤシマグモ,カヤシマグモ科,カヤシマフクログモカラオニグモ,カラオビハエトリグモ,カラカラグモ,カラカラグモ科,カラコモリグモ,カラスゴミグモ,カラスハエトリ,
カラフトオニグモ,カラフトコモリグモ,カレハグモ,カレハヒメグモ,カワベコモリグモ,カワラメキリグモ,カワリノコギリグモ,カンムリグモ
キ
キアシハエトリ,キイロカレハグモ,キイロハラダカグモ,キウチナミハグモ,キエビグモ,キオヒキグモ,キクヅキコモリグモキザハシオニグモ,キシコモリグモ,キシダグモ科,キシノウエトタテグモ,キシベコモリグモ,キジロオヒキグモ,キジロゴミグモキソサラグモ,キタエビグモ,キタオチバカニグモ,キタカゼフクログモ,キタグニオニグモ,キタグニハイタカグモ,キタコノハグモ,キタコモリグモ,キタセンショウグモ,
キタツヤハエトリ,キタドヨウグモ,キタハリゲコモリグモ,キタヒメグモ,キタヒメグモ,キタフクログモ,キタモリヒメグモ,キタヤハズハエトリ,
キヌアシナガグモ,キヌアミグモ,キヌキリグモ,キノボリトタテグモ,キハダエビグモ,キハダガケジグモ,キハダカニグモキバナオニグモ,キバラコモリグモ,キビコガタナミハグモ,キヒメグモ,キフクログモキベリミジングモ,ギボシヒメグモ,キマダラオニグモ,キマダラヒラタヒメグモ,キムラグモ,キムラグモ科,
ギョウジャグモ,キヨトネオンハエトリ,キヨヒメグモ,キララシロカネグモ,キリシマアズチグモ,キレオビウラシマグモ,キレワハエトリキンイロエビグモ,キンカタハリオニグモ,ギンナガゴミグモ,ギンメッキゴミグモ,キンヨウグモ
ク
クサグモ,クサチコモリグモ,クスミサラグモ,クスミダニグモ,クニサキホラヒメグモ,クボミケシグモ,クマアリグモ,クマダハナグモ,クマダフクログモクメジマウズグモ,クラークコモリグモ,クラモトマシラグモ,クリチャササグモ,クロオニグモ,クロガケジグモ,クロケシグモ,
クロケムリグモ,クロササヒメグモ,
クロサワフクログモ,クロチャケムリグモ,クロツヤハエトリ,クロテナガグモ,クロトリノフンダマシ,クロナンキングモ,クロボシカニグモ,
クロマルイソウロウグモ,クロミジングモ, クロヤチグモ,クワガタアリグモ,
ケ
ケアシハエトリ,ケグロマシラグモ,ケズネグモ,ゲホウグモ,
コ
コアカクロミジングモ,コアシダカグモ,コアシブトヒメグモ.コウシサラグモ,コウズグモ,コウライタンボグモ,コウライネオンハエトリ,
コオニグモモドキ,ゴカクケシグモ,コガタコガネグモ,コガタコモリグモ,コガタネオンハエトリ,コカニグモ,コガネエビグモ,コガネグモ,
コガネグモダマシ,コガネグモ科,コガネヒメグモ,コガネヒメグモの一種,コキハダカニグモ,コクサグモ,コケオニグモ,ゴケグモ,
コゲチャオニグモ,コゲチャガケジグモ,コゲチャハエトリの一種,コケヒメグモ,コサラグモ,コジャバラハエトリ,コシロカネグモ,
コシロブチサラグモ,コソデヒナマシラグモ,コソデホラヒメグモ,コタナグモ,コタナグモの一種,コツブグモ科,コデーニッツサラグモ,
コテングヌカグモ,コトガリアカムネグモ,コトヒザグモ,コトラフカニグモ,コハシリグモ,コハナグモ,コブオニグモ,コフクログモ,
コブシケムリグモ,コホラヒメグモ,ゴマジロオニグモ,ゴマダラヒメグモ,コマツエンマグモ,ゴミグモ,コミナミツヤハエトリ,コムラウラシマグモ,コモリグモ科,
コンピラコモリグモ,コンピラヒメグモ,
サ
サイトウモリヒメグモ,サガオニグモ,サカグチトリノフンダマシ,サキエダオニグモ,ササグモ,ササグモ科,サザナミサラグモ,サチコマチグモ,サツマノミダマシ,サトヒメグモ,
サヤヒメグモ,ザラアカムネグモ,サラグモ科,ザラナミハグモ,サンロウドヨウグモ,
シ
シギカニグモ,ジグモ,ジグモの一種,ジグモ科,シコクアシナガグモ,シッチコモリグモ,シナカニグモ,
シナノアシナガグモ,シナノヤハズハエトリ, シノビグモ,シノノメトンビグモ,シバサラグモ,シベリアメキリグモ,シボグモ,シボグモモドキ,シボグモ科,
シマウズグモ,シマゴミグモ,シマゴミグモ,シマササグモ,シマフクログモシモフリヒシガタグモ,シモフリヒメグモ,シモフリミジングモ,シモフリヤチグモ,シモングモ,
シャコグモ,ジャバラグモ,ジャバラグモ科,ジャバラハエトリ,シャラクダニグモ,ジュウノジハエトリ,ジュズカケグモ,
ジョウゴグモの1種,ジョウゴグモ科,ジョロウグモ,シラヒゲハエトリ,シラホシコゲチャハエトリ,
シロアズチグモ,シロオビトリノフンダマシ,シロカネイソウロウグモ,シロカネハエトリ,シロカネヒラタヒメグモ,
シロスジグモ,シロスジショウジョウグモシロタマヒメグモ,シロツバカニグモ,シロブチサラグモ,シンカイナミハグモ,シンガポール産アシブトヒメグモ,シンゲンナミハグモ,
ス
スオウグモ科,ズグロオニグモ,スジアカハシリグモ,スジシャコグモ,スジブトコモリグモ,スジブトハシリグモ,スズキコモリグモ,スズミグモ,
スソグロサラグモ,スソグロムナアカグモ,スソグロムネアカグモ,ズダカカニグモ,ズナガドヨウグモ,スネグロオチバヒメグモ,
セ
セキグチコガネグモダマシ,セスジアカムネグモ,セスジガケジグモ,セスジコモリグモ,セマダラコノハグモ,
セマルトラフカニグモ,セムシアカムネグモ,センショウグモ,センショウグモ科,ゼンジョウマシラグモ,
ソ
ソメワケトリノフンダマシ
タ
ダイセツカニグモ,ダイダイエビスグモ,ダイトウマルガタワカバグモ,タイリクアリグモ,タイリクウズグモ,
タイリクカニグモ,タイリクケムリグモ,タイリクコモリグモ,タイリクサラグモ,タイリクトガリヌカグモ,
タイリクユウレイグモ,タイワンアシブトヒメグモ,タイワンコブヌカグモ,タイワンジョウゴグモ,タイワントラフカニグモ,
タカネエビスグモ,タカネコモリグモ,タカネツヤグモ,タカネナミハグモ,タカネヒメグモ,タカノハエトリ,タカユヒメグモ,
ダケカバフクログモ,タジマホラヒメグモ,タスキケムリグモ,タソガレトンビグモ,タテスジハエトリ,タテスジハリゲコモリグモ,タテヤマサラグモ,タテヤマテナガグモ,
タナグモ科,タニカワフクログモ,タニカワヨリメハエトリ,ダニグモ,タニマノドヨウグモ,タマゴグモ科,タマヤミサラグモ, タルグモ,ダンダラオニグモ,
チ
チクニエビスグモ,チクニサヤヒメグモ,チクニハエトリ,チクニヒシガタグモ,チクニヨリメケムリグモ,チシマカニグモ,
チビアカサラグモ,チビクロドヨウグモ,チビクロハエトリ,チビケムリグモ,チビコモリグモ,チビサラグモ,チビシロカネグモ, チビツヤグモ,チビホラヒメグモ,
チブサトゲグモ,チャイロアサヒハエトリ,チャクロワシグモ,チャスジハエトリ,チュウガタコガネグモ,チュウガタシロカネグモ,
チュウゴク(中国)産ウズグモの一種,チヨコアシナガグモ,チリイソウロウグモ,チリグモ,チリグモ科,チリコモリグモ,
ツ
ツキミノウラシマグモ,ツクネグモ,ツシマトリノフンダマシ,ツヅラケムリグモ,ヅナガグモ,ツノオニグモ,ツノオニグモ,
ツノケシグモ,ツノタテグモ,ツノナガイソウロウグモ, ツメケシグモ,ツヤグモ,ツユグモ,ツリガネヒメグモ,ツリサラグモ,ツルギハエトリ,
テ
デーニッツサラグモ,デーニッツハエトリ,テジロハリゲコモリグモ,テナガグモ,デメキリグモ,テングヌカグモ,
ト
トウキョウアカムネグモ,トウキョウウズグモ,トウキョウホラヒメグモ,ドウシグモ,ドウナガカニグモ,トカチオニグモ,トカラハエトリ,
トガリアカムネグモ,トガリアシナガグモ,トガリオニグモ,トガリクサチヒメグモ,トガリシロスジグモ,トガリシロカネグモ,
トガリハナオニグモ,トクノシマキムラグモ,トクノシマエキスハエトリ,
トゲグモ,トゲゴミグモ,トゲナガアシナガグモ,トサハエトリ,トタテグモ科,ドナンケムリグモ,トビイロエビグモ,トビイロカヤシマグモ,トビイロフクログモ,トビジロイソウロウグモ,
ドヨウオニグモ,トヨヒラフクログモ,トラフカニグモ,トラフグモ,トラフワシグモ,トリノフンダマシ,
ナ
ナガイヅツグモ,ナガイボグモ科,ナガイボグモ,ナガコガネグモ,ナガズキンコモリグモ,ナガテオニグモ,ナカヒラハエトリ,
ナガマルコガネグモ,ナカムラオニグモ, ナシジカレハグモ,ナセトタテグモ,ナナホシヒメグモ,ナナメケシグモ,ナニワナンキングモ,ナミハグモ,ナミハグモ科,
ナリヒラグモ,ナルコグモ,ナルトミダニグモ,ナンゴクケムリグモ,ナンブコツブグモ,
ニ
ニシカゼケムリグモ,ニシカゼフクログモ,ニシキオニグモ,ニシキサラグモ,ニセアカムネグモ,
ニセアサヒハエトリ,ニセキクヅキコモリグモ, ニセンヒメグモ,ニチコナミハグモ,ニッパラナミハグモ,ニッパラヒナマシラグモ,ニッポンオチバカニグモ,
ニワオニグモ,ニンギョウネオンハエトリ,
ヌ
ヌサオニグモ,ヌマチコモリグモ
ネ
ネオンハエトリ,ネコグモ,ネコハエトリ,ネコハグモ,ネッタイコモリグモ
ノ
ノコギリヒザグモ,ノコバヤセグモ,ノジマコガタナミハグモ,ノジマネオンハエトリ,ノジマヒメグモ,ノロホラヒメグモ
ハ
ハイイロヒメグモ,ハイイロゴケグモ,ハイタカグモ,ハエトリグモ科,ハエミノチャクロワシグモ,ハグモ,ハグモの一種,ハグモ科,
ハクヤミサラグモ,ハコネフクログモ,ハシグロナンキングモ,
ハタケグモ,ハタケグモ科,ハタチコモリグモ,ハタハリゲコモリグモ,ハチジョウウスイロユアギグモ,ハチジョウチリグモ,ハツリグモ,ハテコモリグモ,
ハナグモ,ハナサラグモ,ハナナガイソウロウグモ,ハナナガトラフカニグモ,ハマウズグモ,ハマキフクログモ,ハマゴミグモ,ハモンエビグモ,
ハヤテグモ,バラギヒメグモ,ハラクロコモリグモ,ハラジロムナキグモ,ハラダカツクネグモ,ハラナガヒシガタグモ,
ハラビロアシナガグモ,ハラビロスズミグモ,ハラビロセンショウグモ,ハラビロミドリオニグモ,
ハリゲコモリグモ,ハンゲツオスナキグモ,バンドウフクログモ,ハンモックサラグモ
ヒ
ヒガシコモリグモ,ヒカリアシナガグモ,ヒゲナガツヤグモ,ヒゲナガハシリグモ,ヒゲナガマシラグモ,ヒゲナガヤリグモ,ヒコサンコモリグモ,ヒコサンヤミサラグモ
ヒザブトヒメグモ,ヒシガタグモ,ヒシガタグモの一種,ヒシガタヒメグモ,ビジョオニグモ,ヒジリナミハグモ,ヒタキグモ,
ヒトオビウラシマグモ,ヒトオビトンビグモ,ヒナハグモ,ヒナマシラグモ,ヒノマルコモリグモ,ヒバナミハグモ,ヒバヤミサラグモ
ヒメアカクサグモ,ヒメアシナガグモ,ヒメオニグモ,ヒメカラスハエトリ,ヒメグモ,ヒメグモの一種,ヒメグモ科,
ヒメコモリグモ,ヒメシモフリヤチグモ,ヒメスジハエトリ,ヒメチャワシグモ,ヒメナミハグモ,ヒメハナグモ,ヒメフクログモ,
ヒメヤマヤチグモ,ヒメユウレイグモ,ヒメヨツボシサラグモ,ヒメヨリメケムリグモ, ヒラタグモ,ヒラタグモ科,ヒラヒシガタグモ,
ヒルギアシナガグモ,ヒロズケムリグモ,ヒロセハエトリ,ヒロハヒメグモ
フ
フイリコタナグモ,フジイコモリグモ,ブシフクログモ,フタオイソウロウグモ,フタオビトンビグモ,フタスジサラグモ,フタバヤチグモ,
フタホシテオノグモ,フタホシヒメグモ,フタホシヒラタヒメグモ,フノジグモ,ブンゴホラヤミサラグモ
ヘ
ヘヤチリグモ,ヘリジロオニグモ,ヘリジロオニグモ,ヘリジロサラグモ,ヘリジロツケオグモ,
ホ
ホウシグモ,ホウシグモ科,ホオジロハエトリ,ボカシミジングモ,ホシグロコウマルサラグモ,ホシジロトンビグモ,
ホシスジオニグモ,ホシズナワカバグモ,ホシヒメグモ,ホシヒメグモモドキ,ホシミドリヒメグモ,ホラズミツリタナグモ,
ホラズミヤチグモ,ホラヒメグモ科,ホルストジョウゴグモ,ホンクロボシカニグモ
マ
マイコフクログモ,マエトビケムリグモ,マガネアサヒハエトリ,マガネアサヒハエトリ,マシラグモ科,
マシラユウレイグモ属,マダラスジハエトリ,
マダラヒメグモ,マダラフクログモ,マツガエウズグモ,マツシタコモリグモ,マツダタカネオニグモ,マツモトオチバカニグモ,マツモトハエトリ,マネキグモ,
マミクロハエトリ,マミジロハエトリ,マメイタイセキグモ,マメオニグモ,マユミテオノグモ,マユミフクログモ,
マルコブオニグモ,マルゴミグモ,マルサラグモ,マルズメオニグモ,マルムネヒザグモ,
ミ
ミカドヤチグモ,ミズグモ,ミズグモ科,ミズゴケサラグモ,ミスジハエトリ,ミズタコモリグモ,ミチノクフクログモ,ミドリアシナガグモ,
ミドリマネキグモ,ミナミウズグモ,ミナミオダカグモ,ミナミカラスハエトリ,ミナミタルグモ,ミナミノアカイソウロウグモ,
ミナミフトバワシグモ,ミナミモリヒメグモ, ミヤグモ,ミヤコウズグモ,ミヤコケムリグモ,ミヤコジマトタテグモ,
ミヤシタイソウロウグモ,ミヤマシボグモモドキ,ミョージンヒメグモ,
ム
ムシバミコガネグモ,ムツトゲイセキグモ,ムツバハエトリ,ムツボシオニグモ,ムツボシハエトリ,ムツメカレハグモ,
ムナアカコマチグモ,ムナキワシグモ,ムナグロヒメグモ,ムナボシヒメグモ,ムナボソミジングモ,ムネグロサラグモ, ムラクモヒシガタグモ,
ムロズミソレグモ,ムロテハエトリ,
メ
メガネアサヒハエトリ,メガネドヨウグモ,メガネヤチグモ,メキリグモ,メグロハエトリ,メスジロハエトリ,メダマグモ,
メダマグモ科,メナシヒメグモ,
モ
モグラグモ,モリコモリグモ,モリズミマシラグモ,モリメキリグモ,モンシロコゲチャハエトリ
ヤ
ヤエヤマゴケグモ,ヤエヤマジョウゴグモ,ヤエヤマシボグモ,ヤエヤマナガイボグモ,ヤエヤマヒシガタグモ,ヤエヤマヒメグモ,
ヤエヤマヤチグモ,ヤエヤマユウレイグモ,ヤエンオニグモ,ヤガスリサラグモ,ヤガタハエトリ,ヤギヌマグモ科,ヤギヌマササヒメグモ,ヤギヌマノセマルトラフカニグモヤギヌマフクログモ,ヤサアリグモ,ヤサガタアシナガグモ,ヤサコマチグモ,ヤスダオニグモ,ヤセグモ,ヤチグモ,ヤドカリグモ,
ヤノガケジグモ,ヤハズハエトリ,ヤハズフクログモ,ヤバネウラシマグモ,ヤバネハエトリ,
ヤホシサヤヒメグモ,ヤホシヒメグモ,ヤホシヒラタヒメグモ,ヤマアカムネグモ,ヤマオニグモ,ヤマキレアミグモ,ヤマゴミグモ,
ヤマジグモ,ヤマジサラグモ,ヤマジドヨウグモ,ヤマジハエトリ,ヤマシロオニグモ,ヤマシログモ,ヤマシログモ科,
ヤマトガケジグモ,ヤマトカナエグモ,ヤマトカブトヒメグモ,ヤマトコノハグモ,ヤマトコマチグモ,ヤマトゴミグモ,
ヤマトコモリグモ,ヤマトジャノメグモ,ヤマトチリグモ,ヤマトツヤグモ,ヤマトツヤハエトリ,ヤマトフクログモ, ヤマトフトバワシグモ,ヤマトミジングモ,
ヤマトヤギヌマグモ,ヤマトヤドカリグモ,ヤマネコウラシマグモ,ヤマハリゲコモリグモ,ヤマヤチグモ,ヤマヤミイロカニグモ,ヤマヨリメケムリグモ,
ヤミイロオニグモ,ヤミイロカニグモ,ヤリグモ,ヤンバルオニグモ
ユ
ユアギグモ,ユアギグモ科,ユウレイグモ,ユウレイグモモドキ,ユウレイグモ科,ユカタヤマシログモ,
ユノハマサラグモ,ユノハマヒメグモ,
ヨ
ヨウザワマシラグモ,ヨコフカニグモ,ヨコフマシラグモ,ヨシアキナミハグモ,ヨシイエハエトリ,ヨシクラユウレイグモ,
ヨシダサヤヒメグモ,ヨシダミジングモ, ヨダンハエトリ,ヨツコブヒメグモ,ヨツデゴミグモ,ヨツボシアカムネグモ,ヨツボシサラグモ,ヨツボシヒメアシナガグモ,
ヨツボシワシグモ,ヨドヤチグモ,ヨモギフクログモ,ヨリメグモ,ヨリメグモ科,ヨロイグモ,ヨロイヒメグモ,
ラ
ランペルトハエトリ
リ
リュウキュウアシナガグモ,リュウキュウケムリグモ,リュウキュウコモリグモ,リュウキュウツクネグモ,
リュウキュウセンショウグモ,リュウキュウミドリヒメグモ
ル
レ
レーバージャノメグモ,
ロ
ロクショヤミサラグモ,
ワ
ワカバグモ,ワカバネコハエトリ,ワキグロサツマノミダマシ,ワクドツキジグモ,ワシグモ.ワシグモ科,ワスレナグモ,
その他 産室を作るコモリグモ,台湾産ヒシガタグモの一種,台湾産ヒメヒシガタグモの一種,台湾産フクログモの一種
学名一覧
Achaearanea anglithorax, asiatica, culicivorum, decorata, ferrumequinum, impressum, japonicum, kompirense,lunata, nipponica, oculiprominentis, riparia,tepidarioum,triangula
Aculepeira matsudae
Acusilas coccineus
Aelurillus festivus
Agelena labyrinthica, limbata, opulenta
Ageleniidae
Agroeca coreana, kamurai, montana,
Alopecosa cinnameopilosa, hokkaidensis, moriutii, pulverulenta, virgata
Alcimochthes limbatus
Amaurobiidae
Amaurobius flavidorsalis, yanoianus,
Anacotyle setoensis,
Anahita fauna,
Anapidae
Anapistula ishikawai
Anelosimus crassipes, exiguus, iwawakiensis, kohi, taiwanicus,
Anepsion japonicum, roeweri
Antrodiaetidae
Antrodiaetus roretzi, yesoensis
Anyphaena ayshides, pugil
Aprifrontalia mascula
Arachnura logio, melanura
Araneidae
Araneus abscissus, angulatus, bituberculatus, boreus, cornutus, diadematus, ejasmodi, fuscocoloratus, ishisawai, macacus, marmoreus, mitificus, omoedus, pentagrammicus, pingius, pseudocentrodes, rotundicornis, semilunaris, seminiger, sp., stella, triguttatus, tartaricus, theisi, tsuno, uyemurai, variegatus, ventricosus, ventricosus nigellus, viperifer, viridiventris,
Araniella displicata, yaginumai,
Archerius nakahirai
Arcuphantes digitatus, hibanus, hikosanensis, hokkaidanus, iharai, iriei, longissimus, obriculatus, paiki, uenoi
Arctosa cinerea, depectinata, ebicha, fujiii, hikosanensis, kawabe, kobayashii, laminata,
Arcuphantes ashifuensis, hibanus, iharai, longiscapus, nojimai, okiensis, osugiensis, saitoi, setouchi, tamaensis, tsurusakii,
Argiope aemula, aetheroides, amoena, boesenbergi, bruennici, minuta, ohsumiensis,
Argyria
Argyrodes bonadea, cyrindratus, fissifrons, flavescens, fur, kumadai, labiatus, lanyuensis, melanosoma, miniaceus, miyashitai, nipponicus, saganus, xiphias,
Argyroneta aquatica japonica,
Ariadna lateralis,
Ariamnes cylindrogaster,
Asemonea tanikawai
Asperthorax communis
Atypena formosana,
Atypidae
Atypus karschi, sp.,
Badumna longinqua,
Bassaniana decorata =Oxyptila decorata KARSCH
Bathyphantes orientis, robstus, tateyamaensis,
Bavia sexpunctata
Bianor aurocinctus, japonicus, maculatus
Boethus
Bristowia heterospinosa
Callilepis nocturna, schuszteri,
Callobius claustrarius
Calommata signatum
Carrhotus xanthogramma
Castianeira shaxianensis
Centromerus sylvaticus
Ceratinopsis setoensis
Chiracanthium digitivorum, erraticum, eutittha, gratiosum, japonicum, lascivum, unicum
Chorizopes nipponicus
Chrosiothes subadides
Chrysso bimaculata, foliata, pulcherrima, punctifera, spiniventris, venusta, vesiculosa, viridiventris
Cicurina japonica, maculifera, parvula, sp.,
Cispius orientalis
Cladothela auster, boninensis, oculinotata, parva, unciinsignata
Clubiona akagiensis, amurensis, aservida, bandoi, basarukini, bonicula, coerulescens, corrugata, deletrix, diversa, ezoensis, hummeli, iharai, ikedai, insulana, japonica, japonicola, jucunda, kayashimai, kuanshanensis, kumadaorum, kurilensis, kurosawai, lena, lutescens, maculata, mandschurica, mayumiae, neglectoides, ogatai, pseudogermanica, salictum, sharkeyi, subinterjecta, taiwanica, tanikawai, trivialis, vigil, yaginumai, zilla
Coelotes antri, corasides, decolor, exitialis, hamamurai, insidiosus, interunus, kitazawai, luctuosus, micado, michikoae, troglocaecus, yaeyamensis, yaginumai, yodoensis,
Coleosoma blandum, floridanum, margaritum, octomaculatum,
Comaroma maculosum
Conoculus lyugadinus
Coriarachne fulvipes
Cornicularia mira , vulgaris ,
Coscinida japonica
Ctenizidae
Ctenus yaeyamaensis
Cupa typica, zhengi,
Cybaeus communis, gonokawa , hibaensis, hiroshimaensis,ishikawai, itsukiensis, kirigaminensis , kiuchii, mellotteei, miyoshii, nipponicus, nojimai, obedientiarius, okayamaensis, sanctus, shingenni, shinkaii, tottoriensis, tsurusakii, yoshiakii
Cyclocarcina floronoides
Cyclosa argenteoalba, atrata, camelodes, ginnaga, insulana, japonica, laticauda, monticola, mulmeinensis, octotuberculata, omonaga, onoi, sedeculata, vallata
Cyrtarachne bufo, innaequalis, induta, nagasakiensis, nigra, yunoharuensis,
Cyrtophora exanthematica, moluccensis, unicolor
Dendryphantes atratus
Diaea dorsata, gyoja, subadulta
Dictyna felis, foliicola, maculosa, sp.
Dictynidae
Dinopidae
Dinopis sp.
Diphya okumae
Diplocephaloides saganus
Dipluridae
Dipoena amamiensis, caninotata, castrata, flavomarginata, japonica, longisternum, mustelina, mutilata, okumae, punctisparsa, yoshidai,
Doenitzius peniculus, purvus,
Dolichocybaeus ishikawai, nichikoensis,
Dolichognatha umbrophila
Dolomedes annulatus pallitarsis, raptor, saganus, sulfreus, yawatai
Doosia japonica
Drassodes depilosus, argiodiformis, lativentris, pater, pubescens, rotundifoveatus, seratidens,
Drassyllus sanmenensis, sasakawai, shaanxiensis, venusa,
Dyschiriognatha tenera, venusta
Dysdera crocota
Dysderidae
Enoplognatha camtschadalica, dorsinotata, japonica, marginata, transversifoveata,
Entelacara tanikawai
Episinus affinis, caudifer, chikunii, kitazawai, makiharai, nubilus, punctisparsus, tanikawai, yoshidai, yoshimurai,
Eresidae
Eresus niger
Erigone edentata, koshiensis, lila, prominens,
Erigonidium nigriterminorum, graminicola, naniwaensis
Eriophora aurea, sachalinensis, sagana, yanbaruensis
Eriovixia pseudocentrodes, sakiedaorum
Ero cambridgei, furcata, japonica, koreana
Euagrus formosanus
Euophrys anninotata, erratica, frontalis, herbigrada, iwatensis, trivittatus, undulato-vittata,
Euryopis flavomaculata, iharai, octomaculata, tazanowskii,
Evarcha albaria, crassipes, fasciata, flammata,
Falcileptoneta okinawaensis, striata
Filistata fuscata, marginata, sp.
Filistatidae
Floronia bucculenta, exornata
Gamasomorpha cataphracta, kusumii, syaraku
Gasteracantha kuhlii, mammosa,
Glyphesis cottonae
Gnaphosa akagiensis, kompirensis, potanini, primorica, silvicola, sticta,
Gnathonarium dentatum, exsciccatum, gibberum,
Gonatium arimaense, opimum
Gongylidioides onoi,
Hahnia corticicola
Haplodrassus cognatus, kanenoi, signifer
Harmochirus brachiatus, insulanus, kochiensis, niger, nigriculus, pullus
Hasarius adansoni, crucifer, doenitzi
Helicius cylindratus, yaginuma,
Heliophanus aeneus, flavimaxillis
Heptathela kanenoi, kimulai, nishihirai
Heptathelidae
Heriaeus mellotteei
Hersilia clathrata,okinawaensis,savignyi,yaeyamaensis
Heteropoda forcipata, venatoria,
Hitobia asiatica, unifascigera, yasunosukei,
Hyglolycosa umidicola
Hygropoda higenaga
Hyllus lamperti,
Hypselistes asiaticus
Hypsosinga sanguinea
Hyptiotes affinis
Icius difficilis, linea, pallidulus,
Ischnothyreus japonicus, narutomii
Itatsina praticola
Ixeuticus martius, robstus
Jotus abnormis,
Kishidaia albimaculata
Labulla controtipes
Larinia argiopiformis, sekiguchi
Lathys annulata, humilis, punctosparsa, puta, sexoculata
Latouchia japonica, sp., swinhoei, typica,
Latrodectus geometricus, hasseltii, mactans,
Laufeia aenea
Lepthyphantes cericeus, japonicus, serratus
Leptodrassus nipponicus,
Leptoneta akiyoshiensis, iriei, kuramotoi, melanocomata, musclina, speciosa, uenoi, zenjoensis,
Leptonetidae
Leptopholcus tanikawai,
Leucauge blanda, crucinota, decorata, magnifica, subblanda, subgemmea,
Linyphia albolimbata, angulifera, brongersmai, clathrata, fusca, herbosa, japonica, montana, nigripectoris, oidedicata,
Linyphiidae
Liphistius desultor
Lophomma yodoense
Loxobates daitoensis,
Loxosceles rufescens
Loxoscelidae
Lycosa coelestis, fujitai, ishikariana, joshidaia, matsushitai, pseudoannulata, sp., suzukii
Lycosidae
Lysiteles coronatus, maius, miniatus, okumae, takashimai
Masirana akahanei, cinevacea, kosodeensis, longipalpis, nippara, testaceus,
M(aminage)
Macrothele holsti, gigas, sp.,yaginumai
Mangora herbeoides
Marpissa dybowskii, roemeri, elongata, hiroseae, ibarakiensis, magister, pomatia, pulchra , pulla,
Meioneta concava, nigra, obliqua, pentagona, projecta, ungulata
Menemerus brachygnathus, confusus, fulvus, himeshimensis
Menosira ornata
Meotipa vesiculosa
Meta japonica
Meta nigridorsalis, reticuloides
Metleucauge chikunii, kompirensis, sp., yunohamensis
Metopobactrus prominulus
Miagrammopes oblongus, orientalis
Micaria claripes, dives, japonica,
Micarina alpina, pulicaria
Micrommata roseum
Mimetus japonicus, ryukyus
Mimmetidae
Mintonia bani
Misumena vatia
Misumenops japonicus, kumadai, tricuspidatus
Moguraclcurim honesta
Monaeses aciculusaudifer (DOEN.et STR.,1906)
Moneta caudifer, mirabilis, spiniger, tanikawai, yoshimurai
Myrmarachne formicaria, innermichelis, japonica, kuma, kuwagata,
Mysmena jobi
Mysmenidae
Nematogmus sanguinolentus
Neon kiyoto, minutus, ningyo, nojimai, reticulatus, rostratus
Neoscona adianta, amamiensis, doenitzi, fuscocoloratus, lugubris, mellotteei, minoriscylla, nautica, punctigera, rumpfi , scylla, scylloides, subpullata, subpullatus, theisi, vigilans
Nephila clavata,
Nesticidae
Nesticus akiensis,akiyoshiensis akiyoshiensis, akiyoshiensis ofuku,brevipes, latiscaps kosodeensis, kunisakiensis,mogera, noroensis,nishikawai,oculiprominentis, shinkaii,tarumii
Nungia epigynalis
Ochyroceratidae
Octonoba grandiconcava, grandiprojecta, okinawaensis, rimosa, sinensis, sybotides, tanakai, uncinata, varians, yaginumai, yesoensis
Odontodrassus hondoensis, javanus
Oecobiidae
Oecobius annulipes, annulipes hachijoensis, cellariorum, nipponicus
Oedothorax angulitubersis, anneni, erigonoides, insecticeps, melanopygus, quadrimaculatus, tokyoensis,
Oglunius? pullus
Oia imadatei
Onomastus kanoi
Oonopidae
Opopaea syarakui
Orchestina okitsui, sanguinea
Ordgarius hobsoni, sexspinosus
Orthobula crucifera
Ostearius melanopygius
Otsunus delicatus
Oxyopes badius , macilentus, sertatus
Oxyptira matsumotoi, nipponica, nongae, sincera
Oxytate hoshizuna, striatipes, truciformis
Pachygnatha clercki
Pancorius magnus
Paraplectana sakaguchii, tsushimensis,
Paratheuma shirahamensis
Pardosa agraria, amaminensis, astrigera, brevivulva, diversa, graminea, hedini , herbosa, hokkaido, isago, laevitarsis, laura, longidens, lugubris, lyrivulva, nojimai, okinawensis, oriens, pseudoannulata, riparia, suwai, umida,yaginumai, yamanoi,
Pasilobus bufoninus
Patu sp.
Perenethis fascigera
Phaeocedus braccatus
Philoponella prominens
Phintella bifurcilinea, castriesiana, linea, melloteei, versicolor
Phirodromus auricomus, fusco-marginatus, japonicus, roseus, rufus, sp. spinitarsis, subaureolus
Pholcidae
Pholcomma amamiense, japonica
Pholcus cypyicolens, opilionoides, phalangioides, yoshikurai
Phoroncidia altiventris, piluta, ryukyuensis, subabides
Phrurolithus claripes, coreanus, komurai, luna, lynx, nipponicus, pennatus, unifasciger,
Phrynarachne ceylonica, katoi,
Pirata boreus, clercklii, exiguus, japonicus, piraticus, piratoides, procurvus, shibatai, tanakai, yesoensis
Pisaura lama,
Pistius sp., truncatus, undulatus,
Plexippus annulipedis, crassipes, paykulli, pococki, setipes
Plexxipoides
Poecilochroa hosiziro, unifascigera
Poltys illepidus
Porrhomma tateyamaense
Portia fimbriatus, quei
Prolinyphia emphana, limbatinella, longipedella, marginata, marginella, yunohamensis,
Pronous minutus
Pseudicius chikunii, himeshimensis, koreanus, tokarensis, vulpes
Rhene atratus, setipes, sp.
Robertus nipponicus, ogatai, saitoi, sibricus
Runcinia acuminata, albostriata
Ryuthela iheyana, nishihirai, sasakii
Salticidae
Sarutana abensis, glabra, silvicola
Scotolathys punctosparsa
Scotophaeus striatus
Scytodes nigrolineta, thoracica
Scytodidae
Segestria komatsuana, nipponica
Segestriidae
Selenops bursarius,
Sernokorba pallidipatellis,
Sergiolus hosiziro
Siler barbata, collingwoodii, cupreus
Silerella vittata
Simonius typicus
Singa hamata, theridiformis
Sitticus avocator, numeratus, fasciger, pallicolor, penicillatus, patellidens, s.
Smeringopus pallidus
Solenysa mellotteei
Spartaeus bani
Speleocicurina cavicola
Speocera laureata
Spermophora akebona, junkoae, senoculata
Spheropistha melanosoma
Steatoda albomaculata, cavernicola, erigoniformis, triangulosa
Stemmops nipponicus
Stertinius kumadai
Storena hoosi
Strandella fluctimaculata, quadrimaculata, yaginummai
Sunitorypha linyphoides
Synaema chikunii, globosum japonicum
Synagelides agoriformis, annae
Tapinopa guttata, longidens
Taranucnus nishikii
Tegenaria domestica,
Telamonia bifurcilinea, vlijimi
Telema nipponica
Telemidae
Tetrablemma shimojanai
Tetrablemmidae
Tetragnatha bituberculata, caudicula, chauliodus, extensa, iriomotensis, japonica, javana, laqueata, lauta, makiharai, mandibulata, nitens, pinicola, praedonia, shinanoensis, squamata, vermiformis, yesoensis,
Tetragnathiidae
Thanatus formicinus, miniaceus, nipponicus
Thelcticopis severa
Theridiidae
Theridion adamsoni, chikunii, ferrumequinum, impressum, japonicum, kompirense, latifolium, lyricum, melanosticum,nigrolimbatum, nojimai,octomaculatum, ogasawarense, pilula, pinastri, rapulum, rufipes, sterninotatum, subabides, subadultum, subpallens, takayense, yaeyamense, yunohamense,
Theridiosoma epeiroides
Theridiosomatidae
Theridula gonigaster, sp.
Theyne imperialis, orientalis
Thomisus kitamurai, labefactus, labefactus bimacuratus, okinawaensis, onustoides, onustus
Thymoite chikunii, okumae, yaginumai
Tibellus oblongus, tenellus
Titanoeca albofasciata, nipponica
Tmarus hanrasanensis, komi, piger, rimosus, taiwanus, yaginumai
Trachelas japonicus, sp.,
Trachyzelotes kulczynskii
Tricca japonica
Trochosa aquatica, ruricola, terricola, vulvella
Tylorida striata
Uloboridae
Uloborus dubius, geniculatus, guangxiensis, tokyoensis, walckenaerius,
Ummeliata angulitubersis, erigonoides, feminea, femineus, insecticeps, onoi,
Ummidia fragaria
Uroctea compactilis
Urocteiidae
Urozelotes rusticus
Wendilgarda agnosca
Xerolycosa nemoralis
Xysticus audax, atrimaculatus, bifidus, croceus, daisetsuzanus, dichotomus, ephippiatus, jacuticuste, insulicola, rostratus, saganus, tansversomaculatus, trizonatus
Yaginumaella hygoensis, ususudi
Yaginumanis sexdentatus
Yaginumia sia
Yoshiiyea agoana
Zelotes asiaticus, cavaleriei, donan,exiguus, flexuosus,gladius,hayashii, iriomotensis, nipponicus, pallidipatellis, potanini, praeficus, rusticus, ryukyuensis,tortuosus,zephyrus
Zilla astridae, aurea, flavomaculata, sachalinensis, tokachianus
Zora nemoralis, spinimana,
Zoropsidae
Zoropsis nishimurai
Zygella montana
○ジョウゴグモ科 Dipluridae
タイワンジョウゴグモ Euagrus formosanus SAITO
渡瀬線以南のクモであろう〔萱嶋AC14(1)〕.
ジョウゴグモの1種 Macrothele
sp.
石の下にロート状の住居を作るが竹の落葉の間に住居をつくっていた.倒木をおこして発見〔大河内AT49/50〕.
オオクロケブカジョウゴグモ Macrothele gigas SHIMOJANA et HAUPT,1998
=ホルストジョウゴグモ
Macrothele holsti POCOCK,1901
メス36mm内外,オス24mm内外で,西表島・石垣島の山地の林内に分布.
未記載の別種(雌雄とも10〜11mm)が山麓から山地の崖地に簡単なジョウゴ網を張る〔下謝名AT89〕.
朽木の奥からロート状の通路をつうじて外部の捕獲網につながっている.採集困難である〔下謝名AT41/42〕.
脚をふり上げて牙を開き,威嚇.指をかまれた〔谷川K62〕. 下謝名&ハウプトにより新種記載された.宮古島・石垣島・西表島・与那国島〔谷川・佐々木K76〕
ヤエヤマジョウゴグモ Macothele yaginumai SHIMOJANA et
HAUPT,1998
石垣島・西表島に生息〔谷川・佐々木K76〕.
○キムラグモ科 Heptathelidae
トクノシマキムラグモ Heptathela kanenoi
ONO,1996
鹿児島県徳之島を模式産地に記載.9月に雌雄.雌雄とも約11mm〔小野AC45(2)〕.
キムラグモ Heptathela kimulai
KISHIDA,1923
九州のキムラグモは地域によって種分化しておりそれぞれ別種と判断される. 大分市のブンゴキムラグモH.kikuyai
ONO,1998, 熊本市のヒゴキムラグモH.higoensis HAUPT,1983, 人吉市のヒトヨシキムラグモH.nishikawai
ONO,1998, 宮崎県国富町のヒョウガキムラグモH.yaginumai ONO,1998, 宮崎県南部の1種,
鹿児島市のキムラグモ(サツマキムラグモ)H.kimurai (KISHIDA,1920), 屋久島ヤクシマキムラグモH.yakushimaensis
ONO,1998〔小野98〕. 成体はメス1年中,オス9〜11月,九州中部以南・南西諸島〔東海84〕. メス11〜14mm,オス8〜10mm〔森林87〕.
1920年,木村有香により鹿児島から発見,1923年岸田久吉が記載〔中平83〕.
6月下旬から7月上旬に産卵,卵数は24-75(平均53.6),卵のうの外径17.5mm,高さ14.6mm,卵期は約1ケ月(大塚竜也1963).
幼虫段階でふ化し幼虫期間(第1齢)は3日,第1回脱皮で若虫となる.翌春まで同居し,4月上旬に出巣.以後の脱皮は夏に年1回,雌雄とも6齢で成体(吉倉1983).
オスは交尾後まもなく死ぬ.メスは交尾の翌年に産卵し,産卵後も脱皮する〔新海明K63〕.
母グモを中心とした母系家族集団が基礎的な単位個体群を形成している.生存曲線はY=1・031+(0・6160)のX乗,個体群内の生息密度は1平方m当たり62頭から91頭の間を変動している〔菊屋AT89〕.
大分県梅津越の人為崖で掘削後2年6ケ月で成立した個体群を調査した.歩行分散により崖上部か崖両側から侵入・定着したと推定される. trap door
(戸ぶた)の長径が3・2〜12・56mmの範囲である,他地域と比較すると(〜22mm),小さいが,若令個体が多いためである.
県下全域では戸ぶたの傾斜角は40°〜50°に集中しているが,梅津越では60°〜85°に偏よる.これは崖地の傾斜角が65°と急傾斜であることと相関する.
成育に伴い戸ぶたを拡大するところから戸ぶたの径は令査定に使用できる.
長径3・2〜6・2mm(2令),6・76〜8・29mm(3令),8・89〜10・19mm(4令),11・60〜12・56(5令),長径が8mmを越えた点で雌雄の性徴が明らかになる.
戸ぶたの長径xと短径yの関係式を求めると,y=79/100x+1・1,この式は楕円比を示すだけではなく,個体群の成長方程式とみなせる.
中判田のアラカシ,アカマツ混交林では,y=48/61x+2・15である.戸ぶた長径による令査定から生存曲線および生存率曲線を求めることができる.
2令(102頭),3令(27頭),4令(16頭),5令(6頭)となる.各個体群は母グモを中心とする単位個体群に分割できる.この単位個体群は母系集団とみなせる.
分散距離を調査すると母グモを中心として25mmから424cmの距離に分散しているが,60cm以上の個体について分散距離分布をとるとポアソン分布となる.
79%が母巣を中心に18cmを半径とする円内に分散している.なお分散方位は特定できないが,同一単位個体群の巣は同方向に分散しており,集団行動を示唆する.
戸ぶたによる単位個体群,複合個体群の把握も可能である〔菊屋AT85,AT83〕.
大分県佐伯市東島のウバメガシ個体群の調査.生息密度は38頭/u,戸ぶたの傾斜角は30°〜50°に63・9%が集中する.
戸ぶたの長径xと短径yの直線回帰式はy=89/129x+1・45,中判田個体群に比して傾きが小さく,それだけ成長がよくないことを示す.
戸ぶたの長径は6群に分けられ,令査定に使用できると推定される.5月初旬〜8月初旬に調査地四周の粘着トラップで補足した小動物のうち,
採餌対象となるものはワラジムシ(1日平均頭数4・4),エダシャク2種(2・9),モリチャバネゴキブリ(2・7),ダンゴムシ(1・1),ナカジマシロアリ(0・2)であった.
10日間で餌113頭が61頭のキムラグモに平均的に採餌されるとすると,クモ1頭あたりの採餌率は最大6日に餌1頭となる.
絶食のまま半年生存した個体の例もある〔菊屋AT81〕.
大分県下では日田市〜玖珠町〜安心院町を結ぶ線を北限とする.標高300m以下の地域に多い.南向き斜面,温暖な地点に多い.
斜面傾斜角では26°〜30°に集中し,31°〜40°がこれに続く.裸地では見つけ易いが,コジイやアラカシの落葉下にも生息する.
森林内部より林縁部,暗くない環境に多い.主要個体群(20頭以上生息)は157群,最高1地点41頭を確認,中小個体群(20頭以下)は466群を確認した.
人為により植生が潰滅した国東半島では絶滅〔菊屋AT76,AC48(2)〕.
戸は逆流防止弁と同じ防水機能があり,水中でも浮遊・休止・泳動を使いわけて水没死しない〔菊屋AC43(2)〕.
九州中・北部の生息状況調査で,福岡県南部の矢部川流域南岸まで及び大分県西部までで,それより北では見い出せない.
低地より中・高地に多い.生息個所の地質は種々〔木庭AT62〕.
南は西表島から北は福岡県まで生息.キシノウエトタテグモの戸ぶたと区別するには物を触れてみる.触れるとふたを内側に引き寄せるのはキシノウエであった.
戸ぶたは枯草・シダ・コケ・シバの葉などをまとっているものも多い.成長に従って円形から楕円形となる.崖地だけでなく,縁側の下,神社・仏閣の床下,ボラ層にも生息.
海抜1200mでも記録.土壌水分15・24〜67・57%.2個以上の戸ぶたを持つ個体あり.強風で海面の沫を浴びる所にも生息〔築地AT58・59〕.
宮崎県国富町で横穴型の巣の扉の横巾xと縦巾yはy=0・689x+0・61,縦穴型の巣ではy=0・827x-0・848.成長に伴い楕円化するがその傾向は縦穴型では小さい.
扉の形で雌雄の判別はできなかった.縦穴型の扉の開閉方向は光の方向に開くことを実験および野外で調査した.暗室内では方位性はみられなかった〔石野田AT23〕.
アメイロアリ(女王を含む)の集団がキムラグモ雌の巣を占拠,補食〔石野田AT20〕. 亜成体・成体の性比を調査,オス9に対しメス74〔石野田AT8〕.
オスの成熟10月,メス産卵6〜7月,中国北東のH.sinensisは同種か.飼育瓶中で容易に造巣する〔八木沼AT5〕.
住居巣を石膏型を取り調査した.屈折するもの,入口を2つ持ちY字型のもの,孔道の途中にくぼみを持つもの,底部が広くなるものがある.
上下方向に屈曲するものがある.成体の巣底は入口より下だが,幼生では上である.
入口より1〜2cmの所で少し細くなる(戸ぶたの支持の為絹糸が多い)〔萱嶋AT4〕.
夏秋に巣底に卵のうがある.直径2cm,高さ1・5cm程度(大きめ).土粒に糸をあしらいながら作る.
クモは卵のう上に占座し保護.6月28日午前9時〜6月29日午後7時,くぼみの上に絹幕を張る,幕上に土粒を運び底を作る,
土粒を絹糸で綴り,卵のうを作り,内面を糸で裏打ちする,産卵(5〜10分,50卵程),蓋をする.約1ケ月でふ化,3日後第1脱皮.ムシダニや線虫で卵が全滅することがある〔吉倉AT3〕.
「阿蘇線」を分布の北限とし,「蜂須賀線」(沖縄本島と先島諸島の間)を南限とする〔白AC13(2)〕. 鈴木正将によると2n=80〔高島AC13(1)〕.
土壌の水分の保存さえ良好ならば南東面の崖に多産する.平面地にも産する(軒下・垣根等).雨露の直接かからない所.粘土質の土壌には産しない.
巣長は12cm内外,巣径は14〜17mmだが,幼体・オスでは小さい.蓋の形で雌雄を判別できる.巣は分枝し,交叉することがある.
奥に卵のうを作る.8月にふ化し,卵のう内で2回脱皮し,翌春巣から出て親巣付近に造巣.1年に1回脱皮し,5年目頃成熟.
オスは9月上旬に最終脱皮,9月25日交尾観察,10月上旬オス消失.メスは翌春6月に産卵,卵数は60前後,その後2〜3回産卵する.
寄生蜂・寄生蝿に寄生される.もぐら・むかでに食される.初期の幼体期はしばしば住居を変更する〔沢口・王寺AC2(3)〕.
イヘヤキムラグモ Ryuthela iheyana
ONO,2002
久米島から記載されたR..sasakiiに似る.伊平屋島にのみ生息.オスは未知.戸蓋は1.4cm幅で1.1cm長〔Ono02a〕.
オキナワキムラグモ Ryuthela nishihirai (HAUPT,1979)
Heptathela nishihirai
HAUPT,1979としてオスのみで記載された.ハウプトによれば沖縄にはキムラグモも生息. 2種を区別しえる〔八木沼AT76・75〕
***キムラグモ Ryuthela sasakii ONO,1997
〔Ono97〕
エビハラフシグモ Liphistius desultor
SCHIODTE,
1986年6月にマレーシアのペナンにて,崖地に住み,扉は片開き,入口から7-8本の受信糸が出ている.体長3.3cm〔萱嶋AT89〕.
○カネコトタテグモ科 Antrodiaetidae
カネコトタテグモ Antrodiaetus roretzi
(L.KOCH,1877)
成体はメス1年中,オス12〜4月,メス12〜18mm,オス9〜13mm,本州(岩手〜岡山県)に分布〔東海84〕.
通常,横穴を掘り,入口に両開きの扉をつける.岩の表面に付着した土(約1cm)の中に縦に住居を作っていることもあり,長いものは20cm程もあるが,後端部は地表までついていない.
地表より作っているクモも数頭いるが,深さは5cm前後であった.〔新海69〕.
扉はカラー状ともいえる〔新海明AT95〕.夜間の扉作りをビデオ記録〔永井・新海K77〕.
9月には大きな巣穴に子グモの同居が見られる.交尾・産卵期は7-8月と推定.子グモは9月にふ化,親の巣穴で越冬,翌春に分散,1年では繁殖齢に達しない(大久保光将1983)〔新海明K63〕.
茨城県で9mm以上の巣穴に子グモの同居,巣穴の分布はランダム〔大久保光将AT91〕.
福島県原町市では1997年8月28日,ふ化途中.約40卵〔笹岡K73〕.
飼育により,産卵(8月12日)と親の卵のう捕食(8月27日),成体オスは3月下旬ないし4月21日から夜間徘徊する.4月30日〜5月4日にメスとの接触を試みた.
オスは第1脚で地表を叩く,メスの住居の扉を開いて侵入,約2分間巣にいて後ずさりして外へ出た.オスの触肢が脱落することがある〔牧K65〕.
愛知県では海抜1m〜1200mまで分布.年平均気温11℃以上の地域.直接,雨の当たらない乾燥した場所を好む.キシノウエと混棲しない〔須賀AT89〕.
愛知・静岡から三重県に入ると分布地・住居密度ともに減少する.静岡・愛知では約10-300個/m2,三重では約1-2個/m2,海抜0-1200m付近まで生息するが600mより上では少なくなる〔須賀AT93〕.
横浜市港北区で,キシノウエと混棲もあり〔新海明K61〕.
住居は概して20cm程度かそれ以下で障害物(根,岩石,小石等)で左右上下様々に屈曲する.入口は1〜1・6m位の高さに多い〔大江AT39〕.
成体オスの住居も成体メスと同じ構造.1942年11月19日(口径1cm,深さ10cm)と12月2日(口径1cm,深さ6cm),横浜市にて採集.
採集の脱皮殻は住居外へ捨てるのだろう.脱皮後,巣の奥へ入り,前方へ糸を張りめぐらす.やがて体色が黒くなると糸を除き潜伏する〔山本AC7(3/4)〕.
Acattyma属として記録〔植村AC7(1)〕. 長野県最勝洞に100個体以上集団で生息〔小松AC7(2)〕. 両開戸 Folding door
の住居を最初に発見・報告した〔小松,1937,理学界35〕. 両開戸を有する〔小松AC2(4)〕. 天覧山で採集,日本で3回目の記録〔植村AC1(4)〕.
都心の戸山公園で記録〔鈴木成生K66〕. 自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
エゾトタテグモ Antrodiaetus yesoensis
(UYEMURA,1942)
Acattyma属として記載.1941年6月15日,北海道野付牛町下仁にて石田周市採集の雄.8・5mm.丘状地帯の草間にて昼間徘徊中〔植村AC7(1)〕.
成体メスは夏から初秋にかけてワンダリングが認められ,8月に活動の強いピークが,9月に弱いピークが認められた.
オスのワンダリングは夜間おこなわれるが8月の調査では日没(18時30分)後,活発になる.幼体の分散は8月を中心にしているだろう.
調査は札幌にてピットフォール・トラップによる〔諏訪AT63〕. 住居はガケ地,横穴式両開き〔松本AT61〕.
阿寒湖西岸にて松本誠治が住居を確認,入口は10mm〜3mm程の大きさ〔新海K38〕.
○トタテグモ科 Ctenizidae
キシノウエトタテグモ Latouchia typica
(KISHIDA,1927)
成体はメス1年中,オス9〜10月.メス10〜15mm,オス9〜12mm,本州・四国・九州に分布〔東海84〕.
東京・横浜・京都など大都市の中心部に多く,郊外に行くに従って減少する.オスは9〜3月に成体が見られる.産卵期・卵のうは不明.
お寺・神社の境内,大学の構内,旧家の庭先などに生息し,土台石や敷石のきわに多い.石垣や崖にも見られる.地面に穴を掘って住居を作り,入口には扉をつける.
クモはこの扉のすぐ内側にいて,扉の前を昆虫,ワラジムシなどの小動物が通ると,とびだしていって捕らえ,一瞬のうちに住居の中に引きこむ〔森林87〕.
入口に片開きの扉をつける〔保育68〕. 神社や寺の境内,家の土台石の脇,植え込みの地面などに縦穴の管状住居を作るが,崖地に横穴を作ることもある.
9〜10月にかけてメスの住居に移動する途中のオスを発見することが多い〔新海69〕. 二方向に扉をもつことがある〔新海明K60〕.
樹上に営巣することがある〔新海明ほかK64〕.
京都大学付属植物園のマルバチシャノキ樹幹に営巣する.2本の樹の住居数は27個と49個だった.高さ50cm未満のところに多かったが,105cmの所にもあった〔畑守K69〕.
滋賀県では扉にコケを付着させている〔新海明K64〕. 産卵は7-8月,卵のうは底より少し高いところの壁に付着(山本隆1943),
8月中旬ふ化,2齢幼体から地中に直径2mmの管状住居を作成,成体までの期間は約2年,その間に4-5回脱皮,オスは交尾して死亡,メスは翌3年目の7月に産卵.産卵後も脱皮する(牧1987),
独立生活するもので最小個体は体長4mm(岸上1889)〔新海明K63〕.
飼育により生活史を確認,1984年7月18日に卵のうを確認,8月19日1齢幼体の一部が地上に出た(通常は巣内で脱皮する).
9月に脱皮した後,越冬し,翌1985年に夏に1-2回の脱皮をして,4齢となった.さらに1986年の5-9月に2回脱皮をして5ないし6齢で成体になった.
2齢からふた付きの住居を作る.チャタテムシやヒメグモの2齢幼体を与えた.求愛は9月下旬から10月にかけてだろう.♂は♀のふたをたたく.次の年の夏に産卵する〔牧AT94〕.
飼育下では生餌でなくとも捕食した(エビ天など).忌避するものもあった(マルカメムシなど)〔笹岡K70〕.
野外掘り取り調査によってキシノウエトタテグモの東京都下の生態の全解明を試み,ほぼ判明した.(1)雄の出巣・交尾時期は9月上旬−11月中旬で,雌の産卵は交尾翌年の7月中下旬であった.産卵する雌は20%.ふ化は7月下旬−8月中旬,雌親の巣内に留まり4月上中旬に出巣・分散する.(2)経産雌・大型雌では産卵率は50%となった.(3)母親と同居する2令幼体を数え,産子数は平均74頭だった.(4)フタの長径12mm以上の成体雌36頭を調査した.産卵率は33.3%,卵のう初見は7/16-7/19.出のう初見は9/12.出のうにかかる時間は6時間以内.ふ化幼体は8/7.掘り取った卵のうでは産卵数は79卵だった〔鈴木成K70〕.
タイプ標本産地の東京大学の医学部前植え込みで発見100年後の1989年6月17日にも生息〔新海明K59〕.
都心北部の30地区で分布を調査し,15地区62地点で確認したが,密度は2個体/地点で低かった.
神社・寺院は整備されて姿を消し,手入れの少ない公園や大学構内で生息.常緑・古木の根元の粘土質の傾斜地で日照の少ない地点〔鈴木成生K63〕.
愛知県では海抜60m以下の丘陵地の崖地や城の石垣に多い.年平均気温14℃以上の地域.ほとんど横穴式.カネコと混棲しない〔須賀AT89,AT93〕.
南限は三宅線であろう〔萱嶋AC14(1)〕. 金沢市兼六園にて確認〔畑守K69〕.
全国分布調査結果によると北限は福島県いわき市で南限は鹿児島県名瀬市.日本海側は石川県金沢市・鳥取県のみで記録.秋田県秋田市には分布せず〔畑守・新海明・上田俊穂K72〕.
埼玉県初記録(1993年)〔笹岡K66〕. 成体・亜成体・幼体等各種の段階で越冬している〔植村AT5〕.
野外でヒメアリに幼体が捕食された例,ミミズ・クロオオアリ・ヤミイロカニグモを捕食した例を観察〔鈴木成生K66〕.
稀に入口の扉を2個有するものあり〔黒沢AC3(4)〕. カネコトタテグモとの混棲もある〔新海明K61〕.
♀の徘徊もある.飼育個体で10年生存〔笹岡K63〕. ♀成体は夜間出巣し,しおり糸をたどって帰巣するのではないか〔笹岡K64〕.
夜間徘徊を確認,目的は不明〔牧K65〕. 9月15日,10月4日,10月10日に飼育中の雌と徘徊中の雄を交尾させた.
雄は触肢でフタをたたく.雌はフタを開け,乗り出し,前脚4本を上げ,後脚で体を支える.雄は雌の胸板をなでる.雌は雄を攻撃することがある〔笹岡K58〕.
川崎市にて6月にクモタケが地上部に見られた.幼体・成体に寄生し,子実体はふつう1本(2本のものが1例あった),
昭和48年6月20日に採集したクモタケは27日,分生胞子を散らす.子実体が成長して枯れるまでの期間は約2週間〔高橋登K39〕.
滋賀県では6月中旬から7月下旬にかけてクモタケ Nomuraea atypicola
が発生.小田原市でも7月上旬には子実体を伸ばしているので発見が容易である.
クモタケが感染する時期は不明だが,クモタケ発生時期の2ケ月以上前である.近江神宮での感染率は20%.栃木県や茨城県が北限〔新海明K66〕.
都内での子実体発生のピークは7月16日だった(1993年,冷夏)〔鈴木成生K66〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
ミヤコジマトタテグモ Latouchia japonica
STRAND,1910
北限が三宅線であろう〔萱嶋AC14(1)〕.沖縄島・宮古島〔谷川・佐々木K76〕.
オキナワトタテグモ Latouchia swinhoei POCOCK,1901
南西諸島に広く分布〔谷川・佐々木K76〕.
ナセトタテグモ Latouchia sp.
奄美大島山地,名瀬市に生息〔萱嶋AC14(1)〕.
キノボリトタテグモ Ummidia fragaria
(DOENITZ,1887)
成体はメス1年中,オス5〜7月,メス9〜11mm,オス6〜8mm,本州・四国・九州・南西諸島〔東海84〕.
マツ・スギ・ヒノキなどの木の表面をけずって長さ2〜3cmほどのふくろ状の住居を作り,入口に扉をつける〔学研76〕.
入口の多くは下向きであるが,稀に上向きのものもあり,扉の蝶つがいの位置が反対のものもある〔保育68〕.
苔のはえた石垣,岩上などにも作る.扉の表面は樹皮や苔で擬装する.「多くの個体は8〜9月に産卵する.
卵のうは白色の薄い袋で巣底にころがされている.1巣内の卵のうは1個,1卵のう中の卵数は30〜130個〔中平1961〕.
冬期(4月初旬まで)親と共に黄白色の幼生がみられる.〔新海69〕.
7〜8月に巣の奥に1個卵のうを作り,8月〜4月にかけて幼生が親と共に見られる.地上3.8mの樹皮にも巣が見られる〔山川・熊田73〕.
卵のうはほぼ四辺形で平たく,橙色,長径約12mm,短径約10mm,厚さ約5mm.何本かの糸で住居内に吊り下げる.
ふ化直後は前幼虫で,2日後に第1回脱皮をし,幼虫になる.その後約4週間で第2回脱皮をし若虫になる(吉倉1987)〔新海明K63〕.
愛知県では海抜5〜600m,年平均気温12℃以上の地域の樹上・岩上・崖地に住居あり〔須賀AT89〕.
愛知・静岡・三重県で海抜0-720m付近に生息〔須賀AT93〕.
飼育した個体の住居製作状況(12月と6月の記録).住居を作り易いくぼみを探し,適当なくぼみに馬蹄形に糸を引き重ねる.樹皮片やコケを馬蹄形の糸束の上にのせ,押さえつける.
裏打ちする.これを繰り返して側壁の土台ができる.その上に壁材を重ね裏打ちする.
側壁が適度の高さになると両側壁を内側に引張り,「繋ぎ糸」で結ぶ.そこから側壁を次第に繋ぎ,トンネル状になる.
トンネルの片方を閉じ,扉をつける〔宮田AT75〕.
森林・社寺等にあるスギ・ヒノキ・マツ・サクラ・センダン・エノキ・イヌマキ・クス等,皮に割れ目のある老木の樹幹,
或いは,苔のはえた岩上に,片開きの扉のある直径1cm,長さ3cm位の管状の住居を営む. 住居は,樹皮や苔,時には土砂等,営倉場所にある物を綴って作る.
樹皮や苔をかきとり,堀りくぼめて,営倉材料を得ると共に,住居の固定場所とするので,住居の下半分は樹皮や苔の中に埋もれた形になったものが多い.
従って住居の擬装効果が高く,慣れぬうちは発見が困難.クモを驚かすと,扉を内へ強く引っ張るので,巣口の内壁が白く現れ目立つ故,樹幹や岩を打って回るのも採集法のひとつである.
クモは住居の口縁に第1脚をかけ,扉を少しもちあげその隙間からのぞき見するような姿勢で待機している.
個体により発生時期にずれがあり,成体・亜成体・幼体・親と共にいる初生蛛等,いろいろな段階で越冬するが,多くの個体は8〜9月に産卵する.
卵のうは白色の薄い袋で,巣底(蛛体後方)に転がされている.1巣内の卵のうは1個.1卵のう中に30〜130卵〔中平AT23/24〕.
うまれた子グモも一定の時期まで親グモと同居する〔中平AT14〕. 扉の代わりに住居の縁を折りまげて扉にすることが出来る〔大志茂AT5〕.
発生について〔吉倉AC24(1)〕. 成体メスの観察.住居内では戸蓋の蝶番の方向へ背面を向けている.刺激を受けると蝶番方向へ腹面を向け戸蓋を引く.
夕暮か夜間,住居をでて徘徊し,殺して間もないハエなども取り,住居内で食べる.
ネコハエトリが戸蓋上を通過した直後,戸蓋をあけてクモは捕獲,引張りこんだ.この捕獲は夜間に限らない.食べかすは住居外へ夜間捨てる.
脱糞は射出して行う〔小村AC8(4)〕. 福井県にも分布,裏日本で初記録である.営巣は鮮苔類を着けるやや湿気のある老木に多い〔藤田AC5(4)〕.
本州・九州に分布.九州では寄生蜂が多いという〔植村AC2(3)〕. 成長に伴い住居を拡大していく.ふたが4重のものもあった〔中平K44〕.
自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
○ジグモ科 Atypidae
ジグモ Atypus karschi
DOENITZ,1887
成体はメス1年中,オス6〜8月,メス17〜20mm,オス10〜17mm,全土.生垣,塀,家の土台,樹木の根元などに,地中(10〜20cm)から地上(5〜10cm)にかけて長い管状住居をつくる.地上部は土,砂,ゴミなどで擬装する.地上部に昆虫,多足類,ワラジムシなどが触れると,クモは住居ごしに獲物にかみつき,中に引き込む.地上部は網の役目をする〔東海84〕.
成体になるまで4年以上かかるので,一年中さまざまな大きさの個体がみられる.オスは成体になると6〜7月頃住居を出て,メスの住居を訪れ,交尾する.産卵期は7〜9月で住居の下部に白色の卵のうを作る.1卵のう中の卵数は300〜500個〔森林87〕.
破れた個所は直ちに修理する.脱皮殻は外に捨てるし,脱糞も外で行う.箱に土をいれ,棒で穴をあけ,中へクモをいれておくと飼育観察が出来る.注意して飼えば,2〜3年位続く〔保育68〕.
脱皮や交尾もすべて住居の中で行う.6〜7月頃に雌雄同居し,8〜9月に産卵する.ふ化した子グモはしばらく親と一緒にくらす.寿命は5年位という.
8月2日に同居を止めたオスは4日に死亡〔細野43〕.地方によっては,ハラキリグモ,フクログモ,ツチグモなどとよばれる〔学研76〕.
産卵期は8月下旬から9月,卵のうは白色・卵形・長径1.2cm・短径0.7cm,住居の底から4-5cm上方に吊り下げ,下端を糸で固定し壁に密着,卵数150-200個.卵期12日,幼虫期10日,第1回脱皮で前若虫(3週間),第2回脱皮で第1若虫,これが越冬し翌春3月下旬に出巣・分散.雌雄の同居は6月下旬から8月中旬(吉倉1987).
和歌山市ではオスは7-8月に巣内で交尾,8-9月に産卵,9-10月ふ化,脱皮して2齢となり翌春4月に分散,年内に4齢になり,翌年5齢で交尾.餌不足では発育が遅れる.成熟後も脱皮し,野外での最高齢は7齢くらい(青木敏郎1983)〔新海明K63〕.
分散直前の幼体を飼育.雄は8-9回脱皮し、生後3年目に成熟.雌では9-11回脱皮し、3年目の春・秋と4年目の春に成熟.直径は令とともに増える.雌は成熟後も毎春一度脱皮した〔宮下AC41(2)〕.
1974年4月7日,滋賀県の正栄教寺(標高190m)の境内のイヌツゲの枝の先端部分(高さ1m程)で団居をしていた50〜70頭の子グモが「凧式」に分散していった.
枝に糸をつけたままぶら下がり,風と共に水平方向に流されていった〔桂AT64〕.
栃木県益子町西明寺にて1995年4月4日午後1時45分ごろ「凧式」に分散〔新海明K72〕.
2月16日に幼体をシャーレの中央に落とし,コロニー形成過程を調べた.その結果,自由徘徊,集中段階,コロニー間移動段階,安定段階(12時間以内)と進むことがわかった.
また形成初期の増加率が大きいコロニーは成長する〔古内AT32〕.
1令幼生はガラス容器内では上へ上へと移動する.歩行したところにはしおり糸が引かれ,付着盤が出来,クモの道ができる〔古内AT29〕.
ジグモの1令幼虫越冬コロニーは「自由行動」「集中行動」「コロニ間移動」「安定」の4段階を進んで完成する〔古内AC19(1)〕.
別々に飼育したコクサグモ幼虫20頭とジグモ20頭をシャーレ中央に落とした.両者のコロニーは混合しないが,ジグモのコロニー形成は遅れる〔古内AC20(1)〕.
直射日光のあたらない,雨水のむやみにかからない樹木の根元や石垣や塀の下方等に,地中から地上に延びる長い袋状の住居を営む.地中部は休息や産卵の場であり,地上部は狩猟のための装置である.地上部には土砂が密に綴り込まれており,側面の所々から短い糸が出て,樹幹等にとりつけられ動揺を防いでいる.
上端は細く絞って地物にとり付けられている.クモは地中部と地上部の境,つまり地表近くに垂直上位に占座して,獲物が地上部を渡り歩くのを待っている.獲物には巣壁越しに牙をうちこみ,巣壁ごともぎとり,地中部にひきずりこんで食べる.食べかすは上端から巣外に投げ捨てる.巣壁の破れた所は修繕する.
脱糞も上端から行う.すなわち,上端の絞った部分を腹部で圧し開き,腹端を外に突出し,勢いよく放出する.雄は雌よりもスマートで6月頃成熟,雌の住居に入って交接する.産卵は9月頃行われ,卵のうは太い紡錘形で,地中部の壁に縦に上下2ケ所をとり付ける.年1回の発生で,子グモは親の巣内で越冬し,4月頃分散する〔中平AT23/24〕.
熊本でも6月同居,9月産卵〔木庭AT15〕.
網の上部に食べ残しがある.調査すると,場所によってかかる餌数が違う.5日に1頭の割合では1ケ月で死亡.だいたい1日に1頭以上.食物の少ない場所での主な餌は蚊や蝿,蛾.多い場所ではマメコガネ,蛾,蟻,蚊等〔菊池AT9〕.
雄が少ない〔石野田AT9〕. 越冬時に体表面に水滴がついていない〔石野田AT6〕.
1月7日東京の小石川植物園での採集品から成体雌とふ化したばかりの幼生が入っていた〔植村AT5〕.
体長に伴い,巣の直径が大きくなる.石燈篭土台の巣はPoisson分布している.D.C.値は,密度が増加するにつれ減少し,一様分布に近付くが,0・3付近で上昇し,機会分布に戻る.春から初夏にかけて幼生が独立に営倉する結果,一様分布に近くなる.秋から冬にかけては,幼生の移動・古い個体の死滅により,機会的傾向となる.高密度になっても巣間は20cmより近付かない〔古内AC17(2)〕.
33個体中,糸いぼの奇形を成体4個体に発見〔石野田AC14(1)〕.
巣を破損すると修理は夜間行う.住居に触れた虫を捕る.昼夜をとわない.脱皮は住居内で行い,殻は外へ出す〔八木沼AC5(4)〕.
脱糞は外に出て,管状住居の上部付着点付近にする,色は褐色か黒褐色である〔細野AC5(2)〕. 日本アルプスでは1500m以下に分布〔千国AC5(4)〕.
硝子器内では横向きの巣を作ることもある.土を掘らないので砂粒がつかない.乾地では地上部は短い.地下で分岐する巣もある〔中村AC3(4)〕.ウグイスがよく食べるという;卵のうは白色の長丸い袋で地下部の壁に上下2ケ所でつるされている.夏の終わりに出のうした子グモたちは冬中母グモと同居している.翌年の4月頃,母から離れて外へ出る.適当な地面の穴を見つけ,直径1mm,長さ5mm程の袋を立てる.次第に成長につれ下へ堀りさげていく.
ある程度大きくなったクモを袋から出すと掘ろうとしない.穴を掘ってやって追い込むと巣を作る.成体後も脱皮する.1981年12月15日に卵のう内に子グモのいる雌個体が,飼育下でその後5月13日と8月2日に脱皮した.1983年4月6日現在直径16mm,地下部80mm,地上部140mm〔中平83〕.
都市環境指標種〔新海98〕.
ジグモの一種 Atypus sp.
5-7月に♂が出現,林床から採れる〔八木沼・西川AT76〕.
石川県の林床のピットフォールトラップで♂が多く採れた〔徳本AT97〕.
ワスレナグモ Calommata signatum
KARSCH,1879
成体はメス1年中,オス9〜10月,メス15〜18mm,オス6〜8mm,本州・四国・九州.〔東海84〕.
わりに明るく乾燥した床下,芝生などの地中に縦穴を掘り,管状の住居を作る.〔学研76〕.
入口には戸蓋をもたず,穴があいているのみである.しかし,個体によっては放射状に受信糸(触糸)を出したり,入口を糸でふさぐものもある.
「十分に餌を与えたクモだけが,入口に糸をはるのである.餌の配給の少なかったクモや割当のなかったクモは糸をはらないわけである.
このことから逆に巣の入口に糸をはったかどうかを見れば,クモが満腹しているかどうかを知ることができる(関口1957)」.
住居巣の裏うちには,他のクモには見られない非常に収縮力の強い糸を多量に用い,あたかも穴の中に糸の束が入っている感がある.
クモはその糸の間に潜んでいる.夜間は住居から前脚を出して,獲物を待つ.オスは非常に小型で9月頃メスの住居に移動する〔新海69〕.
1957年6月16日に埼玉県上尾で約100坪の畑から11匹採集,8匹が♀成体で7匹は卵塊を持つ.約10年前の6月3日にゴッサマーを観察(関口1957)〔新海明K63〕.
ジグモはくぼみがないと穴を掘らないが,ワスレナグモでは平坦な所に置いても穴を掘る〔保育68〕.
広島県安芸津町で1979年8月7・17日,翌年8月15日に午前9時頃団居を発見,次第に分散し,午後2時頃にはみられなくなった.
前日に多量の降雨があった翌日,晴れまたは曇の日に当たる〔浜村AT79〕.
川崎市で8月13日・8月23日・9月6日,分散中で壁面を昇る子グモを観察〔成田K77〕.南限は三宅線であろう〔萱嶋AC14(1)〕.
大分県臼杵市臼杵城跡で確認〔新海明・金野K72〕. 1942年8月仙台にてメス成体1頭,幼体2頭採集〔斉藤AC8(4)〕.
ヒメワスレナグモCalommata pumila KISHIDA,1914はワスレナグモのオスではないか〔白AC3(3)〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
○イノシシグモ科 Dysderidae
イノシシグモ Dysdera crocota
KOCH,1839
熊本に多数生息.産卵は6月,椀状に土塊をつけた卵のうを糸で石の下端,または土からつるしている.
96〜103個の卵が粘着液で固くくっつけられて同心円状に産みつけられている〔木庭AT15〕
○ガケジグモ科 Amaurobiidae
(造網性クモ類の系統を三大別し,ひとつをガケジグモ系統とする.A系列は?→カヤシマグモ→ガケジグモ→ハグモ.カヤシマグモからイワガネグモに分かれる系列もある.B系列は?→ウズグモ・オオギグモ・マネキグモ・メダマグモ.C系列は?→ボロアミグモ,チリグモ,スオウグモ〔新海AT66〕.
セスジガケジグモ Amaurobius flavidorsalis
YAGINUMA,1964
成体は7〜9月,雌雄6〜8mm,北海道・本州・四国・九州.
木の表面,石垣,崖地でどのすき間に管状住居を作り,入口の上に大きな棚状不規則網(ボロ網)をはりめぐらす.
エゾガケジグモは石垣や岩場にいることが多い〔学研76〕. 夜間,網の更新をする〔新海85〕. 山間部に多く,局地的分布の傾向を示す〔新海AC27S〕.
石垣や杉の樹皮,特に神社のしめ縄やツタ・カズラ類のまといついているところに潜み,ボロ網をはる.アリなどを網にかけると,すぐに捕えにでてくる.
必ず1本の足にかみつき,かなり強引に住居内に引っ張っていく.北方系のクモである.〔山川・熊田79〕.
秩父では,産卵は7〜8月でふ化した子グモはしばらくの間,親のとらえた獲物を食べて成長する〔新海・原AT65〕.
栃木県では平地に生息するが,埼玉・山梨県では山地に生息する〔新海K29/32〕.
飼育下で6頭の2令幼体が1頭の半し目昆虫を協同捕獲,4令まで協同したが,餌不足でその後死亡〔鈴木勝K47〕.
ヤノガケジグモ Amaurobius yanoianus
NAKATSUJDI,1943
パラオ諸島テニアン島の1♀で記載〔小野AC43(1)〕.
コゲチャガケジグモ Badumna longinqua
=Ixeuticus
martius
名古屋港周辺の輸入品倉庫でフェンス・ガードレール・積み荷の間・植栽の間などにボロ網・住居を作る.若令幼体はマサキ葉上にネコハグモのような網を作る.管状住居中では亜成体雌を雄が同居しガードする.雄には大小二型がある〔須賀AC45(2)〕.
キハダガケジグモ Callobius claustrarius
(HAHN,1931)
利尻島・沓形の海岸の石の間に棚状不規則網(ボロ網)を作り,ひそむ.草葉で網をふるわせると出てくる〔熊田K44〕.
クロガケジグモ Ixeuticus robstus
(L.KOCH,1872)
原産地はオストラリア・タスマニア・ニュージーランドである.人為分布により日本(大阪・和歌山)でも発見された.
家の軒,生垣にボロ網を張る.網の中央に巣穴の入口が2〜3個開く.太い糸の間に細い糸と非常に細いらせん状の糸が1対ずつ組になって粘液で覆われたものがジグザグに張られている.
昼間は住居の奥にいて,夜は巣穴の入口まで出てくる.網に餌がかかると巣から飛び出して糸をかけずに直接食いつき,巣に持っていって食べる.
亜成体または成体ではショウジョウバエなど小さい獲物は2〜3匹まとめてから肉団子状にして食べ,ハエ,ゴキブリなどは体をバラして食べる.
ニワトリの肉も食べる.卵のうは巣の中に作る.幼体が親と同居している時期は6〜10月で冬にも産卵しているという.
ふ化日数は30日(4月3日産卵),15日(8月16日)の記録がある.飼育下ではメスが8回の脱皮で1.5mmから7mmになった.
全体で10回程脱皮し,脱皮殻は巣の外に捨てる〔後藤AT71,72〕.
白色円状の卵のうを作る.メス成体が3年間に8個の卵のうを作り,内6個が出のうした(途中交接せず).子グモの数は50頭程〔田中K44〕.
1988年に但馬(北兵庫)に進出〔本庄・山本一幸AT98/99〕. 豊橋市で採集〔谷川K66〕熊野市・金沢市で採集〔池田1994〕.
都市環境指標種〔新海98〕.
ヤマトガケジグモ Titanoeca albofasciata STRAND,1907
=1985年まではTitanoeca nipponica
YAGINUMA,1959.成体は5〜9月,産卵期は6〜9月,卵のうは黄白色の球形,雌雄5.5mm〜6.5mm,本州・四国・九州〔東海84〕.
鉄道線路にしいてある石のすき間や石垣にボロ網をはる.捕らえようとするとクモは下の方に逃げこむ.腹部の白斑には変異が多い〔学研76〕.
相模川岸では腹背の白斑は三対斑・二対斑・無対斑があった〔池田K62〕.
無対斑・三対斑(斑の大小あり)・四対斑・六対斑あり〔八木沼86〕.網にかかって死んでいた虫はハエ・ハチ・ヤスデ・アリ・カメムシ・クモ〔中平92〕.
○ハグモ科 Dictynydae
ネコハグモ Dictyna felis BOES. et
STR.,1906
成体は6〜10月,メス4〜5mm,オス3〜4mm,本州・四国・九州.木の葉の表面,板塀,河原の石の下などに,ちぢれた糸をはりめぐらした網をはる〔学研76〕.
ボロ網を張る.葉上の網には天幕を作るものが多い〔東海84〕. 冬期体を糸で包み,葉の間で過すが,暖かい日には出てきて活動する〔保育68〕.
交接は9月下旬(大阪府1976年).オスはメスの巣の背後から近づき,メスは追われるように巣の外へ出る.すぐにメスは巣内へ戻る.
数回繰り返した後,オスはメスの前方からそろそろ近づき,メスの下へ潜り込む.触肢で外雌器を探る.触肢の背面を押し付ける.
オスは下からメスの体を持ち上げるので雌雄の体軸は直角になる.30〜50分後,触肢を替える.その後,オスはメスの横で精網を作ったようだ.
交互に左右の触肢で数回精液をとりあげる.残った精液の雫をオスは飲んだようだ.
オスは直ちに今度は仰向けになったメスの腹の上で逆立ちするように交接した.それが終わると再び精液の充填をした.観察はここまで.
交接後,オスは冬までに死ぬ.メスは越冬して翌年の5〜6月に産卵するもののようだ.卵のうは直径4〜5mmの白色円盤状で1頭のメスは普通数個の卵のうをかためて作る〔加村AT77〕.
親が放置した餌に子グモが群がる〔新海明K65〕.
12月上旬の雌成体は長日条件では20日後から産卵が始まったが短日条件では60日たっても産卵が起こらなかった.春に出た幼体は自然条件では4-5回脱皮し、70-90日で成熟したが、23℃短日では早まり、23℃長日では80-90以上たっても成体にならずに死亡した〔宮下AC42(1)〕.
豊田市桑園にてアメリカシロヒトリ幼虫各ステージを補食〔萱嶋AC21(1)〕. 日本アルプスでは1500m以下に分布〔千国AC5(4)〕.
都市環境指標種〔新海98〕.
ヒナハグモ Dictyna foliicola BOES. et
STR.,1906
葉上や建物の隅に不規則網をはり,4〜11月頃に卵のうを5〜7個作る.9〜11月にかけてメスの網にオスが訪れているのをよく見かける〔山川・熊田73〕.
家の内外の壁面で角になった所に多く住んでいる.耐寒性の強いクモで,厳寒の候でも盛んに狩猟しているのをみることがある.
冬期,網にかかる昆虫は蝿・ユスリカ等である〔植村AT5〕.
兵庫にて飼育管ビン内で,9月20日21時,交接していた.オスは頭部と1・2脚でメスを持ち上げ,両者の角度は90度となる.メスのかくれ場所の近くである.10時35分,離れる.
11時25分精網から精液を取る.残った精液は飲み込む.オスはメスに向かい合い,歩き回り,メスの背後から1脚を腹部に接触させる行動を繰り返す.
9月25日20時交接,9月30日午後19時交接.少なくとも3回は交接する.性比はメスが1・62または8と多い.人家の壁面では網から網への移動が頻繁に行われている〔本庄AT85〕.
本来の葉上生活をせずに人家の窓や車道のガードレールに造網生活するものがある.窓枠の個体群ではやや集中性をもったランダム分布であり,窓枠の各辺については集中度にばらつきがあった.
ガードレールの個体群ではメスは一様分布だったが,メスはかなりの集中分布を示した.頭を接着しあっているような複数の個体もある.
網には捕虫のためのすき糸による上部構造とは別に,きめ細かな糸による住居空間を下部にもつ二重構造のものがある.
捕食行動は夜間,蛍光灯下において行われている(獲物はディプテラ)〔本庄AC27S〕.
倉敷市にて桃の葉に日覆様の巣を作り,その下に1〜3個の卵のう(直径2・5〜3・0mm,白色偏円形)を密着させる.メスは卵のうの上にうずくまる.
卵は淡黄色で0・5mm径.1卵のう中に15,15,26卵〔白AC7(3/4)〕.
ハグモ Dictyna maculosa KARSCH ?
人家の外壁や塀,或いは広葉樹の葉上に営巣する.営巣場所によって網の形が異なる.
葉上の網は葉の縁から縁へ張った天幕状だが,壁の垂直面に作ったものは左右に出入り口のある,細かな網目の住居部から下方(或いは四方)へ,大小様々な糸が,ほぼ方形の網目を作りながら10cm程延びている.
この糸は第4脚の櫛毛ですき出されたものである.すなわち,左(右)しょ節を腹端に平行に置き,それを右(左)ふ節で支えもって,下から上へすくい上げるようにしてすき出す.
すかれた糸は,多数の細かな糸の束となり,壁面に接着される時,チリチリと少し縮む.
従って粘り気はないが,昆虫等の脚先にはよくからみつく糸になる.寒くなると住居部の中,或いは葉上の天幕網の下に,厚い幕を作りその下に潜む.
越冬したものは5月頃産卵する.これよりふ化したものは9〜10月に産卵する.卵のうは直径3mm位の白色円盤状,住居部のある壁面や葉上に置く.
1巣内に4〜5個を数える.なお葉上にはられた厚い天幕は防寒用と同時に産室を兼ねている〔中平AT23/24〕.
ハグモの一種 Dictyna
sp.
赤いハグモと称する.子グモの集団餌捕獲を観察〔新海明K65〕.飼育下で交尾・産卵・出のう・子育て行動などを観察できた.1994年5月19日午前6:30−6:55に交尾.雄は雌を中心とした円周歩行をする.5月21日も別の雌に対する雄の求愛・交尾(体勢はO-VDからS-VV型)を観察した.雌は交尾後3日で産卵(直径3.5mm厚さ1mmの円形錠剤形:6/4に25頭出のう.2個目を6月4日に産卵:6/20に7頭出のう).別の雌は交尾後10時間に産卵(6/6に19頭出のう)・及び13日後に産卵(出のう無し).出のう直後から親の捕獲したハエを集団捕食する.早いものでは出のう後5日で単独捕食の傾向,第1回脱皮が出のう後7-9日であった.出のうから11-12日後に単独捕食の子グモを観察.2ケ月後も集団捕食の場合があったが,共食いは無かった〔鈴木成K70〕.
埼玉県名栗川から広島県まで記録.埼玉県飯能市西吾野で3年間にわたって4月25日−5月16日の間に配偶行動を調査.雄を網内に入れる・雄は1脚で網を叩きながら徘徊・雌と接触・雌は一度逃げるが雄は雌にいた所に網を作る・雌が戻ってきて交尾〔平松K70,新海明・平松K72〕.
天幕網の造網行動(基礎糸を張り,次に粘糸を張る),バイトによる餌捕獲行動,配偶行動〔新海明・平松AC46(2)〕.
ハグモの一種 Dictyna
sp.
緑のハグモと称する.沖縄県に普通.アリをかけたら母親が捕獲.しばらくして子グモが取り付いていた.子育てグモだろう〔谷川K71〕.
カレハグモ Lathys humilis (BLACKWALL,1855)
(Syn.=Lathys annulata BOES. et
STR.,1906)
成体は1年中,1.5mm〜2.5mm,本州・四国・九州.石垣,岩場,樹皮面などに小さなボロ網をはり,その奥に潜む.都市部から山地まで広く分布している〔東海84〕.
樹上に生活するものが多いが,板塀などに住居を作っているものもある.〔保育68〕. 杉の葉先等に不規則網をはる.落葉の中で越冬している.〔山川・熊田79〕.
金華山では杉の木に多い〔大江AT40〕.
崖や岩にある小さな窪みを住居とし,その前面をおおうように幕状の網を張る.5月頃,球形の卵のうを住居の奥に置く.卵数は10個内外,卵粒は球形,淡赤褐色〔中平AT23/24〕.
キイロカレハグモ Lathys puta (O.P.CAMBRIDGE,1863)
樹皮や石垣,壁などに小さなボロ網をはる.〔山川・熊田79〕.
ナシジカレハグモ Lathys punctosparsa OI,1957
洞窟や暗所に住む微小なカレハグモ.6眼のハグモである〔保育68〕.
リターや土壌間隙から発見されるが,好洞窟性でもある〔八木沼AC27SP〕. 1959年10月10日,大阪市にて大井採集〔大井AC17(2)〕.
広島県仏通寺にて1955年10月24日採集の成体オス2・3mmでScotolathys として記載,石下にすみ,巣は不明〔大井AC14(2)〕.
ムツメカレハグモ Lathys sexoculata SEO et
SHON,1984
厚木市不動尻で,8月にメス2.2mmが採集された〔小野AT98/99〕.
6眼のハグモである.オス2.00mm(5-6月),メス(年中),神奈川県以西の本州及び韓国南部に分布〔小野・緒方AC42(2)〕.
埼玉県飯能市西吾野にて4月に木村知之が採集〔平松K73〕.
○カヤシマグモ科 Filistatidae
トビイロカヤシマグモ Filistata fuscata NAKATSUDI,1943
パラオ諸島コロール島の幼♀で記載〔小野AC43(1)〕.
カヤシマグモ Filistata marginata
S.KOMATSU,1936
成体は1年中,4〜5mm,沖縄.家の周囲,板塀のつぎ目,壁の隅,窓枠などに太い縮れた糸でできたボロ網を張り,その奥に潜む〔東海84〕.
メス7〜8mm,オス6.5〜7mm.3月台湾で採集したメス成体は4月に産卵した.卵のうは球形で白い糸で包まれ,卵数は30個が多い.
夜間,補虫(蛾,蝿,蚊)する.住居巣の入口付近の粘着性の糸に虫はくっつく.蟻は補食しない〔萱嶋AT79〕.
アマミカヤシマグモ Filistata sp.
奄美大島に生息.台湾産のFilistata marginata
KISHIDAとは別種である.渡瀬線以南のクモ〔萱嶋AC14(1)〕.
○ウズグモ科 Uloboridae
(横糸には粘球がなく,2本の糸全体に粘液をつけられたHackled
bandからなる.卵のうは多角形で網の付近に吊す〔保育68〕.網と捕食行動の総論〔吉田真AT98/99〕
オウギグモ Hyptiotes affinis BOES. et
STR.,1906
成体は9〜11月,メス5mm,オス4mm,本州・四国・九州.森や林の中のうす暗い場所に,3角形の扇網をはる.網はいつも,4本の縦糸と10数本の横糸から出来ている.クモは扇のかなめの部分で網全体を引っ張っていて,獲物がかかるとそれを放すので,網がゆるんで糸が獲物にからみつく〔学研76〕.
網の張り方は円網と同じ手順を経るので円網の変形とみるべきである〔保育68〕.
6月中旬の幼体はマネキグモのような条網,6月下旬の幼体は扇形の基線のみ〔大利AT29〕.
午前2時頃から3時間,オウギグモの造網,放射糸は4本,頂点近くに足場糸4本,その後,粘糸は上方の放射糸から張られる.粘着後,糸をすきだしながら放射糸を中心へ逆のぼって足場糸を伝い,下の放射糸を下りていって粘着.少しずりあがって次の粘糸の基点を粘着して再び逆のぼる(繰り返し)〔中平AT7,AT23/24〕.
小豆島の幼体で10本の放射状の糸を引き,クモは中央に横向きに占座〔木村AT1〕.
受信糸のクモ後方を4脚で手繰る.手繰り寄せた糸は3脚で受け取り両脚の間に束ねて持つ.虫が網にとびこんでくるとクモは第3脚間に持っていた糸を小刻みに繰り出す.虫はからまる〔中平83〕.
追うと網をたたみながら逃げる.2本の縦糸の作る角度は50度前後,縦糸は常に4本,横糸は8〜9本のものから20数本まで;1938年8月25日,島根県大社付近でほとんどオスが採れた.同8月28日島根県美保関でもオスが多い〔八木沼AC3(4)〕.
薄暗く地表が湿っているか,枯木枯草が多いところに棲息.スギの根元やその周辺,枝先.腰より低い位置〔貞元K62〕.
網上でデーニッツハエトリに捕食されていた〔平松K62〕.
9月14日午前11時近く,京都市北区の川原で求愛行動を観察.オスは交尾糸を張り,はじく〔平松K76〕.自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
マネキグモ Miagrammopes orientalis BOES. et
STR.,1906
成体は6〜8月,雌雄12〜15mm,本州・四国・九州・南西諸島.樹間や葉の間に,3〜4本に分かれた条網をはる.糸には強い粘着力があって,小さな虫がかかる.〔学研76〕.
メス8〜15mm,オス4〜7mm,成体は5〜8月,産卵期は5月下旬から7月.棒状で長さ10〜30mmの茶褐色の卵のうを1〜3個,条網に沿ってとりつけ,親はその前にとまって保護している.移動時は吊り下げて歩く.1卵のう中の卵数は40〜100個,少ないもので15個の記録がある.網の長さは成体では30〜40cmのものが多く,長い網では3m以上にもなる.網は上端と下端の数cmを除いた残りの部分が明らかに白くて太い糸でできている.特別な紡績腺から出る非常に細い糸の集まりで,絹糸帯と呼ばれ,粘着糸の役目をしている.クモはまず数本の糸を引いてから,あらためて各々の糸に1本ずつ絹糸帯をつけて仕上げてゆく〔森林87〕.
不粘性の糸上を下方から上方へゆっくり(6-7秒/5-6mm),第W脚で粘糸を「すき出し」ながら昇っていく.5-6mmすき出すと腹部末端で不粘糸に付着させる〔新海明AT97〕.針葉樹が多い〔東海84〕.
6〜7月にヒモ状の卵のうを作る.触肢で餌を頭部に乗せて持ち運ぶ習性がある〔山川・熊田73〕.
糸の下部に虫がかかると,クモは新しい糸(粘気がない)を出して,おりてくる.粘糸はゆるんで虫にまとわりつく.糸を切り,第1脚で糸の両端を持ち,第2・3脚で虫を支え,第4脚で糸をまきつける.新しい糸を引きながら,虫を頭にのせてのぼってゆく.最上部で再び糸を切り,両端を持ち,糸をまきつける〔橋本AT30〕.
クモは糸の端に,或いは二叉した個所にY字形に占座し,第4脚で糸を少したぐりたばねて保持している(オウギグモほど顕著ではない).獲物が糸に触れると,たばねていた糸をパッとはなし糸を波うたせて獲物にからみつける.6月頃,褐緑色,棒状(長さ12mm内外の細長い物)の卵のうを作る.卵のうは網糸に吊すか,第1脚で保持するか,糸いぼに吊すの3通りの方法で保護しているが,何れの場合も卵のうは縦に吊されている〔中平AT23/24,中平83〕.
ユスリカが枠糸にある粘糸につくと,クモは獲物の方へ枠糸を振動させつつ,確かめるようにして段階的に近付いていき,到達すると左右の第4脚を交互に使って糸をくりだして丸める.獲物を枠糸から切りはなし,下部の枠糸と糸いぼの糸を結合させて登っていく〔石野田AT7〕.
日本アルプスでは1500m以下に分布〔千国AC5(4)〕. 出のう幼体の分散を観察(1994年7月23日)〔池田K71〕.
ミドリマネキグモ Miagrammopes oblongus
YOSHIDA,1982
雌9-11mm,雄6mm,体色は緑色.台湾と西表島に分布〔吉田哉AT90〕.
ミナミウズグモ Uloborus geniculatus (OLIVER.1789) 種子島で1回記録.奄美の屋内で採集.淡い円網で円形のかくれ帯.水平に近い〔大河内AT49/50〕.
アマミウズグモ Octonoba grandiconcava YOSHIDA,1981
奄美大島,加計呂麻島に生息〔吉田哉AT98/99〕.
クメジマウズグモ Octonoba grandiprojecta YOSHIDA,1981
久米島に生息〔吉田哉AT98/99〕.
ミヤコウズグモOctonoba tanakai YOSHIDA,1981
宮古島に生息〔吉田哉AT98/99〕.
オキナワウズグモ Octonoba okinawaensis YOSHIDA,1981
沖縄本島,渡加敷島に生息〔吉田哉AT98/99〕.
イヘヤウズグモ Octonoba rimosa YOSHIDA,1983
伊平屋島,伊是名島に生息〔吉田哉AT98/99〕.
トウキョウウズグモ Octonoba sinensis (SIMON,1880)
=Uloborus tokyoensis
(KISHIDA,1927)
成体は6〜8月,メス5mm,オス4mm,本州・九州.家屋周辺の暗所,軒下,縁の下,納屋などに水平円網をはり,直線状のかくれ帯をつける〔東海84〕.
メス4〜6mm,オス4〜5mm,出現期は6〜8月.都会や市街地の建物の周囲に多く,山地にはみられない.頭胸部の中央から後辺にかけて,幅の広い白色の縦斑がある.この斑紋は前方に抜けることはない〔森林87〕.
X字状のかくれ帯もある〔新海69〕. 日本アルプスでは2000m以下に分布〔千国AC5(4)〕. Uloborus
からOctonobaに転属.本州・四国・九州・中国・韓国のほか,合衆国にも分布する.屋内性であり,人為的に分布を広げた〔吉田哉AT98/99〕都市環境指標種〔新海98〕.
カタハリウズグモ Octonoba sybotides (BOES. et STR.,1906)
成体は6〜8月,メス5.5〜6.5mm,オス4〜5mm,全土.崖地,石垣や山地のうす暗いところに,直径10cm位の水平円網をはり,
うずまき状,または直線状のかくれ帯をつける.ウズグモに比べて,色がややうすい〔東海84〕.
メス4〜6mm,オス4〜5mm,出現期は5〜7月.頭胸部の中央に前面から後辺にかけ1本の白い縦条があるのでウズグモと区別できる〔森林87〕.
7〜8月に1個卵のうを作る〔山川・熊田73〕.後脚2本で卵のうを抱くように守っている.灰褐色の卵のうは糸の一部で縦につられている〔大利AT29〕.
幼体とオス成体はシート状円網(横糸がなく,縦糸間にこまかい糸を張りつめたもの)を張る.
し板上の小吐糸管が幼体(出のう直後)では少なく,オス成体では欠失してしまう〔新海明AT85〕.
北海道から九州,韓国.UloborusからOctonobaに転属〔吉田哉AT98/99〕.渦巻型のかくれ帯は直線型よりも飢えたクモでよく見られ,野外では渦巻型は網メッシュが細かく,捕獲面積が大きく,小形餌が採れた〔渡部AC42(2)〕.京都大学植物園にて生活史は越冬世代が9月から翌年7月初旬まで,夏世代(7月成体は小形)が6月から9月まで,繁殖時期は5月から9月まで.孵化までの日数は気温に相関した.孵化の閾値は16.1℃または17.6℃だった。卵のうをガードする母グモの体重をWmgとすると,クラッチ・サイズ(N)はN=6.16W+13.391だった(15mgで100個くらい).産卵前の母グモの体重とはN=3.37W-9.71の相関(30mgで100個くらい).渦巻(spiral)型と直線(linear)型のかくれ帯があり,餌数が減ると渦巻型のかくれ帯の割合が増えた〔渡部AC49(1)〕.
シマウズグモ Octonoba uncinata YOSHIDA,1981
徳之島,沖永良部島に生息〔吉田哉AT98/99〕・
ウズグモ Octonoba varians (BOES. et
STR.,1906)
成体は6〜8月,メス5〜6mm,オス4mm,全土.崖地,石垣や山地のうす暗いところに,直径10cm位の水平円網をはり,うずまき状,または直線状のかくれ帯をつける.カタハリウズグモに比べて,色がやや濃い.卵のうは網の中心につるしておくことが多い.産卵期は7月.70〜80頭かえる〔学研〕.
メス4〜6mm,オス4〜5mm,出現期は6〜8月,産卵期は7〜8月で,淡褐色の卵のうを網の中,または周囲に糸を引いてその中に吊す.1卵のうに50〜90卵.崖地,木の洞,洞窟の入口,下草の間に水平円網を張り,中心に渦巻状または直線状のかくれおび帯をつける.横糸には粘球がついていない.2本の主糸に無数の細い糸が巻きついているだけの絹糸帯とよばれる特殊な構造〔森林87〕.
1968年6月21日,学習院大学構内でクサグモ亜成体の棚網の真下3cmにウズグモが造網していた例が4例〔小野K11〕.
本網の3分の1の網を産卵場として舟型の絹布を作る.26個産みつけると数時間の休憩の後,軽く糸でおおう.この動作を続け,下部の絹布をしあげる.卵のうの縁をフチ取る.出来上りは純白だが,翌日には茶色〔中平AT30〕.
卵のう(12mm長,6mm幅,3mm厚)内には100卵がむき出しで収納〔中平92〕.埼玉県5月のコシブトジガバチモドキの巣から,餌として狩られたクモとして多数記録された.ユノハマサラグモが続き,アシナガサラグモやコシロカネグモもよく狩られている〔南部AT59〕.
かくれ帯は円形,渦巻き状,円板形や,帯状,ジグザグ状等ある.腹端に置いた第4脚を左右交互に敏速に動かし,しょ節上面にある毛櫛で糸をすきだす.すき出された糸が小さな玉になるとクモは前進して糸を網に固定する.クモの前進による糸玉のほぐれ方の多少により,部分的に疎密が生ずる〔中平AT37〕.
網の粘糸は2本の糸の間に粘液が充満したもので,これはウズグモ科のクモの網の特徴である.物音(振動)その他刺激に対して非常に敏感に反応し,すぐ網の支点にある物陰に逃げる.6〜7月に褐色の卵のうを網に吊す.7〜8月子グモは卵のうの表面に脱出孔をあけて分散していく〔中平AT23/24〕.
幼体とオス成体はシート状円網(横糸がなく,縦糸間にこまかい糸を張りつめたもの)を張る.し板上の小吐糸管が幼体(出のう直後)では少なく,オス成体では欠失してしまう〔新海明AT85〕.
北海道から屋久島,中国・韓国からも記録がある.Uloborus からOctonobaに転属〔吉田哉AT98/99〕.
ハマウズグモ Octonoba yaginumai YOSHIDA,1981
沖縄本島に生息〔吉田哉AT98/99〕・
エゾウズグモ Octonoba yesoensis
(S.SAITO,1934)
北海道から九州,中国・韓国,ソ連,イランに分布〔吉田哉AT98/99〕
マツガエウズグモ Philoponella prominens (BOES. et
STR.,1906)
本州,南西諸島,中国・台湾・韓国に分布〔吉田哉AT98/99〕
コウズグモ Uloborus dubius BOS.et STR.・906?
日本アルプスでは2000m以下に分布〔千国AC5(4)〕.
中国産ウズグモの一種 Uloborus
guangxiensis
平面的な網とお腕を伏せたような網があった.枠糸は3-4本で二次枠糸はない.横糸の折り返しがある.渦巻き状のリボンはなく,こしきと木の葉の間に迷網(もつれた糸の塊)があって,クモはこの中にいた.網にかかった餌はWRAPPINGで攻撃した(ATTACK
WRAPPING).触肢で餌を持ち上げ,縦糸を伝って前向きに摂食場所まで運搬した〔吉田真AT97〕
タイリクウズグモ Uloborus walckenaerius
LATREILLE,1806
本州・旧北区に広く分布する種だが,日本では一度しか記録がない〔吉田哉AT98/99〕.
○メダマグモ科 Deinopiidae
メダマグモ Deinopis
sp.
後中眼が発達.メキシコ,モレロス州ココヨックの道路沿いの草原に低い位置でいる個体(30頭以上)を採集し,飼育.造網開始時刻はバラつくが大抵は暗くなってから.
造網は頭を上にして第1・2脚で体を支え,第3脚しょ節で糸いぼから出される糸をすく.
第4脚で作りかけの網を引き寄せ,すかれた糸と網を糸いぼでつなぐ.出来上りの網を脚で広げ,出来具合いを確かめる.地表徘徊性の虫には網をかぶせ,飛来する虫には網をすくう方法で捕虫する.
朝は網をたたみ,食べる.食べないときは放置し再使用する.卵のうはこげ茶色の直径約60mmの球形〔胡沢K63〕
アミナゲグモ Avella
sp.
メダマグモと異なり,後中眼は大きくない.オーストラリア,ケアンズ植物園内の野外部の木道沿いに造網.樹皮上や葉裏や枝間などに網を張る.枝上徘徊性昆虫を捕獲〔池田〕.
○イワガネグモ科 Eresiidae
イワガネグモ Eresus
niger (PATAGNA,)
オスも最終脱皮まではメスと同色だが,最終脱皮後腹背の燈赤色と黒斑が現れる.梢が乾燥する丘陵の草木の根元に,両開戸の地中管状住居に住む.成体オスは徘徊性のようで穴住居中ではみあたらない〔南宮AT33/34〕.
北満洲黒河山地にて徘徊しているオス4頭を採集,1939年9月〔仲辻AC7(1)〕.
1935年5月22日,朝鮮慶北前山にてオス11・0mm,金丸によれば満洲ではオスは5月初めから出現しメスはそれより遅れる.メスは暗い石の間に粗末な巣を作るという〔白AC2(3)〕.
○チリグモ科 Oecobiidae
チリグモ Oecobius annulipes
LUCAS,1846
成体は1年中,2〜3mm,本州・四国・九州・南西諸島.天井板のつぎ目などに小さな天幕状の住居を作る〔学研76〕.
直径4〜5cmの白色の住居を作る〔保育68〕. 壁の隅,石塀の隅,窓枠などにもいる〔東海84〕.
網の周囲には短い受信糸を引き,それに触れた小昆虫を捕える〔森林87〕.
住居から走り出たクモが腹部を高く突き立てた姿勢で虫の周囲を回ると捕獲される〔中平92〕.
長崎で7月13日産卵,燈色に赤味の濃い卵で14個程が壁に固定される〔大利AT30〕. 卵のう内で先にふ化した子グモが卵を食う〔中平83〕.
7月8日,雌雄が接触した後,雄は交尾用網を作り,雌は網上に乗り,雄は雌の腹面にもぐりこみ,右触肢を雌の右外雌器に左を左へ挿入する〔稲葉K58〕.
雌の住居に侵入した雄は腹部を振りながら床や天井を徘徊,その後,雌に接近した雄は腹面にもぐりこみ交尾,3度〔中平92〕.
4-9月の間はいつでも産卵する.6月幼体は短日条件下で発育が遅延した.長日条件および自然日長では発育は同じ〔宮下和AC41(1):AT95〕.
ヤマトチリグモの項を参照せよ〔池田〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
ハチジョウチリグモ Oecobius annulipes hachijoensis UYEMURA,1965
八丈島で記録〔八木沼86〕.
ヤマトチリグモ Oecobius nipponicus KISHIDA
?
巣網の近くを昆虫が通ると飛び出してくるので,受信糸が地物をはっているのだろうが,見えない.網より1cm以上離れた所をこすっても反応しないので,受信糸は1〜2cmの長さだろう.尻を高くした姿勢で昆虫の周りをぐるぐる回りながらからめ捕り,巣内にかかえこんで食う.食かすは巣壁やその付近にとじ付ける.5月19日採集した雌は6月21日〜7月13日に1〜2週間おきに6回産卵した.産卵は巣網から離れた場所に天幕を張ってその下で行い,毎回1卵塊を作った.卵塊を包む袋はうすく,卵粒がすいて見える.卵数は第1回目が15〜16粒,第2回以降すくなくなり,最終回のは5〜6粒.6月14日にふ化,3週間内外の間隔で全卵塊がふ化した〔中平AT17〕.
ヘヤチリグモ Oecobius cellariorum
(DUGES,1836)
雌2.8mm,横浜市の埠頭や工場の万年塀のどちらかで採集された〔熊田AT91〕.
○スオウグモ科 Zoropsidae
ムロズミソレグモ Zoropsis nishimurai
YAGINUMA,1963
山口県光市にて1962年7月7日,靴上に産卵し,子グモのそばで保護していたメスを採集(中川氏),京都市伏見区にて1962年3月22日,屋内座敷をはっていたオスを採集(西村氏)〔八木沼18(1)〕.
○エンマグモ科 Segestriidae
ミヤグモ Ariadna lateralis (KARSCH,1881)
成体は1年中,10〜15mm,本州・四国・九州〔学研76〕.
マツ・スギなどの樹皮の割れ目に袋状住居を作り入口に受信糸をひく.岩の割れ目や崖地の土の中にも住居を作ることがある.〔新海69〕.
8〜4月にかけて,幼生が親と共に見られる〔山川・熊田73〕.
巣の入口には放射状に糸を張りめぐらしている.主にヤスデ・小型の甲虫類等を捕食しているようで,食べかすが放射状の糸につけられている〔木庭AT15〕.
採集しようとしたら蓋を閉じた〔木村知K66〕.
樹皮下に漏斗状の巣を作って住む.小石川植物園ではプラタナスの樹皮下で多数採集した.越冬中のものは亜成体以下〔植村AT5〕.
マツ・スギ・ヒノキその他,樹皮にある割れ目や朽木の裂目,或いはよく乾燥した崖の割れ目等に,細長い袋状の住居を作る.袋状住居といっても,物の割れ目や隙間に裏打ちしたようなもので,ジグモの袋巣のように取り外すことはできない〔中平AT23/24〕.
鈴木正将(1950)によるとオスの染色体数はn=4で最小〔高島AC13(1)〕.
樹皮の割れ目,カミキリ虫等の脱出した孔,石の狭い割れ目等に口の開いた細長い管状巣を作ってその口に触糸を20本内外持っている.割れ目につまった土等を除けて穴を掘る能力もある.捕食法は糸が事件を知らせるとくわえこむ型〔小松AC4(3)〕.
広島県仏通寺でコミヤグモ Ariadna orientalis DON .et STR . が採集されたが,
ミヤグモの幼体ではないかとも思われる〔大井AC14(2)〕.
コマツエンマグモ Segestria nipponica KISHIDA,1913
(Syn.=Segestria komatsuana
KOMATSU,1939)
成体は1年中,メス6〜7mm,オス5〜6mm,本州・九州〔東海84〕.マツ・スギなどの樹皮の割れ目に袋状住居を作り入口に受信糸をひく.岩の割れ目や崖地の土の中にも住居を作ることがある.〔新海69〕.
広島県仏通寺には多数生息.成熟期は秋で,10月24日には雌雄とも成熟.巣はすべて両端に開口のあるへ字状の管巣で砂粒等はまじえていない.ナミハグモの巣に類似.岩石,墓碑等の凹所或るいは刻字部に造巣しているものが多い〔大井AC14(2)〕.
老杉の樹皮の割れ目にいた.ミヤグモよりは明瞭な7〜8条の触糸を持っていた〔小松AC4(3)〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
○タマゴグモ科 Oonopidae
ダニグモ Gamasomorpha cataphracta
KARSCH,1881
成体は4〜6月,2〜3mm,本州・四国・九州・南西諸島.樹皮上,木や草の葉上を徘徊する.冬期はスギ,ヒノキなどの樹皮下に袋状の住居を作って越冬する〔東海84〕.
屋内徘徊性のクモで暗所を好んで生息する.〔新海69〕. 玉川学園構内のクヌギ・コナラの二次林内,シジュウカラ巣箱内に生息〔石山K35〕.
クスミダニグモ Gamasomorpha kusumii
KOMATSU,1963
愛媛県千畳敷洞窟にて1961年11月12日オス成体1・6mm〔小松AC18(2)〕.
ヨロイグモ Ischnothyreus japonicus
OI,1958
6眼のクモ.1957年5月26日,大阪府箕面市にて崖崩れの下の草間,メス1・75mm,オス1・50mm〔八木沼AC15(2)〕
ナルトミダニグモ Ischnothyreus narutomii
(NAKATSUDI,1942)
リター中や石の下に生息する.一例だが,杉の樹皮をはがしたところ,剥離面でトゲヤドリカニムシと共に見られた〔山川・熊田79〕.
三宅島産♂で記載,しかし父島産の種は別種だったので本州産の種は再検討が必要〔小野AC43(1)〕.
シャラクダニグモ Opopaea
syarakui(KOMATSU,1967)
Gamasomorphaとして記載,オス1・65mm,1965年12月13日木内採集,徳島市にて〔小松AC20(2)〕.
全体赤色あるいは赤褐色の光沢のあるクモで,胸板,オスの触肢が特異な点で他種との区別は容易である.葉上を徘徊していたものを採集〔新海69〕.
オキツハネグモ Orchestina okitsui OI,1958
1〜1.3mmの微少なクモで,屋内の暗所を徘徊する〔新海69〕.
津久井では神社境内の杉の樹皮上を徘徊しており,飯山でも,シフティングで採集できた.〔山川・熊田79〕.
室内で採集.はねた距離5〜25mm,平均16・5mm〔熊田K54〕.
6眼.1958年2月26日,村山貯水池にて興津伸二採集,オス1・20mm,メス1・28mm〔大井AC15(2)〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
○ヤギヌマグモ科 Telemidae
ヤマトヤギヌマグモ Telema nipponica
(YAGINUMA,1972)
成体は1年中,0.9〜1.2mm,本州・四国.鐘乳洞内の岩の割れ目に小さなシート網を張る〔東海84〕.
洞窟種として発表されたが,その後各地のリター中より採集されている.丹沢でもリターの他,積まれた枯草の中の湿った下部より採集.〔山川・熊田79〕.
シート網の最広部1.5〜4cm,網にかかるトビムシを捕食する〔新海AC27S〕.
○マシラグモ科 Leptonetidae
オキナワマシラグモ Leptoneta okinawaensis (KOMATSU,1972)
=Falcileptoneta
okinawaensis KOMATSU
1972
雄1・9mm,8月22日,シムク穴,ナミヒラ・ヨミタンソン.雌はやや大きい.〔小松AC24(2)〕.琉球孤の石灰洞を代表する種類のひとつ,他にはウデナガヒナマシラグモ,カンムリグモ,ジャバラグモ〔下謝名AC27S〕.
ヨコフマシラグモ Leptoneta striata (OI,1952)
=Falcileptoneta striata
OI,1952
洞内の暗所の壁面に複雑なシート網をはっていた(オス成体)〔小林K26/28〕.
アキヨシマシラグモ Leptoneta akiyoshiensis
OI,1958
小松は秋吉台の4洞の種を別亜種としたが,未だ検討を要する.現段階では賛成できない〔八木沼AC27S〕.
6眼.1955年10月23日,山口県秋吉洞にてメス1・75mm〔大井AC15(2)〕
イリエマシラグモ Leptoneta iriei
KOMATSU,1966
熊本,ツバキ洞にて1965年8月25日,入江採集,オス1・6mm〔小松AC20(2)〕
クラモトマシラグモ Leptoneta kuramotoi
(KOMATSU,1974)
雄の触肢に特殊な形態の毛があることで新種となった〔八木沼AC27SP〕.
ケグロマシラグモ Leptoneta melanocomata
KOMATSU,1940
高知県竜河洞にて1940年6月20日,小松採.壁面の凹所,石旬の間等に幾重にも密に薄膜を重ねた長径20cm内外の皿状ないし棚状ともいうべき一種の網を張り,下位にかかっていた.網の下部に水平の薄膜を持ち,上下の網間にクモがいる場合もある〔小松AC5(3)〕.
ヨウザワマシラグモ Leptoneta musclina KOMATSU,1961
鐘乳同内〔新海69〕.
岩の割れ目にシート網を張る〔新海・原AT65〕.
カザアナマシラグモ Leptoneta speciosa
KOMATSU,1957
長野県風穴洞にて,1942年7月19日採集のオス成体2・2mmで記載.3月と7月メス成体も取れる.一重皿網で相当数採集できる〔小松AC14(2)〕.
ヒゲナガマシラグモ Leptoneta uenoi YAGINUMA・963
原記載どおりLeptoneta とする〔八木沼AC27sp〕.
ゼンジョウマシラグモ Leptoneta zenjoensis
KOMATSU,1965
1961年10月23日,徳島県,ゼンジョウ洞にてオス1・56mm採集〔小松AC19(2)〕.
アカハネヒナマシラグモ Masirana akahanei KOMATSU,1965
岩のくぼみにドーム網を張る〔新海69〕.
東京都,不老洞にて,1962年7月31日,小松採集,1オス1・8mm.ニッパラマシラグモに近縁〔小松AC18(2)
ヒナマシラグモ Masirana cinevacea
KOMATSU,1942
オス1・7mm.長野県最勝洞にて1942年小松採.網は8〜12cm,下面の薄膜なく八重皿網が顕著でなく単である場合も少なくない.多くは石の堆積する間に生活する.成体オスが亜成体メスの網上に居ることが多い.幼体も近接して造網.卵のうは網の直上または離れた岩の下面に4〜6mmの糸を垂らし,その末端につけられた長径4mmの滴状小袋,細砂その他を付着〔小松AC7(2)〕.
コソデヒナマシラグモ Masirana kosodeensis
KOMATSU,1963
山梨県小袖洞,1962年8月8日,小松採集.オス1・9mm,メス2・4mm〔小松AC18(2)〕.
ニッパラヒナマシラグモ Masirana nippara KOMATSU,1957
岩の上部や割れ目にシート網を張る〔新海69〕.
東京都日原洞にて小松採集,成体雌雄にて記載,成体オス2・4mm,一重皿網〔小松AC14(2)〕.
ウデナガヒナマシラグモ Masirana longipalpis
KOMATSU,1972
オス2・7mm,8月25日,ニッシュー洞,キン・キンソン.メスはやや大きい〔小松AC24(2)〕.琉球孤を代表する種類のひとつ,他はオキナワマシラグモ,カンムリグモ,ジャバラグモ.最も洞窟環境に適応した真洞窟種である〔下謝名AC27S〕.
モリズミマシラグモ Sarutana silvicola
KOBAYASHI,1973
オス2mm,10月・12月,静岡市山東.メス1・9mm,10・12月,同所〔小林AC25(1)〕
アベマシラグモ Sarutana abensis
KOBAYASHI,1973
オス1・93mm,1・2月,静岡市浅間山.メス1・86mm,同日同所〔小林AC25(1)〕.
イシカワマシラグモ Sarutana glabra
KOMATSU,1957
1948年12月,石川次郎により四国の猿田洞にて成体オス2・1mm採で記載.単眼1個が退行の傾向〔小松AC14(2)〕.
○イトグモ科 Loxocceriidae
イトグモ Loxosceles rufescens
(DUFOR,1820)
成体は1年中,8〜9mm,本州・四国・九州・南西諸島.屋内の暗所を徘徊,ボロ網に近い網を張ることもある〔東海84〕.成体で3年は生き,各年に産卵する〔新海談〕.
卵は5〜9月に産下され,翌年の同じ頃成体となると考えられていたが疑問.成体になって餌も不十分なまま,4年4カ月生存した〔中平AT54〕.
腹端をもちあげ,糸いぼをビリビリと振動させていると,糸がわきでるように出て,小さな玉になる.クモが前進する.糸玉がほぐれて長くなり地物につけられる.糸は微細なものが束になり縮れているので,ハグモの糸同様,昆虫の脚にはよくからみつく〔中平AT37〕.
網は不規則であるが,粘着力を持つ.早くて3月,普通は4月中旬〜下旬に交接を行い,産卵はだいたい5月中旬から9月上旬の間に多く,この間に大体3回の産卵を行う〔木庭AT7〕.
都市環境指標種〔新海98〕.
○ヤマシログモ科 Scytodidae
ヤマシログモ Scytodes nigrolineta
(SIMON,1880)
成体は1年中,5〜8mm,本州・四国・九州・南西諸島.個体数は少ない〔東海84〕.
屋内の暗所に生息するが,野外でも採集される.上顎基部の先端にある粘液射出孔より投網状に粘液を出し獲物にかぶせ補食する〔新海69〕.
ユカタヤマシログモ Scytodes thoracica (LATREILLE,1804)
成体は1年中,5〜7mm,全土〔東海84〕.
前種同様の習性を持つ.他のクモ(オオヒメグモ,イエタナグモ等)の網を襲い,そのクモを補食する場合もある.ヤマシログモとも,産卵期は7〜8月で,卵塊は糸で薄く包み口器につけて持ち運ぶ.卵のうを保持している間でも獲物が近くに来ると卵のうを一時放し補食する.卵は20日前後でふ化し,子グモは第一回の脱皮をすました後補食を始める.ふ化した年のうちに3〜4回,次の年に2〜3回の脱皮を行い普通7月上旬には6回の脱皮を終了している.粘液射出に関しては関口晃一・高島春雄の報告「日本の科学」42がある〔新海69〕.
粘液を投網のように扇型にひろげて虫にかぶせる.粘液の吐出距離は16mm内外.動きの鈍い虫には粘液をふきかけず,第1〜3脚を口器にもってゆき,粘液をつけて捕える.脱皮の時にも脚に粘液をつけて固定する〔松本AT35〕.
1946年11月11日から翌年10月25日まで絶食のまま,コルク栓をした管びん内で生き,349日目に死亡〔白AT13(4)〕.
オスは6月から9月に出現.1939年8月28日,オスをガラス瓶内のメスと交接させた.オスは正面か進み,メスの腹下面に相対して交互に触肢を宛合い,約一分にして別れた.夜間徘徊性.8月初旬から9月初旬に産卵,1卵のう中に36,42,35卵.卵のうを母グモは触肢と糸いぼによって支える.母は保持している間,餌をとらない.1938年8月13日夜間に産卵したものは9月2日にふ化,天井に吊るされた卵のうから9月5日に出のう〔小松AC5(2)〕.
昭和9年11月20日から昭和10年9月4日までガラス瓶内で絶食のまま生存〔八木沼AC3(3)〕.
多くの場合しおり糸をひいていない.オオヒメグモを襲うことがある.オオヒメの糸を伝っていく.餌となる虫の体に第1脚が触れて位置を確かめて後に粘液を射出する.蚊蝶蝿等は触れた時に逃げてしまう.射出の姿勢は腹部後端を下方に曲げ,頭部をやや高く保つ.粘液は糸いぼより前方に自己の体長の2,3倍の距離にまで射出され,糸いぼより射出された液は自己の腹部下面を通り頭胸部下面を通って相手にからみつき,射出後は糸いぼとのつながりを持たない.粘液は空気に触れて粘着性糸となり,粘球が糸上に点在する.続いて数回射出され,最小量は数条,最大量は20数条,自由にその量を調節できる.針で刺激しても射出する.センショウグモと戦って勝つ.ユカタヤマシログモ同志でも戦う〔小松AC1(2)〕.
糸いぼから自己の体圧だけで糸が紡ぎ出されるのは不自然である.射出後に糸いぼに粘液は付着していない.射出は一瞬で,疲労したクモが口に粘液の塊をぶら下げていた.口器を解剖すると粘液球が埋蔵されていた.糸いぼではなく,口から粘液を出すのである〔植村AC4(3)〕.
昭和46年5月4日採集,5月25日産卵,餌をとらず6月16日出のう(30頭),親はその後,ヒメグモ幼体・ガを食べ,20日朝死亡.子グモは25日に分散〔高野K26/28〕.
9月12日に産卵した雌は卵のうを仰向けになった腹の上に保持していた〔新海明K69〕.
東京都立大学内で6月30日に産まれた卵は7月11日にふ化(31頭),23℃・湿度50-60%の長日・短日条件で飼育.幼体とくに雄は350日前後で成体になった.短日条件(3頭)では6回,長日条件(3頭)では7回脱皮した.育った雌は1頭のみ(長日条件で6回脱皮)〔宮下K70〕.
大学構内の野外で採集〔鈴木成生k66〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
○エンコウグモ科 Ochyroceratidae
カンムリグモ Speocera laureata
KOMATSU,1974
雌雄1・3mm.琉球孤の石灰洞を表徴する種類のひとつ,広く分布する.他の代表3種はジャバラグモ,ウデナガヒナマシラグモ,オキナワマシラグモ〔下謝名AC27S〕.
○ジャバラグモ科 Tetrablemmidae
ジャバラグモ Ablemma shimojanai
(KOMATSU・968)
沖縄イナミジ洞にて1965年9月28日,メス1・06mm採集〔小松AC21(2)〕.
Tetrablemma属として1965年9月28日,沖縄イナミジ洞窟で採集した雌(1.06mm)にて記載〔小松AC21(2)〕.
琉球孤における石灰洞を表徴する種である.広く分布する.他の代表にカンムリグモ,ウデナガヒナマシラグモ,オキナワマシラグモ〔下謝名AC27S〕.
Ablemmaに転属〔保育86〕
○ユウレイグモ科 Pholcidae
オダカユレイグモ Crossopriza lyoni
(BLACKWALL)
1981年愛知で発見され、のち沖縄に産することが分かった〔八木沼86〕.
名古屋港周辺の輸入品倉庫で側溝・積み荷の下部などから発見〔須賀AC45(2)〕. 本州中部から石垣島まで分布〔入江AC45(2)〕.
都市環境指標種〔新海98〕.
ヤエヤマユウレイグモ Leptopholcus tanikawai
IRIE,1999
石垣島・西表島産のマシラユウレイグモ属の新種.メス5-6mm,オス5-6mm.オスの眼域は突出する〔入江AT48(1)〕.
ユウレイグモ Pholcus cypyicolens BOES. et
STR.,1906
成体は5〜8月,4〜6mm,全土.崖地,石垣,樹木の根元などのくぼみに不規則網を張る.危険を感じると体を激しくゆする〔東海84〕.
メス成体が第4脚で糸をくり出すのを観察〔池田K66〕.
産卵期は6〜8月で,卵のうは糸で簡単にかがり,口にくわえて保護している.1卵のう中の卵数は15〜40個.不規則網を張り,網の上部に細かく糸を引きまわして,そこにとまる.獲物がかかったり,糸に振動があったりすると,体をゆらゆらと動かすが,危険を感じるほどの刺激を受けると体がぼやけてみえなくなるほど激しく動かして相手を威嚇する〔森林87〕.
天井裏で成体又は亜成体で越年するのを観察〔中平AT5〕.
7月,沖縄の名護城で岩のくぼみにメス成体と幼体が数頭いた.不規則網の中に双し類が約100頭吊り下がっていた.その双し類を幼体が補食していた.ユウレイグモそのものかどうか不明〔新海明K54〕.
7月12日に卵のうから出た幼体を自然・長日・短日各条件で飼育した.自然・長日では45-85日で成体になった(4-5回脱皮、8-9月に成体)が、短日では90-175日もかかった(5回脱皮、8月に成体)成体になった.最終令以外の令期間が延長したためであった〔宮下AC30(2)〕.
イエユウレイグモ Pholcus phalangioides
(FUESSLIN,1775)
成体は1年中,8〜10mm,本州・四国・九州・南西諸島.屋内性の大型種.旧家や学校,図書館,倉庫などの古い建物内に多く,天井付近,荷物の間などにシート網に近い不規則網を張る〔東海84〕.
網は大きいものでは70cm以上に達し,シート状に見えることもある〔森林87〕.
網末端の接着部には粘性があり,そこに餌がかかると切れてしまう構造がある.シモングモ,ユウレイグモも同様であった.さらにイエユウレイには第4脚末端にヒメグモ科の特徴である鋸歯状毛に似た毛があった〔新海明AT89〕.
体に触れると長時間体を振動させる〔保育68〕. 7月4日,51卵〔大利AT29〕. イエユウレイグモはPholcus
crypticolensではなく,Pholcus phalangioidesである〔植村AC3(1),AC2(3)〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
タイリクユウレイグモ Pholcus opilionoides
(SCHRANCK,1781)
成体は7〜9月,メス5〜7mm,オス4〜5mm,北海道・本州.神社・寺院の建物の周囲に不規則網を張る〔東海84〕.
浅間高原通俗博物館研究所屋内ないし便所の天井にて8月21日採集〔岡崎・関口AC6(2)〕.
北鮮で7月下旬から8月中旬にかけて盛んに交尾.7月25日午前8時37分より交尾.メスの網内にオスが侵入,オスは2脚を振りながら糸にそってメスに近付く.オスが触れるとメスは逃げる.再びオスが近付くと今度はメスが受け入れた.48分間一緒だった.途中で少し場所を移動した.8月1日午前2時19分,2〜7分かけて50卵を産んだ.8月17日出のう〔金山AC6(4)〕.
ヨシクラユレイグモ Pholcus yoshikurai
IRIE,1997
雄6.3-6.9mm,雌6.7-7.7mm.模式産地は屋久島.8月に雌雄成体.越木島にも分布〔入江AC46(2)〕.
ユウレイグモモドキ Smeringopus pallidus
(BLACKWALL,1858)
小笠原諸島母島に分布.家の中や周囲の薄暗い所に不規則網を張ることが多い.野外の石垣,岩蔭などにも生息する〔新海AC27S〕.
家屋内の暗い所に不規則網を張り,平行背位に占座,卵のうは口で運ぶ.卵のうは5〜8mmで1卵のう中に40個前後の卵,沖縄ではふ化してから10日位で分散していく〔下謝名AT28〕.
アケボノユウレイグモ Spermophora akebona
KOMATSU,1961
成体は1年中,2〜3mm,本州.鐘乳洞内に多いが,洞外でも湿った岩場や崖地に生息し,不規則網を張る.クモは岩面に張りつくように静止している〔東海84〕.
産卵期は9〜10月,卵数は10〜15個である〔新海69〕. 秩父では,産卵は6〜10月〔新海・原AT65〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
ヒメユウレイグモ Spermophola junkoae
IRIE,1997
雄は1.9-2.4mm,雌は2.1-2.3mm.模式産地は西表島(♂).石垣島にも生息〔入江AC46(2)〕.
シモングモ Spermophora senoculata (DUGES,1836)
Syn.=Simonius typicus
KISHIDA,1913
成体は1年中,2〜3mm,本州・四国・九州.屋内の天井の隅,押し入れの中,倉庫,書庫の奥などに不規則網を張る.野外でも倒木,積荷の下などに生息する〔東海84〕.
コナダニ,チャタテムシなどを食べる〔森林87〕. 網は隠れ家(retreat)を持つシート部とそこから垂下された糸(mooring threadとtrap
thread)から成る.trap thread はオオヒメグモのそれと同様のもの〔新海明K67〕. 産卵期は長く7〜10月にかけてである〔新海69〕.
秩父では,産卵は6〜10月.ダニ・シミ・カなどを捕える〔新海・原AT65〕.
深さ2cm,長さ12cmの簡単な不規則網で,餌(主に蚊)が糸に触れるとクモはかけより,第3・第4脚を使って糸をかける.不規則網の深い中心で食べる.食べカスは下に落とす.7月12日〜10月8日に産卵した.卵のうは薄い粘液性の物質でくっつき合い,時間がたつとそれが乾いてお互いに固定される.ふ化の時,親は卵にからめた糸をかみ切る.子グモの脚が出ると卵のうを天井に密着するように吊し,団居のための糸を卵のう中心にはり渡す.親は卵を5,6回ずつかんで歩く.子グモはふ化すると卵のうの上から糸を渡り,1令のまま,団居の体勢をとる.産卵回数は2〜3回(ただし3回目の卵数は4個でクモは2日後に死んだ),産卵間隔は26〜32日(3個目の産卵は51日後),卵数は16〜27個(4個,7個もあり),1回目の脱皮まで4〜7日,1〜3日で分散する.ふ化が一番遅いのは10月23日であった(4個体,脱皮,分散を確認せず).10月3日のは7個体である.気温(23℃以下)との関係が示唆される.親は子グモのふ化後,死ぬ〔佐藤K47〕.
時にヒメグモ様の網を張る.産卵期は5〜11月,ふ化日数は約20日で1月にふ化幼体らしいものを発見,クサグモの幼体(3mm)を与えると4日間とりついていた〔小野K22〕.
10月20日に卵のうから出た幼体を自然・長日・短日各条件で飼育した.自然・長日では発育は同じだった(4回脱皮、2-3月に成体)が、短日では50-70日遅れて(4回脱皮、4-5月に成体)成体になった.最終令以外の令期間が延長したためであった〔宮下AC30(2)〕.
都市環境指標種〔新海98〕.
○ヒメグモ科 Theridiidae
キヒメグモ Achaearanea asiatica (BOES. et
STR.,1906)
成体は5〜6月,2〜3mm,本州・九州・沖縄.ヒメグモとよく似ているが小型で成体は春に出現する.ススキの葉裏に不規則網を張る〔学研76〕.
大河内によれば,サワラ・ヤマユリ・サルトリイバラ・ヤマノイモ等の葉裏でも採集しているとのことである〔新海AC27S〕.
ススキの葉の間に不規則網を張り,ヒメグモの様なシート状部分を持たない〔松本AT61〕.
小田原市内では5月のみならず,7〜10月に成体が出現,斑紋に色彩多型があり,黒色型も同所的に生息する〔久保寺・池田K59〕.
腹背模様に歌舞伎役者の隈取のような多様性がありカメンヒメグモと仮称する〔中平92・
ツリガネヒメグモ Achaearanea anglithorax (BOES.et
STR.,1906)
成体は6〜8月,2〜3mm,全土.崖地,石垣,樹木の根元に,土・砂・木の枝を釣鐘状に吊るして住居を作り,その周囲に不規則網を張る〔東海84,森林87〕.
飼育下でツリガネを作らなかった〔中平83〕. Lithyphantes
cavernicola(ハンゲツオスナキグモの幼体?)として住居製作の観察を記録〔植村AC1(2)〕.
2〜3mm桃黄色の卵のうは住居の中に置き(通常2個),親はそばにいて保護〔新海K29/32〕.
ヒメグモの一種 Achaearanea decorata
(L.KOCH,1867)
クラカタウ諸島で記録,オーストラリア・ニューギニアで記録,日本にはいない〔吉田哉AC43(2)〕
ヒザブトヒメグモ Achaearanea ferrumequinum (BOES. et STR.,1906)
=Theridion
ferrumequinum BOES. et STR.,1906
成体は6〜8月,2.5〜3.5mm,本州・四国・九州〔東海84〕.
崖や石垣のくぼみ,木の根元などに,土や砂を釣鐘のような形につるして住居を作り,この下に不規則に糸をひきおろす.7〜8月に産卵し,直径2mm位の淡かっ色の卵のうを住居の中に置く〔学研76〕.
小粒のものを利用する〔東海84〕. 何もつけず,不規則網だけの場合がある〔新海69〕.
1本糸で鐘を吊るす.住居口から数本の狩猟用受信糸を引き降ろす.垂直下位に占座.産卵すると,狩猟糸がなくなっているものが多い.土砂の得られない場所に放置すると,小型のオオヒメグモ様の網を作る〔中平AT23/24〕.
オンマヒメグモとして,広島県仏通寺で8月から10月に成体,石下または崖の凹所に小形の砂粒を用いた小釣鐘状の巣を吊し,その最頂部の内側に潜む〔大井AC14(2)〕.
Theridionから転属〔吉田哉AC32(1)〕.
ヒメグモ Achaearanea japonicum (BOES. et STR.,1960)
=Theridion japonicum
BOES.et
STR.1960
成体は8〜10月,メス4〜5mm,オス2〜3mm,全土.木の枝や葉の間にシート網をはり,その上にさらに不規則網をはる.不規則網の上部には木の葉をつるし,クモはその中にひそむ.産卵期は8〜9月.黄かっ色の卵のうである〔学研76〕.
脚先が黒いのが特徴.小田原市では産卵は主に8月,早い個体もある.出のうは早いもので8月中旬,主に9月になる.台湾・韓国・中国にも分布〔池田K63〕.シート付不規則網〔新海79〕.
分散した幼体はシート部のない網を張る.越冬は葉裏で行われ,小田原市で4月下旬から幼体(秋の出のう幼体と同じサイズ)が造網,最初はシート部が無い.6月6日になると4分の3がシート部を持つ.大きさに変化がないので,捕食できるとシート部ができるのだろう.♂成体出現は7月上旬〔池田泉K65〕.
アオバハゴロモを食べると腹部が緑色になる〔平松K62〕. 1卵のう中の卵数は25〜100個〔森林87〕.
7〜8月に2〜3個の卵のうを作る〔山川・熊田73〕.
網中央の枯れ葉中で,環状帯を作り,その中に卵を産む.それが終わると後脚で回転し球形の卵のうとする.8月14日,卵のうに62卵〔大利AT30〕.
山地に多い.不規則網には1枚の枯葉が平網に平行するように吊るされるが,産卵期に縦にして,上半分には幕を張り,住居兼産室とする.占座姿勢も平行背位から垂直下位に変わる.卵のうは紫褐色で球形,8〜9月に1個体が2〜3個作る〔中平23/24〕.
57卵か,49卵を数える〔大利26/27〕.
網内の枯葉には意味があった.産卵前後から必要とされ,無い場合には産卵・ふ化・クモ自身の生存にマイナスだった.不完全な場合,外敵や自然現象から十分身を守れなかった.落葉や風によるものを消極的利用するため,吊せない個体も出てくる.吊す力のない個体もあり,それは淘汰された〔熊田理恵AT97〕.
肌色または淡黄褐色の卵のう2・5〜4mm大,球形または偏平のまんじゅう型で3〜4個を網内の枯れ葉の中へ〔新海K46〕.
母グモがかんでやった餌を子グモが食べるという給餌が見られた.1回の給餌は平均2時間半,1晩に3〜4時間間隔で2回見られた.給餌行動は出のう後3週間続き,母グモが死んだ後,子グモは母グモを食べて分散していった〔伊藤AT87,AC34(1)〕.
1881年5月29日に佐賀県佐賀郡富士町湯ノ原でデーニッツが採集した雌雄で記載された.斉藤三郎(1941)はミツシロボシヒメグモと称す〔池田K63〕.
Theridionから転属〔吉田哉AC32(1)〕.
キタヒメグモ Achaearanea impressum (L.KOCH,)
=キタヒメグモ Theridion impressum
L.KOCH
北満洲黒河山地帯にて1938年7月,メス4〜5mm採集〔仲辻AC7(1)〕.
コンピラヒメグモ Achaearanea kompirense (BOES. et STR.,1906)
=Theridion
kompirense BOES. et STR.,1906
成体は6〜8月,メス3.5〜5mm,オス2.5〜3mm,本州・四国・九州〔東海84〕.
6月には成体が見られる.ヒメグモと似た網をはるが,下部シート網がない〔山川・熊田79〕. 不規則網〔森林87〕.
下草の葉裏(雑木林内の下草や山間部のササの葉裏に特に多く見られる)に不規則網をはり,網の上部,葉裏との接点に占座している個体が最も多いことを確認した〔新海77〕.
東大農学部付属演習林田無のマツ林での優占種である.個体数のピークは5月(マツ10本当たり4頭程.気温の上昇によると推測)と8月下旬から9月上旬(マツ10本当たり8頭程.繁殖の結果と推測)にみられる.卵のうの保持個体は6〜9月下旬までみられた.1卵のう当たりの卵数は分散前の2令幼体数から推測して平均25個(10〜50個)とされた.越冬は若令幼体で行う〔松井AT66〕.
糸いぼに卵のうをつけている.地表に落とすと第4脚片方で卵のうを持ちながら歩く.引き放すとコモリグモ同様,探して糸いぼにつけるが,体に比べ大きいので引き摺る時もある〔有田AT26/27〕.
白色球形の卵のう3〜4mm大,網上部の葉裏〔新海K46〕. 斉藤三郎(1941)はミツクロボシヒメグモと称す〔池田K63〕.
Theridionから転属.本州・四国・九州(韓国・中国)〔吉田哉AC32(1)〕.
カグヤヒメグモ Achaearanea lunata (CLERK,1758)
本来はニセンヒメグモ Achaearanea
culicivorumである.真のカグヤヒメグモは日本では未発見.欧州産A.simulansに似る.北海道・東北では釣鐘状住居を作るが,南西諸島では見ない〔吉田哉AC32(1)〕.
成体は6〜8月,メス6〜8mm,オス4〜6mm,北海道・本州・四国・九州.幼体期は落葉中に生息し,成長に伴って樹枝間に不規則網を張る〔東海84〕.
山麓から山地に生息し,木の枝の分岐した所に不規則網を張ることが多い〔森林87〕.
卵のう長6〜9mm,巾4〜7mm,オオヒメグモの卵のうより淡い色で,網の中又は上部に通常2〜3個吊るす〔新海K46〕.
オオツリガネヒメグモ Achaearanea nipponica
YOSHIDA,1983
メス3.5〜5.4mm,オス2.9〜3.1mm,本州・九州.メスは枝片,草,石,土で釣鐘状住居を作る.山形では7〜8月頃,住居中で産卵する〔吉田哉AC32(1)〕.
キヨヒメグモ Achaearanea oculiprominentis
(S.SAITO,1939)
山形県酒田市でオスにより記載されたデメキリグモ Nesticus oculiprominentis
S.SAITO,1939が本種であった〔吉田哉AT97〕.
キヒメグモの黒色型と間違えられている.キヒメグモの方が多い.卵のうの形もキヒメグモと同じマラカス形である〔池田〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
イワマヒメグモ Achaearanea riparia
(BLACKWALL,1834)
利尻・礼文島に分布.釣鐘状住居を作る〔吉田AC32(1)〕.
茨城県大子町八溝山にて1996年8月5日に雌を貞元が同定記録〔笹岡K73〕.
オオヒメグモ Achaearanea tepidarioum
(C.KOCH,1841)
成体は1年中,メス6〜8mm,オス4〜6mm,全土.家の内外,庭から高山まで,あらゆる所に生息している〔東海84〕.
産卵期は5〜9月で,特に6〜7月に多い.卵のうは淡褐色で通常3〜4個を網の上部に作る.1卵のう中の卵数は200〜500個.
糸の付着点から5〜10mmの間には粘球がついており,それに触れた昆虫が引き上げられて捕食される〔森林87〕.
オスの体細胞では22本の染色体を持ち,XXO型である.Cーバンド法で性染色体を識別できない〔五十嵐・近藤AC27S〕.
小型のトカゲやハシリグモ・セミの幼虫までも補食する〔山川・熊田73〕. 5-6cmのヤモリを捕獲〔中島晴子K62〕.
ドクグモ,コアシダカグモ,アリ,コオロギを捕獲〔中平AT43〕.
直線糸の下端接地部2〜5mmに粘球が数珠状に並ぶ.吊り上げられた獲物に巻きつける捕糸に粘球が含まれることがある.獲物が地面から離れていない場合,クモは捕糸を出し,獲物にからませるが,この糸は「短めの糸」〔中平〕である.これは機能上から「弾性糸」と呼ぶべきであろう.捕糸は粘球をくり出さない時もあるし,第4脚片方でくり出すことも,両方でくり出すこともある〔有田AT51/52〕.
宮崎県青島には淡色小型(5mm)の個体がビロウ林内ハカマカズラやクワズイモの葉に生息.卵のうが球形白色5mmで,普通の紡錘形,黄褐色と異なる〔石野田AT63〕.
10月25日,オスはメスの網の上方から第1脚で網糸の1本をはじく.その間,メスは全脚の縮伸をする.3分後,オスは腹部をしきりに上下させ,全脚をゆるやかに縮めたり伸ばしたりする.4分後,そろそろとメスに接近し始め,メスに1秒間しがみつき,逃げた.その2分後,再度オスは接近し,交接し,1分間.交接後,オスは引返した.交接の体位は対向位,産卵は交接後18日目に卵のう1個〔小山AT61〕.
同じように見える直線糸でも,粘球部がなく,切れにくいのが混じる.粘球を持ち,切れ易い糸は内側に並び,そうでない太い糸は外側に並ぶ〔中平AT28〕.
亜成体または成体の腹柄部に寄生する蜂Zatypota
albicoxa (WALKER),幼虫は脚がなく宿主より大きくなる.成虫は8〜9月に羽化〔石野田AT15〕.
三重県名張市にて,1963年4月28日に網内で淡黄色色のマユ(8・5mm長)よりZatyportaが羽化〔橋本AC(2)〕〕.
野外に営巣したものは,木や草の葉,時には小土塊を吊るして,その下に住むものが案外多い〔中平AT14〕.
7月21日,9時10分,半球状卵のう作成,25分後産卵,卵のう包蓋(25分),卵のう圧縮(15分),卵のう吊下(10分)〔秋山AT9〕.
いろいろな段階で越年している〔植村AT5〕.
昭和17年7月,横浜の山本大二郎宅でルリジガバチ1頭に狩られたクモ370頭の大部分を占めた.緑色の小幼虫が寄生していたものはヒメバチの一種Zatypota
albicoxaになった〔高島AC10(1・2)〕.
朝鮮の水原では腹部をつぶし巣を丸めて腫物にぬると膿を吸い出すという.ヤクコミ(薬クモの意)という〔岡本AC9〕.
卵のう中の殻を見ると細長くねじれている脱皮殻と,つぶれたゴムまり形の中身を吸われた卵殻が分かる.先にふ化した子グモが卵を食するのである.チリグモ,イエオニグモ,ヤマシロオニグモでもある.ただし全部の子グモが卵食いするのではない;ニワトリの病気の時の薬となる.餌に混ぜてくわせる.「ヘーグモ」という〔中平83,K39p40〕.
1回の交接で3回産卵〔鈴木勝K42〕.
卵のう長6〜10mm,巾4〜7mm,淡褐色または茶色,雨だれ型か球形,網の上または中部に通常3〜4個吊るす〔新海K46〕.
札幌個体群で耐寒性を解析したところ,耐凍性はなく,凍結は致命的であった.一定時間冷温にさらされても死亡率は上昇した.
凍結開始温度は夏は-8.1℃,冬は-20.1℃と変化,50%冷温致死温度は-2.1℃(夏)から-13.7℃(冬)と変化した〔田中一AC42(2)〕.
長日・短日条件とも休眠率は低温ほど高くなり,15℃では光周期に関係なく休眠率は100%になった〔田中一AC46(2)〕過冷却点と摂食活動の間に関連があった.摂食で過冷却点は上昇し,絶食すると低下する.冬を迎えると摂食を止めて,過冷却点を下げ,体組織とくに消化管の凍結を防ぐ)〔田中一AC48(2)〕.
網内の米粒大のさなぎはマダラコブクモヒメバチ Zatypoda albicoxa で,コアシダカグモにも産卵〔新海明K73〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
インドネシア産オオヒメグモの一種 Achaearanea triangula
YOSHIDA,1993
メス4.4mm,オス1.9mm,シンガポールとジャワ島,バリ島に分布〔吉田哉AC42(1)〕
アシブトヒメグモ Anelosimus crassipes (BOES. et
STR.,1906)
成体は6〜8月,メス4〜5mm,オス3.5〜4.5mm,全土.樹木の枝葉間に不規則網を張る.各地で見られるが海岸地域に特に多い傾向がある〔東海84〕.
8月に1個卵のうを作る.卵のうはしばらく口器で保持している〔山川・熊田73〕.
メスがトベラの花付近に造網し,花粉や蜜を食していると思われる〔石野田AT63〕.
平行背位に占座する.5〜6月に白色,小型球形の卵のうを作り,葉裏に置く〔中平AT23/24〕.
白色球形の卵のう3・5〜4mm大,1個を網の中または上部へ.親グモがかかえるように保護することが多い〔新海K47〕. 親が咬んで開のうする〔新海明K63〕.
母が捕らえた餌を子グモに与える〔新海明K65〕母グモの給餌は子の発育に応じて変わる.卵のう交換実験により他個体の子とは区別していることが分かった〔伊藤千都子・新海明AC42(1)〕.
不規則網部分とシート網部分がある.網には粘球がある.6月10日,オスの求愛行動は明確ではないが,体を振動させた後,メスの体に触れる.左右の触肢を交互に2回交接した(右が先).交接の時,オスの第T脚・U脚は各々メスの第T・U脚を下から持ち上げるようにしている.箱根で採ったメスは8月8日に31頭出のう,8月23日に2個目の卵のうに気づいた.9月3日に11頭出のうした.初島産のメスは9月3日に30頭出のう.卵のうは3mm暗いの球体で,ひとつ小さなツノがある〔高橋祐K55〕.
コアシブトヒメグモ Anelosimus exiguus
YOSHIDA,1986
オス1・6mm,メス2・0mm,7〜8月および3月に成体,八重山諸島・琉球に分布〔吉田哉AC34(2)〕.
イワワキアシブトヒメグモ Anelosimus iwawakiensis
YOSHIDA,1986
オス2mm,メス2・5mm,6月中旬,いわわき山にて採集〔吉田哉AC34(2)〕.
シンガポール産アシブトヒメグモ Anelosimus kohi
YOSHIDA,1993
オス4mm,メス4.3mm,6月に記録〔吉田哉AC42(1)〕.
タイワンアシブトヒメグモ Anelosimus taiwanicus
YOSHIDA,1986
クラカタウ諸島から記録,台湾にも分布〔吉田哉AC43(2)〕
メナシヒメグモ Archerius nakahirai
YAGINUMA,1959
1959年8月8日,高知県土佐郡土佐山村の鐘乳洞『菖蒲洞』で採集.鐘乳石のくぼみに5本の糸を扇型に張り,クモはその集合点に占座していた.糸には水滴が付着して重くなり,弓なりに曲がっていた.網は手を触れるとすぐ破れてしまったので,糸の構造や粘性は不明.しかし,水滴が宿っていたのは粘球のためと思う〔中平AT23/24〕.
1957年中平採集.新種〔八木沼AC16(2)〕
シロカネイソウロウグモ Argyrodes bonadea
(KARSCH,1881)
成体は7〜8月,メス3〜4mm,オス2mm,本州・四国・九州・南西諸島.1つのジョロウグモの網に70頭いた記録がある〔東海84〕.
成体の出現期は6〜9月,産卵期は7〜9月で2〜3mmのつぼ型の卵のうを網主の網の中や,その近くに2〜5個吊るす.1卵のう中の卵数は30〜50個.網主を食べることはほとんどないが,ハマゴミグモが捕らえられていた記録がある(長島1975)〔森林87〕.
オニグモ・コガネグモ・ジョロウグモ・ゴミグモ・クサグモ・ヒメグモ等,多くのクモが宿主である.ジョロウグモの網に70数匹を数えたこともある.9月頃産卵,卵のうはチリイソウロウの卵のうよりも小さく,淡色,宿主の網やその付近に吊るす〔中平AT23/24〕.
沖縄県名護市でオニグモの網に5頭侵入していた.同じ網にミナミノアカイソウロウもいたがそれよりも宿主に遠い位置にいた〔新海明K73〕.
まどい中のジョロウグモ幼体を捕食〔新海明k66〕. まどい中のナガマルコガネグモ幼体を捕食(西表島)〔谷川K70〕.
宮崎で8月下旬に交尾を見た〔池田1983〕. 奄美で8月上旬,オオジョロウグモの網に30頭もいた〔大河内AT49/50〕.
宮崎で8月頃産卵する〔松山他AT43〕.
倉敷市にてコガネグモの巣に多数居住.卵のうは提灯型.1卵のう中に24,25,33,37,42卵〔白AC7(3/4)〕.
卵のう長2〜4mm,巾2〜3mm,淡い茶色または灰色,2〜5個〔新海K47〕.
6月中ごろ交尾を終わると,網を去り,付近の枝や構築物の陰に横糸1本張り,中央から卵のうを吊るす.6月中旬から7月に出のう〔細野43〕.横浜市円海山ではほとんどジョロウグモに居候〔小菅ほかK77〕.
トビジロイソウロウグモ Argyrodes cyrindratus
THORELL,1889
成体は7〜9月,6mm,本州・四国・九州・南西諸島.オニグモ類やシロカネグモの網にいる〔東海84,森林87〕.
オニグモ類・ゴミグモ類の網に居候するが,他のイソウロウグモの様に宿主の網深く侵入せず,網の一隅,或いは近くの樹枝等から短い糸を引いて吊り下がっている.その姿勢は,腹部が円筒形で大きく,糸いぼが腹の基部近くにある関係か,垂直上位,他のイソウロウグモは平行背位に占座する.糸あかけたまま,放置された獲物に気づくと,吊り下がっている糸を延ばしながら宿主の網糸を伝って,近付き,糸の端を獲物につけ,獲物の周りの宿主の糸を切る.すると,宿主が包装した獲物は,イソウロウグモを乗せたまま,ブラリと振れて,網から離れる.入手した獲物が大きい場合は吊り糸の数を増して安定させてから,ゆっくり食う〔中平AT23/24〕.
島野浦ではアオオニグモの網に居候〔松山他AT43〕.
スギ-アズマネザサ群落の林縁部で地上3-1.5mのところに単独で枝間に糸を引き吊り下がる〔磯部K59〕.
交接の体勢は,チュウガタシロカネグモやキイロハラダカグモと殆ど同じ状態だが,雌雄の体はV字状ではなく,横に一直線に並ぶ〔中平AT28〕.
8月17日,千葉県天津小湊町・東大千葉演習林で造網中のオオシロカネグモの網にかかったアブを盗んだ.トビジロの糸の一端はオオシロカネのタテ糸1本と結ばれ,オオシロカネの横糸張り行動にあわせて宿主が離れるたびにこしきへと近付けていった.アブがかかり,宿主が捕獲するとトビジロは堂々と網上を歩き,こしきをかみ破った.宿主がこしきに戻るとトビジロはいったん逃げ,宿主がこしき下部で餌を食べ始めると,トビジロは餌の上に糸を付着させて餌を確保した.自分の体を確保する糸も引き,こしき下部へ下がって宿主と餌の間に体を突っ込み捕食し始めた.宿主が体を急に動かすとトビジロは餌から脚を離し,引いていた糸に引かれて逃げる〔新海AT89〕.
自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
ミナミノアカイソウロウグモ Argyrodes
flavescens (O.P.-Cambridge,1880)
成体は年中,雄2.7-4.3mm,雌2.9-5.3mm,南西諸島.スマトラ、インドネシア、スリランカ、マレーシア、パプア・ニューギニアにも分布〔谷川・千田・熊田AC45(1)〕.
オオジョロウグモの網にいる.シロカネイソウロウも同居していた(アカイソウロウグモとしての記録)〔大河内AT49/50〕.
オオジョロウに3〜4頭居候する(アカイソウロウグモとしての記録)〔下謝名AT41/42〕.
沖縄県名護市でオニグモの網に5頭侵入していた.同じ網にシロカネイソウロウもいたがそれよりも宿主に近い位置にいた〔新海明K73〕.
フタオイソウロウグモ Argyrodes fur BOES.et
STR.,1906
成体は6〜9月,2〜3mm,本州・四国・九州・南西諸島.サラグモ,クサグモの網にいることが多い〔東海84〕.
チャンスがあれば網主を攻撃する〔森林87〕.
クサ・コクサ・ヒメグモの網に居候し,チリイソウロウと共に居候している所も見られた.8月に1個卵のうを作り,クサグモ等の廃巣や落葉の中で越冬する.卵のう内の卵数は30〜40個位であった〔山川・熊田73〕.
不規則網を好む傾向がある.交接中,脱皮中,脱皮後に網主を襲う例を観察した.頭部の角のつきでたオス(ニセフタオイソウロウと仮称=現在はツノナガイソウロウグモとなる)がいる〔熊田AT70〕.
金華山ではアシナガサラグモ等によくみる〔大江AT40〕. 腹部の二叉の突出度は変化する.刺激すると丸っぽくなる〔池田K66〕.
卵のう長3〜5mm,巾2〜4mm,茶色,通常2個〔新海K47〕. シロカネイソウロウの卵のうを捕食〔新海明K59〕.
まどい中のアズマキシダグモ幼体を捕食〔新海明k66〕. アシナガサラグモの網内で幼体が死んだ宿主を捕食,飼育中に与えた蚊の死骸も捕食した〔平松K63〕.
チリイソウロウグモ Argyrodes kumadai CHIDA et TANIKAWA,1999
=Argyrodes fissifrons
O.P.-CAMBRIDGE,1869
成体は7〜9月,メス7〜8mm,オス6mm,本州・四国・九州・南西諸島.クサグモの網に居候するが,クモを食べることもある〔東海84〕.
クサグモ,コクサグモ,キヌアミグモ,スズミグモを捕えているのが記録されている〔森林87〕.
主としてクサグモの網(上方の不規則網の部分)に居候する.1網に10数頭を数えることもある.8月頃産卵し,卵のうを宿主の網に吊るす.短い柄のある直径3〜4mmの球形,赤褐色,下端は円筒状に突出し,その先端に子グモの出口ができる.1卵のう中に50卵内外〔中平AT23/24〕.
8月に2〜3個の卵のうを作る〔山川・熊田73〕.
クサグモが食われるのは脱皮中,または脱皮直後である.複数固体が居候していても,1頭がクサグモを補食した〔田中AT81〕.
スズミグモの網に居候する.雌雄で一つの網に居る例もあり.スズミグモよりも上方に位置するのが普通.奄美大島では8月上旬に産卵前である〔大河内AT49/50〕.
コクサグモの網に居候〔松山他AT43〕. 卵のうはスズミグモの網の端の方に吊るされる〔下謝名AT41/42〕.
ふ化日数は25日(8月16日〜9月9日)〔大利AT26/27〕.神奈川県松田町寄で雌雄同居を観察(1994年7月23日)〔池田K71〕.
卵のう長6〜8mm,巾5〜6mm,茶色で通常2〜3個〔新海K47〕. クサグモ迷網部のヤリグモの卵のう中のふ化幼体を捕食〔新海明K59〕.
日本産の本種はながらくArgyrodes
fissifronsと同定されてきたが,スリランカ産の基準標本を検査したところ,誤りであり,新種と判断された.オスの触肢ではfissifons特別できないが,メスの外雌器はまったく異なる.基準標本は沖縄県ヘド岬産.台湾・中国にも分布する〔千田・谷川AC48(1)〕.
ヒゲナガヤリグモ Argyrodes labiatus ZHU et
SONG,1991
自然教育園で1999年7月10日1雄が採集(工藤泰恵による),中国で記載.オス4.7mm、オスの頭部に前方へ突き出た突起がないこと,触肢の径節が符節の2倍以上.通常のヤリグモと混同されている〔小野・新海01〕.
イソウロウグモの1種 Argyrodes lanyuensis H.YOSHIDA,TSO et
SEVERINGHAUS,1998
台湾の蘭島から記載.オス3.5mm、メス2.6mm.この島にはチリイソウロウ,ミナミノイソウロウ,オナガグモ.オオジョロウの網に平均10頭は下らない.コソ泥盗みのほか網食いもする〔吉田ほかAC47(1)〕.
クロマルイソウロウグモ
Argyrodes melanosoma (YAGINUMA,1957)
Spheropistha属から転属.Spheropisthaの属徴が主に満腹時の腹部に基づく.他の属徴は説得力が弱い〔谷川AC47(1)〕.
クロマルイソウロウグモ
Argyrodes melanosoma (YAGINUMA,1957)
Spheropistha属から転属.Spheropisthaの属徴が主に満腹時の腹部に基づく.他の属徴は説得力が弱い〔谷川AC47(1)〕.
アカイソウロウグモ Argyrodes
miniaceus (DOLESCHALL,1867)
成体は7〜9月,メス5mm,オス3〜4mm,本州・四国・九州・南西諸島.コガネグモの円網にいるが,多くない〔東海84〕.
千葉県以西に分布〔森林87〕. 南西諸島の種は別種ミナミノアカイソウロウグモだった.西表島には生息〔谷川・千田AC45(1)〕.
関東地方では千葉県清澄山・神奈川県横須賀市・逗子市.横浜市栄区横浜自然観察の森でジョロウグモ雌成体の網に1頭居候,同網にシロカネイソウロウが5頭〔新海明ほかK72〕.
横須賀市逸見浄水場付近で雌成体,2頭はジョロウグモの網から,2頭はクサグモの網から記録(1996年8月15日)〔谷川K71〕.
主としてコガネグモ・オニグモ・ゴミグモ等円網を作るクモの網に居候する〔中平AT23/24〕.熊本県では小高い岡状の原野のクヌギとコザサの茂った所で,クヌギからコザサ間に張られたコガネグモの網に2〜4,5頭程,居候していた〔木庭AT19〕.
オオジョロウグモの網に居候.餌が網にかかるや,餌の周りにたかって捕食する.宿主の脚で払われると糸を引いたまま,いったん下がる.シロカネイソウロウも多い〔新海明K54〕.
クラカタウ諸島で記録〔吉田哉AC43(2)〕
ミヤシタイソウロウグモ
Argyrodes miyashitai TANIKAWA,1998
宮城県牡鹿町の6月の雌雄で記載.雄2.2-2.6mm、雌2.7-3.1mm.一見チリイソウロウグモに似ているが小さく,分類的にはクロマルイソウロウグモに近い.5-6月に親.千葉・神奈川からも記録〔谷川AC47(1)〕.
ツノナガイソウロウグモ
Argyrodes nipponicus KUMADA,1990
神奈川県津久井郡三井の7月の雌雄で記載.雄2.5-2.7mm、雌2.4-2.7mm.岩手県から鹿児島県まで検鏡.クサグモやコクサグモの網に侵入するほか、自分の網も張る〔熊田AC39(1)〕.
樹間や枝先などには張られず,地表近くの下草間に張られる.網にかかった昆虫を粘球糸を投げかけて捕獲.年1世代で6月下旬から8月にかけて産卵(3-6個の卵のう),出のうした子グモは親の餌を盗み食いしてから分散する.越冬前の時期は他のクモの網に居候することが多い.幼体で越冬し,翌春から自分の網を張り,5-6月に成熟する〔新海明AT97〕自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
アカイソウロウグモの一種 Argyrodes
sp.
西表島にて,オオジョロウグモの網で♀が♂の頭にかみついて交尾していた.♂が静止していて♀が接近をくり返していた〔谷川K64〕.=ミナミノアカイソウロウグモ
ヤリグモ Argyrodes saganus (DOEN.et
STR.,1906)
成体は6〜10月,メス9〜11mm,オス6〜8mm,全土.山麓や山地のサラグモ科,ヒメグモ科,クサグモの網などに侵入して,網の主を食べる〔東海84〕.
成体は6〜9月,産卵期は7〜9月で,樹枝の間,草の間に槍の先のような形の黄色または黄褐色の卵のうを作る.1卵のう中の卵数は50〜80個〔森林87〕.
クサグモ・オオヒメグモ・ユウレイグモ・ウズグモ・サラグモ・ゴミグモ等の網に,イソウロウグモのような姿勢でとまるが,網主や居候するクモを襲撃するために侵入し,機会を狙っているのである.8〜9月,成熟したメスは,目の荒い網で立方体の産室を作り,その中央に槍の穂形の卵のうを吊るし,見張る.卵のうは黄褐色の地に,暗灰色の線が板目状に分布している.子グモは筒状部の下端に孔を開けて出てくる.卵のうの形に長短2型がみられるが,種を異にするかどうかは不明〔中平23/24〕.
オオシロカネグモやサラグモの類を攻撃〔松山他AT43〕. ユノハマサラグモを網の中央で食べていた〔橋本AT33/34〕.
第1脚で不規則網にぶら下がり,第4脚間の粘球糸を獲物に投げつける.投げ無かった粘球糸は食べてしまう〔橋本AT30〕.
造網性の宿主を襲う〔中平AC16(2)〕. オナガグモを捕食していた〔谷川K61〕.
ヤリグモhオナガグモの背後から接近・捕獲した〔畑守・金野K77〕.ユウレイガガンボの一種を捕獲し,捕食した〔新海明K64〕.
淡黄色(黄色または灰黄色もあり)の卵のう20〜27mm長,巾3〜4mm1個を葉間に不規則に糸を引き,その中に吊るす.
稀に他のクモの網に吊るす〔新海K47〕.
飼育下で餌としてオオヒメグモ・クサグモ・シモングモ・ヒメグモなど,逆にヤリグモが殺られてしまったのはムナボシヒメグモ・ユカタヤマシログモ・ササグモ・オオヒメグモなど〔加藤むK67〕.
簡易加温箱の飼育下で出のう後3-4回の脱皮で成熟し,年4世代を得た(15頭の結果).
成熟するまでの平均日数は,8月生れが48日,2月生れが95日,1月生れが82日,4月生れが76日.
6令で成体になった個体の方が5令成体より大きかった.出のう後2回脱皮すれば(4令)顔前面の雄特有の刺毛で雌雄が判別可能〔加藤むK69〕.
旧名ベリンダイソウロウグモ. 自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
ハナナガイソウロウグモ Argyrodes xiphias
THORELL,1887
雄2.5-2.8mm、雌2.0-2.3mm.石垣島・与那国島から記録〔吉田哉AC42(1)〕.
クラカタウ諸島で記録,日本・台湾・中国・ビルマ・シンガポール・インドに分布〔吉田哉AC43(2)〕西表島に生息.3-8月に雌雄成体〔谷川K70〕.
オナガグモ Argyrodes cylindrogaster (SIMON,1888)
=Ariamnes cylindrogaster
SIMON,1888
成体は5〜8月,メス25〜30mm,オス15〜20mm,本州・四国・九州・南西諸島.樹枝葉間に数本の糸を引いた条網を張り,その糸を伝わってくる.クモを捕らえる〔東海84〕.
産卵期は6〜8月.樹枝の間に紡錘形をした2cm程の卵のうを吊るす.餌となるのはハシリグモ科,フクログモ科など徘徊性種が多い〔森林87〕.
5〜9月に不規則網状に糸を張り,その中に1個卵のうを作る〔山川・熊田73〕.
6月中旬長径15mm・短径6mmの卵のうを吊るし,ガードする.7月上旬50-60の幼体が出のうする.長野県〔細野43〕.卵のうの下部に出口がある〔千国AT77〕.
糸上を前進する時には第1・2脚で糸をたぐり,第3脚で糸を丸める.この時,右1脚で確保された糸は左2脚へ送られ左3脚で丸められる.方向転換の時は前方と後方の糸を糸いぼの箇所でつなぎ,転換して,前部で糸を切断してから,新しい糸を糸いぼから出しながら前進する.上方へ進む時には糸いぼから前へ糸がつながっている点が水平の糸上を進む時と異なる点である〔新海明AT49/50〕.
産卵期にヒメグモの網に居候する時あり〔松山他AT43〕.
糸には粘性がないが,粘性のある糸を獲物に投げつける.クモの幼生を条網にはわせたところ,第1・2脚で糸にぶら下がり,第4脚間にヤリグモ同様の粘球のついた糸を張り,獲物に投げつけた〔橋本AT33/34〕.
腹部を動かすことが出来る.ごく簡単な条網で糸の粘性は相当強い.占座姿勢は垂直上位.6〜7月頃産卵,卵のうはクモの体に比べると驚く程大型で黄褐色.網の一隅に吊るす〔中平AT23/24〕.
餌の取り方は橋本の観察通りの結果である〔大橋・新海明K19〕. ヤマシロオニグモを捕食し,ムナボシヒメグモに捕食される〔熊田K34〕.
ヤリグモに捕食されていた〔谷川K61〕. 出のう幼体が列を作って分散しているのを観察(1994年7月23日)〔池田K71〕.
淡褐色または黄色(下部にいくにつれ色が薄くなり,下部白色のものが多い)の卵のう13〜17mm長,4〜5mm巾,1個,葉または枝の間に不規則に糸を引いてその中に吊るす〔新海K47〕.
Argyrodes属とする〔八木沼86〕.
ヨツコブヒメグモ Chrosiothes subadides (BOES. et STR.,1906)
=Phoroncidia
subabides (BOES. et STR.,1906)
=Theridion subabides BOES.et
STR.,1906(=ジュズカケグモ)成体は4〜7月,メス2〜3mm,オス1.5〜2.5mm,本州・四国・九州・薩南諸島.草間に不規則網を張る〔東海84〕.
Theridionより転属.本州・四国・九州・沖縄〔吉田AC28(2)〕.
成体は4〜7月,メス2〜3mm,オス1.5〜2.5mm,本州・四国・九州・南西諸島.草間に不規則網を張る〔東海84〕. ヒシガタグモの一種 Meotipa
vesiculosa E.SIMON
1894として,1937年8月愛媛県温泉郡堀江村にて高橋幸雄採集の記録,腹部背面に4個の大きなコブがある.前の対はやや小さい〔植村AC4(3)〕.卵のうを糸いぼに付着する〔池田〕
オダカグモ Chrysso argiodiformis
(YAGINUMA,1952)
成体は7〜10月,メス3.5〜5mm,オス3〜4mm,本州・四国・九州・南西諸島.カシ,ツバキ,アオキなどの葉裏に不規則網を張る.関東以南に分布〔東海84〕.
樹葉裏の簡単な不規則網に平行背位に占座〔中平23/24〕. 埼玉県飯能市西吾野で2月に記録.北限か〔平松K73〕.
10月10日,神奈川県飯山観音で卵のう持ちや子グモなど多数生息〔新海K38〕. 母グモは未受精卵を食べる〔鈴木勝K44〕.
卵のう2〜3mm大,球形,1個を葉裏(カシ・ツバキ・ススキなど)へ〔新海K47〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
フタホシヒメグモ Chrysso bimaculatus
YOSHIDA,1998
高知筆山公園が基準産地.3-7月に成体,オス1.6mm,メス1.8mm,本州(神奈川・広島),四国(高知).体色は白,糸いぼの背面に2黒点〔吉田哉AC47(2)〕.=コガネヒメグモの一種
Chrysso sp.
神奈川県松田町寄で雌を杉林で採集,7月23日〔伴K70〕.
コガネヒメグモの一種 Chrysso lativentris
韓国で本種を発見〔木村K67〕.
ミナミオダカグモ Chrysso pulcherrima
(MELLO=LEITAO,1917)
奄美大島湯湾岳にて3月に雌雄採集.与論島・沖縄本島・西表島のほか西アフリカからアメリカに広く分布〔吉田哉AC42〕.
西表島では1・3・8月に雄,8月に雌〔谷川K70〕.
ホシミドリヒメグモ Chrysso foliata (L.KOCH,1878) =Chrysso punctifera
(YAGINUMA,1960)
成体は5〜8月,メス5〜6mm,オス3.5〜4mm,北海道・本州・四国・九州.山間部渓流上に多く,広葉樹葉裏に全粘性の不規則網(垂糸網)を張る.腹部の色彩斑紋には変異が多い.産卵期は6〜7月で白色(淡緑色の場合もある)球形の卵のうを葉裏に作る〔東海84〕.
80-90頭の子グモと同居する母グモにショウジョウバエを与えると,母が捕食してしばらくした後,5-6頭の子グモが一緒に捕食〔新海明K63,K65〕.
11月5日高尾山で採集した個体を野外保存し,11月10日より12L短日条件で飼育すると脱皮まで123日,14L長日条件では53日.1月30日では日長で差がなくなる.亜成体越冬を保証する機能が日長にある〔井上・加藤AT87〕.
金華山でケヤキに食するシャクトリガの幼虫を主に食す〔大江AT40〕. 卵色は淡黄色,1卵のうに300卵〔大利AT26/27〕.
卵のう4〜6mm大広葉樹の葉裏に〔新海K47〕. 自然環境指標種Bランク〔新海98〕.タイプ標本を検したところ,コッホが未成熟な雌でEro
foliataと記載した種は本種であった〔Ono02a〕.
コガネヒメグモの一種 Chrysso spiniventris
(O.P.-CAMBRIDGE,1869)
クラカタウ諸島で記録,バリ島・スリランカ・中国・台湾・日本に分布〔吉田哉AC43(2)〕
コガネヒメグモ Chrysso venusa (YAGINUMA,1957)
=Argyria属で新種記載
1957
成体は7〜9月,メス7〜8mm,オス4〜5mm.習性はホシミドリヒメグモと同じ.腹部の黄金色は刺激を与えると褐色に変化する〔東海84〕.
金鱗斑のない個体がいて,遺伝する〔新海明K62〕.
広葉樹の葉裏に大型の不規則網を張る.網は@上方と下方の葉の間に張る,A上方と側面の葉の間に張る,B上方の葉裏から出した下垂糸(10〜100cm)に昆虫・葉・枝などをつりさげた網の3形式があるがBの網はほとんど見ることはできない.産卵期は7〜8月で白色球形の卵のうは網の中に置き保護する.卵数は約70個.子グモは第1回脱皮前に卵のうの側面の穴より出て来る.その時の色彩は頭胸部半透明の白色,腹部はだいだい色で斑紋なく球形,第1回脱皮後,腹部はわずかに糸いぼを越えて上後方に突出し,黄金色の斑紋が表れる.斑紋の変異は幼生期ほど顕著である〔新海69〕.
開のうするが,自力でも出のうできる.出のう直後は吐き戻し給餌,その後親が採った餌を捕食,分散まぎわには親と共同餌捕獲をする.子が母を捕食することもある〔新海明K65〕.
子育て前期には吐き戻し給餌,後期には母グモの取った餌を子グモに与える〔新海明・吉田嗣郎・伊藤浩見AT95〕.
夜間,メスの網上でオス間の闘争を観察した(1989年7月18日,須走).行動は@接近,A第1脚による糸の引合い,B第1脚による打ち合い,C第2・3脚による打ち合い,D組み打ち,Eかみ合い,F離れの順で進行する〔池田K61〕.
7月に1〜2個卵のうを作る〔山川・熊田73〕.
1955年8月9日いわわき山にて八木沼採集,記載,葉裏に不規則網を張り,他のクモの網で見つかる〔八木沼AC15(1)〕.
体色変化するクモ.生態詳細記述あり〔植村AC15(1)〕.
白色卵のう長4〜6mm,巾3・8〜5・5mm,一方がとがった球形,1個を広葉樹の葉裏へ〔新海K47〕. Chryssoに転属〔八木沼AC15(2)〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
ヒシガタヒメグモ Chrysso vesiculosa (SIMON,)
紀伊半島熊野市で7月25日,雌採集〔新海明K69〕.
高知県で7月下旬に糸いぼに付着させて卵のうを保持する雌を観察〔池田95〕.
リュウキュウミドリヒメグモ Chrysso viridiventris
YOSHIDA,1996
久米島産で記載.雄2.5mm.雌3.2mm.3月に雌雄成体.緑色球形のヒメグモ.石垣島・西表島にも分布〔吉田哉AC45(2)〕.
沖縄本島にも分布〔池田98〕.
サヤヒメグモ Coleosoma blandum O.P.-CAMBRIDGE,1882
生息環境・網型など全て不明〔新海AC27S〕.
クラカタウ諸島で記録,バリ島・スリランカ・中国・フィリピン・日本に分布〔吉田哉AC43(2)〕
ヨシダサヤヒメグモ Coleosoma floridanum
BANKS,1900
メス1.5-2.5mm,オス1.8-2.1mm,西表島で水田の畦の草間から採集された.腹部の斑紋には変異がある〔谷川AT98/99〕.
チクニサヤヒメグモ Coleosoma margaritum
YOSHIDA,1984
メス3mm,オス2mm,本州に分布.長野で模式種.形態はヤホシサヤヒメグモに似るが腹部は灰褐色である〔吉田AC33(2)〕.
ヤホシサヤヒメグモ Coleosoma octomaculatum (BOES.et STR.,1906)
=Theridion
octomaculatum BOES. et
STR.,1906
成体は1年中,2〜3mm,全土.水田・河原に特に多く,草間に不規則網をはる.オスの腹部は細長い〔東海84〕.
地上から20〜30cmに不規則網を張り,昆虫を捕獲.宇都宮市峰町の水田(6月にスミチオン乳剤散布)では10月頃に1u当り8個体前後,成体は7〜10月,秋期に大量の空中移動をし,11〜12月にかけて水田からはとんど姿を消し,越冬は水田外で幼体で行う〔浜村AC22(2)〕.
7月に産卵からハッチまで5日間,60卵〔鈴木勝K41〕. 1回の交接で2回産卵〔鈴木勝K42〕.
ヨロイヒメグモ Comaroma maculosum
OI,1960
赤褐色あるいは赤色の微少な(1〜1.5mm)のクモである.落葉の下より採集される.腹部背面に特異な斑紋がある〔新海70〕.
落葉中の空間に簡単に糸を引いて網とし,糸の中間に静止していることが新海により観察されている〔山川・熊田79〕.
トガリクサチヒメグモ Coscinida japonica YOSHIDA,1994
オス2.4mm,メス 2.2mm,
3月5日,伊豆半島天城湯が島町市山で熊田が採集,メスは愛知県で6-7月に緒方が採集.模式属は中国産の別種による〔吉田哉AC43(1)〕西表島では1・2・3月に雄,1・3・12月に雌〔谷川K70〕.
室内飼育にて,ムラクモヒシガタグモ同様のH字網を張る.卵のう構造も似ているが著しく小さい.内部のワタ袋の直径が1.2-2.0mmで中には8-12個の卵.1雌が4月20日から6月21日まで8個も枯葉上に卵のうを作った.総卵数は79個〔小笠原K74〕.
アマミミジングモ Dipoena amamiensis
(YOSHIDA,1985)
アマミカブトヒメグモをPholcommaから転属.岡山・広島・奄美大島・石垣島にも分布〔吉田哉AC40(2)〕.
アカクロミジングモ Dipoena caninotata BOES. et STR.,1906
九州に分布か?〔八木沼77〕.
ボカシミジングモ Dipoena castrata BOES. et
STR.,1906
成体は7〜9月,3〜4mm,北海道・本州・四国・九州・薩南諸島.樹葉間・草間を徘徊,または糸を引いて静止し,近くを通る大型のアリに糸をかけて捕らえる〔東海84〕.
自分の体より大きいアリを簡単な網を張って,そこにおびき寄せて捕える〔新海AC43(2)〕.
1頭のアリを捕獲していることが多い.大型種と小形のケアリ(単独で餌探しをする種類)が半々だった〔梅田泰佳・新海明・宮下直AC45(1)〕.
通常頭胸部は暗褐色,腹部は黒褐色だが,共に赤色型,黒色型,白色型など色彩変異が見られる〔新海69〕.
アカミジングモ Dipoena chikunii
YOSHIDA,1988
新種記載〔吉田哉AC36〕.Thymoites属に転属〔吉田哉AC44(2)〕.
キベリミジングモ Dipoena flavomarginata BOES. et
STR.,1906
成体は5〜8月,2〜3mm,本州・四国・九州.下草の根元に生息し,下を通るアリを捕らえる〔東海84〕.アリを専門に捕食.樹皮上や小枝で待機し,アリを捕えると空中にぶら下がって糸をかけて食す〔山川・熊田79〕.
ヤマトミジングモ Dipoena japonica (YOSHIDA,1985) Pholcommaから転属.山形・長野・愛知・大阪・岡山・沖縄西表島・台湾で記録〔吉田哉AC40(2)〕. 西表島で普通〔谷川K70〕.
ムナボソミジングモ Dipoena longisternum BOES. et STR.,1906
九州に分布〔八木沼77〕.
カニミジングモ Dipoena mustelina
(SIMON,1888)
成体は6〜9月,メス3〜4mm,オス2.5〜3.5mm,全土.樹葉間・草間を徘徊,または糸を引いて静止し,近くを通る大型のアリに糸をかけて捕らえる〔東海84〕.
腹部斑紋に変異が多く,全体黒色のものもある〔新海69〕. 大型から小型までもっとも多くの種類のアリを捕獲していた〔梅田泰佳・新海明・宮下直AC45(1)〕.
落葉の下に多く見られる〔山川・熊田73〕. クラカタウ諸島でも記録〔吉田哉AC43(2)〕
コアカクロミジングモ Dipoena mutilata BOES.et
STR.,1906
成体は5〜10月,メス1.5〜2mm,オス1〜1.5mm,本州・九州.下草の根元に生息し,下を通るアリを捕らえる〔東海84〕.
昼間は草の根元付近に潜み,夜間葉先や草の間に糸を引いて,その糸に静止したり,移動している所が見られた〔山川・熊田79〕.
変異が多く,淡色型から褐色型まで見られる〔新海77〕. 自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
クロミジングモ Dipoena okumae YOSHIDA,1988
新種記載〔吉田哉AC36〕.
Thymoites属に転属〔吉田哉AC44(2)〕.自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
シモフリミジングモ Dipoena punctisparsa
YAGINUMA,1967
成体は5〜8月,3〜4mm,北海道・本州.草間を徘徊,または糸をひいて静止し,近くを通るアリを捕らえる.小型のアリを多数捕らえる習性がある〔東海84〕.
自分の体より小さいアリを枝の表面などで捕え,数匹をまとめて団子状にして食べる〔新海AC43(2)〕.
ケアリ属(特にトビイロケアリ)を一度に多く捕食.梅の果樹などで採集〔梅田泰佳・新海明・宮下直AC45(1)〕.
白色球形(直径約5mm)の卵のうを容器に付着,8月4日産卵,12日にふ化,14〜15日に2令幼体,20日16頭出のう〔鈴木勝K46〕.
ヨシダミジングモ Dipoena yoshidai ONO,199
青森県八甲田山で1992年7月17日に雄成体の記録あり〔池田K65〕
キタコノハグモ Enoplognatha camtschadalica KULCZYNSKI,1885
千島列島・本州に分布〔八木沼77〕.
セマダラコノハグモ Enoplognatha dorsinotata BOES. et
STR.,1906
粘性不規則網〔新海79〕.神社や山小屋の軒,物置の隅等に不規則網を張り,平行背位に占座.5〜6月に産卵.1網に3個程の卵のうを吊るす.卵のうは褐色の糸で作られ,球形〔中平AT23/24〕.
ヤマトコノハグモ Enoplognatha japonica
BOS.et.STR.,1906
成体は5〜10月,メス6〜8mm,オス4〜6mm,北海道・本州・四国・九州.水田に多く,稲株の下部,畦の草間,土の割れ目に不規則網を張る.2化性〔東海84〕.
粘性不規則網〔新海79〕.
堺市の水田では産卵は6月初旬と8月中旬の2化.8月上旬に亜成体の1世代目の調査では卵のうは7個程産卵され(ほぼ10日間間隔で70日間),1卵のう中の卵数は約120個.卵のう期間約12日,雌雄とも5回脱皮,6令目に成体となる(卵のう脱出時を1令とした),雌はふ化後約63日で成体,雄は約58日で成体〔田中AC25(1)〕.
8月下旬と10月上中旬に個体数のピークがある.10月10日にはひと株当たり12頭であった.集中判定法(森下1959)によると,1令では概して集中分布をしているが,2令でランダム分布への移行が見られた.6令で排列分布の傾向を示した〔田中AC26(2)〕.
宇都宮市峰町の水田(6月にスミチオン乳剤散布)では稲作期間中は1u当り1個体内外の密度だが,刈り取り間近か刈り取り後に1u当り6〜7個体の高密度となる〔浜村AC22(2)〕.
本種のいる稲株には他の種はあまりよりつかない.卵のうは褐色の糸で作られ球形〔中平AT23/24〕. 1回の交接で3回産卵〔鈴木勝K42〕.
シロタマヒメグモ Enoplognatha marginata
YAGINUMA,1964
成体は7〜9月,メス6〜7mm,オス4〜5mm,本州(中部・関東地方).1000m前後の高原に生息し,草間に不規則網を張る.産卵期は8〜9月で草の葉を丸めて住居を作り中に産卵する.卵は20日程でふ化し,幼体は黒色をしている.中部,関東地方の高地では普通に見られるが,他の地方では採集されていない〔東海84〕.メス5・8mm,1950年7月24日採集,オス5・3mm,1957年5月27日採集〔八木沼AC19(1)〕.
ヤマイモの葉元に荒く作った袋状の住居に潜んでいた〔山川・熊田79〕.本州・四国・九州に分布〔八木沼77〕.
白色球形または一方がとがった球形の卵のう6〜8mm大1個を葉(主にササ)を曲げて(または葉を集めて)住居を作り,その中に置く〔新海K47〕.
大雪山および厚岸町でも採集された〔谷川・堀K55〕.
カレハヒメグモ Enoplognatha transversifoveata (BOES. et
STR.,1906)
成体は4〜8月,メス6〜8mm,オス4〜5mm,本州・四国・九州.家の塀,樹皮の割れ目,がけのくぼみなどに住居を作り,そこから目の細かい不規則網を張る〔東海84〕.
粘性不規則網〔新海79〕. 11〜12月に2〜3個の卵のうを作る〔山川・熊田73〕.
5〜6月に産卵.5月7日,31日,6月2日,4日,5日,7日,11日と連続7回産卵した.卵のうは次第に小さくなる(直径6mmから3mmまで)〔大利AT26/27〕.
植物園で樹の洞の中に亜成体で越冬〔植村AT5〕. 黄色または淡褐色球形卵のう6〜8mm大を2〜4個,網の上部または側面に〔新海K47〕.
都市環境指標種〔新海98〕.
ヒシガタグモ Episinus affinis BOES. et
STR.,1906
成体は6〜10月,メス4.5〜6mm,オス4mm,全土〔東海84〕. 冬期落葉の中で越冬している〔山川・熊田73〕.
台湾・韓国にも分布〔大熊AC43(1)〕. 夜間,逆Y字型網を張り,枝葉や地表をはう虫を吊り上げて捕る〔池田AT85〕.
10月25日に33頭出のう〔池田ほかK51〕. 初島で夜間,アリ,トンビグモの1種を捕食〔稲葉K56〕.
白色雨だれ型の卵のう(周囲は縮れた糸でおおわれる)4〜5mm長,3〜4mm巾を1個,スゲの葉裏に〔新海K47〕.
チクニヒシガタグモ Episinus chikunii
YOSHIDA,1985
オス3-5mm,メス5-6mm,7月14-28日に♂,長野県〔大熊AC43(1)〕.
オス4・3mm,メス5・5mm,10月17日,長野県三叉で千国が採集〔吉田哉85〕
シモフリヒシガタグモ Episinus kitazawai
YAGINUMA,1958
成体は6〜8月,メス4〜5mm,オス3〜4mm,北海道・本州.東北地方以北に多い寒地性のクモで,中部・関東地方では高地に生息する〔東海84〕.
大分県竹田市祖母山でも採集〔大熊AC43(1)〕.
台湾産ヒシガタグモの一種 Episinus makiharai
OKUMA,1994
オス3.7mm,5月下旬,メス4.5-6.0mm,5月下旬-6月上旬,台湾に分布.H.牧原により採集〔大熊AC43(1)〕
ムラクモヒシガタグモ Episinus nubilus
YAGINUMA,1960
成体は6〜10月,メス4〜5mm,オス3〜4mm,北海道・本州・九州.草間,石垣,樹枝間などに生息し,X字状網(又は逆Y字状網)を張る.X字状網の前脚先端の糸の岩あるいは樹木の接点付近には粘球がつけられており,それに触れたアリまたは他の昆虫を引き上げて捕食する〔東海84〕.
冬期,落葉の下より採集される〔新海69〕. 9月に卵のうを作る.冬期は落葉中で越冬する〔山川・熊田73〕.
日中は造網せず,枝上や葉裏で静止している.日没後,葉先や枝先に仰向けにとまり,第4脚で糸を繰り出す.糸端が葉や枝につくと補強して,中途で切断し,糸を出しながら水平糸を延長する.中心を決めると,そこから新しい糸を引き出して下がり,地表に付着してから,昇ってくる.中心から左右どちらかへ移動し,そこから又下がり,地表につけて戻り,糸を体で引き下げて定位する.網はX字型になる.夜明けに撤収される.交接は8月下旬〜9月下旬に観察された.交接の段階は@探索行動(糸を流しながら移動する),A交接糸(オスの流した糸がメスの網にかかると,メスは下糸を切り,オスと一直線になる),B線信号(オスは糸をはじいて線信号を送る),C歩脚のふれあい(ダイレクト・コンタクト),D試しの挿入,E真の挿入,F移精.卵のうは飼育器の石下に作られた.直径5mmの白色球形で,ヒシガタグモの卵のうよりやわらかな感じがする(周囲の縮れた糸が細いため)〔池田ほかAT82〕.
神奈川の真鶴でスゲの根元で越冬していた.背甲幅と背甲長より2〜4令の幼体と推定した〔池田AT84〕.
5月中旬から5令が増加,6月上旬に6令(成体)となる.個体数をみると,7月下旬に4令,8月下旬に5令の集中があり,6月と9月の2化性の可能性がある〔池田AT85〕.
下糸の地表から5mm程,粘球がある.オオヒメグモ式の捕虫をする.2本の下糸のうち1本が残り,捕食中にそれに虫がかかることもある〔池田ほかK49〕.
暗くすると日中でも造網を始める〔池田ほかK50〕.
白色球形の卵のうは5mm前後,少なくとも2個産卵,61卵,50卵,別のメスは46卵,53卵,別のメスは18卵.卵直径656マイクロメートル.上糸の長さの補正のために造網のさい,一度地表へ下りてみる〔池田K51〕.
台湾産ヒシガタグモの一種 Episinus punctisparsus
YOSHIDA,1983
オス3.5mm,7月10日,メスは未知,台湾に分布.M.吉村により採集〔大熊AC43(1)〕
台湾産ヒシガタグモの一種 Episinus yoshidai
OKUMA,1994
オス4.2mm,10月中旬,メス4.1-4.6mm,5月下旬・10月中旬,台湾に分布.吉田(1983)によりE.bicornutus
として記載された種の♀は本種(Holotypeの♂はムラクモヒシガタグモだった)〔大熊AC43(1)〕
キマダラヒラタヒメグモ Euryopis flavomaculata
(C.KOCH,1836)
1970年7月17日に新海明が尾瀬ガ原で採集,1977年7月12日に熊田憲一が霧多布のかん木林内で1♂採集〔熊田K61〕.
フタホシヒラタヒメグモ Euryopis iharai
YOSHIDA,1992
雄1.6mm、雌1.8mm.雌の背腹に一対の黄色点.広島県で8月に雌雄採集,山口県と与那国島に分布〔吉田哉AC41(2)〕.
ヤホシヒラタヒメグモ Euryopis octomaculata
(PAIK,1995)
雄2.2mm,雌2.5mm.雄の初記載.韓国でSteatoda属として記載された種を転属.岡山県上斎原村で6月に雌雄を記録〔吉田哉AC46(2)〕.
シロカネヒラタヒメグモ Euryopis taczanowskii
KEYSERLING,1886
雌雄2-3mm.与論島・伊是名島・沖縄本島のほかアメリカ・ニューギニア・スリランカに分布〔吉田哉AC(2)〕.
セアカゴケグモ Latrodectus hasseltii
THORELL,1870
1995年11月に大阪府域で1000頭以上が発見された.卵のうも多数発見.幸い被害はなかった〔池田〕.
神戸で約200匹を薬散で駆除〔池田01〕.雌雄の図解〔池田K70〕. 沖縄県では1996年5月20日泡瀬通信隊基地で雌亜成体を発見〔下謝名AC45(2)〕.
αラトロトキシンを検出〔木村明生ほかAC45(2)〕. 過冷却点は餌種によって異なった〔田中一・渡辺匡彦AC46(1)〕.
都市環境指標種〔新海98〕.
ハイイロゴケグモ Latrodectus geometricus
(C.L.KOCH,1841)
1996年11月に横浜市本牧埠頭公園で雌が採集され,池田が同定.その後,東京・横浜・名古屋・福岡・那覇など港で発見された.コンテナや漁船などによって移入して来る〔池田96:小野AC44(2)〕.
12月16日に亜成体雄は飼育下で1月20日に最終脱皮,その後10週間以上生存〔加藤むK71〕.
卵のうには小さな突起がある.横浜市本牧公園で採取した20卵のう中,計測したもので卵数は 1個の卵のう中の卵数は 69個,136個,139個,
145個,151個,262個,幼体数は136と139,脱皮殻262だった〔木村知K70〕. 雌雄の図解〔池田K70〕.
沖縄県では1995年12月6日安謝新港周辺で記録〔下謝名AC45(2)〕.2001年も横浜本牧埠頭公園にて採集された〔池田01〕
ゴケグモ Latrodectus mactuns THORELL,1870
卵のうの40%がクモタマゴバエにやられる〔岸田AC2(3)〕.
アカオビゴケグモ (=セアカゴケグモ.ヤエヤマゴケグモ) Latrodectus sp.
学名と和名について〔小野AC45(1)〕.
1933年、台湾におけるゴケグモ騒動の顛末〔萱嶋AC45(1)〕. 沖縄県では波照間島・石垣島・西表島に生息〔下謝名AC45(2)〕.
沖縄県西表島大富にて道路沿いの側溝・水抜き穴に造網.同じ所にハンゲツオスナキグモもいる時もあった〔谷川K71〕.
ハラナガヒシガタグモ Moneta caudifer (DOEN.et STR.,1906)
= Episinus caudifer
DOEN.et
STR.,1906
オス2.8-3.1mm,6月中旬,メス3.5-4.0mm,6月−8月上旬,北海道〜九州に分布.Moneta属に転属.同じくMonetaに転属したオナガヒシガタグモ
E.mirabilis (BOES.et STR.)は別種である〔大熊AC43(1)〕.オナガヒシガタグモ E.mirabilis (BOES.et
STR.)は本種である.和名はハラナガヒシガタグモとし,学名はE.mirabilisとする〔吉田哉85〕.2月にビーティングで枝上からオスの亜成体が採れる.箱根の大涌谷では6月に雌雄成体.網性は不明〔池田〕.
自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
オナガヒシガタグモ Moneta mirabilis (BOES.et
STR.,1906)
オス4.9mm,6月中旬,メス5-6mm,6月,九州(宮崎県)と台湾に分布.Moneta属に転属〔大熊AC43(1)〕
台湾産ヒメヒシガタグモの一種 Moneta spiniger
O.P.-CAMBRIDGE,1870
もとのMoneta属に転属.オス2.6mm,3月27日,メス3-5mm,3月・6月,台湾・インドネシアから東アフリカまで分布〔大熊AC43(1)〕.
ヤエヤマヒシガタグモ Moneta tanikawai (YOSHIDA,1991)
=Episinus tanikawai
YOSHIDA,1991
オス3.8-4.0mm,6-8月,メス4-5mm,6-8月・12月,Moneta属に転属.南西諸島に分布〔大熊AC43(1)〕.
オス3.7mm,メス4.6mm.西表島・石垣島および琉球列島に分布.石垣島のE.yoshimuraiは本種だった〔吉田哉AC40(1)〕.
ヒラヒシガタグモ Moneta yoshimurai (YOSHIDA,1983)
= Episinus yoshimurai
YOSHIDA,1983
Moneta属に転属〔大熊AC43(1)〕.
オス3・2mm,7月10日,メス不明,石垣島および台湾で7月に採集された〔吉田哉AC31(2)〕.
石垣島の雄幼体はヤエヤマヒシガタグモだった〔吉田哉AC40(1)〕.
オツヌグモ Otsunus delicatus KISHIDA
?
1908年8月2日石川県白山の雄にて岸田記載.1953年8月2日,千国が白馬岳頂上2933mのハイマツの根元の岩間に出来た薄暗い凹んだ穴に住む.穴の口もとに水平に直径15〜20cm程の薄い膜状の網を作って,その中央下面に仰向けに座す.雌3・6mm.千国仮称はハイマツヒメグモ〔千国AC14(1)〕.
ヤホシヒメグモ Coleosoma octomaculatum (BOES. et
STR.,1906)
成体は7〜10月,2〜3mm,全土.〔中平〕.
広葉樹の葉裏に不規則網をはる.水田にも多く,稲株の下部に不規則網をはり,平行背位に占座する.一時に種々の段階のものを採集できる.卵のうは白色球形で,糸いぼにつけている〔中平AT23/24〕.
宮崎県でササに造網するものが多い.5月頃産卵する〔松山他AT43〕. 糸いぼに卵のうをつける〔有田AT26/27〕.
ハラダカツクネグモ Phoroncidia altiventris
YOSHIDA,1985
雄1.0〜1.2mm,雌1.8〜2.0mm.成熟期は4-6月.分布は本州・九州〔千国89〕.
自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
ツクネグモ Phoroncidia piluta
(KARSCH,1879)
成体は4〜6月と9〜11月,2〜2.5mm,本州・四国・九州.杉の葉の間に,長さ5〜10cmの1本の糸をひいただけの簡単な条網をはる.糸の粘着力は強く,2〜3mmの小さな獲物がかかる〔学研76〕.
杉・ヒノキ等の間に不規則網をはる.秋〜春にかけて見られる〔山川・熊田73〕. 粘性条網〔新海79〕.
タマバエ科のオスばかりが網にかかっている〔新海明AT92〕.
1990年4月28日,君津市の東大演習林内で造網.@鉛直の糸を張る,A上方の糸を巻き上げながら粘糸を出す,Bあと数cmのところで粘糸を出すのをやめ,1cm上へ行って下向きになる,C3・4脚で後ずさりながら後方の糸を巻き上げた.この間60-70秒〔新海明K61〕.
左前脚1本で条網を保持することがある〔新海明k66〕.
1989年3月25日,君津市の東大演習林内で交尾.@♂の探索,A♂が枝上を徘徊,B♀は枯葉から糸上へ移動(16:29),C♂の追尾・接触,D向き合って交尾(16:30),E突然の離れ(16:37)と進行.他にも数頭の雌雄を観察〔新海明K61〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
リュウキュウツクネグモ Phoroncidia ryukyuensis
YOSHIDA,1975
琉球列島に分布.雌雄2mm〔吉田AC26(2)〕.
ミナミモリヒメグモ Robertus nipponicus
YOSHIDA,1995
雄2.1mm、雌は不明.熊本県熊本市で6月〔吉田哉AC44(2)〕
オガタモリヒメグモ Robertus ogatai
YOSHIDA,1995
雄3.0mm、雌3.5mm、栃木県日光市雲竜渓谷で5月の雌雄を模式標本に記載.ほかの既知産地は山形・長野〔吉田哉AC44(2)〕
サイトウモリヒメグモ Robertus saitoi
YOSHIDA,1995
雄2.9mm、雌3.5mm、5月.栃木県藤岡町渡良瀬遊水池を模式産地に記載〔吉田哉AC44(2)〕
キタモリヒメグモ Robertus sibricus ESKOV,1987
北海道利尻島から記録〔吉田哉AC44(2)〕
クロマルイソウロウグモ Spheropistha melanosoma
YAGINUMA,1957
高知北部山地のクモ.オオヒメグモの網に居候する.宿主のいない網にも居候する.7月,シロカネイソウロウグモの卵のうを少し大きくし,赤褐色にしたような卵のうを宿主の網に吊るす〔中平AT23/24〕.
1953年7月29日中平による採集,生態は高知県の中平氏と広島県の大志茂氏によれば,1〜3個体がオオヒメグモの網にいて子グモと同居し,卵のうをその網内に作る.卵のうの形はConopisthaと同様〔八木沼AC15(1)〕.
オオヒメグモの網に寄生し,宿主およびその卵のうから出のうした直後の子グモを捕食していた.粘球糸を用いず,咬みついて捕食した.餌盗みは観察されなかった〔新海明AT93〕.
神奈川県三浦市小網代にて7月にオオヒメグモの網から記録.県内では4例目〔安田K43〕.
ハンゲツオスナキグモ Steatoda cavernicola (BOES.et
STR.,1906)
成体は5〜9月,メス7〜9mm,オス5〜6mm,全土〔学研76〕.
岩の割れ目,崖のくぼみ等に不規則網をはり,その奥に住居を作る.5月下旬から6月にかけての産卵期に黄白色の卵のうを作る〔新海69〕.
幼生は腹部に白色の横すじがある〔学研76〕.
崖のくぼみ,ススキの根元,積藁の隙間等に,その前面を覆うように不規則網を張り,その中央から奥へトンネル状住居を作る.全体として網目の荒い漏斗網といった感じの網.トンネル中に平行背位に占座する.6月頃,白色,球形の卵のうを作り,口器に保持する.食物を取る時や休息する時は,卵のうを網の一部に吊るす.網をゆすると転げ落ちる程の粗雑な吊るし様である.7月頃分散,亜成体越冬で3月頃には造網活動を開始する〔中平AT23/24〕.
富士山須走五合目にて,10月の幼体の網はシート部を欠いた不規則網,6月の成体の網はシート部の付いた不規則網だった.シート部からは捕獲用の粘糸が伸びていた.虫をシートに落とすと,接近・1脚で触れる・4脚で粘球糸を投げかけた.自然での餌は甲虫が多かった〔新海明K64〕.
沖縄では,住居を土中に作り,入口の方には捕獲網としての複雑な立体網を張り(大きさ6〜8cm),クモは漏斗状の通路(長さ1〜2cm)を経て,入口の方を向いて待機している.住居(長さ5〜7cm)の中は糸を張っていない.19個体採集したがメスばかりである〔下謝名AT28〕.
7〜8月に2〜3個の卵のうを作る.山川の飼育によれば,未受精卵だが,7〜10月に5個の卵のうを作った.群生していることもある〔山川・熊田73〕.
大阪での観察による.網は内部ほど糸が密になっていて,外部の糸で網全体を固定している.その下面はシート状である.この下面にいて,補食をする.地中の住居の側面には糸が入口から底の方まで達していて振動を伝えるものと思われる.粘糸は第4脚間にわたすようにして持ち,他の6脚で体を支えて,粘糸を獲物にひっかけてたぐる.獲物は穴の上まで運んで食べる.卵のうは直径7〜8mm程の球形で淡黄土色.固定せずに穴の上部にあり,親グモがそれを抱きかかえるようにしている.5月12日に産卵して21日目にふ化(出のう?),10日程まどいをしていた〔岡野AT66〕.
粘性不規則網〔新海79〕. コガネマル Tyrolida pulcher
KISHIDAとして,本州では土中・石下・積石の中に越冬中発見,三宅島では土壁の凹所にオオヒメの巣を縮小した様な直径3cm程度の網を張り,奥に管巣があり,底で獲物のかかるのを待つ.造巣よりヒメグモの仲間に近似〔仲辻AC1(2)〕.
幼体の斑紋はツリガネグモSteatoda
cavernicola(またはツリガネヌサグモ)と同様〔新海K9,K15,ツリガネグモはハンゲツのオスの幼体か?八木沼K25〕.
出のう後6回の脱皮で成体.脱皮は第4脚けい節が赤色から黄色に変わるので分かる.脱皮は背甲の前から割れる〔加藤むK70〕.
白色(またはやや黄色,緑色)球形の卵のう5〜8mm大,住居の奥に1個〔新海K47〕.
ゴマダラヒメグモ Steatoda albomaculata
(DeGeer,1778)
成体は6〜9月,メス5〜7mm,オス4〜6mm,本州.中部・関東地方以外では採集されていない〔東海84〕.
粘性不規則網〔新海79〕.
比較的広い河原の石の下に住み,網をはり出している.斑紋のはっきりしているものから,黒色に近い色彩を持つものまである.7〜9月,白色球形の卵のうを3〜4個作る〔山川・熊田79〕.
増水しても水が来ない所か,日当りがよく水はけのよい乾燥した所〔貞元K62〕. 5月12日相模川原で採集〔K40〕.
1995年神奈川県酒匂川河川敷に小田原市から山北町岩流瀬まで生息.一年中いろんな齢がいる.帰化種である〔池田1996〕.
ナナホシヒメグモ Steatoda erigoniformis
(O.P.-CAMBRIDGE,1872)
成体は6〜7月,雌雄3mm前後,草間に不規則網を張る.分布は本州・四国・九州・南西諸島〔千国89〕.
都市環境指標種〔新海98〕.
マダラヒメグモ Steatoda triangulosa
(WALCKENAER,)
1982年2月に愛知県で初記録〔八木沼86(図鑑の外雌器は不正:池田)〕.
1994年8月21日石川県金沢市の青少年会館の外壁の窪みや鉢の間に多数生息.斑紋は多型を示した〔池田94〕.
1995年末からのゴケグモ騒動で各地の港湾地域が調査され,発見があいついだ.広分布する帰化種である〔池田96〕.
名古屋港周辺の輸入品倉庫でマンホール・側溝などに多数生息.各ステージ〔須賀AC45(2)〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
スネグロオチバヒメグモ Stemmops nipponicus
YAGINUMA,1969
成体は1年中,メス2.5〜3mm,オス2〜2.5mm,北海道・本州・四国・九州〔東海84〕.
本州各地の落葉下より採集.北アメリカの固有属とされていた〔八木沼AC22(1)〕.
地上やリターをはいかいしている他,落葉中の空間に簡単な網をはるものも見られた〔山川・熊田79〕. 倒木下にも不規則網を張る〔東海84〕.
1988年6月14日交尾〔稲葉K59〕
ミョージンヒメグモ Sunitorypha linyphoides
KOMATSU,1960
長野県風穴洞,1948年6月8日に1オス(3・9mm),同年7月1日に2メス(4・4mm).不規則網.暗い所のものほど色彩が乏しい.真洞窟性種へ移行の途上にある〔小松AC17(1)〕
サトヒメグモ Theridion adamsoni
BERLAND,1934
オス2・7mm,メス3・6mm,本州以南に分布.オオヒメグモを捕食していた.成体は1年中,卵のう(白っぽい暗赤色)は東京都にて10月15日と12月1日に確認.ムナボシヒメグモと同様の習性で同所に生息することも多い〔熊田AT88〕.
新しい卵のうは球状.ツリガネヒメグモを捕食〔熊田AT89〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
バラギヒメグモ Theridion chikunii
YAGINUMA,1960
成体は5〜7月,メス4〜5mm,オス3〜4mm,北海道・本州・四国・九州〔東海84〕.
テント網,庭,生垣,草原に生息〔新海79,80〕. 産卵期は6〜7月,卵のうは1個作る〔学研76〕.
木の枝,葉裏に不規則網を上部に持った平面的な網をはり,不規則網の上に簡単な占座箇所を作る〔新海69〕. 網の下側から獲物に粘糸をかける〔学研76〕.
5〜8月に2〜3個の卵のうを作る.〔山川・熊田73〕. 宮崎県で6月頃産卵する〔松山他AT43〕. 108卵〔松本K42〕.
母グモは未受精卵を食べる〔鈴木勝K44〕. 白色球形の卵のう3・5〜5・5mm大,網上部の葉裏〔新海K46〕.
ヒロハヒメグモ Theridion latifolium
YAGINUMA,1960
成体は5〜7月,メス5〜6mm,オス4〜5mm,北海道・本州・四国・九州〔学研76〕.
木の枝,葉裏に不規則網を上部に持った平面的な網をはり,不規則網の上に簡単な占座箇所を作る.『テント網』.バラギヒメグモが姿を消す10月中旬頃交替に現れる.幼生か亜成体で越冬する.〔新海69〕.
自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
シモフリヒメグモ Theridion lyricum
WALCKENAER,1841
メス2・5〜3・5mm,オス2・1〜2・8mm.本州・北アメリカ東部に分布.日陰の植物に見られる.コケヒメグモに似る〔吉田哉AT89〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
オガサワラヒメグモ Theridion melanostictum O.P-CAMBRIDGE,1876 Theridion ogasawarense H.YOSHIDA,1993として記載,オス2.7mm,メス4.1mm,3月小笠原母島で採集〔吉田哉AC42(2)〕. ogasawaraenseは新参シノニム.中国と熱帯地方に分布〔吉田哉AC48(2)〕.
タカネヒメグモ Theridion nigrolimbatum
YAGINUMA,1972
成体は6〜8月,メス2.5〜3mm,オス2〜2.5mm,北海道(高地)・本州(高地)〔東海84〕.
タマアジサイ,クマザザの葉裏に不規則網の簡単なものをはり,ギボシヒメグモ同様,そこから粘糸を下へはっている.〔山川・熊田79〕
ノジマヒメグモ Theridion nojimai
H.YOSHIDA,1999
オス1.3mm,メス1.9mm,7-8月岡山・京都で採集,硫黄鳥島で5月にメス採集,記載.サトヒメグモに似るが小さい〔吉田哉AC48(2)〕
ホシヒメグモ Theridion pilula KARSCH,
?
学名保留.高知県龍河洞にてメス2・4mm採集,洞窟の後半に特に多く,不規則網.網の上方に径3mm程の滴状灰色卵のう〔小松AC5(3)〕.
ムナグロヒメグモ Theridion pinastri
KOCH,1872
成体及び産卵期は7〜8月,メス3〜3.5mm,オス2.5〜3mm,北海道・本州・四国・九州.セアカヒメグモと大変よく似ている.腹部斑紋は変異が多い.卵のうは網の上の方に作る.卵数は20〜30個.ヨーロッパから日本まで広く分布する〔学研76〕.
人家の近くに多く,葉裏に不規則網をはる.産卵期は8〜9月で黄かっ色の卵のうを作り,網の上部に置く〔新海69〕.
褐色または淡褐色で凹凸のある球形卵のう3〜5mm大,1〜2個,網上部の葉裏,樹木の枝のつけ根(針葉樹に多い),窓枠の角へ〔新海明K47〕.
橋の欄干の内側上部に造網し,隠れ家を持つ.網構造は網糸が多角形,粘球は等間隔,網末端に切れる構造はない〔新海明AT90〕.
神奈川県松田町寄の山でテレビ塔に造網,雌雄同居を観察(1994年7月24日)〔池田K71〕.
ギボシヒメグモ Theridion rapulum YAGINUMA,1960
=ナリヒラグモ Theridula sp.(Narihira
delicata KISHIDA?)
成体は5〜8月,メス3〜4mm,オス2.5〜3mm,全土.網は夕方はって,朝とりこわす〔学研76〕.
広葉樹の葉裏に不規則網をはる.色彩には変異が多い.7〜8月に白色球形の卵のうを1〜2個葉裏につける.網は早朝とりこわす.〔新海69,K29/32〕.夜間は全粘性の垂糸網〔東海84〕.
宮崎県で7〜8月頃産卵する〔松山AT43〕.
葉裏に張った不規則網は住居で,クモはここにいて食事,産卵,休息する.この住居から下方にある葉に引かれた綾糸状のものが捕虫用の網で,粘球がついている.朝,網をたたむ〔中平AT35〕.
食べかすを住居とした葉裏に付着する.7月頃,卵のうを1〜2個,葉裏につける.8月頃子グモがふ化し,しばらくの間,親グモと同居する〔中平23/24〕.
39卵〔松本K42〕. 白色球形の卵のう2〜3mm大,1個葉裏へ〔新海K47〕. ナリヒラグモとして,
1枚の木の葉裏から下方に伸びる不規則網を営む.クモは葉裏に占座し,食事も産卵もそこで行い,ふ化当時の子グモは母グモと共に居る〔中平AC15(2)〕.
まどい中の子グモが親の捕った餌を集団で運ぶことがある〔新海明〕.
吐き戻し給餌をする.八王子城跡で,産卵は6月上旬と8月上旬,出のうまでは14-21日の間,分散まではさらに10-14日と考えられた.同居中,母グモと子グモによる集団捕獲,吐き戻し給餌を観察〔新海明AT94,K65〕.
飼育により1992年8月7日に産卵.8月12日27頭出のうした幼体は8月15日・8月31日・9月8日脱皮で成体になった.9月20日に産卵したが卵のうを食べた〔加藤むK64〕.
八王子城址では6月と8月に成体が出現,飼育により8月に生まれた子が9月に成体になったことから年3化のクモか〔新海明K65〕.
自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
アカアシヒメグモ Theridion rufipes
LUCAS,1846
メス3.7-5.1mm,オス3.0mm,交尾栓あり.西表島で民宿のトイレ,神社の天井から採集された.基準産地はアルジェリアである〔谷川AT98/99〕
ムナボシヒメグモ Theridion sterninotatum BOES. et
STR.,1906
成体は6〜9月,2〜3mm,本州・四国,九州.ヒメグモ科のクモ,サラグモ科のクモ,クサグモなどをよく捕らえる〔学研76〕.
葉の裏に不規則網をはるが,ヤリグモ同様,他のクモを襲う習性も持つ.オオヒメグモ,ギボシヒメグモ,クスミサラグモ,ツリサラグモなどがよく補食される.産卵期は8〜9月にかけて,白色球形の卵のうは触肢で保持するか,あるいは頭胸部に乗せて持ち運ぶ〔新海69,K46〕.
オナガグモ・ヤマシロオニグモの幼生を襲っているのを目撃〔山川・熊田73〕.
三重県のミカン園(空間が広く,乾燥して通気の良い土質)の優占種である〔貝発AT74〕. 市街地の多い神奈川県大和市の森林の最優占種〔池田〕.
コケヒメグモ Theridion subadultum BOES. et
STR.,1906
成体は6〜8月,3〜4mm,北海道・本州・四国・九州.産卵期は7〜8月,卵のうは1個作り,糸いぼにつけて持ち歩く〔学研76〕.
石垣,崖地に不規則網をはる.冬期は樹皮の間に潜む〔新海69〕. 木のホラや崖に不規則網〔山川・熊田73〕.
樹の枝のつけ根・石燈篭・石垣のすき間などに小さな不規則網を張る〔K40〕.
球形の卵のう2〜4・5mm大,淡褐色の地色に濃褐色の糸をまだらに付ける,1個を腹部後端につけ持ち運ぶ〔新海K46〕.
6月11日,国立市で卵のう保持(6月28日まどい),7月31日卵のう保持(8月5日出のう40頭)〔初芝涼K77〕.
ハイイロヒメグモ Theridion subpallens BOES. et
STR.,1906
成体は1年中,メス2.5mm〜3mm,オス2.2〜2.5mm,北海道・本州・四国・九州〔東海84〕.枯木の樹皮下,石垣などに不規則網をはる.秋から冬にかけて成体となり,落葉・石の下より採集されることが多い.〔新海70〕.
三浦半島で幼体が集団越冬,石下や石間,石や木の表面に網を張り,静止,網ひとつに1〜8個体〔熊田K41〕.
白色または淡灰色の球形(コンペイトウ状)卵のう1〜1・5mmを1個腹部後端に付ける〔新海K46〕
タカユヒメグモ Theridion takayense
SAITO,1939
成体は6〜8月,3〜4mm,北海道・本州・四国・九州.寒い地方のクモで,本州・四国・九州の平地ではあまり,見られない.産卵期は7〜8月〔学研76〕.
葉裏に不規則網をはる.産卵期は7〜8月で白色の卵のうを作る.〔新海69〕. 65卵〔松本K42〕.
白色球形の卵のう1個3〜4・5mm,親グモが口にくわえている〔新海K46〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
ヤエヤマヒメグモ Theridion yaeyamense YOSHIDA,1993
オス2.00mm,メス3.16mm,3・8月八重山諸島で採集〔吉田哉AC42(2)〕西表島では4-5月に雄,1・4・8月に雌〔谷川K70〕.
ユノハマヒメグモ Theridion yunohamense BOES. et
STR.,1906
成体は5〜8月,メス4〜5mm,オス3〜4mm,全土.産卵期は7〜8月,親グモは卵のうのそばでこれを守る〔学研76〕.
湿った崖地,石垣に不規則網をはる.〔新海69〕.
湿った崖地に多く,崖地に生えたイワタバコやシダなどを使って不規則網をはる.6月に渋い濃緑色の卵のうを作る.〔山川・熊田79〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
ホシヒメグモモドキ Theridula gonigaster
(SIMON,)
成体は5〜8月,メス1.7〜2.5mm,オス1.5〜2mm,本州・九州(東京・静岡・三重・宮崎で1〜4頭採集).習性はギボシヒメグモ同様と思われるが詳細不明〔東海84〕.
白色球形の卵のう1・5〜2mm大を網上部または葉裏へ1個〔新海K47〕.
アカササヒメグモ Thymoites chikunii (YOSHIDA,1988)
Dipoenaから転属〔吉田哉AC44(2)〕.
クロササヒメグモ Thymoites okumae (YOSHIDA,1988)
Dipoenaから転属〔吉田哉AC44(2)〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
ヤギヌマササヒメグモ Thymoites yaginumai
YOSHIDA,1995
与那国島7月採集の雌雄を模式産地として記載.雄1.4mm、雌1.6mm.〔吉田哉AC44(2)〕.
○ホラヒメグモ科 Nesticidae
アキヨシホラヒメグモ Nesticus akiyoshiensis akiyoshiensis
(UYEMURA,1941)
1939年8月池田美成採集,秋吉洞にて成体メス5頭,成体オス1頭にて記載〔植村AC6(2)〕.
中国地方において長肢系のホラヒメグモ,アキヨシホラヒメグモ,オフクホラヒメグモN.akiyoshiensisi
ofuku,アキホラヒメグモN.akiensisとその変異群,ノロホラヒメグモN.noroensis,オニノホラヒメグモN.tarumii,タジマホラヒメグモN.nishikawaiが分布する.これらの分布と分化を考察した〔増原啓一AC48(2)〕.
コホラヒメグモ Nesticus brevipes
YAGINUMA,1970
短肢型Nesticusの普通種.落葉・土壌の隙間,倒木・石の下,モグラやネズミの巣(坑道)の中等に小さな不規則網を張る.洞窟性でもある.長肢型Nesticusのいない洞窟より採集されることが多い〔新海77〕.
静岡県岩水寺洞ではもっとも個体数が多く,洞窟全体に分布.入口付近と内部の個体は色彩・斑紋がやや変化する程度.8〜9月頃に成体となり産卵するが,メスは冬期でも成体がみられる.卵のうは10月頃までみられ,白色・球形で1卵のうに23,32,32個〔小林K26/28〕.
産卵は7月で,卵のうは出糸突起につけて保護する〔新海・原AT65〕. N.sp.は糸いぼに卵のうをつける〔有田AT26/27〕.
7月25日に53卵,67卵,9月11日に37卵,53卵〔高橋米K42〕.
クニサキホラヒメグモ Nesticus kunisakiensis
IRIE,1999
成体は5月,メス3.5-4.5mm,オス4.6-5.6mm.大分県国東半島オチワヤの洞と双子山にのみ分布.
N.higoensisの分布は熊本以北の北九州,N.takachihoは宮崎北部,N.karyuensisは大分県半島,N.furenensisは大分県南部,
N.irieiとN.bungonusは大分県のタイプ地のみ,N.yagunumaiは長崎県に分布〔入江AC48(2)〕.
チビホラヒメグモ Nesticus mogera
YAGINUMA,1972
成体は1年中,メス2.2〜2.7mm,オス1.7〜2mm.全土.倒木等の下に不規則網を張る〔東海84〕.コホラヒメグモに酷似〔新海77〕.
コソデホラヒメグモ Nesticus latiscaps kosodeensis
YAGINUMA,1972
鐘乳洞内に大型の不規則網を張り,トビムシ・カマドウマ等を補食する.青梅街道のトンネル試掘抗より採集されたことで真洞窟性でないことが判明している〔新海77〕.
トウキョウホラヒメグモ Nesticus shinkaii
YAGINUMA,1972
成体は1年中,4〜5mm,東京都.鐘乳洞窟内に不規則網を張る〔東海84〕.
○サラグモ科 Linyphiidae
コサラグモ Aprifrontalia mascula
(KARSCH,1879)
5月頃,多産する〔池田〕.1987年5月三浦半島猿島で10mの道ぞいに雌雄90頭採集,切り開かれた道ぞいのササや下草,アオキなど低木の葉裏や茎葉間に斜めに10cm程度のシート網〔熊田K56〕.クマザサの葉裏にシート網を張る〔山川・熊田79〕.
アシフヤミサラグモ Arcuphantes ashifuensis (OI,1960)
オオスギヤミサラグモ Arcuphantes osugiensis
(OI,1960)
地表近くに棚状の網をはっている.この属のクモは網の中央に静止している〔新海AT44〕.
ロクショヤミサラグモ Arcuphantes digitatus
H.SAITO,1992
雄2.7mm,雌2.2mm,模式産地は愛知県豊田市六升山.チクニヤミサラグモ A.chikunii
OI,によく似る〔SAITO92〕.
ヒバヤミサラグモ Arcuphantes hibanus
H.SAITO,1992
雄2.4mm,雌2.9mm,模式産地は広島県比婆郡道後山〔SAITO92〕.
ヒコサンヤミサラグモ Arcuphantes hikosanensis
H.SAITO,1992
雄2.1mm,雌2.3mm,模式産地は福岡県宮古郡.他に彦山と大分県にも分布〔SAITO92〕.
エゾヤミサラグモ Arcuphantes hokkaidanus
H.SAITO,1992
雄2.6mm,雌2.7mm,模式産地は北海道函館市函館山〔SAITO92〕.
アキヤミサラグモ Arcuphantes iharai
H.SAITO,1992
雄2.5mm,雌2.6mm,模式産地は広島県甲奴郡上下町.他に鳥取・岡山・山口にも分布〔SAITO92〕.
イリエヤミサラグモ Arcuphantes iriei
H.SAITO,1992
雄2.4mm,雌2.6mm,模式産地は宮崎県東臼杵郡椎葉村松木稲荷の穴.福岡・熊本・大分にも分布〔SAITO92〕.
ナガエヤミサラグモ Arcuphantes longiscups
(OI,1960)
中国四国地方に分布するナガエヤミサラグモ種群に属する種を地理的分布と生殖器の形態によって分類し直した結果、次の8種になった.ナガエヤミサラグモ
A.longiscapus (OI,1960),ヒバヤミサラグモ A.hibanus SAITO,1992,アキヤミサラグモ A.iharai
SAITO,1992の3既知種とイズモヤミサラグモ A.saitoi,セトヤミサラグモ A.setouchi,ツルサキヤミサラグモ
A.tsurusakii,ハリマヤミサラグモ A.nojimai,オキヤミサラグモ A.okiensisの5新種であった〔井原AC44(2)〕.
ブンゴホラヤミサラグモ Arcuphantes longissimus
H.SAITO,1992
雄不明,雌2.4mm,模式産地は大分県臼杵市河原内の穴.他にも大分県の洞窟から〔SAITO92〕.
イヨヤミサラグモ Arcuphantes orbiculatus
H.SAITO,1992
雄2.4mm,雌2.1mm,模式産地は愛媛県松山市〔SAITO92〕.
ハクヤミサラグモ Arcuphantes paiki H.SAITO,1992
雄2.3mm,雌2.6mm,模式産地は新潟県〔SAITO92〕.
タマヤミサラグモ Arcuphantes tamaensis
(OI,1960)
アシフヤミサラグモ・オオスギヤミサラグモともに,地表より5cm前後の所にシート網を張り,網の下面中央に平行背位に占座している.
アシフとオオスギが春期に採集されるのに対して,タマヤミは10〜11月にかけて局地的に多産するようである.また年2回の発生も考えられる〔新海69〕.
タマヤミについて.成体は10〜6月,2.5〜3mm,本州.白色球形の卵のうを作る〔東海84〕.
6月頃,網の付近の石の下などに白色円形(2〜2.5mm)の卵のうを作る〔山川・熊田79〕. 自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
ウエノヤミサラグモ Arcuphantes uenoi
H.SAITO,1992
雄2.0mm,雌2.2mm,模式産地は栃木県栃木市大師の岩屋洞〔SAITO92〕.
ザラアカムネグモ Asperthorax communis
OI,1960
成体は1年中,メス2〜2.5mm,オス1.5〜2mm,北海道・本州・四国・九州〔東海84〕.
石垣,崖地に目の荒いシート網を張り,網の奥に平行背位に静止する〔新海69〕.
落葉層の表面やくぼみ,ジャノヒゲ(リュウノヒゲ)のような植物の根元あたりにシート網を張る〔山川・熊田79〕.
タイワンコブヌカグモ Atypena formosana OI,1977
西表島で12-1月に雄,5・12・1月に雌〔谷川K70〕.
テナガグモ Bathyphantes orientis
OI,1960
河原・草原などの石の下の隙間に小さなシート網を張る.網の中央にはおらず,姿を隠している〔新海69〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
クロテナガグモ Bathyphantes robstus
OI,1960
成体は10〜6月,2〜3mm,本州.山間部に多い.河原の石の下,岩場,石垣の隙間に潜み,そこから斜め下方にむけてシート網を張る〔東海84〕.
自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
タテヤマテナガグモ Bathyphantes tateyamaense
(OI,1960)
成体は1年中,2〜2.5mm,本州.落葉の上や隙間にシート網を張り,微少昆虫を捕らえる〔東海84〕.
マルサラグモ Centromerus sylvaticus
(BLACKWALL1841)
9月,利尻島および豊富からフルイで多数の雌雄を得た〔熊田K44〕.
イソヌカグモ Ceratinopsis setoensis (OI,1960)
=Anacotyle setoensis
OI,1960
「満潮線付近のれきの間に群棲し,海辺に打ち上げられた海藻の間にいる小虫を補食していると思われる(大井60)」〔新海69〕.
テングヌカグモ Cornicularia mira OI,1960
コテングヌカグモ Cornicularia vulgaris
OI,1960
地面のくぼみ,芝生等に小型(1〜2cm)のシート網を張る〔新海77〕
ホシグロコウマルサラグモ Cyclocarcina floronoides KISHIDA
?
1942年6月20日オス3・7mm,長野県最洞にて採集.オオヒメグモより簡単なアヤトリ状網.単眼配列に変異が多い.卵のう(59卵)は径5mm白色球状,抱えて離さない〔小松AC7(2)〕.
ハラジロムナキグモ Diplocephaloides saganus (BOES. et
STR.,1906)
成体は4〜8月,メス1.8〜2.1mm,オス1.5〜1.8mm,北海道・本州・四国・九州.草原,河原や山道の草間に生息〔東海84〕.
デーニッツサラグモ Doenitzius peniculus
OI,1960
成体は8〜12月,メス3〜3.5mm,オス3.5〜4mm,本州〔東海84〕.
河原の崖地のくぼみや草間にシート網を張り,中央に平行背位に静止する.大型のサラグモでメスより,オスの方が大きく,オスの触肢膝節背面に長大な一剛毛を持つ〔新海69〕.
伊豆七島の地上徘徊性種としてカチドキナミハグモと共に冬期によく採集された〔国見AT87〕. 自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
コデーニッツサラグモ Doenitzius purvus OI,1960
樹の根元・崖地などの地表近くにシート網を張る〔新海70〕.
イリオモテヌカグモ Entelacara tanikawai
TAZOE,1993
西表島から記載.雄1.4-1.5mm、雌1.5-1.7mm〔田副AC42(1)〕.
4・8・12・1月に雄,3・4・12・1月に雌〔谷川K70〕.
マルムネヒザグモ Erigione edentata SAITO et
ONO,200
愛知県,京都府,東京都(自然教育園)から記録.雄1.3mm〔小野・新海01〕.
カワリノコギリグモ Erigone koshiensis
OI,1960
体長1.4-1.8mm,若齢では1/5日,その後は1/3日の給餌をした.粘性のないシート網を張り,下面から上面の獲物にかみつく.3雌の例で,産卵時期は5月下旬-7月と9-10月,産卵回数は5ないし10回,1卵のう内の卵数は2-7個,1♀当りの総ふ化卵数は23,26個だった.夏世代はほぼ4回脱皮,越冬世代はほぼ5回脱皮で成体になった.越冬世代は(夏世代より大きい)年内に成体になり,交尾する.求愛は網の下面で,雌雄の第TU脚の接触,身体の震動,第U脚による網を弾く動作,♂の網の補強,♂は脚で♀の腹部側面をたたく,補強と叩きをくり返す,その後交尾に至る.交尾時間は88.3分+37.2分であった.未交尾個体は春に交尾,亜成体は成体になる〔佐藤幸AT95〕.
カワリノコギリグモ Erigone koshiensis
OI,1960
体長1.4-1.8mm,若齢では1/5日,その後は1/3日の給餌をした.粘性のないシート網を張り,下面から上面の獲物にかみつく.3雌の例で,産卵時期は5月下旬-7月と9-10月,産卵回数は5ないし10回,1卵のう内の卵数は2-7個,1♀当りの総ふ化卵数は23,26個だった.夏世代はほぼ4回脱皮,越冬世代はほぼ5回脱皮で成体になった.越冬世代は(夏世代より大きい)年内に成体になり,交尾する.求愛は網の下面で,雌雄の第TU脚の接触,身体の震動,第U脚による網を弾く動作,♂の網の補強,♂は脚で♀の腹部側面をたたく,補強と叩きをくり返す,その後交尾に至る.交尾時間は88.3分+37.2分であった.未交尾個体は春に交尾,亜成体は成体になる〔佐藤幸AT95〕.
コトヒザグモ Erigone lila DON. et
STR.,1906
テングヌカグモ,コテングヌカグモ,コトヒザグモの3種を丹沢から記録〔山川・熊田79〕
ノコギリヒザグモ Erigone prominens BOES. et STR.,1906
コサラグモ類では最も多く生息している〔新海69〕.
コクサグモの古巣で越冬しているものがみられる〔松山他AT43〕. 高知県夜須町でニイニイゼミの空巣にいた〔笹岡K72〕.
クロナンキングモ Erigonidium
graminicola (SUNDEVALL,1829)
中国湖北省で年間最高6世代を完了する.第4〜6世代の混性個体郡で成体も幼体も越冬できる.水分が必要である.10℃に上がると活動を開始する.幼生は4〜5回脱皮,5〜6令がある.令期は温度が上がると短くなり,33℃を越えると長くなる.35℃になるとふ化できない.最後の脱皮を終えるとすくに交接できる.雌雄とも数回交接できるが,メスは1回の交接で受精卵を産むには十分である.メスは卵のうを守る.8〜17個,平均12個の卵のうを産み,1卵のうに17〜473個の卵(平均241)がある.ふ化率は90%を越える.温度が25〜28℃の時,産卵量が最も多い.長江流域綿田では5〜9月にわたって優占種である〔チョウAT81〕.
ナニワナンキングモ Erigonidium naniwaensis
OI,1960
成体は1年中,メス1.7〜2.8mm,オス1.6〜2.7mm.年4化性である.神奈川県横浜市で室内温度での飼育の記録である.ヘルメット状の卵のう(2.3〜4mm直径,0.4〜1.5mm厚さ)は白いが,製作後10分もするとニカワ質に変化し,1時間後には褐色となる.メス19個体の調査で産卵回数は2〜11回(平均5.6回)で,産卵の間隔は2〜19日(平均8.6日),1卵のうの卵数は3〜29個(平均8.5個)である.産卵からふ化までは9〜10日,ふ化から出のうまでは4日である.出のうは昼夜に関わりなく2令期で行われ,最初の1匹があけた穴からみんな出る.団居はない.土壌の間にシート網を張る.餌は幼体にはオオヒメグモの2令を,他にはトビムシ,カ,ショウジョウバエを7〜10日に1度与えた.糸を使用せずに噛み付く.食べカスは網から取り除く.オスは交接後殆ど食べない.時に共食いがあるが,その例は少ない.交接した雌雄は長い同居生活を送る.オスはメスより先に死ぬ.脱皮回数は4〜7回で雌雄ともに5回脱皮して成体になる例が多い.3〜7月の第4世代は5回が多いが,11〜3月の第3世代には6回の個体もかなりあった.同じ卵のうから出た個体でも脱皮回数はバラつく.交接は雌雄の第1第2脚のDirect
Contactの後,オスが網を補強してから行う.時間がかかるとメスはオスの体に触れて催促をする.片方2秒ずつ,35〜185分(平均78分)挿入される.途中で精液が不足すると精網を作り,補充する(30秒以内).精網はシート網に糸をx字型にかける.あわさった中央部に精液を出す.普通交接は1回だが,雌雄ともに2回の例もある.10日前後に産卵する.オスはメスより早く成体になる.〔佐藤AT81,K50〕.
ハシグロナンキングモ Erigonidium nigriterminorum
OI,1960
御蔵島で採集.シート網と思われるが未確認.「笹の葉の下側(菅波71)」「草間を徘徊する(大井62)」と報告あり〔新海77〕.
ハナサラグモ Floronia exornata (L.KOCH,1878)
= Floronia bucculenta
(CLERCK,1758)
成体は8〜10月,5〜6mm,北海道・本州・四国.草間の下方に大型(10〜40cm)のシート網を張る.刺激を与えると,白色の腹部が黒色に変化する〔東海84〕.
ヨーロッパから日本まで広く分布している.本州では平地で見られるが,四国では高地に多い〔学研76〕. クマザサの群生地に多い〔新海・原AT65,新海K40〕.
杉の枝先に好んで造網する.皿網は浅い.平行背位に占座〔中平AT23/24〕.
日本産の種はヨーロッパ産に同定されてきたが差異があり別種だった.KOCHの記載した種を復活させた〔Saaristo,AC45(1)〕.
自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
ヤマアカムネグモ Gnathonarium dentatum (WIDER,1834)
河口湖畔より記録〔斉藤AT83〕.
ニセアカムネグモ Gnathonarium exsciccatum (BOES. et STR.,1906)
=Gnathonarium
dentatum (WIDER)
本州・四国・九州に分布〔八木沼77〕.
本種はG.dentatumではない.北海道・本州・四国・九州の水田・河辺付近から採集されている〔斉藤AT83〕.
稲の株元付近に不規則網を張り,数個体が群棲することが多い.成体は年間を通じてみられ,越冬は大部分が成体.越冬場所は本田の土中や雑草の根元,稲の切株中.宇都宮市水田の最優占種.峰町(6月にスミチオン乳剤散布)では10月に最高密度37頭前後.G.dentatumとして記録〔浜村AC22(2)〕.
セムシアカムネグモ Gnathonarium gibberum OI,1960
本州に分布〔八木沼77〕.河川や湿地に生息〔斉藤AT83〕.
アリマケズネグモ Gonatium arimaense
OI,1960
10月下旬雌雄成体.木の根元,落葉の下などから採集〔新海69〕.本州に分布〔八木沼77〕.
ケズネグモ Gonatium opimum OI,1960
10月下旬雌雄成体.木の根元,落葉の下などから採集〔新海69〕.
植物の覆いかぶさった斜面の地面近くにシート網を張っていた〔山川・熊田79〕. 北海道・本州・九州に分布〔八木沼77〕.
オノヌカグモ Gongylidioides onoi
TAZOE,1994
オス2.1mm,メス1.9-2.7mm,西表島産〔田副AC43(2)〕.
ミズゴケサラグモ Glyphesis cottonae (LATOUCHE,1945)
オス1.4mm,大雪山にて記録〔斉藤博・保田AT96〕.
ツノタテグモ Hypselistes asiaticus BOES.et
STR.,1906
1980年3月16日,足利市迫間でオス成体,同年4月26日,メス成体を採集.メス1・75mm,オス1・70mm〔斉藤K47〕.
アシヨレグモ Labulla
controtipes (KARSCH,1881)
成体は11〜6月,メス5.5〜7.5mm,オス5〜6mm,北海道・本州・四国・九州.木の皮の隙間に簡単な住居を作り,そこから斜めにシート網を張り出す〔学研76〕.
夜に網の中央に出て来る〔山川・熊田73〕. 必ず姿をかくしている〔新海AT44〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
キヌキリグモ Lepthyphantes
cericeus (SAITO,1934)
成体は7〜9月,4〜5mm,北海道・本州・四国.平野部や低山では殆ど見ることができない.ササ,下草の間,樹木の葉裏にシート網を張る〔東海84〕.
ヤセグモ Lepthyphantes japonicus OI,1960
落葉の表面等にシート網を張る〔山川・熊田79〕.
ノコバヤセグモ Lepthyphantes serratus OI,1960
落葉の表面等にシート網を張る〔山川・熊田79〕.
ヤガスリサラグモ Linyphia albolimbata
KARSCH,1879
採集例が少ない.北海道・本州・九州.ヘリジロサラグモ同様,草間の地表5cm前後の所にシート網を張ると思われる〔新海77〕.
ハンモックサラグモ Linyphia angulifera
(SCHENKEL,1953)
成体は7〜8月,3〜4mm,北海道・本州・四国・九州.北海道以外では700m以下の地域では殆ど見られない.網型,造網環境は前種と同じ〔東海84〕.
NeolinyphiaからLinyphiaに転属〔保育86〕.
チビサラグモ Linyphia brongersmai
(HELSDINGEN,1969)
雌雄とも4.5-5.0mm.ヘリジロサラグモによく似るが,腹部後端が丸みがある.山地の林内や山道の石の間,落葉間,下草の根元などでシート網を張っている.4-6月に成体.分布は本州・四国・九州〔千国89〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
コウシサラグモ Linyphia clathrata
SUNDEVALL,1830
スギなどの根元や枯枝の落ちたもの,落葉のくぼみ等に比較的大きなシート網を張る〔山川・熊田79〕.
タイリクサラグモ Linyphia emphana (WALCKNAER,1841)
=Prolinyphia
emphana,(WALCK.1873)
成体は7〜9月,メス6.5〜7.5mm,オス5〜6mm,北海道・本州(青森県).下草の間,樹木の枝葉間にドーム網を張る.北海道では普通の大型種〔東海84,森林87〕.
サイズ差による令査定の試み.日当り0.5-2.0頭のショウジョウバエを与え、室内飼育個体と野外個体群の中眼域の後辺の幅を測定し、比較した.その結果はほぼ等しく6令で成体になった〔秋田AC41(2)〕.
クスミサラグモ Linyphia fusca
(OI,1960)
成体は4〜6月,5〜6mm,本州・四国・九州.山地の道添,渓流上などに多く,新芽の出ていない枝先,針葉樹枝先,枯枝などにハンモック網を張る〔東海84〕.
平地にはみられない.産卵期は5〜6月で,白色の半球状の卵のうを,絹のような防水性のある糸で覆う.産卵場所および1卵のう中の卵数は不明.枝先に葉があると,網を張るのに邪魔になり,また獲物がかかる率が低くなるために,このクモは植物の萌芽に合せて成長する.樹木の新芽が出てこない春先に,最も餌をとる必要のある亜成体期から成体期を迎える.クモは網の最下部,つまり底にある部分の下側に止まる〔森林87〕.
千葉県清澄山では5〜7月産卵・ふ化,7〜10月幼生,10〜4月亜成体,4〜6月成体.網は成長につれて大きくなる.主に沢添いの枯枝先端に造網し,粘性はなく糸は弱い.獲物は不規則状の糸にぶつかり皿網上に落ちた所をガブリと補食される.あまり敏捷でない虫,蚊,ガガンボ,カワゲラ,カゲロウ,アリマキ(有羽)が餌となる〔新海明AT70〕.
精網作成行動を観察〔新海明K66〕.〔貝発しのびぐも18:9-10〕丹沢大倉付近で1989年4月29日で交尾を数例観察.1ケ月後にはメスのみ.オスがいる場合はムネグロサラグモだった〔池田K59〕.
飼育容器に付着して卵のうを作った.周囲を天幕状の糸でおおう〔K43〕. 5月13日産卵,21日ふ化,23日2令,28日出のう32頭〔鈴木勝K46〕.
ユノハマサラグモの網を乗っ取ることがある(東京都八王子で5月15日)〔新海明K70〕. NeolinyphiaからLinyphiaに転属〔保育86〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
シバサラグモ Linyphia herbosa OI,1960
「木の枝に皿網を張る.その他にも樹間,草上に浅い皿網を張る〔植村65〕.
採集記録は京都,奥秩父,八丈島だけ〔新海69〕.
札掛・日向でも採集.スギなどの根元や枯枝の落ちたもの,落葉のくぼみ等に比較的大きなシート網を張る〔山川・熊田79〕. 自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
ツリサラグモ Linyphia japonica
(OI,1960)
成体は5〜8月,3〜3.5mm,本州・四国・九州.深いハンモック網を張り,網の底の部分に背中を上にして静止する〔東海84〕.
東京都八王子市小宮公園にて1995年5月28日交尾観察.午前10時53分に雄は雌の網の一部を切断し,Y字形の精網作成,精液注入後,シート網上部で雌に求愛・交尾.触肢は交互に挿入され1回当り平均19秒.10分後に精液を再充填し,再交尾.1時間半後も交尾中〔新海明K72〕.
埼玉県秩父市にて1998年7月27日に雌雄同居の網多し〔池田98〕. NeolinyphiaからLinyphiaに転属〔保育86〕.
自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
アシナガサラグモ Linyphia longipedella BOES. et STR.,1906
=Prolinyphia
longipedella (BOES.et
STR.,1906)
成体は7〜9月,5〜7mm,北海道・本州・四国・九州・奄美.平野部の草原,河原・渓流などの草間,樹葉間の低い場所に深いドーム網を張る.時にドーム網の下にハンモック網を張ることもある.山地に多い〔東海84〕.
刺激を与えると腹部の白色の鱗が収縮してわずかに中央の縦線が太くなる〔新海AT51/52〕.
6月2日午前11時30分頃,雌雄のいる網に近づき,口で軽くクモを吹いた所,オスは急にメスにちかより,交接した.体位は仰向けのメスに対し,オスも仰向け.約15分間,オスは3秒間触肢を外雌器にいれては2秒休む,また別の触肢を3秒いれては休むことを繰り返した.15分間に180回交接したことになる.その後,5分間ほど離れていたが,11時55分頃から又交接した.7秒差し入れて3秒休むことを繰り返し,5分後,オスはメスから離れた.離れる間近になると,交接時間は4秒と縮む.12時4分,又交接,20〜25秒差し入れて直ぐ触肢を交替する.交接時間は次第に長くなり,28秒,35〜36秒,40秒,50秒,55秒,58〜60秒,65秒.時々メスが逃げるがオスが追い付く.午後2時30分,オスが急に離れ,メスはその時網にかかた餌をとらえた.雄は触肢を交互に雌の外雌器にねじるようにして入れる〔錦AT22〕.
自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
シロブチサラグモ Linyphia marginata (C.KOCH,1834)
=Prolinyphia marginata
(C.KOCH,1834)
成体は4〜6月,5〜7mm,北海道・本州・四国・九州.平野部の草原,河原・渓流などの草間,樹葉間の低い場所に深いドーム網を張る.時にドーム網の下にハンモック網を張ることもある.産卵期は5〜6月.草間に卵のうを作る〔東海84〕.4〜7mm,草原,河原,ゴルフ場の周辺など,比較的ひらけた場所に多く,その他,山間部の山道などでもみられる.草間にパラシュートを広げたようなドーム網を張る〔森林87〕.交接時,オスは正面からメスにちかづき,腹の下にもぐり込む〔野口AT22〕.長崎で,2月18日14時37分,オスがメスの脚に静かに触れる.2月20日13時57分,何度もオスはメスの周囲を駆け回る.メスは常にオスの方を向く.メスが静かに前脚4本を持ちあげると,オスはそっとちかづき,重なる.翌日,16時昨日と同じ姿勢.長い交接である.17時20分,オスの姿がない〔大利AT28〕.
コシロブチサラグモ Linyphia marginella OI,1960
=Prolinyphia marginella
OI,1960
シロブチサラグモ同様の習性を持つ〔新海69〕.
ヤマジサラグモ Linyphia montana (CLERCK,1758)
芝公園,八丈島での採集記録がある〔新海69〕.
ムネグロサラグモ Linyphia nigripectoris
(OI,1960)
成体は5〜7月,3〜4mm,本州・四国・九州・薩南諸島.網型,造網環境はクスミサラグモと同じ.山添の林,丘陵地から山間部にかけて生息している〔東海84〕.
クスミサラグモより小型でやや黒色が強い〔森林87〕.
西丹沢ではクスミサラグモと同じ場所に繁殖期が1ケ月遅れて(クスミ4月・ムネグロ5月)造網・生息する〔池田98〕.
求愛行動はメスがオスを追うところから観察した.オスは時々振り返ってメスと第1脚を忙しく打ち合う.メスが追うのをやめる.オスがからかいに行く.瞬間的にV字状,交合姿勢をとること2回.オスが下糸に落ちたので,メスが第1脚で網をたたきながら待つ.オスが帰り,「鬼サン遊び」再開.V字状1分間,「鬼サン」の後,V字状30秒間.その後1cm離れて静止(そっぽを向いた形).1分後,オス上糸に移る.見送ったメス占座点に帰る〔中平AT64,中平83〕.
@オス第1による打ち合い(beating),A腹部の上下動(abdomen
vibrating)・1脚による網面叩き(druming)・メスの周囲を回る(circling),@Aをくり返した後,Bメスが1脚で打ち返し(sparring),Cオスを1脚で引き込み(pulling),D交尾(O-VD型.21秒→5分40秒),E分離〔池田K61〕.
東京都八王子市小宮公園にて1995年5月28日午前11時45分に雌の迷網にY字形の精網作成,精液注入後,シート網下面で雌に求愛・交尾.触肢は交互に挿入され1回当り平均44秒〔新海明K72〕.
NeolinyphiaからLinyphiaに転属〔保育86〕. 自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
ヘリジロサラグモ Linyphia oidedicata (HELSDINGEN,1969)
=Linyphia albolimbata
KARSCH
成体は5〜7月,4〜5mm,全土.下草の間の地面に近い所(地上2〜10cm)にシート網を張る.都市部から山地まで広く分布している〔学研76〕.
地上1.5mのヒメシャラの枝先に網〔諏訪哲k67〕. 網の下面に静止する〔新海69〕.
8月4日に産卵(三宅島産),卵塊を包む糸と天幕の間にすき間がある.8月10日ふ化,12〜13日第1回脱皮,17日出のう17頭,母グモは29日に死去〔鈴木勝K46〕.
神奈川県愛川町にて求愛・交尾行動を観察(1993年8月17日).雄が接近・雌が雄の周囲を回る・雌が静止・雄が接近し交尾(ここまで1時間半).いったん離れてから2度交尾(30分間)して雄は去った〔諏訪哲K67〕.
ユノハマサラグモ Linyphia yunohamensis (BOES. et STR.,1906)
=Prolinyphia
yunohamensis (BOES. et
STR.,1906)
成体は4〜7月,メス5〜6mm,オス4〜5mm(オス成体の出現時期は短く,5月下旬〜6月中旬の10日間前後.地域差あり),北海道・本州・四国・九州.山間部に多い.針葉樹(特にスギ・ヒノキ)の枝葉間,広葉樹の葉裏,下草の間などに直径10〜30cm,深さ1〜4cmの浅いドーム網を張る〔東海84〕.
平地ではほとんどみられない.産卵期は5月下旬〜7月上旬だが,1卵のう中の卵数は不明.ドーム網に昆虫がかかると,クモは瞬間的に獲物にむかって移動し,網の下面から網ごしに獲物にかみつく.獲物の動きが弱くなると,第4脚で糸をかけながら周囲の糸を切り,獲物を網の最上部まで持ち帰ってから食べる〔森林87〕.
交接期は4〜5月と推定〔木庭AT15〕. ヘリジロサラグモより薄暗い所に伏せた皿網を張り,平行背位に占座〔中平AT23/24〕.
幼体どうしでも同居させると脚を打ち合い闘争する〔池田98〕. 自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
アバタムナキグモ Lophomma yodoense OI,1960
落葉の下から採集〔新海70〕. 本州・韓国に分布〔八木沼77〕.
クボミケシグモ Meioneta concava
OI,1960
成体は1年中,2〜2.5mm,本州・四国・九州.落葉中にシート網を張る〔東海84〕.
クロケシグモ Meioneta nigra
OI,1960
5月に生体を見ることが出来る.河原に生えた植物の根元や地面に地階葉,根出葉の下の地面にシート網を張る〔山川・熊田79〕.
ナナメケシグモ Meioneta obliqua
OI,1960
石や倒木の下のくぼみ,落葉・土壌の隙間に小型(1〜3cm)のシート網を張る〔新海77〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
ゴカクケシグモ Meioneta pentagona OI,1960
ツノケシグモ Meioneta projecta OI,1960
ツメケシグモ Meioneta ungulata OI,1960
冬期落葉の下より多く採集される〔新海69〕.
タイリクトガリヌカグモ Metopobactrus prominulus
(O.P.-CAMBRIDGE,)
オス1.8-2.0mm,メス2.1-2.5mm,北海道にて記録〔斉藤博・保田AT96〕
チビアカサラグモ Nematogmus sanguinolentus
(WALCKENAER,1837)
成体は5〜6月,8〜9月,メス1.7〜2.2mm,オス1.5〜2mm.本州・四国・九州.下草の地表より1〜2cmの所にシート網を張る.各地に見られる普通種〔東海84〕.
7月24日,円錐形の白色卵のうを作り,7月30日ふ化,8月1日子グモが出のう〔鈴木勝K46〕.
アカハネグモ Orchestina sanguinea OI
1955
1952年5月5日,大阪府高鷲村,樫の生垣で雌(1・30mm)を採集〔大井AC14(1)〕.
スソグロサラグモ Ostearius melanopygius (O.P.CAMBRIDGE,1879)
=スソグロムネアカグモ
Oedothorax melanopygus KISHIDA
石や石垣の上で採集〔安念AC6(3)〕.
2〜3mm,畑地の片隅の廃棄物(ビニール,木片・丸太)の下で採集.横浜で室内飼育(7日に一度の給餌)の結果,年3化.地表1・5〜3cm上部へシート網.下側から網の上部にきた獲物にかみつく.動く餌でなくとも食べる.2〜3令間に幼体同志の共食いがあり,同居のメスがオスを食べた例,オスがオスを食べた例がある.ふ化から成体までの脱皮回数は第一世代(4月〜翌年6月)は平均6回,第2世代(8月〜翌年7月)は平均5回,第3世代(11月〜)は平均5回.交接の場所はシート網下側,雌雄は脚先端を接触させる.オスはメスを確認すると触肢でドラミングをしながらジグザクにメスに近付く.触肢の挿入は最初早いが,次第にゆっくりとなる.13〜18分である.オスは成体になるとすぐに交接可能だが,メスは成体になって平均15日前後をおいて交接する.精網を作る・精液の採取も観察した.卵のうは網の下側,球形白色.卵のう作成(90〜120分,昼夜を問わず)を終えると保護の糸を周囲に張る.産卵回数,1卵のう内の卵数,総産卵数は,第一世代が9・5回,6・4個,61個,第2世代が12・9回,10・2個,129・8個,第3世代が5回,10個,51個である〔佐藤AT84〕.
給餌量が少ない(1日当たりキイロショウジョウバエ1/10頭と1/15頭.多い方は1日当たり1/3頭と1/7頭)メスでは4回より5回脱皮で成体になる割合が高い(82%)し,令期間が長くなる.体長はやや小さくなる.産卵もバラついてくる.最多給餌(1/3)での生存率が75%と,1/7で100%より低いので,餌量の増加は生存率を必ずしもあげるものではない.オスは成熟してからは殆ど餌をとらない〔佐藤AT86〕.
石や材木の下より採集される〔新海69〕. イギリスでは庭などに普通に産するようである.日本でも山地より,海岸や平地の石・倒木・落葉の下に多い〔新海70〕.
小さなシート網を張る〔山川・熊田73〕.
満潮線付近より採集された,英国では庭にいる.高知県桂浜にて,オス2・06mm,メス2・25mm〔大井AC16(2)〕. スソグロムナアカグモ
Oedothorax melanopygus KISHIDA として記載〔安念AC6(4)〕されたが,これは原記載とはしない〔八木沼AT73〕.
横浜市にて倒木や石下,地面のくぼみに小さなシート網を張る.8〜9月にかけて夜間,地上を徘徊する個体が多いようだ〔山川K36〕.
欧州では黒色型の色彩変異個体がいる〔池田〕.
イマダテテングヌカグモ Oia imadatei (OI,1964)
=Cornicularia imadatei
OI,1964
成体は1年中,1〜1.4mm,本州.土壌性種.多化性〔東海84〕.
1cm四方のシート状網を落葉の中に張る.水戸市内のアカマツ・コナラ林の調査によれば,10〜6月までよく成体が見られる(オス9〜5月)が,精子保有率は12月オスでは60%,4月オスで100%,3月メスでは0%,4月下旬メス70%,5月メスでは100%である.4月に交接するのだろう.茨城大構内野外の管びん内でトビムシを与えた飼育下(飼育容器内の温度は野外とほぼ同じ)では,10〜4月に産卵はない.5月,8月に卵のう数が多い.白色両とつレンズ型の卵のうである.予備実験では6月の卵のう数の落ち込みはなかった.1個体の造卵のう数は8〜12個,19個を産んだものでは13個目以降は出のうしなかった.卵数は2〜3個である.体長が0.7〜0.8mmの個体は卵のう中の卵数が1個である.クモは出のう後4回の脱皮をして成体となる.26℃恒温条件では3令期が長く,亜成体になって死亡した.有効積算温度法則から発育の0点を求めると卵期11℃,1令期11℃,2令期12℃,3令期13℃,亜成体期10℃である.亜成体で低いことによって,野外では10月に個体群の令が同調して成体となる.外国の森林のリター性のクモ同様,年1世代である〔安藤84〕.
タテヤマサラグモ Porrhomma tateyamaense OI,1960
前種(ナナメケシグモ)同様の習性を持つ.本州に分布〔新海77〕.
3月上旬,地表3cmの草花の間やブロックと地表の間にいた.6月上旬,陽のあたらない湿気の多い場所(テラスと芝が密着している所,落葉や枯枝の中)に生息.網は糸を引きまわしただけのものだが,中央を地表につけている.1〜4cmの高い所から糸をひいている.地表野網に獲物がふれると走り下りて捕獲,かみつく.必ず空間で食べる.飼育容器のふたに産卵した.7月24日17卵を産卵,30日ふ化(14頭),8月1日脱皮,7月30日産卵15卵(ふ化せず).別のメスは7月27日15卵産卵,8月1日ふ化(7頭),脱皮(1頭),4日分散;8月1日16卵産卵,8月7日ふ化(8頭);8月12日11卵産卵,17日ふ化(6頭),19日脱皮(3頭),20日分散〔佐藤K45〕.
キソサラグモ Porrhomma kisoense OI,1960
半原・飯山で採集〔山川・熊田79〕.
フタスジサラグモ Prolinyphia limbatinella BOES. et
STR.,1906
成体は8〜10月,メス5〜6mm,オス4〜5mm,北海道・本州・四国・九州.500〜1000mの山地に多い.針葉樹(特にスギ)の枝先に浅くて大きなドーム網を張る〔学研76〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
アリマネグモ Solenysa mellotteei
SIMON,1894
本州・四国・九州に分布〔八木沼77〕.ベルレーゼ・ファンネルによって確認〔K29/32〕.
ヨツボシサラグモ Strandella quadrimaculata
(UYEMURA,1937)
成体は5〜7月,3〜4mm,北海道・本州・四国・九州.広葉樹の葉裏に多く,時にシート網を張る〔東海84〕.
ヨツボシアカムネグモ Oedothorax quadrimaculatus として,
1937年6月15日成体オス,7月19日成体メス,天城山にて高島春雄採集の雌雄で記載〔植村AC2(4)〕. ヨツボシアカムネグモ Oedothorax
quadrimaculatusとして山林地帯の樹間に生息〔千国AC5(4)〕.
夜間造網性で,網はアズマネザサの葉裏の表面からやや浮かして作られるシート部とそれを支持する不規則部から成る.交尾体勢はメスの網の下にオスがぶら下がり,メスは下向きのオスの頭部の凸部をくわえていた.須走では1989年6月3日に4組の交尾を観察,わずか2日後には1組も交尾が見られなかった〔池田AT100〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
サザナミサラグモ Strandella fluctimaculata
SAITO,1982
オス成体(2.6mm)は7月,メス成体は7〜8月,北海道・本州.オスの触肢ではヒメヨツボシサラグモと区別できないが,メスの外雌器が異なる〔斉藤AC31(1)〕.
ヒメヨツボシサラグモ Strandella yaginumai
SAITO,1982
オス成体(3.1mm)は5月下旬〜6月,メス成体は6〜7月.ヨツボシサラグモに似る〔斉藤AC31(1)〕.
カナコキグモ Tapinopa guttata KOMATSU,1937
=Tapinopa longidens
(WIDER,1851)
=Tapinopa guttata KOMATSU,1937
長野県諏訪郡北山村にて,森林内の落葉におおわれた鮮類の間に多い.北向きの岸等,凹凸の多い地上,樹木の根元等にも生活.凹みに1枚のシーツ様の網(5〜8cm×3〜6cm)を張る.造網や補強は夜間.夏は透明だが秋深くなるにつれ厚くなり白濁して不透明となる.野外では凹みに沿って張られた小袋中にクモがいる.紡ぐ糸は6種.おとし網で,網上を這う微小昆虫を網を通してかみ殺す.網の穴を特に補修しないが,全面に渡り厚くする.8月中旬に一斉に脱皮し,採集例では58頭中オス50頭,メス8頭.昭和11年8月29日午後4時30分,オスはメスの巣を訪れ,触肢で網を打つ.メスは攻撃を中止する.オスは網の一部を破り,触肢の振動を継続しながらメスに近付く.体型はL
.marginataと同じ逆入字型で,
左右の触肢を交互に約10秒使用.9月下旬から10月初旬に産卵,10〜5mm径の碁石形または球状に近い卵のう,赤黄色の卵,14〜27卵の他3卵の卵のうもあった.1頭の作る卵のう数は1〜3個(2個が多い).翌年4月下旬にふ化する(4月27日ふ化,5月1日脱皮,5月3日出のう)〔小松AC2(4)〕.長野にて8月,交接期と見え雌雄同棲を見る〔大利K37〕.
日本産はヨーロッパ産のT.longidensではないので小松のT.guttataが復活する〔Saaristo,AC45(1)〕.
ニシキサラグモ Taranucnus nishikii
YAGINUMA,1971
8月メス成体,1月オスメス成体.洞窟内の岩の隙間に大形(最広部5〜15cm)のシート網を張り,下面に静止する〔新海77〕.
コトガリアカムネグモ Ummeliata angulitubersis (OI,1960)
= Oedothorax
angulitubersis OI 1960
セスジアカムネグモと区別が困難である〔田副K63〕. 水田に多い〔新海81〕.
冬期,木の根元,落葉の下より採集される.滝山では水田に大型の不規則網(糸を数本張りめぐらせている程度)を張っていた〔新海69〕.本州に分布〔八木沼77〕.セスジアカムネグモと区別困難〔田副K63〕.Ummeliataに転属〔Brignoli,1983〕
トガリアカムネグモ Ummeliata erigonoides (OI,1960)
= Oedothorax erigonoides
OI,1960
Ummeliataに転属〔Brignoli,1983〕. セスジアカムネグモやコトガリアカムネグモとは区別できる〔田副K63〕.
コトガリアカムネグモ同様の習性を持つ〔新海69〕. 本州に分布〔八木沼77〕. 山形県赤湯市では幼生ー成体にかけて空中移動する優占種〔錦AC20(1)〕.
アトグロアカムネグモ Ummeliata feminea (BOES.et STR.,1906)
= トウキョウアカムネグモ
Oedothorax tokyoensis (UYEMURA,1941)
本州・九州に分布〔八木沼77〕.
山林地帯の樹間に生息する〔千国AC1941〕. トウキョウアカムネグモと同種,実はアトグロアカムネグモ Ummeliata femineus (BOES.
et
STR.,1906)である.Oedothorax属からUmmeliataに転属〔斉藤博AC42(2)〕東京産のアカムネグモでは最も多く採集される〔新海69〕.
室温7℃以下の場合は同じ網の中に雌雄が頭を寄せあっていたが,10℃以上になると別行動,住居も別となっていた.1月6日10時,14℃,メスはオスの頭胸部を上から抱えるように脚をかけてだんだんと引き寄せ,頭胸部にかみついた.交接であった.4月10日産卵,卵色は淡黄色,卵のうの色は純白で長丸形,15卵.4月21日ふ化9頭,24日第1回脱皮,26日第2回脱皮,27日分散〔佐藤K44〕.
川崎市の庭の枯葉で雄は年末に多く採集される.春(4・5月)は雌が多い〔伴K70〕.
セスジアカムネグモ Ummeliata insecticeps (BOES.et STR.,1906)
=Oedothorax
insecticeps BOES.et STR.,1906
Ummeliataに転属〔Brignoli,1983〕.
成体は1年中,2.5〜3.5mm,北海道・本州・四国・九州.水田に生息,地表にシート網を張るが,徘徊して獲物を採ることも多い〔東海84〕.
コトガリアカムネグモと区別が困難である〔田副K63〕.
京大農場で年2世代,7月下旬と11月上旬に成体が多い.全体の性比はメス60%であった〔山野AC27S〕.
8月下旬から10月上旬にかけて,平均4個の卵のうを稲の茎や葉に密着させて作る.親は数日間餌をとらず,卵のうを保護する.刈り取り後,稲わらの下,刈り株の茎内,土塊のすき間,水田のみぞの端等に生息し,越冬する.これら個体群の産卵は3月末頃から始まる.年2世代〔田中AC25(1),26(2)〕.
年間を通して成体がみられ,越冬も成体で行う.宇都宮市の水田の密度消長では8月と10月にピークのみられる二山型で峰町(6月にスミチオン乳剤散布)10月には1u28株当り4個体内外〔浜村AC22(2)〕.
葉上の天幕状の網は脱皮や産卵のために張るもので,平常は小範囲をはい回している.発生はまちまち.高温期には葉上に,低温期には落葉や路傍の石裏,或いは畑の土塊の下に産卵する.卵のうは直径4mm位の白色円盤状.〔中平AT23/24〕.
山形県赤湯市では幼生ー成体にかけて空中移動する優占種〔錦AC20(1)〕.
福岡市近郊の水田にて越冬期は11月〜3月平地の落葉・土塊・石の下,活動期は4〜10月水田・湿った畑や草むら.小林(1958)によれば補食されるのはツマグロヨコバイの幼虫及び成虫・ウンカ・トビムシ・フタテンヨコバイ・アブラムシ・ユスリカ,共食いもある.1卵のう中の平均卵数36・7個.6〜9月にかけては産卵後5日目にふ化,6,7日めに出のう,幼期は約1ケ月,産卵期間は二,三ケ月.6月30日から9月17日にかけて14回産卵した個体は500卵強を産んだ.出のう後,オスは3回目の脱皮で性徴があらわれ,二,三日をへて成熟した〔大熊AC15(2)〕.
高知市にて5月の晴れた朝,南方(水田あり)から子グモが多数飛んできた〔中平83〕.
オノアカムネグモ Ummeliata onoi
H.SAITO,1993
オス3.40mm,メス3.22mm,7月中旬,日光,長野県青木湖で採集〔斉藤博AC42(2)〕.
○コガネグモ科 Araneidae
マツダタカネオニグモ Aculepeira matsudae
TANIKAWA,1994
オス5.8mm,メス7.5-8.6mm,7-8月に北海道鹿追町,東ヌプカウシヌプリ,標高約1000mの岩塊地で記録〔谷川AC43(2)〕
ハツリグモ Acusilas coccineus SIMON
1895
成体は5〜7月,メス8〜11mm,オス5〜6mm,本州・四国・九州・南西諸島.地表10cm以内の草間にキレ網を張り,中心に枯葉を吊してその中に潜む〔東海84〕.
擬装キレ網〔新海79〕. 崖地に生息〔新海80〕.
クモ卵で染色体を調査,2n=24(♂)および26(♀),XXO型,オスの配偶子n=11および13〔松本AC27S〕.
7〜8月に1〜2個の卵のうを枯葉の中に作る〔山川・熊田73〕.
山地下草の間,地面近くにキレ網を張る.網の中心に呼糸に沿って,シイ・ヒサカキ・ヤマモモ等小型の枯葉を縦に吊るし,幕を張って住居とする.住居は産室も兼ね,卵のうが置かれる.子グモは8月頃出現する〔中平AT23/24〕.
長崎にて7月6日,網中の枯葉内に62卵〔大利AT29〕.
巻き方にはいくつかある.自ら枯葉を曲げて住居を作る.主としてアラカシ・シイ・クスノキ・サクラ・ササ等の葉を利用する〔大志茂AT2〕.
ジャワ及びモルッカ島で採集・記載された.直射日光のささない樹陰に中庸な縦丸網を張り,必ず枯葉を巻いて(両縁を縫合する程度)中央に吊る.6,7月頃から雌雄共に成熟し,同棲する.卵はその住居内壁にだ円形に産みつけられ,その上を糸でかがるだけである.年内にふ化する〔植村AC6(4)〕.
八重山群島で縦糸14本,横糸32本,基線がなく,数十本の支柱糸を複雑に張りまわしている珍奇な構造をしていた〔大利K39〕.
ヤマトジャノメグモ Anepsion japonicum YAGINUMA,1962
八木沼(1962,資源科学研究所 報56/57).
レーバージャノメグモ Anepsion roeweri CHRYSANTHUS,1961
中平(1968,台湾沖縄探蛛行)のジャノメグモ
Anepsion depressum は本種.オス3.5-4.0mm,メス5.0-6.5mm,低木の間に完全円網を張る.台湾産〔吉田哉AT97〕
キジロオヒキグモ Arachnura logio YAGINUMA,
1956
成体は5〜9月,メス25〜28mm,オス1.5mm,本州・四国・九州・南西諸島.針葉樹林内で多く見つかる.枝の付け根にキレ網を張り,中心にとまる〔東海84〕.
完全キレ網または擬装キレ網〔新海79〕.
ゴミリボンを付けるが必ず自分の位置より上に作り,その両側の横糸は切ってある.卵のうもその中に置く.網については松本ほか〔76〕,卵のうについては八木沼〔60,68〕〔新海77〕.
沖縄本島では年間を通して成体が見られ雌雄の生育期間に違いがあっても不都合はない.第1卵のうの性比も1:1〔佐々木健志AC45(2)〕針葉樹林や竹林,林床の暗い雑木林にいる.2-4月の日の出ている日中にメスは網場所に移動しているようだ.5-6月に造網している.メスの幼体は低い位置に垂直か斜めの網.オスはササの葉裏の葉脈に近い部分に糸で幕を作って越冬(ビーティングでは落ちない)〔貞元k62〕.
瀬戸市で10月9日に採集されたメス幼生(4.5,6.5mm)はシイの幹近くに6〜7cmの水平円網を張り,クモはその中心下面に占座していた〔永井AT70〕.
伊豆高原にて体長25mmのメヒ成体,幅30cm位のキレ網,上部2区画に横糸がない.横糸は下部ほど多く,14本内外,縦糸16本内外.毎朝3〜5時に網の更新をする.産卵は更新前1〜3時頃と思う.7月12日採集時卵のう1個あり(7月23日に切る.すでにふ化していた.雌雄とも淡黄色.7月25日第1回脱皮,メスは黄褐色,オスは淡黄緑色となる.7月29日第2回脱皮,オスは成体となる.出のうする),7月12日第2回産卵,7月28日第3回産卵(8月8日ふ化,8月12日第1回脱皮,8月17日第2回脱皮)〔植村AT53〕.
網は地上2m位の所の樹間に張られた径30cm程の円網であるが,上部2区画のみ横糸を欠くキレ網である.横糸の欠けた中央に縦に6個の卵のうが連なっており(長さ5cm位.各70〜80卵.一番上の卵のう内には成体になった雄がぎっしり居て,メスがいない.第2・3・4・5の卵のうには雌雄混在.第2・3の雄は成体,第4の雄は若い.雌は幼体.第5はふ化直後の幼体.第6はふ化直前),頭部を上にして止まる(2例).卵のうは細い淡褐色の糸と太い褐色の糸で作られる〔八木沼AT12〕.
1972年9月10日と1975年8月24日,神奈川県丹沢・大倉の林道で採集,
垂直キレ網(網の高さ1m60〜90cm,網の直径15〜20cm,縦糸9〜11本,横糸10〜15本),信号糸に枯れ葉1〜2枚,脱皮殻を吊るす.指を近付けると網をゆする(第1・2脚を屈伸させる),クモの体に触れると,尾状部をわん曲させて威嚇する.獲物の捕獲法は第4脚で補帯をくり出し,次に第3脚で獲物を回しながら更に補帯を巻きつける.その後,両側の糸を切り,網の中央へ運ぶ.ナガコガネやコガネグモと同様〔松浦K40〕.
10月に神奈川県飯山観音で幼体〔木村・高橋祐K71〕.
メス成体のキレ網にバッタをかけた.縦糸を引くjerkingの後,餌に近付き,捕帯でwrapping,そしてbiting,その後,cut
outし,こしきへ運んだ.こしきへ着くと捕帯で巻き直し,食べた.典型的な進歩型の餌捕獲行動である〔新海明K54〕. 自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
キオヒキグモ Arachnura
melanura SIMON,1867
西表島から記録.雄を初記載.雌は11.1-12.3mm,雄は1.4-1.8mm.インド・マレーシア・インドネシア・台湾にも分布〔谷川AC40(1)〕.
西表島で8月18日に採った卵のうからは♀と♂の幼体が半々出のうした〔谷川K66〕.
キザハシオニグモ Araneus abscissus
(KARSCH,1879)
成体は10〜5月,7〜10mm,北海道・本州・四国・九州.河原や草原のススキ,アシ他の草間に水平の円網を張り,その一端の葉裏に潜む〔東海84〕.
正常円網,草原に生息〔新海79,81〕. 年2回の発生がみられる〔新海69〕.
バラギヒメグモの網食い,ツバキの葉上を徘徊してTU脚で抱え込み,捕帯で包みゾウムシを捕食しようとした〔新海明AT93〕.
4月には交接がみられた〔山川・熊田73〕. Araneus dromedaria WALCK.と同種かもしれない.4月に成熟〔植村AC4(3)〕.
カドオニグモ Araneus angulatus
CLERCK,1758
北満洲黒河街内にて1938年8月,メス45mm内外,褐色または黄褐色を採集〔仲辻AC7(1)〕.
キタグニオニグモ Araneus boreus UYEMURA &
YAGINUMA,1972
メス9・5mm,オス6・8mm,大雪山にて7月10日,栃木・群馬で8月に成体〔植村・八木沼AC24(1)〕.
1975年6月幼体,8月18日成体(壊れかかった網端から離れたコケの中にいた)が富士山・吉田口五合目で採れる〔K40〕.
ナカムラオニグモ Araneus cornutus
CLERCK,1758
成体は1年中,メス9〜11mm,オス7〜8mm,北海道・本州・四国(山地).山間部の草原や建物の周囲に多く,垂直円網を張り,その一端に袋状の住居を作る〔東海84,森林87〕.正常円網または呼糸円網〔新海79〕.
屋外,ホーム天井,草原に生息〔新海80,81〕.手賀沼周辺の堤防で見られ,セイタカアワダチソウやヨシの1本の茎に垂直円網を張り,林縁にはいなかった.体長と網の高さに相関関係がみられた〔浅間ほかAT92〕.
野外では草の葉を重ねた住居を作る〔新海70〕. 産卵期は8〜9月で卵のうは住居内に置く.ナカムラオニグモ線(植村線)で有名〔新海69〕.
5〜11月に卵のうを住居内に作る〔山川・熊田73〕.
夏郊外で普通に見られる.特に水辺・草原に多く,か本科の穂や種々の植物の花や茎を折り曲げて住居を作り,水平円網を張って生活する.成体オスの越冬もあり〔植村AT5〕.
小松敏宏によると,成体も空中飛行をする〔高島AC11(3/4)〕.
千葉県我孫子市にて室内飼育.5-10月にかけて産卵.1雌当りの卵のう数は平均3個,平均相卵数は495個.6月11日出のう幼体は8月初めに成体(雌雄とも5-6回脱皮),8月30日出のう幼体も5-6回脱皮し年内に成熟し成体越冬.9月30日出のう幼体は2-4回脱皮して越冬し,一部が3月に成熟したが死亡率が高かった〔宮下K74〕.
「ナカムラオニグモの丸網について」徹底的な形態・造網の考察あり〔小松AC3(3),4(1),4(4),5(1)〕.
分布南限は年平均気温15℃の線(1月5℃の等温線)に一致,これをナカムラオニグモ線とする(紀州・四国・九州はこの線の南となる).植物で提唱されたハマオモト線(Crinum
Line.小清水昇二による.ハマオモトの北限である)と一致する〔植村AC5(2)〕.
関東地方にて5,6月頃見らるる最も普通なるオニグモなり.通常水平又は傾斜せる丸網を張り,その一端に草木の葉等を折り曲げて作れる住居に入りて生息す.卵のうはこの住居内に付着す.4月頃既に成熟種あれども6月初旬前後を成熟期と称すべし.欧州・北米・北満・北海道・樺太・本洲(ただし本州南部には産せず)に分布す〔関口AC5(3)〕.
オオモンクロベッコウに狩られる〔中村AC5(2)〕. 腹背に寄生バエが産卵.17卵,24卵,35卵〔細野43〕.
7月18日産卵,7月25日ふ化.三重の袋から成る卵のう.付着盤を観察〔中村AC2(4)〕.
ニワオニグモ Araneus diadematus
CLERCK,1758
成体は8〜10月,メス12〜20mm,オス8〜13mm,北海道・本州(常念岳)〔東海84〕. 正常円網〔新海79〕.
千国によれば9月上旬には雌雄共に見られる.9月下旬では雄は発見できなかった.カラマツの枝間や草間,建物などに直径30cmの呼糸円網または円網の中心にいた.卵のうは黄色〔熊田K44〕.
山梨県北岳の山麓1600m地点,8〜9月に成体を採集〔谷川・堀K55〕.
ヌサオニグモ Araneus ejasmodi BOES. et
STR.,1906
成体は6〜9月,メス6〜8mm,オス5〜6mm,本州・四国・九州.草間に円網を張り,網の一端の葉裏に潜む〔東海84〕.
広葉樹の先端の葉を2〜3枚あわせた中に卵のうを作る.卵のうは直径6mm位で,とう黄色の糸でくるむ〔学研76〕.
山野いたるところの樹間に造網.網は夕方,更新する.網の一支点にある木の葉に天幕を張り,日中の住居とする.普通,夜間狩猟をするが,日中でも網に居て活動するものもある.獲物が網にかかると,とび出して来て捕らえるものもある.食事は網の中央で行う.6〜7月に産卵,卵のうは直径8mm位の球形,ふわふわした感じのもので淡褐色,住居内或いは近くの枝等に吊るしておく〔中平AT23/24〕.
長崎にて夕刻の網たたみを調査した.昨夜のまま11例,昨夜の網なし4例,タテ糸のみ5例,新たに造網中4例.5月25日産卵,卵のうは淡燈色の糸で荒く巻かれている〔大利AT28〕.オスはメスの網に侵入する時は,一応葉を半ば巻いて居所を作るようだ.メスフ一頭にオス3頭が居所を設けていた〔大利AT29〕.
夕方円網を張って,こしきに占座し獲物を狩り,翌朝網をたたんで網の一支点にある草木葉に潜んでいる.天幕あり.昼間でも時に網をたたまないクモがいる.食事はこしきで行う〔中平AC15(2)〕.
自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
イシサワオニグモ Araneus ishisawai
KISHIDA,1928
成体は7〜9月,メス18〜20mm,オス10〜12mm,北海道・本州・四国・九州.樹間,草間に大型の垂直円網を張る〔東海84,森林87〕.
正常円網〔新海79〕. 網の一端に信号糸を引き,葉を合せて作った住居の中に隠れているものが多い〔山川・熊田73〕.
600m以上の山に多い.1.5〜2mの高さに直径40cm位の円網〔学研76〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
ヤエンオニグモ Araneus macacus
UYEMURA,1961
成体は7〜9月,メス18〜20mm,オス10〜12mm,北海道・本州・四国・九州.草間に垂直円網を張り,幼生期はかくれ帯を付ける〔東海84〕.
平地より山間地,さほど高くない山の道沿いに多く見かけることがある.夕方から網を張り出すが,一度張った網はたたまずボロボロになるまで使う.地上からこしきまでは1.5m前後.昼は網から離れた草木の葉を曲げ糸でつづった住居にいる.思わぬ方向に飛び出す.縦糸より細い呼糸がある〔貞元K62〕.
4月2日,1.8cmの幼体が中心から上下4cmずつのカクレ帯をつけていた〔松本K39〕. 朝網をたたまない〔植村61〕.
垂直完全円網を張り,中央部から呼糸を引き,近くの葉裏に潜む〔新海K40〕. 正常円網・呼糸円網・白帯円網〔新海79〕.
粘糸間はヤマオニグモより長い.体長のほぼ40倍の網を張る.8月にときどき網をたたみ,そのときは夕方6〜7時に網を張った.たたまないときは夜中に張りかえた.脱皮前5日間網を張らなかった.8月31日,9月21日と2回産卵〔林K47〕.
札幌で,キスジベッコウに対する逃避戦術は「潜伏」であった.ハチの攻撃成功率は0.4とわりと高かった〔遠藤知二AT97〕.
自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
キバナオニグモ Araneus marmoreus
CLERCK,1758
成体は7〜9月,メス17〜22mm,オス10〜12mm,北海道.ヨーロッパ北部からシベリアに分布する寒地性の種.樹間,草間の低い場所(地上0.5〜1m)に垂直円網を張り,その一端の葉裏に潜む〔東海84〕.
札幌で,キスジベッコウに対する逃避戦術は「積極的防衛」であった.ハチの攻撃成功率は0.14だった〔遠藤知二AT97〕.
ビジョオニグモ Araneus mitificus
(SIMON,1886)
成体は8〜10月,メス8〜10mm,オス5mm,本州・四国・九州・南西諸島.樹間にキレ網を張り,その一端の葉を少しまるめて天幕をはって住居を作る〔東海84〕.
平地から山麓にかけて生息し,畑道の低木,雑木林の縁などに多く,山地ではあまり見られない.市街地でも神社や寺,人家の庭でよく見つかる.成体は8〜11月,産卵期は10〜11月,白色で楕円形の1・5cm程の卵のうを広葉樹の葉に産みつけ,葉の一方を丸めて包みこむ.卵はそのままの状態で越冬し,翌年3〜4月にかけて発生が始まり,3月下旬〜5月上旬にかけてふ化する.1卵のう中の卵数は100〜450個で個体と地域によってかなり異なる〔森林87〕.
完全キレ網.庭・生垣,広葉樹の葉に多い〔新海79,80,81〕. 5月15日,5月28日に産卵〔大利AT26/27〕.
3月17日に卵のうを観察〔大利AT31〕.
呼糸の端にある木の葉の表に天幕を張って住居とする.網糸は時間がたつと黄褐色に変わる.住居内で呼糸に第1脚をかけて獲物を待機している.獲物が網にかかると,呼糸を伝って駆けつけ,捕らえた獲物は糸いぼにつけ(小さなものは口にくわえる)住居に持ち帰って食う〔中平AT23/24〕.
網の一端にある葉と天幕の間に常住している.住居幕は網の張り替えごとに糸がつけ加えられるので次第に厚くなる.呼糸を出し,住居に持ち帰って食う.卵のうは住居に置かない〔中平AC15(2)〕.
11月19日,アオキの葉裏に卵のう(蚕の繭のよう)を作り,葉を少しずつ巻き込み,1週間で葉の片側を葉脈まで接する.12月16日,卵のうから離れ,近くに自分の住居を作る.卵のう内の卵はふ化していない.12月27日母グモ死去.3月5日ふ化,124個体.20日頃から出のうし始めるが,全体でまどいをせず,暖かい日に少しずつ分散していく.翌年も12月27日に庭で見つけた卵のうを部屋に入れた.3月12日ふ化.脱皮・成長が遅れる個体があり,25日には1〜3令が混棲.ふ化から19日目に分散開始.子グモの網は円網(キレ網ではない).卵数172,奇形2,発育不全2,ふ化せず4〔佐藤K41,42,43〕.
初夏と晩秋に産卵,2ケ年間に3世代か?〔中平K45〕.
アオオニグモ Araneus pentagrammicus (KARSCH,1879)
成体は5〜7月,メス9〜11mm,オス6mm,本州・四国・九州・南西諸島.樹間にキレ網を張り,その一端の葉を少しまるめて天幕をはって住居を作る.網の糸の色は時間がたつと金色になる〔東海84〕.
無色透明の網は時間がたつと金色に光る.成体出現期はビジョオニグモより早い〔森林87〕. 完全キレ網〔新海79〕. 広葉樹の葉に多い〔新海81〕.
第1脚を呼び糸にかけて,獲物が網にかかるのを待つ.網の直径は20〜30cm位〔学研76〕.ビジョオニグモ同様の習性〔中平AT23/24〕.
網の一端にある葉と天幕の間に常住している.住居幕は網の張り替えごとに糸がつけ加えられるので次第に厚くなる.呼糸を出し,住居に持ち帰って食う.卵のうは住居に置かない〔中平AC15(2)〕.
アカオニグモ Araneus pingius
(KARSCH,1879)
成体は7〜9月,メス17〜22mm,オス10〜12mm,北海道・本州・四国・九州.樹間,草間の低い場所(地上0.5〜1m)に垂直円網を張り,その一端の葉裏に潜む.北海道全域,本州以南では1000m以上の草原に生息する.腹部の色彩は幼体期から成体になった数日間までは黄色をしているが,その後赤色に変化する.産卵期は10〜11月で,地中のくぼみに卵のうを作る〔東海84〕.
卵のうは半球形で直径2.5cmぐらい.卵を包む糸は黄色.寒い地方では秋に産まれた卵は深い雪の下で越冬し,翌春ふ化.かえった子グモはその年の秋までに1cmほどに成長し,もう一度越冬,つぎの年の春からまた成長を始め,夏に成熟する.つまり2年越しの生活史をたどる〔学研76〕.
出のうはファーブルは「爆発による」としているが,実は卵のうのふたを開けて出る〔千国AT77〕.
日本のアカオニグモをヨーロッパ産のものと比較したところ,Araneus quadratus CLERCKではなかった.
ダイダイオニグモとされてきたAraneus pingiusであった〔八木沼AC22(1)〕.
アカオニグモの円網について;網はクモの成長につれて大きくなる.メスの網では成長期から生殖期に入る頃,急に捕虫域は大きくなり,以後成長に伴い急速に拡大されてゆく.縦糸は網の下部に多い.普通1m以下の高さに造網する〔吉倉AC5(2)〕.
樺太全島に普通,低地,幾分湿地,潅木の茂った草原に生息,特にエゾイチゴの薮に多く,成体は強靭な円網を張る.
産卵期は9月中旬〜10月上旬.卵のうは円形,半球状で直径2・5cm,高さ1・5cm.卵数は1546個.越冬卵は6月中旬ふ化(6月5日〜7月10日),出のう後は草間に糸を張りめぐらし,まどい.
Theridion ovatumやAraneus cornutusが子グモを捕食,
第1回脱皮後,7日〜10日して分散する.幼体の円網径は7〜9cm,網に触れてもゆすらない.8月中・下旬(全長4〜5mm),9月下旬(5〜6mm)には潅木薮の落葉下で越冬する.翌年6月下旬6mm,7月上旬7mm,中旬8mm,下旬9〜10mmとなり成熟.エゾイチゴの小葉を3〜4枚つづり合わせて鐘状の隠れ家を作り,強力な円網を張り盛んに昆虫を捕獲する.オスは成熟後は網を張らない.交尾は8月,9月にはオスは見られない.メスは産卵後1〜2週間にて死亡〔吉倉AC4(2)〕.
北満洲の黒河にて1938年8月採集,メス18mm内外〔仲辻AC7(1)〕. 札幌で,キスジベッコウに対する防衛は「積極的防衛」だった〔遠藤知二AT97〕
マルコブオニグモ Araneus rotundicornis YAGINUMA,1972
=コブオニグモ Araneus omoedus
(THORELL)
メス8・6mm,8月9日,札幌,オス7・5mm,8月27日,羅臼.コブオニグモは本種〔八木沼AC24(2)〕.
マルズメオニグモ (マルヅメオニグモ) Araneus semilunaris
(KARSCH,1879)
成体は5〜7月,メス6〜7mm,オス4〜5mm,本州・四国・九州・南西諸島.山間部に多く,樹間2〜4mの高所に垂直円網を張る.色彩変異が多い〔東海84〕.
正常円網〔新海79〕. 樹間に夕方造網する〔中平AT23/24〕. 東大演習林田無試験地にて7月に雌を記録.平地では稀〔宮下直・笹岡K73〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
マメオニグモ Araneus sp.
=Araneus triguttatus
FABRICIUSはサハリン産のものと思われる.マメオニグモといわれてきたものは新種の可能性が強い〔八木沼AT87,86〕.
成体は6〜8月,メス6〜10mm,オス4〜5mm,北海道・本州・四国・九州.樹枝間に斜めに円網を張る〔東海84〕. 正常円網・呼糸円網〔新海79〕.
カラオニグモに似て区別が困難〔千国AT87〕.
コケオニグモ Araneus seminiger (L.KOCH,1878) =A. tartaricus
(KRONEBERG,1875)
成体は6〜10月,メス18〜23mm,オス14mm,本州・四国・九州・トカラ列島〔東海84〕.
コケのはえた木に垂直円網を張り,クモはコケの中に(表面に)うずくまっている〔新海69〕. 9月7日,宮崎県刈田郡にて採集〔平間AC6(4)〕.
九州宮崎県に産す〔植村AC4(1)〕.
キオビベッコウに狩られる.卵のうは75〜88mm長,35〜51mm幅.杉の樹幹にあって当初は茶褐色だが濃褐色に変じる〔細野AC5(2)〕.
長野県須佐渡渓谷いこいの森内の下草で採集(1990年8月8日)〔谷川K61〕.
1993年6月26日,千葉県清澄で採集,飼育により次の日に脱皮,6月28日・10月17日・12月10日・4月10日,5月22日・7月14日に脱皮〔木村知K67〕.
秋田県田沢湖畔で樹皮上より類似種を発見〔田副K61〕タイプ標本を検したところ,コッホがEpeira
semi-nigraとして記載した未成熟なメスが本種であった.谷川明男が記載したコケオニグモA. miyashitai
TANIKAWA,2001は本種と同種であろう〔Ono02a〕.
ツノオニグモ Araneus stella (KARSCH,1879) = A.tsuno YAGINUMA,1972
=ダンダラオニグモ
Araneus bituberculatus (WALCK.,1802)はツノオニグモとなる〔八木沼AC24(2)・BR>l
成体は7〜10月,メス10〜13mm,オス9〜10mm,北海道・本州〔東海84〕.
雌13mm,10月,長野,雄9・6mm,9月,長野〔八木沼AC24(2)〕.
樹間,草間に体のわりには小さな10〜20cmの垂直円網を張る.高山性で,900m以上の地域に多いが,長野県と北海道では平地にも分布している
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.カルシュが1874年函館でヒルゲンドルフにより採取された未熟な雄で記載したEpeira
stellaはタイプ標本を検査したところ,本種であった〔Ono02a〕.
ヤマオニグモ Araneus uyemurai
YAGINUMA,1960
成体は6〜8月,メス17〜20mm,オス11〜13mm,北海道・本州・四国・九州.樹間に大型の垂直円網を張る〔東海84〕.
山地に多く,直径30〜50cmの垂直円網.第1脚と第4脚で横糸をつける位置を計り,第4脚で糸いぼから出した横糸をたて糸につける〔学研76〕.
朝網をたたまない〔植村61〕.
8月〜9月に3回産卵.昼は大抵,網にいない.メスよりオスの方が網にいる時間が長い.網はたたまなかったが,真夜中に張りかえることが多かった.産卵前後には網を張らない〔林秀K47〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
ニシキオニグモ Araneus variegatus
YAGINUMA,1960
成体は8〜10月,メス15〜18mm,オス10mm,北海道・本州・九州.神社の境内に多く(東照宮,浅間神社,三峰神社ほか),建物,石燈篭,樹間に垂直円網を張る〔東海84〕.
正常円網・呼糸円網・切断キレ網〔新海79〕.
樹の幹の2m以上(時には4〜5m)の所に,30〜40cmの垂直(あるいは斜め)円網を張り,昼間は一方の葉蔭に潜む.網は完全円網の時が多いが,個体によってキレ網にするものもみられる.産卵期は10月下旬から11月中旬までで,緑色の卵のうを作る〔新海77〕.
昭和25年10月23日鎌倉で,昭和44年10月23日館山(安房神社)で垂直円網を樹間に張る.同年11月シイの枝間に円網を張り,シイの葉裏にメス潜む〔高野K22〕.
キレ網の捕獲域は縦24cm×横22cmで(縦糸22,横糸16,枠糸3)・呼糸あり(千葉県清澄山)〔新海明・加藤輝K70〕.
自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
オニグモ Araneus ventricosus
(L.KOCH,1878)
成体は6〜10月,メス20〜30mm,オス15〜20mm,全土.夜間,垂直円網を張り,昼間は物陰に潜む〔東海84〕.
正常円網・呼糸円網〔新海79〕. 屋外,ホーム天井に生息〔新海80〕.
関西の種は原則的には殆ど毎日のように網をたたんで,屋根裏に潜み,昼間は網を残しておくことが少なく,関東の種は毎日ではないが時々朝網をたたみ,北方の種は殆ど毎日朝網をたたむ習性がない〔植村61〕.
幼生が稀にキレ網を張る〔中平AT29〕.
造網作業の最後に,網の緊張を平均化するために,中心部(こしき)にほぼ円形に穴をあけたり,2〜3の放射糸に糸を継ぎ足してひきしめたりするので,不正形の穴があいている.これはオニグモ類には共通した習性である.網は夕方張り,翌朝たたんで物陰に潜む.成長するにつれ,網が高所に移動する.9月頃,軒下や樹幹等の雨のかからない所に産卵する.卵のうは灰褐色で深い椀を伏せたような形,手ざわりはふわふわした柔らかい感じであるが,糸は強靭である.2月下旬〜3月上旬,幼生が出現して生垣等に造網する.越冬するのは卵のう内の幼生だけではなく,4月中旬には既に亜成体が見られる〔中平AT23/24〕.
沖縄では日中も網をたたまずにそのままにしているものが多い.日中は網を張っていても,その網にいるものは絶対に無く,軒下や木の葉の裏,樹皮下に潜む.13日間部屋で飼育すると,その間に網の位置は4回変わり,網をたたんだのは3回.日中の野外の網にハエがかかってもでてこないが,部屋で飼育したものは出て,糸をかける〔下謝名AT28〕.
越冬態には幼体(10mm),成体もあり〔植村AT5〕. ツバメが網にかかった〔福本AT16〕.
縦糸も横糸も網の下部に多く,クモが大きい程,網も大きい傾向がある.31粍以上のものには電信線が少ない〔高木AC12(1/2)〕.
日食で造網開始,ユウレイグモも同様〔高島AC12(1/2),AC12(3/4)〕.
出現時刻は日入り時刻と共に早まり(xは日入り時刻の早まり分,yは最早個体の早まり分としてy=3・8x-7・1),潜伏時刻は日の出時刻と共に遅まる(ただし虫の処理に時間がかかり,遅れることもある).日入り時刻が早まる(早まり分をxとする)ほど,最早個体と最遅個体の時間差(yとする)が開く.y=2・7+11・6〔岡本AC7(3/4)〕.
オオモンクロベッコウに狩られる〔中村AC5(2)〕.
奥秩父にて7月末に黄色い小さなハエによって網上のメス成体腹背に10卵程度産卵されたのを観察〔池田98,梅林K77〕.
2頭の腹背左右に寄生バエの卵が10卵と53卵あり〔細野43〕.幼体の造網で横糸張りの回る方向を観察,利き足は無い〔松本K57〕.
電灯のつく頃に出てくる.死んだコオニヤンマも捕獲し食した〔加藤AC2(3)〕. 擬死する〔中平83〕.
3月16日に採集したメス幼体を飼育し,7月中旬成体になったところで庭にはなしたところ,横糸の省略された網を張った.こしき以外はすべて粘糸であった.夜にこしき部に占座していた.網は捕食に使用され,毎夜作りかえていたが,8日目からは正常円網となった.なお飼育ビン内では無粘糸の不規則網を作り,ハエなどを捕食していた〔山川K38〕.
6月には飼育器(50cm四角)では狭くて不自然な網となる〔萱嶋K38〕.
脱皮・産卵前後は網を張らない.7月下旬〜10月下旬にかけて6回産卵した個体は,雌雄が近くにいたし,食欲旺盛であった〔林秀K47〕.
産卵は長野で8月頃,雌は2回ぐらい.翌春出のうするが,ふ化は8月中.第1回の脱皮もすんでいる.9月に暖かいと出のうし,夕方卵のう内に戻る〔細野43〕.都市環境指標種〔新海98〕.
クロオニグモ Araneus ventricosus nigellus
UYEMURA
オニグモの亜種,黒色〔新海69〕.朝網をたたむ回数が少ない〔植村61〕.
カラオニグモ Araneus viperifer
SCHENKEL,1963
成体は5〜8月,メス4〜6mm,オス3〜4mm,北海道・本州・四国・九州.広葉樹の葉の表面または葉間に,垂直あるいは斜めに円網を張り,中心にとまる〔東海84〕.
正常円網〔新海79〕. 杉などの葉先の近くに垂直円網〔山川・熊田73〕.
ハラビロミドリオニグモ Araneus viridiventris
YAGINUMA,1969
成体は6〜8月,メス5〜7mm,オス3.5〜4mm,本州・四国・九州.渓流上の樹間に多い.高所に垂直円網を張る〔東海84〕.
正常円網〔新海79〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
ムツボシオニグモ Araniella yaginumai TANIKAWA,1995
= Araniella sp.A(=Araniella
displicatus
HENTZとされていたもの)
成体は6〜8月,メス4.9〜7.9mm(腹背黒点は3対だが,1-4もあり),オス4.1〜5.4mm(第2脚上腕が黒い.腹背黒点は3対だが,2対-4対もあり),北海道・本州・四国〔谷川AC44(1)〕.
成体は6〜8月,メス5〜8mm,オス4〜5mm(第2脚が黒い),北海道・本州・四国・九州.広葉樹,クマザサなどの表面または葉裏に,直径5〜10cmの小さな水平円網を張る〔東海84〕.
ハナオニグモとしてメス6〜8mm,オス4〜5mm,成体は6〜8月.広葉樹の葉の表面に直径5〜10cmの小さな円網を張ることが多い.北海道・本州・四国・九州に分布.高山地帯のものは別種〔森林87〕.
正常円網〔新海79〕. 広葉樹,特にクマザサの表面に生息〔新海81〕. ムツボシオニグモとの区別点があいまい〔千国AT87〕.
ハナオニグモと同種とする.どちらの学名も日本のものに当たらない.なお似た別種が生息する〔八木沼86〕.
北満洲黒河山地帯にて1940年6月採集〔仲辻AC7(1)〕. ハナオニグモとして5月には葉をまいた中に1個卵のうを作る〔山川・熊田73〕.
トガリハナオニグモ Araniella displicata (HENTZ,1847)
=Araniella sp.B.(=Araniella
cucurbitinus
CLERCKとされていたもの)
成体は7〜8月,メス5.8〜7.4mm(腹背黒点は2-4対),オス4.3〜4.4mm(腹背黒点は3対),北海道・群馬・長野に分布,全北区に分布〔谷川AC44(1)〕.
ハナオニグモはムツボシオニグモと同種とする.どちらの学名も日本のものに当たらない〔八木沼86〕.
コガネグモ属 Argiope
岸田(1931)の細分属では日本産はMiranda属としてナガコガネグモ(沿海州から九州まで分布),
Austrargiope属としてナガマルコガネグモ(琉球・台湾・フィリピン・インドシナに分布), Coganargiope属内に,
Mesargiope亜属としてチュウガタコガネグモ(本州〜九州,琉球〜フィリピンに分布), Coganargiope亜属としてコガネグモ(本州〜九州),
Micrargiope 亜属としてコガタコガネグモ(本州〜九州), アミメコガネグモ(内南洋に分布), ムシバミコガネグモ(琉球・台湾・フィリピンに分布),
Heterargiope亜属としてミゾコガネグモ(本州に分布)を分類する.ナガコガネが全北系, ムシバミが周太平洋系, ナガマル及びチュウガタが東洋系,
他は日本特産である〔岸田AC1(1)〕.
この属のかくれ帯(=白帯)は紫外線反射率が高く,昆虫を誘引することが判明した(Craig et
al.,1990).
ナガマルコガネグモ Argiope aemula
(WALCKENAER,1873)
成体は3〜8月,メス20〜25mm,オス4〜6mm,南西諸島.腹部の形や斑紋,造網場所はナガコガネグモに似るが,かくれ帯の形や卵のうはコガネグモに似る.草原や林縁の草間に垂直円網を張り,X字形かその一部を省略したかくれ帯をつけ,その中央にとまる.かくれ帯の形はコガネグモのものより縦長〔東海84〕.
沖縄では田畑,草原に普通.網直径は60cm,乳灰色のコガネグモに似た卵のうを作る〔下謝名AT28〕. 渡瀬線以南のクモ〔萱嶋AC14(1)〕.
八重山群島では円網の表裏に外枠糸を張りめぐらし,ジョロウグモに見られる三重構造の網も見られた〔大利K39〕.
オスは通常同じメスと続けて2回交尾する.1回目の交尾後,メスに食われてしまう例がある.2回目の交尾でオスは必ず死んでしまい,メスに食われる.オスの触肢を1本除去した後で交尾させると1回目no交尾でもオスは死ぬ〔佐々木健AC43(2)〕.
コガネグモ Argiope amoena
L.KOCH,1878
成体は6〜9月,メス20〜25mm,オス5〜6mm,本州・四国・九州・南西諸島.草や木の枝の間,軒下などに大きな垂直円網を張り,X字型またはその一部を省略したかくれ帯をつけ,その中心にとまる.南方系で,関東地方南部以南では普通であるが,市街地周辺では近年減ってきている.地方名多し〔東海84〕.
本州(関東地方以西)では海岸地方に多く,長野・山梨・栃木・埼玉・群馬の各県ではほとんど見られない.水田,草原,人家の庭,山麓の日当たりの良い場所などに生息.産卵期は7〜9月で,淡緑色の多角形の最中のような卵のうを1〜2個,草の葉や樹木の間に作る.1卵のう中の卵数は800〜2500個.樹間,低木や草間,軒下,屋根の間など,余り環境にこだわらずに造網する.垂直円網を張り,かくれ帯をつける.かくれ帯は,完全に付けるとX字型に見えるが,多くはどこか一部が省略されている〔森林87〕.
正常円網・白帯円網〔新海79〕.
幼体が網の半面を張り直すのを観察した.かくれ帯も更改する〔細野43〕.年1化.幼体で越冬する.高知県では4月中旬活動を始めるが,この時の幼体は体長4〜10mmまでいろいろ.卵のうは7〜8月を山場として6月中旬〜9月中旬までみられる.メスは10日前後の間隔で2〜4個の卵のうを作る.11月下旬〜12月上旬に幼体は活動を休止する.イエオニグモも同様〔中平AT74〕.
甲虫,カマキリ,アブラゼミ等の大型昆虫まで食べる.網は朝早く張り直すが,数日間同じ網を使用することもある.成体になるとかくれ帯をあまりつけない.卵のうは薄い黄緑色をしていて,中には1500個もの黄色い卵がつまっている.網の近くの草の間や木の枝に糸を不規則に張りめぐらし,その中に卵のうを吊す〔学研76〕.
ナガコガネと同様の捕食戦術だった.イナゴ・毛虫・コオロギは100%,バッタ・トンボは75%がラップしてからバイトした.対してハエは100%,チョウ・ガは87%がバイトしてからラップをした.餌の体長別では2cm以下はバイト先行.餌が大きいほど,クモだけが途中でこしきに戻る行動を取った(単独行動と呼ぶ)〔早川AT87,AT88〕.
コガネグモ合戦の聞き書き抄〔川名AT86〕.
出のうする穴は子グモがあけるのではなく,卵のう周縁にあいた穴である.卵のうは二枚貝式で平らな産辱膜と中央のもりあがったおおい膜を合わせたものだが,糸かがりがされていない.次第に粘着力が薄らぎ,子グモ集団がふ化や脱皮の時に動くことで割れ目ができるのだ〔中平AT79〕.
成長につれて白帯を簡略にし,ついには省略する傾向が強くなる.白帯作りでは,脚を使ってすきだすことをしない.刺激すると網を前後に振動させる.卵のう内越冬の幼生は高知では4月に分散し,6月下旬〜7月中旬に産卵.生まれたものは9月中・下旬に産卵する.卵のうは淡黄緑色〜淡緑色.網近くの草間・樹枝に強い糸を不規則にひきまわし,中に吊るす〔中平AT23/24〕.
さしみ(マグロ,イカ,エビ,イサキ)や牛乳,卵黄も餌となる.時々,明け方に網を張り替える.暗い日は昼でも張り替えた.屋内飼育で7月5日から10月18日まで10回産卵した例がある.ただしほとんど出のうしたのは8月18日の卵のうのみで,ふ化しないもの3例,出のうしないもの3例,一部出のうしたもの2例,産卵に失敗し卵が流れおちたもの1例(10月18日)である〔八木沼AT79〕.
コガネグモヒメバチTromatobia argiope UCHIDAに卵のうを狩られる〔八木沼AT48〕. カナヘビも食う〔中平AT39〕.
横糸12本の小円網の中心にて脱皮.シロガネグモの如く脱皮のための稚網は特に設けない〔大利AT38〕.
かくれ帯の形は多様である.かくれ帯の糸の紡ぎ出しに歩脚を使わず,糸いぼを直接網にすり付けるようにして製作する.コガネグモの仲間は同様.ほぼ@幼体では円形や布状にしたものをつける個体が多い,A成長したものはジグザグ状X型や,その一部の欠けたものを作る個体が多い,B成長するにつれて簡略化され,省略される傾向が強くなる〔中平AT37〕.
産卵は0時頃から始まる.網の上隅の一角に不規則網を作る.その網の中央部で旋回し,木の葉状の敷布を作る.最初は平板だが,やがて盆状となる.親はそれを抱き,静止,腹部を左右上下に動かし,ぐっと卵塊を押し出す.15回の動作で1500個を産卵した.掛け布は最初ふわふわした糸で,周辺からかけていく.卵のうが出来ると不規則網を周辺に張りめぐらし,網の中央に戻る.7時間20分かかった.平均10日間隔で産卵し,6個の卵のうを作った〔城AT32〕.
飼育で6月28日,7月11日と産卵(2回目は1247卵)〔大利AT29〕.
8月3日の出のう幼体が飼育下で9-10月に成体になった(雄は5-7回の脱皮、雌は8回の脱皮).幼体で越冬した個体も5月までに死亡.野外で4月に採集した幼体は飼育で雄になり6月まで生存〔宮下AC45(2)〕.
捕食昆虫のリストあり〔日高・鈴木AT6〕.
大阪にて,12月に体長5mm内外の幼生は,夜行性のようになり,午後6時から8時頃にかけて占座し始め,翌朝7時頃まで居る.暖かい日(12℃以上)には昼夜共に占座しないことがある.8℃以下では占座しない.チャップマンの方法で実験すると,行動限界は8℃位である.43℃で仮死,46℃で全て熱死.1月下旬から2月は滅多に占座しない.3月中旬に網に占座するようになる〔木村AT4〕.
三重県名張市1953年7月7日,採取した卵のうより8個のマユ,Tromatobia nipponensisUCHIDAが出た〔橋本AC18(2)〕.
倉敷にて,卵のう内で卵を食うウジからSarcophaga属のハエが羽化〔白AC13(3/4)〕. オオモンクロベッコウに狩られる〔中村AC5(2)〕.
淡路島にて昭和11年8月18日頃,コガネグモは採集できず,コガタコガネグモが多かった〔植村AC3(2)〕. 朝鮮にも分布〔上田AC1(4)〕.
オスが交接しようとした途端,メスにwrapされてしまった.メス1頭に網の周囲にオス6頭が来ていた〔加藤AC4(3)〕.
卵のう内でまず子グモ集団の表層に位置している子グモが脱皮,子グモは20〜30分すると中心部へ押し入っていく.ぬけ殻は表層に残る.ユカタヤマシログモ,ドヨウオニグモ,ゴミグモ,ハシリグモ等も同様〔中平83〕.
網にかけたカノコガにさわった後,糸を切って落とした.次にドウガネブイブイを捕食した.コガネグモはカノコガがきらいなのか.カノコガはササグモの餌にはなるが〔高野K26/28〕.
7月13日,ヒヨドリが網上のコガネグモ成体を捕食した〔高野K40〕.
7月5日,高知県で宮崎清一氏の自宅でスズメが網にかかった〔中平AT95〕しおり糸に及ぼす紫外線と温度の影響をESR測定法で調査した〔大崎AC46(1)〕.
自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
ムシバミコガネグモ Argiope aetheroides YIN et
al.,1989
成体は6〜9月,メス15〜18mm,オス5〜6mm,本州(愛知県以南)・四国・九州・南西諸島.コガタコガネグモに似るが,大きくて,振動などに対して敏感ではない.卵のうはコガネグモより細長い〔東海84〕.
Argiope keyserlingi (KARSCH,1878)あるいはArgiope aethrea
(WALCK.,1841)に同定されてきたが,それは誤りで,中国で記載された種だった.分布の東端は静岡県南伊豆町.オス(3.4-4.8mm)の出現時期は和歌山県で7月23日,屋久島で7月14日〔谷川AC43(1)〕.
震動に感じて飛び降りる個体もいる〔谷川K66〕. 伊豆半島新記録(松崎町雲見にて7月25日,雌)〔新海明・高橋祐K69〕. 熊野市にて雌〔新海明K69〕.
ナガコガネグモ Argiope bruennichii
(SCOPOLI,1772)
成体は8〜11月,メス20〜25mm,オス8〜12mm,全土.草原や林縁の草間,水田の稲の間などに体のわりには小さな(直径20〜50cm)垂直円網を張り,直線状または円形のかくれ帯をつけ,その中心にとまる.幼生のかくれ帯はジグザグの糸が不規則に集まった形.危険を感じると網を前後にはげしくゆする.卵のうはつぼ型〔東海84〕.
産卵期は9〜10月で,草間に球形に近いつぼ型の1・5〜2cmほどの茶褐色の卵のうを作る.1卵のう中の卵数は800〜1500個.卵は産卵後,約1ケ月でふ化する.子グモは1回目の脱皮を済ませた後,卵のう内で越冬し,翌年6月上旬に卵のうから出てくる.草原や林の周囲の草むらなど,比較的低い場所に垂直円網を張る.水田に特に多く,高知県では稲牛若と呼ばれている.獲物はバッタ,ガ,ハエ,ヨコバイなどが多く,獲物がかかると捕帯で巻いてから中心に持ち帰って食べる〔森林87〕.
正常円網・白帯円網〔新海79〕. 水田,浅川流域の河原,草原に生息〔新海80,81〕.
ジョロウグモと網のデザインと餌捕獲能力を比較.粘球直径は大きいが,数は少ない.大型餌の付加試験の結果はバラついたが,ジョロウグモが大きかった〔宮下直・新海明AC44(1)〕.
刺激により,黄色の鱗が収縮して一面に網目状を呈し,腹部正中斑および後端にある数本の縦斑が太くなる〔新海AT51/52〕.
異常卵のうと小実験〔中平AT76〕. 産卵と卵のう製作の詳細の記録あり〔千国AT75〕.
造網の時の脚の使い方は横糸張りではコガタコガネグモと共通で,ジョロウグモとは右第4脚で糸いぼから引き出した糸を左第4脚へ受け渡す点が異なる.ジョロウグモでは直接左第4脚で引き出す.足場糸張りでは糸を出す時に左第4脚を使わない点でコガタコガネグモと異なる〔福本AT60〕.
かくれ帯の形はこしきで楕円形.時に円心円形.縦糸間では上下縦にのびてI型.X型もあり.一例観察だが,卵のうを置くためにかくれ帯を作った.かくれ帯に住居としての性格が残ることを示唆する.「かくれ帯は住居の変形残存物である」〔中平AT37〕.
網の更新は毎日ではない.一部や中央部を張り変える〔中平AT35〕.
渓流上では網にハアリとアブラムシが高くかかり,ユスリカやカゲロウは低かった〔吉田真AC46(2)〕.
コガネグモを牛若,本種を稲牛若と称する.コガネグモより2カ月程遅れて成熟.子グモは6月頃出現し,コガネグモの第2回目の産卵と同じ時期(9〜10月)に産卵.卵のうは褐色の壷型で草間に張った不規則網に吊るす.X字型の白帯はなく,縦のジグザグ型か渦巻き型である〔中平AT23/24〕.
6月初め分散した幼体を飼育,雄は6回,雌7-8回脱皮をし,50-80日後の8-9月に成熟.オスはメスより10日ほど早く成熟.野外で9-10月に4-6個の卵のうを産卵,500-1500個,10-15日でふ化するが,ふ化しない卵のうもあり〔宮下AC43(2):宮下AC45(2)〕.
オオモンクロベッコウに狩られる〔中村AC5(2)〕. 10月7日,東丹沢の草原で横一文字形のかくれ帯を観察〔高野K40〕.
山北町で採集した卵のうは5月30日に出のう,冬の前に出のうしているものもある〔鈴木勝K47〕.
下向き定位には光と腹柄の筋肉の張力受容を介した反応が複合している〔平松・種田AT95〕.
コガタコガネグモ Argiope minuta
KARSCH,1879
成体は7〜10月,メス8〜12mm,オス4〜5mm,本州・四国・九州・南西諸島.敏感で近付くと網からとびおりる〔東海84〕.
飛びおりない個体もいる〔谷川k66〕. メス12〜15mm〔森林87〕. 正常円網・白帯円網〔新海79〕.
木や草の間に垂直円網を張り,X字状のかくれ帯をつける〔学研76〕.
刺激により,赤色と黄白色の鱗状斑が収縮し,網目状になり,腹背にある数本の線が太く現れてくる.個体によっては赤褐色に変化するものもある〔新海AT50/51〕.
体長と網面積は相関しない〔浅間ほかAT92〕.
造網動作の脚の使い方はナガコガネグモの項参照〔福本AT60〕網型・白帯をつける・占座姿勢などコガネグモと同じ.刺激に敏感で,すぐ地上に落下し,落葉の下や葉の裏にもぐってしまう.9月頃産卵,卵のうは褐色で,濃灰色の条斑が分布する〔中平AT23/24〕.
チュウガタコガネグモ Argiope boesenbergi BOES. et
STR.,1906
成体は6〜8月,メス15〜18mm,オス5〜6mm,本州・四国・九州・南西諸島〔東海84〕. 正常円網・白帯円網〔新海79〕.
山道の木の間に垂直円網を張り,X字状のかくれ帯をつける〔学研76〕. コガネグモヒメバチに卵のうを狩られることがある〔八木沼AT48〕.
習性はコガネグモと同じ.6月頃産卵,卵のうは灰緑色,卵粒は黄色〔中平AT23/24〕. 捕食昆虫のリストあり〔日高・鈴木AT6〕.
埼玉県が北限〔岸田AC1(1)〕. 自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
オオスミコガネグモ Argiope ohsumiensis
YAGINUMA,1969
種子島・屋久島・佐多岬にて採集,メス20mm(7月下旬から8月),オス7mm(7月下旬),幼生ほど腹背斑紋が明瞭で美しい.大江の観察によれば,直径50〜100cmの円網,成長に伴い蹄形に変わる,前後に支え糸,中心より下にかくれ帯をつけることがある(8mm幅,5cm長),卵のうは褐白糸で包まれ,内部に球形の硬い白膜あり〔八木沼AC20(2)〕.
ヤマトカナエグモ Chorizopes nipponicus
YAGINUMA,1963
成体は6〜9月,3.5〜4.5mm,本州・四国・九州・南西諸島.他のクモの網に侵入し,その主を攻撃する〔東海84,森林87〕.
コガネグモ科のクモが多くとらえられる〔東海84〕. 中平の報告がある〔新海69〕. 7月に卵のうを作る〔山川・熊田73〕.
8月頃,山地の樹枝に10cm位の糸で吊り下げられた褐色の卵のう(長径5mm,短径3mm)を見掛ける〔中平AT23/24〕.
飼育ビン内で夜間不規則網様の糸を張る.30日間の絶食後もハエを補食しない.オオヒメグモを与えると攻撃する(かみつく).粘球・捕帯は使用しない.攻撃は一度で終わり,相手がたおれてから接近,補食する.わすかの糸(捕糸〔中平による〕)をかける行動はヒメグモに似る〔有田AT49/50〕.
アシナガサラグモ幼生の口にした餌にかみついて奪った〔中平AT39〕.
網の中心部のカタハリウズグモから4cm離れた所にいたカナエグモは,ウズグモが獲物がかかって中心を離れると,中心へ進み,静止.中心へ戻ってきたウズグモは,前脚で糸をはじいて侵入者を追い出そうとする.にらみ合いとなる.しばらくして見ると,カナエグモはウズグモの獲物をくわえ,ウズグモにも糸を巻く.獲物を食べながら時々,ウズグモに糸を巻く.途中で採集した〔橋本AT29〕.
三重県上野市にて1962年9月16日に採取した卵のうからヒメバチ科の一種Phobetes sp. が2個体羽化,
他にタマゴバチの一種20個体羽化〔橋本AC18(2)〕
シロゴミグモ Cyclosa alba
TANIKAWA,1992
メス4〜5mm,オス不明,西表島の標本で記載,三宅島・香川県で記録〔谷川AC41(1)〕.
ヤセゴミグモ Cyclosa angusta
TANIKAWA,1992
成体は6月,メス8mm,オス不明,西表島の標本で記載,キジロゴミグモ・ヤマゴミグモ・オノゴミグモと類似〔谷川AC41(1)〕.
沖縄本島北部琉球大学付属奥の山荘前に生息〔谷川K70〕. 雄を初記載した.3月に雄亜成体で直後に脱皮.奄美大島湯湾岳では8月に雄成体〔谷川AC46(1)〕.
ギンメッキゴミグモ Cyclosa argenteoalba BOES. et
STR.,1906
模式産地は佐賀県.所見標本は栃木県から宮崎県,台湾まで.中国・韓国からも記録メス4〜7mm,オス3〜4mm〔谷川AC41(1)〕.
成体は6〜8月,メス6〜7mm,オス5〜6mm,全土.草間に垂直円網を張り,網の中心で頭を上にしてとまる〔東海84,森林87〕.
白帯円網・擬装円網〔新海79〕. 円形・直線状などいろいろなかくれ帯をつける.ゴミリボンをつける個体もある〔新海69〕.
ゴミの量は少なく,卵のうを網におかない〔中平AT37・14〕.
雨のときには頭を下にし,前脚を下にしている〔細野43〕.幼時には主として放射糸に白色のねじれたテープ状の白帯をつける.成長するにつれ,ごみリボンをつけるようになる.食べかすで,クモの後方,つまり下方へ縦に吊す.粉々にした食べかすを,網の所々に円形にとりつける場合もある〔中平AT23/24〕.
11月17日産卵,12月8日31頭出のう+12月9日17頭出のう+死亡2頭+未ふ化1頭〔鈴木成生k65〕.
カラスゴミグモ Cyclosa atrata BOES. et STR.,1906
カギヅメカラスゴミグモ Cyclosa
hamulataと混同がある.メスでの区別は難しい.模式産地は佐賀県.所見標本は北は茨城県から南は熊本県まで.メス6〜10mm,オス4〜5mm,.オス成体6〜9月〔谷川AC41(1)〕.
成体は6〜8月,メス10〜12mm,オス5〜6mm,北海道・本州・四国・九州.草間の地表近くに垂直円網を張り,中心に横あるいは斜め向きにとまる〔東海84,森林87,中平AT23/24〕.
ごみリボンを作らない.かくれ帯は幼体時に多い.卵のうは網に置かず,草木の葉裏などに付ける〔中平AT37〕.
宮崎県にて,卵のう越冬で3月下旬に出のうする(家で飼育したものは4月半ばをすぎても出のうしない).1〜2日団居.1卵のう当たり25〜30頭.3〜4日後,分散し,始めは直径3cm位の完全円網に横向きに静止.成長と共に網が大きくなる.1ケ月後(体長6mm,網直径8cm)によくかくれ帯を作る.5月下旬性差が明らかとなる.メスは完全円網だが,オスは縦糸・横糸共に粗末な直径5cm位の小さな円網を張る.更に網をはらなくなって,成体になるとメスの円網の隅に来る.5月下旬〜6月始めに交接.オスは6月中旬,姿を消す.メスは6月中下旬に産卵.7月初旬に死ぬ.卵(黄白色)は産卵後,10日内外でふ化し,4〜5日で出のうする.9月初旬から第2回目の繁殖期に入る.9月初旬〜中旬に交接,中下旬に産卵.卵のう内でふ化して越冬するようだ.卵のうは直径7mm,高さ4mmの半球形で,内部は細い白糸,外部は明るい濃黄色のやや粗い糸で作り,袋というより綿で包んだような感じのものである.ツツジ・チヤ・タケ・マサキ等の小枝の下側や,その葉裏に多く,メヒシバ等の雑草の葉裏にも多い.出のうの時は幼生が下に1頭がでられる程度の穴を開ける.造網は8月下旬では朝6時半頃から8時頃まで.普通は枠糸は前日のものを利用することが多い.造網過程はオニグモと少し異なる.まず中心で直交する4本の糸を張り,外枠を張り,縦糸を少しずつふやしながら内枠を張る(普通は枠糸を前のものを使うので,枠糸を補強して縦糸を張る).ここまで40分.つぎに縦糸をこまかく張り(15分),こしきを整えて,中心から外側へむかって粗目の足場糸を張り,外側からオニグモ類と同様に,足場糸をはずしながらこまかく横糸を張る(30分).1時間25分位かかる.雨の時は横糸をたたんで小数の縦糸だけをはって,上向きに止まることが多い.網にかかるものは10mm以下のユスリカ・ハモグリバエ・ミギワバエ・ショウジョウバエ・アブラムシ・アリ等.食餌昆虫,特にユスリカの関係だろうが,市街地の下水溝の付近に多い.局部分布をする〔松山AT14〕.
カラスグモ.木立の根元近くに小型の垂直丸網を作り,その中央に横向き,或いは下向きに静止す.7月初旬には成熟せるもの多く8月には多数の幼クモ現わる〔関口AC5(3)〕.
8月13日に雌雄を庭へ放した.10月7日に雄が雌の網に侵入〔細野43〕.自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
ミナミノシマゴミグモ Cyclosa confusa BOES. et STR.,1906
=シマゴミグモ Cyclosa insulana
(COSTA,1834)
シマゴミグモ Cyclosa
omonagaと本種は混同されてきた.以下の記録も明確にどちらの種か確認が必要である.本種の模式標本産地はデーニッツ採,1882年(佐賀県).所見標本は三宅島および山口県以南,南西諸島まで.中国でも記録.メス5〜8mm,オス3〜4mm,オス成体は8月(九州)に出現〔谷川AC41(1)〕.
成体は5〜8月,メス8〜10mm,オス5〜6mm,本州・四国・九州・南西諸島.海岸地域に多い.木や草の間に垂直円網を張る.網につけるゴミの量は少ない〔東海84〕.
白帯円網〔新海79〕.円網の修繕を観察.縦糸・足場糸・横糸を張った〔新海明K74〕.
幼時には網の中央に同心円や渦巻き状の白帯をつけるが,成長するにつれ塵芥や食べかすなどによるリボンを併用.これら擬装物は直線状にならべられることが多い.占座姿勢は一定しておらず,上・下・横,いろいろである.6月頃,網の近くにある樹幹などに卵のうをつける.卵のうは皿をふせたような形でやわらかく,白色であるが,時間がたつと黄色に変化する〔中平AT23/24〕.
幼生メスがアシナガサラグモの網に侵入して宿主を食していた〔中平AT39〕. 卵のうは樹間等に付ける〔中平AT37〕.
長崎にて6月19日夜産卵〔大利AT29〕.
ギンナガゴミグモ Cyclosa ginnaga YAGINUMA,1959
クマダギンナガゴミグモ Cyclosa kumadai
と混同.所見標本は静岡県伊豆湯が島が東端,沖縄島まで.メス5〜10mm,オス3〜5mm〔谷川AC41(1)〕.
成体は6〜8月,メス7〜8mm,オス5〜7mm,本州・四国・九州・南西諸島.垂直円網の中心に頭を上にしてとまる.放射状あるいは渦巻き状のかくれ帯をつける〔東海84〕.
ギンメッキは山地に多いが本種は平地にみられる〔森林87〕.白帯円網・擬装円網〔新海79〕.かくれ帯とゴミリボンを併用する〔中平AT37〕.
ギンメッキゴミグモと同じ習性〔中平AT23/24〕. 白色のジグザグリボンを網の中心部に縦につけ,その上にクモはとまる〔下謝名AT14〕.
カギヅメカラスゴミグモ Cyclosa hamukata TANIKAWA,1992
カラスゴミグモ Cyclosa
atrataと混同がある.メスでの区別は難しい.模式産地は埼玉県.所見標本は北は北海道から南は兵庫県まで.メス7〜11mm,オス4〜5mm,.オス成体7〜8月〔谷川AC41(1)〕.
成体は6〜8月,メス10〜12mm,オス5〜6mm,北海道・本州・四国・九州.草間の地表近くに垂直円網を張り,中心に横あるいは斜め向きにとまる〔東海84,森林87,中平AT23/24〕.
ヤマトゴミグモ Cyclosa japonica BOES.et
STR.,1906
成体は6〜8月,メス5〜6mm,オス4〜5mm,本州・四国・九州・南西諸島.網にはかくれ帯またはゴミを様々な形につけ,横向きにとまることが多い〔東海84〕.
北海道焼尻島から佐賀県まで局地的に分布,朝鮮・台湾からも記録.メス4〜7mm,オス3〜4mm,ミナミノシマゴミグモと類似〔谷川AC41(1)〕.
7〜8月に5〜7個の卵のうを作る〔山川・熊田73〕. 卵のうは木の枝に付ける〔学研76〕.
東大演習林田無試験地にて10月に雌が採集.平地では稀〔宮下直・笹岡K73〕. 自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
クマダギンナガゴミグモ Cyclosa kumadai
TANIKAWA,1992
東京都青梅市御嵩山が模式産地.成体は6〜8月,メス5〜8mm,オス4mm,北海道利尻島から大分県まで局地的に分布.ギンナガゴミグモと類似〔谷川AC41(1)〕.
キジロゴミグモ (ムツデゴミグモ)Cyclosa laticauda BOES.et
STR.,1906
成体は6〜8月,メス8〜10mm,オス7mm,本州・四国・九州.網にはゴミを縦にならべ,中心にとまる〔東海84〕.
北海道利尻島から奄美大島まで局地的に分布,朝鮮・台湾からも記録.メス6〜10mm,オス4〜5mm,ヤマゴミグモ・ヤセゴミグモ・オノゴミグモと類似〔谷川AC41(1)〕.
個体数は極めて少ない〔新海69〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
ハマゴミグモ Cyclosa maritima TANIKAWA,1992
=Cyclosa litoralis
〔八木沼・新海AT64・BR>l
=Cyclosa camerodes (THORELL,1878)
所見標本小笠原諸島.メス5〜8mm,オス3〜4mm〔谷川AC41(1)〕.
成体は1年中,メス5〜7mm,オス2.5〜3.5mm,沖縄・小笠原諸島.海岸の岩場,廃船,流木,植物などに垂直円網を張り,中央に縦にゴミを並べる〔東海84〕.
ヤマゴミグモ Cyclosa monticola BOES. et
STR.,1906
成体は6〜8月,メス8〜9mm,オス6〜7mm,本州・四国・九州・南西諸島.網には大きなゴミを並べる〔東海84〕.
所見標本は北は東京都から対馬まで,中国・朝鮮・台湾からも記録.メス7〜9mm,オス5〜6mm,キジロゴミグモ・ヤセゴミグモ・オノゴミグモと類似〔谷川AC41(1)〕..
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
トゲゴミグモ Cyclosa mulmeinensis
(THORELL,1887)
成体は1〜8月,メス3.4-5mm,オス2.7-3.1mm,マルゴミグモとは別種.アフリカから東アジアまで分布〔谷川AT96,AC41(1)〕.
与那国島から奄美大島まで分布.マルゴミグモとは混在しない〔谷川K62〕.
夏型の網はZilla型で,占座点の上方の黒褐色の太い糸(食べかすや塵芥が混じる)に黒灰褐色の卵のう2〜3個をつけ,1卵のう中に35〜45卵.卵は0・5〜0・7mm大で白色,網は不正円形で20cm大.垂直から30度位の傾きのものまである.冬型の網は横糸が全くない〔下謝名AT28〕.
幼体は円網,亜成体から成体になると6時・12時のところに軽く集塵し,中央に占座.他所にも対角線上に集塵.産卵期にキレ網となる.成体同志,近接して造網する〔大利K34〕.
八重山群島に普通.キレ網に4〜6個の卵袋(幼対が越冬.ベージュ色をした紡錘状).危険を感じると網をゆする.偽死する.雄性先熟.4月に交接期〔大利K39〕.
(以下はマルゴミグモの記録として報告されたが,分布からするとトゲゴミグモの記録)沖縄の中城公園の1本のサクラの幼木に5種,多個体のクモがわく糸を共有しあって造網していた.マルゴミグモが最も多い.83年5月には109頭中76頭を占めた〔新海明K54〕.
網の上面のこしきにいるが,虫がかかるとフリーゾーンから下面に行き,捕獲してから上面に戻って食べる〔新海明K73〕.
オガサワラゴミグモ Cyclosa norihisai
TANIKAWA,1992
メス4〜7mm,オス3mm,小笠原諸島.オス成体3月.ミナミノシマゴミグモに似る〔谷川AC41(1)〕.
ゴミグモ Cyclosa octotuberculata
KARSCH,1879
成体は4〜9月,メス12〜14mm,オス7〜8mm,本州・四国・九州・南西諸島.垂直円網を張り,中央に縦にゴミ,食べかすなどを並べ自分もその中に潜む〔東海84〕.
所見標本の北限は福島県,南限は鹿児島県.メス11〜14mm,オス8〜10mm〔谷川AC41(1)〕.
庭先から山麓まで広く生息しているが,ここ数年,オニグモとともに市街地では急速に数が減ってきている.成体は5〜9月,産卵期は6〜8月で楕円形の袋のような茶色の卵のうを数日おきに5〜6個作り,ゴミの列の中に並べる.1卵のう中の卵数は60〜130個だが,九州では300個を数えた記録もある.20〜40cmの垂直円網を張る.採集しようとして触れても網にしがみついている.網を張り替える時はゴミの列を持ち運び,新しい網の中心につける〔森林87〕.
擬装円網〔新海79〕. 体長と網面積に相関はない〔浅間ほかAT92〕. 庭・生垣,草原に生息〔新海80,81〕.
6〜7月にゴミの中に2〜3個の卵のうを作る〔山川・熊田73〕. ゴミリボンから餌種を調査した〔中平AT39〕. かくれ帯は稀〔中平AT37〕.
網を修理するときもリボンは更改しない〔細野43〕. 5月12日,オスが朝の4時から32分間かかって枠糸にぶら下がって脱皮した〔木庭AT32〕.
塵芥・脱皮殻・食べかす等を褐色の糸で棒状につづって,占座点より下方に吊す.時に白色糸で円形の白帯を作る.6月頃成熟し,8月頃までに4〜5個の卵のうをごみリボンの中に吊す.卵のうは赤褐色で楕円体,外被は破れ易い.1卵のう中に200〜300卵.クモを刺激すると幼生はしおり糸をひいてボロリところがり落ちるが,卵のうを作るものはリボンにしがみついて離れない〔中平AT23/24〕.
刺激をすると擬死する〔下謝名AT28〕.
一度,使った塵芥(食べかす,枯草,草実,羽毛,糸くず,脱皮殻,毛など)にたしていくので,成長につれて白帯も長大になっていく〔中平AT14〕.
ゴミは新しい網にもっていく〔大利AT20〕.
熊本にて,交接期6月,3m位の間に5〜6頭のオスが網をはっている.南面の山裾では成体越冬している.寄生蜂が腹部に寄生する〔木庭AT15〕.
1月に幼生を採集〔植村AT5〕. 5月3日,寄生蜂幼虫がクモの腹部に.5月26日羽化した.岩田久二雄によれば,Zabrachypus
tuberculatus (UCHIDA)である〔橋本AT26/27〕.
5月頃に既に成熟種あれども通常7,8月頃を成熟期となす.垣根または樹間に縦の丸網を張り中央に長さ10cmにも及びて食餌残かす物及び卵のう等を付着せしむ.クモは残かす物上に下向きに静止すれども色彩極めて類似せる為一見その存在を確認するは困難なり.本州・四国・九州・台湾に分布す〔関口AC5(3)〕.
三浦半島(1990年8月14日)でシロカネイソウロウが居候〔熊田K62〕.
シマゴミグモ Cyclosa omonaga TANIKAWA,1992
=シマゴミグモ Cyclosa insulana
(COSTA,1834)
ミナミノシマゴミグモ Cyclosa
confusaと本種は混同されてきた.以下の記録も明確にどちらの種か確認が必要である.本種の模式産地は岡山県.所見標本は和歌山県から宮崎県まで.メス5〜8mm,オス4〜5mm,オス成体は8月(九州)に出現〔谷川AC41(1)〕.
記載時の分布の東端は和歌山県だったが,伊豆半島,南伊豆町(1992年7月25日)でも採集〔谷川K65〕.
成体は5〜8月,メス8〜10mm,オス5〜6mm,本州・四国・九州・南西諸島.海岸地域に多い.木や草の間に垂直円網を張る.網につけるゴミの量は少ない〔東海84〕.
白帯円網〔新海79〕.
幼時には網の中央に同心円や渦巻き状の白帯をつけるが,成長するにつれ塵芥や食べかすなどによるリボンを併用.これら擬装物は直線状にならべられることが多い.占座姿勢は一定しておらず,上・下・横,いろいろである.6月頃,網の近くにある樹幹などに卵のうをつける.卵のうは皿をふせたような形でやわらかく,白色であるが,時間がたつと黄色に変化する〔中平AT23/24〕.
幼生メスがアシナガサラグモの網に侵入して宿主を食していた〔中平AT39〕. 卵のうは樹間等に付ける〔中平AT37〕.
長崎にて6月19日夜産卵〔大利AT29〕.
オオクマギンメッキゴミグモ Cyclosa okumae
TANIKAWA,1992
福岡県の標本で記載,北海道で記録.メス5mm,オス3mm,成体は6〜8月〔谷川AC41(1)〕.
オノゴミグモ Cyclosa onoi
TANIKAWA,1992
宮城県伊豆沼の標本で記載,山形県から熊本県で局地的に記録.メス6〜7mm,成体は6〜9月〔谷川AC41(1)〕.
オスを東京都・兵庫県(8月下旬)から記載,4mm〔谷川AC41(2)〕.
北海道朝日町岩尾内湖畔にて1997年7月16-18日に採集.この種の北限〔谷川K73〕.
東京大学付属田無試験地にて生態調査し,産卵期は6-7月と9-10月,地上から「こしき」までは13.1+12.3cm,または25.6+6.3cmと低かった.体長7.0mmの雌の卵数は52(second
cocoon),62(third
cocoon),5.8mmの雌では20(second),26(third),25(fourth)〔宮下直AC44,K73〕.
ヒメマルゴミグモ Cyclosa psylla
(THORELL,1887)
所見標本は佐賀県(デーニッツ採集).メス2.4mm〔谷川AC41(1)〕..
ミツカドゴミグモ Cyclosa sachikoae
TANIKAWA,1992
模式産地は西表島,奄美大島まで分布.メス4〜5mm,オス2〜3mm,オス成体1〜4月〔谷川AC41(1)〕.
沖縄本島与那にて記録〔谷川K70〕.
ヨツデゴミグモ Cyclosa sedeculata
KARSCH,1879
所見標本は宮城県から鹿児島県まで分布.メス4〜6mm,オス3〜4mm〔谷川AC41(1)〕.
成体は5〜7月,メス4〜5mm,オス3mm,本州・四国・九州・南西諸島.家の周囲から山地までみられる.ゴミグモと習性は同じ.幼体は渦巻き状のかくれ帯をつける〔東海84,中平AT14〕.
産卵期は5月下旬〜7月で,網の中心に淡褐色の卵のうを3〜5個縦に並べる.1卵のう中の卵数は10〜30個.低木や草間に10cm前後の目の細かい小さな垂直円網を張り,中心にゴミをつけたり,かくれ帯をつけたりする〔森林87〕.
白帯円網〔新海79〕. 庭・生垣,草原に生息〔新海80,81〕.
幼時には,占座姿勢は垂直下位,斜下横位,平行横位,斜上横位,垂直上位と変化する〔中平AT62〕.
成長するとごみリボンを占座点より上方へ縦につけ,それを尻にして垂直下位に占座する習性がある.6月頃より褐色の卵のうを4〜5個,順次リボンの中に置く.幼生は刺激するとにげだすが,卵のうを作ると,卵のうのある方に向きを変え,しがみついて離れない〔中平AT23/24〕.
水平に張られる網もある〔池田84〕.
体長と網面積に相関はない.11月に成体のピークがある(これは雄亜成体を成体と見誤ったもの〔池田〕)〔浅間ほかAT92〕.
メスの網に入り込んだオスは第1脚で縦糸の1本をチョンチョンとしゃくった.メスが応えてチョンチョンとしゃくってオスの方に2〜3歩近付く.5回で大分近付き,オスが繰り返しチョンチョンしゃくる.メスが接近し,第1脚をオスの体にかける.オスも進む.メスは第4脚で吊りさがる.オスは交合.5月23日梶カ森にて〔中平AT39〕.
大和市で5月23日,求愛・交尾を観察.♂は網外から交尾糸を張り,糸をつまびき求愛する.交尾糸上に誘い出された♀と一瞬交尾して糸を切る.さらに交尾糸を張り直す.55分間に12回も同じ雌雄で交尾した.他の♂が侵入すると,威嚇行動なく♂が入れ替わった.1ケ月後,卵のうを3個持つ個体が多かった〔池田・谷川K66〕.
幼体期にかくれ帯,成長につれてゴミリボンを併用,成熟したものはゴミリボン一式となる.卵のうはゴミリボンの中に置く.卵のうを守るクモは逃げない〔中平AT37〕.
隠れ帯は正円形だがハート形もあり〔細野AC5(2)〕.
マルゴミグモ Cyclosa vallata
KEYSERLING,1886
成体は8〜9月,メス7〜8mm,オス3〜4mm,本州・四国・九州・南西諸島.海岸地域に多い.水平から垂直までいろいろな角度に網を張り,ゴミをつける〔東海84〕.メス4.2〜4.6mm,オス2.4〜3.3mm,トゲゴミグモとは別種.韓国・台湾・ニューギニア・オーストラリアからも記録〔谷川AT96,AC41(1)〕.
本州神奈川県から屋久島まで分布.トゲゴミグモとは混在しない〔谷川K62〕. 海岸近くに生息するが,豊橋市の内陸の葦毛湿原にはいる〔谷川K66〕.
刺激すると網を小刻みに振動させる.6月頃,2〜3個の卵のうを作り,ごみ玉のような形に分置する.卵のうは球形,1卵のう中に10〜30卵〔中平AT23/24〕.
かくれ帯はつけない.1本の縦糸を太くし,それにゴミ玉と卵のうを飛石状に置く.卵のうにはゴミを付ける.卵のうを守っているクモは逃げない〔中平AT37,中平AT14〕.
トリノフンダマシ属
Cyrtarachne
午後6〜8時に1〜2時間かけて,直径40cmから1mの目の荒い水平円網を張る.まず,9〜11本の縦糸をはった後,足場糸をつくらずに,すぐ横糸をはってゆく.
横糸は1本ごとに網の中心までもどってつくってゆくので,ゆるくたるむようになる.糸とその粘着力は強く,糸にかかった獲物があばれても滅多に切れない〔学研76〕.
トリフン,オトトリフンは子グモが卵のうに穴を開けて出のうする〔千国AT77〕.
オオトリ,トリフン,アカイロは共通した網構造である.網の高さは2m.ほとんど水平,環境によりやや斜め.構造@同心円状円網だが,完全な同心円ではなく,
2〜3本の縦糸との交点には横糸のずれがある.A直径50〜90cm.縦糸は9〜10本,少ないもので7本.B横糸も縦糸数と同じ位.縦糸との交点付近には粘液がない.
縦糸付近から虫がかかると切れて,つり下がる. 造網過程@足場糸を作らない.枠糸や縦糸を引きおわれば直ちに外側から横糸を張る.
A1本の横糸を張る毎に糸を出しつつ,中心に返り,返った後もしばらく糸を出しつづけ,やがて隣りの縦糸を伝って次の横糸を張る.
B横糸の縦糸への付着点を決めるのは糸の張力であろう. C横糸を半分位張ると,次は全く別の方向に進んで横糸を張る.捕食,虫がかかると糸は切れて垂れ下がる.
造網は8月10日吉野山で夜6時半から7時半.破網は午前5時半〔小野・八木沼AT28〕. 幼体は夕方暗くなる頃から活動し,ユズの葉のへりに移動してくる.
第4脚で葉のへりを,第3脚で葉の表面を押さえ,第1・2脚をひろげて捕虫待機姿勢を取る.
飛んで来る虫を抱き込むようにして捕える.捕らえた瞬間,しおり糸で空中にぶら下がる.
虫を葉裏へひきあげて捕食する.オス及びメス亜成体も網をはらずに虫を捕る〔熊田・井上・加藤AT85〕.
八王子城跡で,アカイロ,オオトリ,トリフン,ソメワケ,シロオビ,クロトリの網,造網・破網時刻,餌を比較した.
アカイロ・シロオビ・ソメワケの網は50×40cmだが,オオトリ・トリフンはやや大きく,タテ長である.
アカイロの網高が平均117cmなのに,オオトリは436cmであった.アカイロの造網開始時刻は19時から19時半,トリフンは22時から23時であった.
破網時刻は1980年にはアカイロが1時だったが,1981年には0時であった.その頃降り出した小雨のせいか.餌捕獲率は37・5%(1980),10・3%.餌種は86%がガであった.
破網時に網を食べてしまうので粘糸にかかる小昆虫も養分となる〔新海明他AT86〕.
横糸直径は同サイズの円網種に比べて約4倍,強度は10倍大きかった.糸の粘性は造網直後は大きいが,数時間以内に急激に低下した.糸や粘着物質の総量に対する投資量(体重比)は大きかった)〔宮下直・カルタン和美AC48(2)〕.
トリノフンダマシ Cyrtarachne bufo (BOES. et
STR.,1906)
成体は7〜10月,メス8〜10mm,オス1.5〜2mm,本州・四国・九州・南西諸島.山道や林縁のススキや低木の葉の裏に静止していて,夜間,同心水平円網を張り,早朝とり去る.網の粘性は強く,相当大きなガも捕える.産卵期は8〜9月,1〜3個の球形の卵のうを作る〔東海84〕.
とらえた餌の86%はガであった.破網時に網とともに小昆虫を食べてしまう〔新海明他AT86〕.
習性報告あり.餌としてフタバカゲロウ,ガガンボ,ユスリカ,ヒラタアブ,ウンカ,ヨコバイ〔萱島52,ARA.NEWS(1)〕.
造網に要する時間は1〜4時間,たたむ時は10〜30分.雨の日,風の強い日には網をはらない.オスも活発に糸を出すが,網は見ない.産卵は8月中旬〜9月上旬〔大熊AT13〕,〔小野・八木沼63,AT28〕.
杉の若木の間に3本の枠糸,7本の縦糸を張っていた.横糸を張る時は,糸を引きながら,縦糸をこしき部へ戻り,隣りの縦糸を下がって,外側の横糸から張っていく.最初に基点となる縦糸があり,そこから右周りに横糸を張っていって,基点の縦糸まで来ると(始めの点より少し内側へ付ける),今度は左周りに横糸を張る.基点の糸に来るたびにUターンしながら中心に近付いていく.虫がかかると横糸は決まった端で切れて,虫はぶら下がる.クモは振動を感じるのか中心から出かけていって,糸をたぐり,虫をひきあげてかみつく.自分を糸にぶら下がり,糸をかける.糸いぼから引出した糸に虫を下げ,こしきへ持っていって捕食する〔杉永AT31〕.
9月頃,2〜5個の卵のうを樹葉や枝に吊す.子グモは10〜11月に分散する.卵のうはほぼ球形,直径20mm内外〔中平AT23/24〕.
夜明け前に網を手繰って壊し,葉裏で食べる〔中平92〕.刺激すると口から液を出す.テントウムシの出す液に臭が似る〔高野K39〕.
関東では9月に成体,中旬に産卵,産卵後3週間をして出のう,2令幼体で越冬(椿の葉裏など).オオトリノフンダマシも同様〔鈴木勝K47〕.
10月24日に出のうした幼体♂は翌年4月18日,5月20日に脱皮.背甲脱皮殻に網目模様あり〔加藤むK66〕. 自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
オオトリノフンダマシ Cyrtarachne inaequalis
THORELL,1895
成体は7〜10月,メス10〜13mm,オス2〜2.5mm,本州・四国・九州・南西諸島.桑畑,果樹園(甘橘類,クリほか),山間部道添い,ススキ原,河原などの植物の葉裏に生息する.昼間は脚を縮めて動かず,夕方から夜間にかけて活動し,大型(直径50〜150cm)の同心水平円網を張る.産卵期は8〜9月で2〜4個の卵のうを作る〔東海84〕.
黄褐色の卵のうを2〜4個(最高7個)作り,自分のひそんでいる葉の近くにつるしておく.1卵のう中の卵数は200〜400個,高知県では600個の記録もある.昼間は葉の裏で脚をちぢめてじっとしているが,夕方6時頃になると行動を開始して,50〜150cmほどの同心円状の水平円網を張る.横糸の粘性は非常に強く,かかった獲物は逃げることができない.クモは翌朝網を完全にこわし,糸くずにして食べてしまう〔森林87〕.
五日市横沢で採集した卵のう3個は(1)10月20日273頭出のう,(2)11月1日11頭出のう+18頭生存+99頭死亡,(3)11月6日1頭+11月11日9頭出のう+11月12日5頭出のう+死亡3頭+未ふ化1頭〔鈴木成生K65〕.
網の高さの平均が436cm.これは同所に生息するアカイロに比べて高い.造網時間は午後10時から11時で,アカイロに比べて遅い〔新海明他AT86〕.
山梨県扇山で1986年11月9日に採った卵のう44例中7例は卵が無かった.17例は出のうが終っていた.残り13個は,11月16日から1月3日の間に出のうした.幼体は上に昇り,通常は卵のうの上部から出る〔新海明K57〕.幼生は卵のうの中で越冬するものと,外へ出て越冬するものがある.卵のう内の卵の数は40〜50個位であった〔山川・熊田73〕.
卵のうは紡錘形,長径32mm,短径12mm位.淡黄色〜褐色,500〜600卵〔中平AT23/24〕.刺激すると口からテントウムシの出すような液を出す〔高野K39〕.
自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
ソメワケトリノフンダマシ Cyrtarachne induta
YAGINUMA,1960
成体は7〜9月,メス5〜7mm,オス1.5mm,本州(関東以南)・四国・九州・南西諸島.山道の草や低木の葉裏にいる〔東海84〕.
夜間(午後7時頃より),水平同心円網を張る〔新海77〕. 管びんにいれておくとエーテル様の臭いを出す〔高野K39〕. 東京都木下沢で採集〔高野K39〕.
卵のうの形が判明.アカイロトリノフンダマシの卵のうと同じ〔新海明・新海栄K70〕.
岡山県新見市で1996年8月9日に雌成体を採集したところ8月14日に産卵した.卵のうは黄色・電球形で下端に突起〔安田K72〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
シロオビトリノフンダマシ Cyrtarachne nagasakiensis
STRAND,1916
成体は7〜9月,メス7〜8mm,オス1.5mm,本州・四国・九州・南西諸島.ススキの葉裏にいることが多い〔東海84,森林87〕.
アズキ色の雌(三重県熊野市,1993年7月26日)〔東条・新海明K70〕. 夜間,草間の低い位置に同心水平円網を張る〔東海84〕.
7月12日,横糸張りをみた.縦糸は12本あった.左右交互に半円ずつ張り,同心円を作る.引出した横糸を縦糸に付着させるとき粘球のない糸を少し付加している.虫がかかると切れる方がきまっている.また,クモが獲物に接近するのは必ず横糸の起点がある縦糸である〔有田AT28〕.
八王子市滝山にて8月9日に採集,翌日産卵(長さ約2・1cm,巾約0・3cmで鮮やかな黄色〔高野K35〕.
わく糸は基本的に五角形,地表面に対して水平,網にかかった餌は横糸を取りはらい,縦糸の昼間辺りで食べる〔貞元K47〕.
飼育下で求愛と交尾を観察.1996年8月11日,千葉市で1本の糸を渡した雌の糸上に雄を置いた.雄は2秒ほど体を振動・雌は1,2脚で手招く・雄は接近し腹部で交尾・雄は元に戻る.以上の行動を4回繰り返した.交尾は3-6秒間.8月12日,5回交尾した.8月13日両者反応なし.8月14日雌は産卵し,夜5回交尾.8月15日1回交尾.8月24日雄が死亡〔泉K71〕.
自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
アカイロトリノフンダマシ Cyrtarachne yunoharuensis
STRAND,1916
成体は7〜9月,メス5〜7mm,オス1.5mm,本州(東北・関東・中部地方の1000m以上の地域を除く)・四国・九州・南西諸島.山麓のススキ,山道の草や低木の葉の裏に静止している.夕方から活動し,比較的小さな(直径20〜40cm)同心水平円網を張り,早朝網をとり去る〔東海84〕.
産卵期は8〜9月で,淡黄色の細長い卵のうを通常1個作る.1卵のう中の卵数は180〜280個.ススキや草間に多く,樹間ではあまりみられない.獲物は蛾類が主体で,かかると横糸の一端が切れてぶらさがる.クモは縦糸を伝わってゆっくりと近づき,獲物を引きあげて捕える〔森林87〕.
網の平均の高さ117cm.造網は午後7時から7時30分頃.破網は午前1時頃から.ただし雨がふって0時から破網した例もある〔新海明他AT86〕.
卵のうを1個しか作らないことが多い〔学研76〕. 長径8mm,短径5mmの卵のう.淡黄色〜褐色.8月頃産卵する〔中平AT23/24〕.
網は平均で縦糸10本,横糸6本,ワク糸4本であった〔新海明他AT86〕. 決った方が切れる接合をlow shear joint
と呼んでいる.横糸が交互に半円状に張られるが,その出発点となる縦糸は,必ず網の最下方のものが選択される〔新海・新海AT85〕.
管びんにいれておくとエーテル様の臭いを出す〔高野K39〕. 網構造および造網行動について詳述〔新海明AT100〕自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
クロトリノフンダマシ Cyrtarachne nigra
YAGINUMA,1960
成体は7〜9月,メス6〜7mm,オス1.5mm,本州・四国・九州・南西諸島.山道の草や低木の葉の裏に静止している〔東海84〕.
自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
スズミグモ Cyrtophora moluccensis
(DOLESCHALL,1857)
成体は7〜9月,メス18〜23mm,本州(静岡県以南)・四国・九州・南西諸島.南のクモであるが,北上傾向を示し,
現在北限は岐阜県,東限は大井川流域である.風通しの良い樹間にドーム絹網(細かい網目で形成)を張り,上下に不規則に糸を引く.
網には粘性がなく,網にはいった昆虫は糸にからまってとらえられる〔東海84〕. オス3〜5mm.神奈川県,岐阜県,福井県を結ぶ線より南に分布〔森林87〕.
1989年8月12日,平塚市上吉沢のミカン畑で♀3頭確認〔磯部K59〕.
1989年9月15日,弘法山の途中で♀・卵のうを確認,チリイソウロウグモが居候〔谷川K59〕.
1989年8月12日,神奈川県大井町で幼体を,1991年7月22日大磯町虫窪で♀成体を確認〔池田K63〕.
1995年7月5日,川崎市多摩区生田緑地で雌亜成体〔伴K70〕. 1995年10月15日に東大演習林田無試験地にて幼体〔宮下直・笹岡K73〕.
薩南諸島小宝島では7月17日,ナガコガネグモとともに,多くの雌の網に雄がいた〔石野田AC48(2)〕.
横糸の造網の際の脚の使い方は他種(ジョロウ,ナガコガネ,コガタコガネ)の足場糸張りと共通である.つまり糸のくり出しに脚が参加しない.
これは他種のこしき部の動作により近い〔福本AT60〕.
網の更新,卵のう作り,スタビリメンタム作りは夜間行われる.高知にて,卵のうは9月4日(出のうは9月28日),9月14日(10月14日),10月12日に発見した〔中平AT55〕.
1卵のうからは500〜600,多いものでは1000頭もの子グモが出る.なかなか同じ場所に居着かない.網の更新は早朝,不定期に行われる.
古くなっても張り替えないこともあり,新しくても替えることもある.5日前後で替える個体が多い〔中平AT55〕.
造網動作について〔福本AT57,中平AT57,千国AT58〕. 卵のう作り〔千国AT58〕.
主に円形のかくれ帯がみられることがある.1メスの作る卵のう(紡錘形で表裏不相称)数は1〜3個.表面に小白球が付着.2個目は下方にならべられる.
第4脚を卵のうの下端につけているが,刺激を与えるとさっと逃げる.ジョロウグモとは成体出現時期がずれており,季節的にすみわけている〔中平AT46/47〕.
網に落ちかかった枯葉は取り除き,できた穴を修繕するが,体背にある補助網についた枯葉は取り除かない.この習性は,ジョロウグモの習性に近い〔中平AT37〕.
局地分布をする〔中平AT23/24〕.
網の直径30〜80cmの円天井型で,成長と共に直径と深さを増す.主網は円網で,放射状の縦糸と横糸からなり,網の目は1〜2mmの正方形か矩形で構成されている.
オスもメスの網の付近の葉裏に小型のドーム網を作る.粘球がない〔八木沼AT16〕.
兵庫県龍野市にて9月9日22時〜10日4時50分,産卵動作の記録,こしき穴のそばに葉状のシート,中央にくこみ,周囲を厚くする.
0時0分上向いて産卵,卵のうに糸をかけていく.糸いぼと卵のうの間で糸玉を作り,卵のうに付ける.上端以外の糸を切り,卵のうは宙吊り.糸玉を付けながら,
こしき穴も糸でかがる〔福本K33〕.
沖縄の名護城では網内に小網がある.幼体の網である.捕獲に使われている.また独立した幼体の網は皿網に似る〔新海明K54〕.
キヌアミグモ Cyrtophora exanthematica
(DOLESCHALL,1859)
成体は6〜8月,メス9〜11mm,オス3〜4mm,本州(紀伊半島)・四国・九州・南西諸島.山間部の甘橘畑,低い杉林に多く,枝葉間に水平絹網を張る〔東海84〕.
幼体は食べかすをその補助網に吊す〔中平AT37〕. 柑橘畑に多い.スズミグモの主網を偏平にしたような網である〔八木沼AT16〕.
樹枝に小さな方形の網目を持つ平らな網を張る.この平網の上方及び下方に不規則網が平網を支えた形に付属している.網糸には粘性がない.下方の不規則網は幼生時の食べかすを吊すが,成長に伴って簡略化する.昆虫が上方の不規則部に迷い込むと,クモは平網を強くしゃくる.平網上におちた昆虫の縁を周りながら,網糸を切り,捕糸を投げかけてしばりあげる.獲物を持ち帰る時は狩猟の際に生じた破れ目をくぐって帰る.7月頃成熟し,枝間にこまかな網目を有する球形篭状の産室を作り,その中心に卵のうを吊し,クモは保護する.幼生で越冬.枝先の葉を3毎程ひきよせて朝顔型にした中に不規則網を張り,それに枯葉の小片など吊し,或いは糸で小さいが,厚い幕を作ってその下にひそむ.オスは体に応じた小さな網を作り狩猟するが,6月頃からメスをたずね歩く〔中平AT23/24〕.
柑橘樹に多く生息し,所によっては新芽をかみ取って害を与える.スズミグモのように横三重網であるが,本網はドームをなさず水平.小さな矩形(縦0・7mm,横1mm)で構成され,横糸に粘球を欠く〔八木沼AC16(1)〕.
ハラビロスズミグモ Cyrtophora unicolor
(DOLESCHALL,1857)
成体は6〜8月,メス17〜20mm,オス不明,沖縄本島以南.樹林内にハンモック絹網(皿をおいた形)を張り,網の上部には枯葉を吊るし,中に潜む〔東海84〕.
幼体の網が皿網に似る〔新海明K54〕. 成体の網は中央が盛り上がっており,中心に穴がある.穴は落葉で隠され,餌は必ず隠れがにもち帰る〔新海明K57〕.
触肢ふ節が取れている雄,エピジナムにエンボルスが刺さった雌が見られた〔谷川K65〕.
サガオニグモ Eriophora sagana (BOSENBERG & STRAND,1906)
= Zilla astridae
(STRAND,1916)
成体は5〜7月,メス9〜11mm,オス6〜7mm,本州・四国・九州・南西諸島.樹間に垂直円網を張り,中心にとまる.かくれ帯をつける個体もみられる〔東海84〕.
成体は4〜7月.カラフトオニグモと同じように,春先最初に現れるクモ.山地の樹間に垂直円網を張り,中心に止まる.腹部の両肩は大きくはっていて,突起のようになっているのが特徴〔森林87〕.
かくれ帯は占座点の上方と下方に,縦に短くジグザグ状につける〔中平AT37〕. Zilla sagana (BOS.et
STR.,1906)として,幼体から成長に従って体色形態変化し,個体による色彩変異が多い〔八木沼AC14(1)〕. 自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
キンカタハリオニグモ Eriophora aurea (S.SAITO,1934)
=Zilla aurea (SAITO,1934)
成体は7〜8月,メス6〜10mm,オス5〜7mm,北海道・本州(高地).高山地域の樹間,草間に垂直円網を張る.青緑色,緑黒色,黄色などの変異がある〔東海84〕.
ヤンバルオニグモ Eriophora yanbarueinsis TANIKAWA,2000
成体メス平均7.8mm,オス平均4.4mm,カタハリオニグモによく似る.沖縄本島に分布〔谷川AC49(1)〕.
カラフトオニグモ Eriophora sachalinensis (S.SAITO,1934) =Zilla sachalinensis
(SAITO,1934)
成体は5〜8月,メス7〜9mm,オス4〜5mm,全土.木や草の間に垂直円網を張り中心にとまる.かくれ帯をつける個体もある.色彩,斑紋には変異が多く,白条型,緑色型,黄色型,キマダラ型などがみられる.産卵期は7〜8月で,半球状の黄色の卵のうを樹皮,葉,建物などに作る〔東海84〕.
山麓から山地にかけて多く,林道沿いや林内の樹間によくみられる.成体は4〜8月,産卵期は6〜8月,樹皮の上,葉の上,石燈篭,建物などに,半球状の1cm前後の黄色またはとう黄色の卵のうを作る.1卵のう中の卵数は40〜100個.樹木の間に長く糸を引いて,20cm程の比較的小さな垂直円網を張る.クモはその中心に脚を縮め,静止して獲物をまっている.クモのいる位置の上下に1〜3cmのかくれ帯を付ける個体も多い.キマダラ型は報告例が少ない〔森林87〕.
色彩変異多く,完全円網を作る〔八木沼AC14(1)〕.
トガリオニグモ Eriovixia pseudocentrodes (BOES. et STR.,1906)
= Araneus
pseudocentrodes BOES. et STR.,1906
成体は7〜9月,メス4〜5mm,オス2.5〜3mm,本州・四国・九州・南西諸島.山道の樹間に体の割には大きな直径20〜40cmの垂直円網を張り,中心にとまる〔東海84〕.
7〜8月にかけて卵のうを作る個体が多い〔山川・熊田73〕. A音(440Hz)の音叉振動に対してメスは餌と認識し,オスは拒否する〔上田AT73〕.
宮崎では杉林によく見られる〔松山他AT43〕. 大形の網を張る.占座姿勢は垂直上位が基本だが,垂直下位,平行横位のものも見掛ける〔中平AT23/24〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕. オスの触肢の構造の違いからNeoscona属とは異なり,Eriovixia属を認めて転属した〔谷川AC48(1)〕.
サキエダオニグモ Eriovixia sakiedaorum
TANIKAWA,1999
メス3-5mm(腹部は黒色球形で頭胸部は暗褐色),オス3-4mm.西表島産の雌雄で記載した.崎枝は人名〔谷川AC48(1)〕.
トゲグモ Gasteracantha kuhlii
C.KOCH,1837
成体は8〜9月,メス7〜8mm,オス3〜4mm,本州・四国・九州・南西諸島.樹間1.5m以上の所に円網を張る〔東海84〕.
網のわく糸には数cmおきに微小な白色の球(糸をたぐって集めたもの)をつけている.局地的分布をする〔新海69〕.
7〜10月に樹皮の表面に1個,オニグモの卵のうに似た卵のうを作る〔山川・熊田73〕. 1951年8月23日,三宅島にて採集〔高島AC13(1)〕.
1997年8月7日,金華山で雌成体を発見〔安田K72〕.
神奈川県松田町で,1994年7月23日(空梅雨の年),数例の雌雄を採集.雌の網への雄の同居〔池田K71〕.
5月初めに出のうし,オスは2ケ月,メスは3ケ月で成体になり,10月までに産卵.卵のうの外観は地衣類に似る.卵は年内にふ化するが,幼体は卵のう内越冬〔加藤むK76〕..
6.6mm,フィリピンにて採集〔仲辻AC7(1)〕.
晩秋の卵のうから出た幼体(2令)は飼育下で雌は7-8令で,雄は5令で成体になった.5令になるときに雌の脱皮は背甲が後ろから割れるタイプに変化した〔加藤むK72〕.
亜成体までは十字形の模様がある(雌)〔加藤むK73〕.
夏季樹間に垂直または傾斜せる丸網を張る.網の糸は数cm毎に純白の肥大部を有す.満洲・北支・本州(青森以南)・朝鮮・台湾に分布〔関口AC5(3)〕.
自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
チブサトゲグモ Gasteracantha mammosa
(C.KOCH,1845)
成体は1年中,メス8〜10mm,オス3〜5mm.トカラ列島以南に分布〔森林87〕.
沖縄で,樹間や電線間に完全円網を垂直に張り,網の中心部に垂直下位に占座して日中も夜間も決してその位置を変えない.本種は冬になると今までの大きな平面網はなくなり,網全体が立体的となり,その中に5〜10cm大の網を作って(円網),そこに同じ姿勢でいる.粘球のところに白い綿みたいなものがつく〔下謝名AT28〕.
主網の背面側に作った立体的な糸に綿状(5-8mm)が付着,枠糸にあることもあったが,横糸にはなかった〔胡沢K64〕.
網にかかった餌をすべてbitingで捕らえた.大きな餌は糸を付けて縦糸に沿ってこしきの方に引っ張られた〔吉田真AT91:AC37(2)〕.
Thelacantha mammosa C.KOCH1845としてフィリピンにて採集〔仲辻AC7(1)〕.
斑紋型・ソデ白型・ソデ茶型・黒色型の変異あり.変異型の頻度は場所により異なった.黒色型の頻度は暗い環境でより高い〔三島明博AC43(2)〕.
4型の遺伝は2遺伝子座2対立遺伝子モデルで説明できた.各型の生存率には変化なし〔三島明博AC45(2)〕.
シロスジショウジョウグモ Hypsosinga sanguinea
(C.KOCH,1845)
成体は6〜8月,メス3〜5mm,オス3mm,北海道・本州・四国・九州.800〜1000mの牧場の草間に多い.山地では木や草の間に5cm前後の垂直円網を張る〔東海84〕.
正常円網〔新海79〕. 葉を折りまげて産室を作る〔学研76〕.
コガネグモダマシ Larinia argiopiformis BOES. et
STR.,1906
メス9〜12mm,オス8mm,日本・ロシア・極東・中国・韓国でも記録.同属の別種がいる〔谷川AC38(2)〕.
成体は5〜8月,メス10〜12mm,オス6〜8mm,全土〔東海84〕. 正常円網〔新海79〕. 浅川流域の河原,草原〔新海80,81〕.
樹間,草間(地表より10cm位から2m以上まで)に垂直円網を張る.中平氏によると,四国のものは夕方造網し,翌朝とりこわし葉の裏に潜むというが,東京では昼間も網をはっている.異名にはコガネグモダマシ,ホシコガネグモダマシ〔新海69〕.
越冬令は3令以上の幼生,2令幼生は7〜9月に出現,福岡で年1〜2化と推定〔大熊AT68〕.
ネッタイコガネグモダマシ Larinia fusiformis
(THORELL,1877)
メス7〜10mm,オス6〜7mm,西表島およびビルマ・ベトナム・インドから記録〔谷川AC38(2)〕
キタコガネグモダマシ Larinia jeskovi
MARUSIK,1986
メス9mm,オス5〜6mm,北海道および極東から記録,成体は9月〔谷川AC38(2)〕
ムネグロコガネグモダマシ Larinia onoi
TANIKAWA,1989
メス4〜8mm,オス4〜5mm,西表島およびオーストラリア・ニューギニア・ベトナム・インドから記録〔谷川AC38(2)〕.
ミナミコガネグモダマシ Larinia phthisca
(L.KOCH,1871)
メス7〜12mm,オス6mm,西表島から記録〔谷川AC38(2)〕.
セキグチコガネグモダマシ Larinia sekiguchii
TANIKAWA,1989
メス8〜9mm,オス6〜7mm,宮城県伊豆沼産で記載,成体5〜7月〔谷川AC38(2)〕.
東京野鳥公園で1991年6月30日で採集されたアメリカジガバチの巣の67頭中に,♀成体3頭,幼体2頭が含まれていた〔谷川K63〕.
ゴマジロオニグモ Mangora herbeoides (BOES. et
STR.,1906)
成体は8〜10月,5〜6mm,北海道・本州・四国・九州.草間の低い場所(0.5〜1m)に円網を張り垂直下位に静止する.刺激を与えると腹部の色彩が黄白色から褐色に変化する〔新海69〕.
液浸では黄色になるので,ドヨウオニグモ,トホシドヨウグモと誤認される.本州・四国・九州に分布〔八木沼AC14(1)〕. 自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
ドヨウオニグモ Neoscona adianta (WALCK.,1802)
=ヒメオニグモ Neoscona adianta
(WALCK.,1802)
=Neoscona doenitzi (BOES.et STR.,1906)〔八木沼AT89〕
l
成体は6〜11月,メス8〜10mm,オス5〜7mm,全土.水田,河原の草間に垂直,水平両方の円網を張る〔東海84〕.
メス5.6-10.1mm,オス4.0-6.0mm,所検標本は北海道から鹿児島まで,フランスにも生息.全北区に分布〔谷川AC47(2)〕.産卵期は6〜7月と9〜10月の2回.網の一端の葉をまげて卵のうを作る〔森林87〕.
正常円網・正常水平円網〔新海79〕. 水田,草原,浅川流域の河原に生息〔新海80,81〕.
水平網に腹部を下にして(平行腹位)占座することがあり,こしきに円形の白帯をつける.網を張り替えてから7〜8時間は平行背位を続けた後,腹位になる〔中平AT62〕.
年2化.高知県では幼体で越冬し,4月に活動開始,急速に成長して6月下旬〜7月上旬に産卵,7月に成体は姿を消し,出現した幼体は9月下旬〜10月上旬に成体となり産卵する.10月中旬には世代交代して11月下旬から休止,越冬する〔中平AT74〕.
触肢と第1歩脚で縦糸の2〜3本を手繰り束ねながら食い進む.網の途中にかかっている塵芥や微小な虫は,切り取って第1歩脚で跳ねとばした.縦糸と横糸の処理が終わると直ちに新網を張る.その際にこしきは引きつがれる.造網の途中,こしきに付着した余分な糸や白帯は掻き取って食う〔中平AT69,中平92〕.
卵のうは白色〜黄白色,球形.網の支点に作られた住居に置く.か本科植物の葉先を折りまげ,そこに簡単に糸を張った物を昼間の住居とする〔中平AT23/24〕.
網の一端にオ椀状の居所を設ける〔大利AT29〕. 稲の葉を屋根形にまげてクモ糸をはった〔中平AC15(2)〕.
本州・四国・九州・朝鮮に分布〔八木沼AC14(1)〕.
ドヨウグモ.6月頃幼クモ出現,9月頃を最成熟期とす.夏季原野に造巣する最も普通のクモにして習性ナカムラオニグモに類似して草間に丸網を張りてその中央に静止するか或いはその一端に花又は葉を用いて作れるのう状の住居に生息す.樺太・本州・四国・九州・朝鮮に分布〔関口AC5(3)〕.
8月上旬,川越市にてキゴシジガバチに狩られたクモの優占種〔嶋田K46〕.
ヒメオニグモは北海道,樺太,満洲に分布.N.doenitziと似る〔八木沼AC14(1)〕,
ドヨウオニグモの真の学名は本種であった〔八木沼AT89〕.
アマミオニグモ Neoscona amamiensis
TANIKAWA,1998
8月に奄美大島でメス成体,メス7.7-9.2mm,オス4.7mm,所検標本は奄美大島のみ,腹背にV字状の茶・黄色の斑紋がある.ドヨウオニグモに似ており,生殖器での区別は難しい〔谷川AC47(2)〕.
ヤミイロオニグモ Neoscona fuscocoloratus BOES. et STR.,1906
=Araneus
fuscocoloratus BOES.et
STR.からNeosconaへ転属
成体は5〜7月,メス5〜7mm,オス4〜6mm,全土.平地から山地まで普通にみられるオニグモ.垂直円網またはキレ網を張り,その一端の枝や葉に潜む.〔東海84〕.
山間部では一般的な種類で,5〜6月の山道では最もよく目につく.産卵期は5月下旬〜7月.黄色の半球状の卵のうを葉の上や樹皮面などに作る.1卵のう中の卵数は40〜70個.樹間や草間に垂直円網を張り,クモは一方の葉裏や枝の付け根にかくれる.クモの隠れ場所の周囲には糸がひきまわしてあり,簡単な住居ができている.網は正常な円網,一部が切れているキレ網,中心から斜めに1本の糸を引いてはクモはその糸の先にひそんで要る呼糸円網の3種類を作る.正常な円網を張る個体は網の中心にいる場合が多い.どのクモも隠れ場所に持ち帰ってから食べる〔森林87〕.
正常円網・呼糸円網・切断キレ網〔新海79〕. 別種が混在している〔八木沼AT89〕. 杉やヒノキの枝先に生息〔新海81〕.
個体による色彩変異が多い〔新海69〕. 細分ではNeosconaより分離すべき(雄palpの中部把持器から)〔八木沼AC14(1)〕.
Neoscona属ではない〔谷川AC47(2)〕.自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
ワキグロサツマノミダマシ Neoscona mellotteei
(SIMON,1895)
成体は7〜9月,メス8〜10mm,オス7〜8mm,全土.昼間は葉裏にひそみ,夕方から垂直円網を張る〔東海84〕.
メス6.3-9.5mm,オス5.6-8.7mm,所検標本は秋田から西表島まで.中国・韓国・台湾にも分布〔谷川AC47(2)〕.本州・四国・九州・沖縄に分布.あまり高くない山地に多く,山麓から中腹にかけて広く生息.都会の公園,神社,旧家の庭などでも見ることができる.産卵期は8〜9月で,黄色のお椀をふせたような卵のうを作る.夕方5時頃から活動を始め,草間に垂直円網を張り,中心で獲物がかかるのを待つ.網を張る時間は20〜30分でオニグモ類の中では最も早い.ほとんどの個体は網を早朝に取り壊して葉蔭に戻るが,張ったままの個体もときにみられる.音や刺激に対して敏感で,採集しようとするとピョンと飛び下りる〔森林87〕.
正常円網〔新海79〕. 午前1時頃,♂の求愛中,♀が巻き上げブラインド方式で破網〔平松K63〕.
8月26日,雄成体がオオトリノフンダマシ♀成体の餌(蛾)を略奪〔新海明K57〕. 本州・四国・九州・朝鮮・台湾に分布〔八木沼AC14(1)〕.
埼玉県日高町で,1991年8月17日-21日の夜半から未明にかけて求愛・交尾を観察.オスはメスの網の縦糸に網の外から交尾糸を張り,求愛信号を送る.信号は「つまびきtwanging」「武者震いjudderring」「打ちつけbeating」が主で,この他にも「引っ張りplucking」「腹部上下動abdomen
wagging」「網ゆすりshaking」を行う.メスの応答は「応答なし(オスの存在を許容)」「定位」「引きつけ
jerking」「突進rush」のいずれか.交尾行動は@雌雄が交尾糸上で向いあう,A雌雄ともしおり糸をかけるため往復,B体の接触(空中ブランコのようにぶつかりあう)を繰り返す,CO-VV型で懸垂型交尾姿勢で片方の触肢を挿入(7分ないし8分),D離れ〔平松K65〕.
雄亜成体がジョロウグモの網のこしきに占座し,入れたアリを捕獲〔平松K71〕.
横浜産をタイプとして記載.キバラオニグモと称するをワキグロサツマノミダマシと変更.本州・四国・九州に分布〔八木沼AC5(2)〕.
三重・和歌山・奈良の県境で腹部中央に暗褐色の斑紋のある個体あり〔谷川K61〕. 和歌山県にて褐色斑紋のある個体あり〔平松K71〕.
ヤスダオニグモ Neoscona minorscylla YIN,WAN,XIE &
PENG,1990
成体メスは対馬(安田明雄採)8月,メス9.9mm,中国で記載された.オスは未知.ヤマシロオニグモに似る.外雌器のスケープが幅広い〔谷川AC47(2)〕.
イエオニグモ Neoscona nautica
(L.KOCH,1875)
成体は7〜11月,メス8〜12mm,オス6〜7mm,本州・四国・九州・南西諸島.駅構内に特に多く,円網を張る〔東海84,森林87〕.
メス8.0-11.8mm,オス4.4-5.2mm,所検標本は岩手から熊本までとタイ,温帯・熱帯地域に分布〔谷川AC47(2)〕.正常円網〔新海79〕.
ヒヨドリが停空飛行して捕るのをよく見かける〔森林87〕. 屋外,ホーム天井に生息〔新海80〕.
年1化性.越冬は幼体(卵のう内越冬の幼体も多い),幼体の大きさは様々で,成体となる時期,産卵時期に遅速の差が大きい.コガネグモの成長に似る〔中平AT74〕.
古い網を手繰り,束ねて1塊とし,第1脚ではねとばして捨てる〔中平AT69〕.
網は夕方更新する.日中は網の支点にある杯をふせた形の住居に潜んでいるが,1日中網に占座している個体も多い.卵のうは白色のふわふわした感じのもの〔中平AT23/24〕.
イエオニグモ観察記(2)(3)〔小林AT7・9〕. 本州・四国・九州・琉球・奄美・台湾に分布〔八木沼AC14(1)〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
コゲチャオニグモ Neoscona punctigera (DOLESCHALL,1857)
=Neoscona lugubris
(WALCKENAER,1841)
=コゲチャオニグモ Neoscna opima
(L.KOCH,1807)〔八木沼AC14(1)〕
=Araneus punctigera DOLESCHALL〔八木沼86・BR>l
成体は8〜9月,メス10〜13mm,オス7〜9mm(変異型が多い),本州・四国・九州・南西諸島.木や草の間に夜間,垂直円網を張る〔東海84〕.
成体は7〜9月,山間部の林道沿いの草間や樹間に垂直円網を張る.地域・個体により腹部に褐色斑のあるものや,色に濃淡のあるものがみられる〔森林87〕.
メス8.4-16.1mm,オス6.8-8.9mm,所検標本は茨城から西表島.セイシェルから中国・韓国・台湾,ニューギニアに分布〔谷川AC47(2)〕.正常円網〔新海79〕.
A音(440Hz)の音叉振動に対して幼体は逃げるが,成体は餌と認識する〔上田AT73〕.
狩猟は夜間行い,昼間は網の支点にある木の葉裏に潜む.夕方,網を張り,翌朝網をたたむが,個体によっては一日中網に占座して狩猟しているものもある〔中平AT23/24〕.
1月樹皮下に潜む.2月20日,タラヨウの葉を折り曲げて裏に潜む亜成体を採集.巣の中には他の小型のクモや昆虫の食べかすがあった.活動を開始していたから〔植村AT5〕.
分泌物による交尾栓(座間市1989年7月29日採♀)あり〔池田K62〕.
アカアシオニグモ Neoscona vigilans (BLACKWALL,1865)
=Neoscona rumpfi
(THORELL,1878・BR>
メス6.6-11.6mm,オス4.4-6.9mm,所検標本は奄美大島・沖縄本島.旧熱帯区・ニューギニアに分布.コゲチャオニグモに似る(雄触肢のconductor先端がニ叉)〔谷川AC47(2)〕.ヤマシロオニグモに似る〔八木沼AC14(1)〕.
垂直円網でヤマシロオニグモと網径,造網環境が似ている.しかし,占座姿勢が特異.尻を網の反対側につきだしている.糸いぼからは糸が出て,その上端はこしきに付着している〔新海明K54〕.
ヤマシロオニグモ Neoscona scylla
(KARSCH,1879)
成体は7〜9月,メス12〜15mm,オス8〜10mm,全土.夏の山道で最も多くみられるクモ.樹間,草間に20〜50cmの垂直円網を張り,中心にとまる.腹部の色彩には変異が多く,セジロ型,アトグロ型などがみられる.産卵期は8〜9月で黄色黒すじの細長い卵のうを草や建物の周囲に作る〔東海84〕.
メス9.1-15.9mm,オス6.9-11.9mm,所検標本は北海道(札幌)から沖縄本島・西表島.中国・韓国・台湾にも分布〔谷川AC47(2)〕.山麓から山地にかけて生息し,特に林道沿いの樹間に多くみられる.1卵のう中の卵数は150〜300個.昼間は木の枝や葉裏にかくれていることが多い.夕方になると,樹間,草間に20〜50cmの垂直円網を張り,中心に止まる.網を翌朝とりこわして木蔭に隠れるが,個体により,昼間も網を張ったままのものがみられ,時には網の中心にいることもある〔森林87〕.
正常円網〔新海79〕. 造網過程の初期過程を観察できた.「T構造」ができる〔新海明K70〕.
神奈川県足柄上郡松田町で,雄は6月下旬に成体になり,雌は7月初めから成体になる.成体になった雄は網を張らず,夜間徘徊して雌を探す.網の外から糸をはじいて求愛信号を送る.雄同士の争いがある〔池田千洋K69〕.
網を毎日張り替える.旧網を食う.夕方網を張り,翌朝それを取り壊して葉蔭に潜み,夕刻になるのを待っている個体(時)と,1日中網に占座していて,夕方旧網の処理に引き続いて新網を張る個体やそうする時がある.後者では,縦糸を2〜3本ずつ手繰って破網していくが,すぐには食わず,その都度,小さな塊としてこしきに置く.新網ができ,こしきを調整する最後の段階で食う.前者ではたたみながら食う個体もみられた〔中平AT69,中平92〕.
網の支点にある木の葉の裏に粗目に糸をひいて,日中の住居とする〔中平AT23/24〕.
網の支点にある草木葉に粗目の糸を張って昼間住居としているものがある.ヘリジロオニグモ,サツマノミダマシも同様〔中平AC15(2)〕.
餌が小さいとき,こしきから遠いときは無視する.クモの体長が大きいほど無視する餌の体長も大きくなる〔北島博AT98/99〕. アトグロヤマシロオニグモを変種
var. nigromaculatusとして記載.メス13mm,オス9mm,本州・四国に分布〔八木沼AC6(4)〕.
5,6月頃より樹間にふや垂直なる丸網を張る.成熟期は7月頃.北海道・本州・四国・九州・台湾に分布〔関口AC5(3)〕.
サツマノミダマシ Neoscona scylloides (BOES.et
STR.,1906)
成体は6〜8月,メス9〜11mm,オス8〜9mm,本州・四国・九州・南西諸島.昼間は葉裏にひそみ,夕方から垂直円網を張る〔東海84〕.
メス7.2-10.4mm,オス7.5-8.7mm,所検標本は秋田から沖縄本島.中国・韓国・台湾にも分布〔谷川AC47(2)〕.京都府北東部,福井県西部地域周辺ではハゼノキのことをサツマと呼ぶ.そのサツマの実に似ていることからサツマノミダマシと名がついた〔森林87〕.
正常円網〔新海79〕.
1965年8月21日,菅波洋平が茨城県で採集した奇形,一見オスだが,palpの異常,亜成体の垂帯がある.雌性要素の若干ある雄〔八木沼AC20(1)〕.
網の支点にある草木葉に粗目の糸を張って昼間住居としているものがある.ヘリジロオニグモ,ヤマシロオニグモも同様〔中平AC15(2)〕.
本州・四国・九州・トカラ・奄美・台湾に分布〔八木沼AC14(1)〕. オオモンクロベッコウに狩られる〔中村AC5(2)〕.
綾瀬市で6月7日ハチの巣から出た27頭のうち,♀幼体(体長4.8-8.5mm)12頭と♂幼体(体長5.9-8.0mm)10頭,幼体3頭〔谷川K63〕.
ヘリジロオニグモNeoscona subpullata (BOES. et STR.,1906)
=Neoscona subpullatus
(BOES. et STR.,1906)
=Araneus subpullatus BOES. et
STR.,1906
成体は4〜9月,メス5〜7mm,オス4〜6mm,本州・四国・九州・南西諸島.垂直円網またはキレ網を張る.海岸の草木に造網し,その他の場所ではみられない〔東海84,森林87〕.
メス4.3-7.2mm,オス2.8-4.6mm,所検標本は神奈川(横須賀)から南西諸島まで.中国・韓国・台湾にも分布〔谷川AC47(2)〕.生葉の裏に糸を張り,住居を作る〔中平AT37〕.
海岸地帯に多い.網は群集し,ウバメガシ等白く見える程である.正常円網,呼糸円網,切断キレ網.呼糸円網又はキレ網を張るものは呼糸にある葉裏に作る住居に待機している〔中平AT23/24〕.
網の支点にある草木葉に粗目の糸を張って昼間住居としているものがある.サツマノミダマシ,ヤマシロオニグモも同様〔中平AC15(2)〕.
山地でもみられるが,殊に海岸に多く,トベラやウバメガシの樹間に小さい円網を張る.完全円網やZigiella
typeに似たものを張る.本州・四国・九州・トカラ・奄美に分布〔八木沼AC14(1)〕.
沖縄県北中城村でキレている場所が網の下部にあり,クモも下方の枯れ枝に潜んでいた例あり〔新海明K73〕.
ホシスジオニグモ Neoscona theisi (WALCKENAER,1841)
=Araneus theisi (WALCK.1841)
成体は6〜9月,メス8〜10mm,オス5〜7mm,本州(静岡県以南)・四国・九州・南西諸島.海岸の草間に垂直円網を張る.黒色型,黄褐色型などがある〔東海84〕.
メス6.6-11.6mm,オス4.4-6.9mm,所検標本は小笠原諸島・沖縄本島・西表島,旧熱帯区に分布〔谷川AC47(2)〕.南方系,イエオニグモとの混同もあった.九州・青島・奄美・南洋〔八木沼AC14(1)〕.
8mm内外,1929年1月22日,ミンダナオ島で採集〔仲辻AC7(2)〕. 西表島で網にかかったガの周囲を廻りながらラッピングしていた〔谷川K71〕.
西表島冬季(2月)水田畦畔の優占種であった〔村田AC48(1)〕.
マメイタイセキグモ Ordgarius hobsoni (O.P.-CAMBRIDGE,1877)
成体は7〜9月,メス8〜9mm,オス不明,本州(関東地方以南)・四国・九州・南西諸島.第2脚先端より粘球を下げ,それを回転させてガ類を捕える〔東海84〕.
雄を初めて記載.ムツトゲイセキグモと卵のうが異なる.模式産地はスリランカ.中国・インドにも分布〔谷川AC46(2)〕.
粘球数は1〜2個,補虫開始時刻は蛾の活動と同じ,午後7時前後であろう.蛾が近付くと粘球を回転させる.1時間のうちに数回(2〜4回),特定の刺激なしでも回転させる.蛾の誘引物質を出している可能性がある〔新海AT79〕.
8〜9月上旬にかけて成体となり,トリノフンダマシの卵のうにトゲのついたような暗褐色の卵のうを作る.カヤの葉の間に,卵のうをおおうようにほぼ球形にはられた細い糸の中に吊されている.この保護糸で,卵のうは多少の雨でもぬれない〔山川・熊田79〕.
昭和7年愛媛県高縄山にて高橋幸雄が初めて発見,同年11月和歌山県那賀郡にて植村利夫が発見,昭和16年8月18日兵庫県川辺郡川西町にて菊池政雄がススキの葉先に近い葉裏に静止しているのを発見,その少し上部より2本の糸が引かれていた〔八木沼AC6(4)〕.
高知市筆山公園でススキの葉裏にいた〔K40〕. 沖縄県本部半島で6-7月に採集記録あり〔新海明K73〕.
大小ふたつの卵のうを作るという.三重県で8月27日採集の卵のうには翌春56頭の2令幼体,神奈川県城山で10月10日の大卵のうには翌春72頭2令幼体〔鈴木勝K47〕.
ムツトゲイセキグモ Ordgarius sexspinosus
(THORELL,1894)
成体は7〜9月,メス8〜10mm,オス2mm,本州(関東地方以南)・四国・九州・南西諸島.第2脚先端より粘球を下げ,それを回転させてガ類を捕える〔東海84〕.
雄を初めて記載.マメイタイセキグモと卵のうが異なる.模式産地はビルマのサラワジで雌幼体で記載された.インド・インドネシアにも分布〔谷川AC46(2)〕.
昼間は葉蔭でじっとしている.千葉県以西の太平洋沿岸各県に分布,北限は東京都五日市町〔森林87〕.
投げ縄はトリノフンダマシの横糸作成行動と類似,捕虫の際には第2脚で投げ縄を持ち,蛾が接近すると粘球をす早く回転させて蛾にぶつけた.餌はすべてオスの蛾だった.投げ縄作成後50-60分過ぎても餌がかからないとクモは投げ縄を引き上げて食べてしまい,1時間ほど後に再び作成し直した.6月には幼体も投げ縄を作成し,小形の蛾を捕らえていた〔新海栄・新海明AT91〕.
雌成体と卵のう3個を神奈川県厚木市七沢の自然保護センターにて発見(1994年8月26日)〔赤羽K69〕.
雌成体を東京都五日市横沢入で採集(1995年8月14日)〔伴K70〕. 雄成体を神奈川県城山町で採集(1996年8月19日)〔伴K71〕.
和歌山県初記録〔谷川K66〕.
周囲が暗闇になる,クリ・クヌギ・ススキ・ツバキ等の植物が生えている,地上から1-2m程度の所に棲息(=トリノフンダマシ類と同様)〔貞元K62〕.
飼育下で粘球をふり回す〔工藤泰K73〕自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
サカグチトリノフンダマシ Paraplectana sakaguchii
UYEMURA,1938
成体は7〜10月,メス7〜9mm,オス不明,本州(関東以南)・四国・九州・奄美.山道や林縁の草や低木の葉裏にいる〔東海84〕.
1990年3月16日,横浜市野庭高校グランドに飛来〔谷川K60〕. 埼玉県日高町のヒノキの若木で幼体を採集〔平松K64〕.
ツシマトリノフンダマシ Paraplectana tsushimensis YAMAGUCHI,1960
成体は5〜8月,メス8〜10mm,オス不明,本州(関東以南)・四国・九州・南西諸島.日中は葉裏に静止し,夜,小型の同心水平円網を張る〔東海84〕.
横須賀市衣笠で雌を発見(金子義起,1995年7月7日)・奄美大島湯湾岳公園で雌亜成体を発見(伴,1995年6月24日)〔伴K70〕.
沖縄で,5月9日から6月6日の27日の内,造網したのは8晩だけである.長径30〜40cm,短径20〜30cm,縦糸4〜7本,横糸数は区画により異なる.縦糸の長い区画では5〜8本であった.粘球は横糸の両端部にはついていない.造網方法についてはまず糸流し,糸の補強,1本の糸の途中から糸を流して,十字状の縦糸ができる,十字の中心から方々に縦糸が流されて出来る.足場糸は作らない.横糸は外側から張られる.縦糸を外側へ下り,糸を付けると粘球のついた糸を引きながら縦糸を上って戻り,隣の縦糸を下って横糸を張る.クモはいちいち網の中心部へ戻り,網の右半域と左半域を交互に張っていく.クモは葉蔭にいて,網に獲物がかかると中心部へ出て,方向を確認し,縦糸を下っていって,獲物を捕える.横糸は獲物がかかると端から切れてしまい,獲物は吊り下がる.クモは網の中心で食べ,食べカスを下に落としてから葉蔭へ戻る.造網開始は午後11時〜午前2時(早い時は10時),たたみ込むのは午前5〜6時.ものの5〜10分で縦糸も横糸も一緒にたたまれる.2〜4本の縦糸は残されて,再利用される.昼は葉蔭で静止〔千木良AT72〕沖縄県国頭村・恩納村で5-8月に採集記録あり〔新海明K73〕.
ワクドツキジグモ Pasilobus bufoninus
(SIMON,1867)
成体は6〜8月,メス8〜10mm,オス不明,九州・沖縄.樹間に水平の三角網を張る.横糸の粘着力は強い〔東海84〕.
沖縄県名護市・志根垣川・琉球大学与那演習林・久米島で6-7月に採集記録あり〔新海明K73〕.
ゲホウグモ Poltys illepidus
C.KOCH,1843
成体は6〜8月,メス12〜18mm,オス4〜6mm,本州・四国・九州・南西諸島.
枯枝先端や樹木の枝に脚を縮めてとまっていると木のこぶに似て見付けにくい.
夜間,活動し,樹間に横糸の間隔がせまく目の細かい垂直円網を張る.腹部の形状には変化が多く,種々の形の角やこぶをもった個体がいる〔東海84〕.
東京都あきるの市,体長15mmのクモの網(縦径32cm×横径30cm)で縦糸42,36で,横糸166,152だった〔新海明K77〕.同じ母から生れた子でもコブには変異がある〔石野田AC44(2)〕.
8月にカヤの表面に1個卵のうを作る.卵のうの表面には赤い糸をかけてある〔山川・熊田73〕.
八王子滝山にて8月16日,ササ葉とススキ葉に卵のう,子グモ.22日分散〔高野K39〕.
9月9日,サクラの枯れた枝をゆすったら,幼体がおりてきた〔高野K35〕. 白い糸のまわりに赤い糸のついた卵のう.7月28日,近くのフジに成体〔高野K40〕.
2.5cm×2.0cmの球形卵のうで表面に紗のように橙色の糸〔中平83〕.宮崎県では4月中旬から成体、5月中旬には産卵.6月上旬にふ化〔石野田AC45(2)〕.
コオニグモモドキ Pronous minutus
(SAITO,1939)
成体は7〜9月,4〜5mm,北海道・本州・四国・九州.北海道以外では寒い地域に多い.網は不明〔東海84〕.
夜間,草間に左右に張った糸の中央にいて,1・2脚を開き,虫を捕獲する〔谷川AT94〕. 自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
ナガテオニグモ Singa hamata
(CLERCK,1758)
成体は8〜10月,メス5〜6mm,オス4mm,北海道・本州・四国・九州.下草間に5〜10cmの垂直円網を張る〔東海84〕.
自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
ウスキショウジョウグモ Singa theridiformis BOES. et
STR.,1906
チガヤの葉先を巻いて卵室とし,外側にはクモ糸で丁寧に帯をしめてある〔中平AC15(2)〕.
ズグロオニグモ Yaginumia sia
(STRAND,1906)
成体は7〜10月,メス10〜13mm,オス8〜10mm,全土.橋の欄干,駅構内,電話ボックスなどの隅に住居を作り,そこから円網を張り出す〔東海84〕.
網の一端に袋状住居を作る〔森林87〕. 垂直円網〔新海69〕. 円網の初期造網過程を観察できた.「T構造」がある〔新海明K70〕.
夜間,網の中央に出て来る.風通しのよい所に多い.9〜10月に1個卵のうを作る〔山川・熊田73〕. 7月にも卵のうを作る〔池田84〕.
流水付近に造網すると考えていたが,関係なかった〔中平AT43〕. 6月18日,♀が♂を捕食〔池田K59〕. 熊本にて産卵は9月頃〔木庭AT15〕.
網は夕方更新する.網の支点にある物陰に,かまぼこ型の昼間の住居を作る.幼体で越冬するものと卵体で越冬するものにわかれ,前者は6月中旬頃産卵し,後者は晩秋産卵する.卵のうは薄いが強靭な,二枚貝式の産室内に置かれる.産室は住居の一部に営むこともあるが,独立していることが多い〔中平AT23/24〕.
円網での出猟は日没時より日出直前の夜間.網の補修は日没時に行う.越冬個体は幼体〜成体,卵.越冬卵は住居巣内にあり,ふ化4日後に脱皮し,その後1週間を経て分散〔石野田AT93〕.
卵のう内には0.8mmの橙色卵が50-300卵,1齢幼体は頭胸部・歩脚は水飴色,腹部はコーヒー色,ふ化後3日で脱皮,約1.5mmの2齢幼体,4日後には糸を放ち分散,7月に新個体群が出現〔石野田AT95〕.
日中,網主のいない網にかかった餌を幼体が捕食していた.20網中5例〔新海明K65〕.
幼体の間で網の乗っ取りが行われた(君津市亀山橋,1991年11月23日).乗っ取られた方が小さかった〔平松K〕都市環境指標種〔新海98〕.
キマダラオニグモ Zilla flavomaculata
YAGINUMA,1955
1951年8月2日,三重県大人平山にて八木沼採集の雌(6・7mm)にて記載,山間樹間にてZilla
sachalinensis様の垂直完全円網を張る〔八木沼AC14(1)〕.
トカチオニグモ Zilla tokachianus (SAITO,1934)
Zilla
sachinensisに似るが,北海道のみから産する.SAITOによれば,生殖器複雑,葉状斑明瞭,他いくつか区別点あり〔八木沼AC14(1)〕.
ヤマキレアミグモ Zygella montana
(C.KOCH,1839)
成体は7〜9月,メス7〜8mm,オス5〜6mm,北海道(高地)・本州(高地).高山地域のクモ.山小屋,廃屋,岩場にキレ網を張り,その一端に潜む〔東海84〕.
7月15日,富士山小御岳神社にたくさんキレ網あり〔高野K37〕. 7月14日,八ケ岳で多産〔松本K38〕.
○センショウグモ科 Mimetidae
アオグロセンショウグモ Ero cambridgei
KULCZNSKI,1911
メス3.4mm,オス2.4mm,7-9月に宮城県伊豆沼の堤防の草間で採集〔谷川・田副AT92〕
キタセンショウグモ Ero furcata (VILLERS,1789)
旧北区・新北区に分布する.岐阜御岳・都内景信山で採集記録〔新海70〕.
センショウグモ Ero japonica BOES. et
STR.,1906
成体は6〜9月,4〜5mm,北海道・本州・四国・九州.他のク モの網に侵入し,その主を攻撃し,補食する〔東海84〕.
市街地の神社,公園などから山地まで広く生息している.山麓付近には特に多い.成体は5〜9月,産卵期は5月下旬〜8月で,木の根が露出している崖地や,寺院の縁の下,主のいないオオヒメグモの網などに5mm程の黄褐色の卵のうを吊るす.1卵のう中の卵数は20〜35個.ヒメグモ科,サラグモ科,コガネグモ科のクモがよく襲われる.クモの網に入ると,ゆっくりと網主に近付く.網主が気づいて向かってくると,前2脚を高く持ち上げ,相手の脚を防ぎながら,頭胸部の下面にまわりこんで,基節付近にかみつくことが多い.ヒメグモ科のクモは粘糸をかけてくるが,粘糸が前脚にかかっても気にせず,突進して捕らえる〔森林87〕.網を張るクモならなんでも襲う〔学研76〕.
7〜8月に崖のくぼみ等の雨の当たらない所に卵のうをつるす〔山川・熊田73〕. シロブチサラグモ,ハンモックサラグモの網に多くみられる〔大江AT40〕.
2倍大きいハンゲツオスナキグモを攻撃,食していた〔松山他AT43〕.
飼育すれば小型の昆虫も食うが野外では体につりあった小型造網性のクモか,幼クモ,子グモを襲う.捕食中でもオスと交合する.クサグモの網内のチリイソウロウグモを捕食した例がある.オオウズグモの網に侵入し,網糸を伝ってじりじりと接近,第1脚を宿主の頭胸部にかけ,体を反転させるクモに飛びかかり,かみふせた〔中平AC16(2)〕.
クモヒメバチ幼虫に寄生されたオオヒメグモを補食〔高野K40〕.
マルセンショウグモ Ero koreana PAIK,1967
横浜の本牧ふ頭で雌5.33mmを採集〔小野AC45(1)〕.
ハラビロセンショウグモ Mimetus japonicus
UYEMURA,1938
成体は6〜8月,4〜5mm,本州・四国・九州.他のクモを襲う.南に多く関東以北ではあまり見られない〔東海84〕.
落葉の中で越冬していた〔山川・熊田73〕. 松江で後中眼の欠失した幼生採集〔景山AT40〕.
リュウキュウセンショウグモ Mimetus ryukyus
YOSHIDA,1993
徳之島・石垣島・与那国島・西表島・台湾に分布.西表島に普通.12月26日沖縄県名護市付近で雄成体を採集〔谷川K70〕.
オオセンショウグモ Mimetus testaceus
YAGINUMA,1960
成体は7〜8月,5〜6mm,本州・九州.他のクモを襲う.個体数が少ない〔東海84〕.
成体は6〜8月,昼間は葉陰にひそみ,夜間に活動してクモを捕食する.本州・四国・九州に分布〔森林87〕.
○コツブグモ科 Mysmenidae
ナンブコツブグモ Mysmena jobi
KOMATSU,1967
成体は5〜8月,メス1〜1.2mm,オス0.7〜1mm,北海道・本州・四国・九州.崖のくぼみ,草間に1.5〜2cmの小型の網(球状円網)を張り,中心に静止する〔東海84〕.
東京では産卵は6月下旬から7月下旬にかけて行われ,白色(または灰白色)の1mm前後の大きさの卵のうを口にくわえて保護する.脱皮回数3回(約2〜3ケ月)で成体になることから,年に2世代から3世代を繰り返していることが考えられる〔新海77〕.
崖地や倒木・地表の間・落葉のすき間などに2〜4cm程の完全な篭状(アヤトリ状)の網を張り,その中心(あるいはやや上部)に占座している〔K29/32〕.2〜3ケ月で成体になるので1年に2世代以上くりかえしている可能性あり〔新海K40〕.
自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
○ヨリメグモ科 Anapidae
造網性クモ類の系統を三大別してコガネグモ系列とヒメグモ系列の分岐にヨリメグモを置くヨリメグモ系統を考える.コガネグモ系列はヨリメグモ→ヤマジグモ→カラカラグモ→アシナガグモの一種(Eucta)→ドヨウグモ→オニグモ→コガネグモ→ジョロウグモ→スズミグモ.足場糸を張るクモ程進化している.ヒメグモ系列はヨリメグモ→コツブグモ→オオヒメグモ→ヒメグモ→バラギヒメグモ・コガネヒメグモ.オオヒメグモからホラヒメグモとサラグモ・コサラグモに分かれる系列がある〔新海AT66〕.ヨリメグモは円網から特殊化した網であることが判明し,前記の仮説は誤りであった〔新海AT87〕.
ヨリメグモ Conoculus lyugadinus
KOMATSU,1940
成体は5〜9月,メス2.5〜3.5mm,オス1.8〜2.2mm,本州(関東地方以南)・四国・九州・南西諸島.山間部渓流や水の流れる鐘乳洞内に見られる.岩と水面間に不規則網,水平円網,不規則網と水平円網が一緒になった立体円網の3形式の網を張る〔東海84〕地面・水面から5〜20cm高,9〜100平方cm広,水平無こしき円網を多数の吊り糸で吊り下げている.造網法も記録した〔有田AT35〕.
静岡県の洞窟内の池でも採集〔小林K26/28〕.
どの型も円網から派生したものであることが判明.横糸は縦糸と流水間に張られる.横糸作成後に,こしき部で縦糸がかみきられ,下流方向にひき延ばされるため,横糸は下流方向で集合し,一見不規則網に見える.流水面に横糸を垂下させない網もあるが,これは造網環境(水の存在・網の高さ等)に影響されている〔新海・新海AT87:AC37(1)〕.
あまり大きな水系には見うけられない.冬期,沢の石の裏のくぼみなどに静止している〔山川・熊田79〕.
高知県龍河洞にも生息.水中に糸を垂らして網を張る〔小松AC5(3)〕.
色彩変化があり,黒色型・褐色型・赤色型・斑紋を有するものなどがある〔新海K29/32〕.
夜間に産卵,卵のう室は直径10mm,中央に直径2-3mmの円盤状卵のうで直径0.5mmの10-16卵〔中平92〕.自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
○カラカラグモ科 Theridiosomatidae
ヤマジグモ Ogulnius pullus BOES. et
STR.,1906
成体は6〜8月,1〜1.5mm,本州・四国・九州.崖地,草の根元に多く,水平円網がくずれたような形の網を張る.7〜8月に白色の4角形の卵のうを作る〔東海84〕.
網構造は縦糸8本,横糸4本.枠糸はない.網の中央から四方へ放射,こしきは無い.餌捕獲行動は縦糸を「宙吊り状態」でゆっくり進み,接点で横糸をつたい,餌に乗りかかって包んだ.糸に餌をつけたままで,糸を切断したり,引き伸ばしたりしながら網の中央方向へ運んだ.ナルコグモとの類縁を示す〔新海明AT96〕.
落葉の中で越冬する〔山川・熊田73〕. 2〜3ケ月で成体になるので1年に2世代以上の可能性がある〔新海K40〕.
宮崎で6〜7月に産卵する〔松山他AT43〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
カラカラグモ Theridiosoma epeiroides BOES.
etSTR.,1906
成体は5〜7月,メス1.5〜2mm,オス1.5mm,北海道・本州・四国・九州.渓流上の石や岩の間,草間の下部,湿った崖地などに直径2〜5cmの円錐形垂直円網(垂直円網の中心より直角または斜めにひかれた糸をクモがたぐって円錐形にしている)を張る.幼体期や個体によっては水平円網,垂直円網もみられる〔東海84〕.
「稀にある平面網を調べると,放射糸(縦糸)は6〜14本でそれぞれ直接地物につけられている〔中平61〕」〔新海69〕.
7〜8月に星型の卵のうを作る〔山川・熊田73〕.
網にはこしきがなく,数本の縦糸が中心でまとめられている.縦径12cm,横径11cm,縦糸15本,横糸10本.前脚でtraplineを持ち,背面上位で網に背を向けて占座している.典型的な円網の造網だが,後にこしきの部分がかみ切られ,無こしき網となった.円網種から派生してきたことを示す.餌が網にふれるとたぐった糸を放す.網にかかった餌の方を向き,縦糸をたぐり寄せ,いきなりかみつく.その後糸でまく.餌を縦糸に固定したまま,枠方向の縦糸をつぎ足し,中央の縦糸をたぐるように引き寄せながら中心に運搬していく.餌が中央に来ると縦糸を補修して,中央に戻り補食する〔新海・新海AC33(1)〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
ナルコグモ Wendilgarda agnosca
(STRAND,1916)
成体は5〜7月,1〜2mm,本州.渓流の石の間に糸をひき,そこから数本の粘糸を水面におろす(鳴子網という).昼間は水面より離れて木の根元にいることが多い.卵のうは特徴ある形(ボンボリ型)で葉裏に吊す〔東海84〕.
網は水面1〜3cmの所に石から石にひいた1本の糸(5〜20cm)から,6〜10mm間隔で水面上に粘糸をたらすもの〔新海AT83〕.
網構造・造網過程・餌捕獲行動を報告した.水平糸を張ってからクモは水面に垂下する.糸いぼを水面に付着させいったん戻ってから更に垂下して,上へ戻ってくるときに粘糸を張る.1本の粘糸を張るのに必ず2回往復する.水面を流下する生きた昆虫に反応する.大きな虫の場合,数本の粘糸をたぐり寄せて使う.小さな虫では粘糸を降りてかみつく.餌捕獲などからヤマジグモ属と似ている〔新海明・新海AC46(1)〕.
自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
○ユアギグモ科
ハチジョウウスイロユアギグモ Anapistula ishikawai
ONO,2002
八丈島でツルグレン装置により2001年7月5日に雌が得られた淡黄色の微小なクモ(体長0.65mm).〔Ono02b〕.
ユアギグモ Patu
sp.
下草の間に縦糸の多い小さな水平円網を張る.メスの触肢がない微小なクモ(体長1mm).1988年夏,三重県海南市で新海栄一により初めて発見された〔池田〕.
三浦半島で採集〔木村知K66〕. 奈良県吉野で採集〔新海明・金野K67〕. 1994年5月までに千葉県以南から西表島までの各地に生息〔新海明K67〕.
千葉県君津市の東大演習林で,平均すると,網の大きさ8×6cm,縦糸数198本,横糸49本,枠糸数6本,造網行動では横糸を張り終えてこしきへ戻るまでは普通だったが,既存の縦糸の間に新しく縦糸を付加した.一度の往復で2本が付加され,この付加縦糸が122本だった.このような行動は派生的なものと考えられる〔平松・新海明AC42(2),AT98/99〕.
○アシナガグモ科 Tetragnathidae
オオクマヒメドヨウグモ Diphya okumae
TANIKAWA,1995
東京都八王子城址で1989年5月21日採集の雌雄を模式標本に記載.雄は2.3-2.7mm、雌3.1-4.1mm.
東京・神奈川・静岡・愛知・岡山・福岡に分布〔谷川AC44(2)〕. 千葉県民の森に生息〔平松K75〕.
下草間に造網.直径5-6cmの円網.オス成体は円網を作らない.5-7月に1個産卵し(卵のうは直径3-4mmの球形),卵数は12-31個.成体はオスが3月下旬−5月下旬.メスが7月まで.餌により体色が変化する.野外では朱色だったが,セスジユスリカ餌で腹部が黒色になった〔泉宏子K76〕
ズナガドヨウグモ Dolichognatha umbrophila
TANIKAWA,1991
西表島で3月の雌雄で記載.雄3.3mm、雌3.2-3.8mm〔谷川AC40(2)〕.
ヒメアシナガグモ Dyschiriognatha tenera
(KARSCH,1879)
成体は1年中,メス3mm,オス2.5mm,本州・四国・九州.草間,落葉,水田などから採集されるが生態は不明〔東海84〕.長崎にて6月21日・23日,小型の水平円網を確認〔大利AT29〕.
ヨツボシヒメアシナガグモ Dyschiriognatha quadrimaculata BOES.et
STR.,1906
成体は1年中,メス3mm,オス2mm,本州・四国・九州.水田に生息.稲株,草間を徘徊して補虫する〔東海84〕.
厚木市の水田の調査では優位種で9月中旬から増加し始め,10月に個体数のピークを作る〔山野・木戸AT64〕.
メス3mm内外,オス2・5mm内外,雑草・積藁の下等に冬期にも見出し得る.産卵期不明,本州・四国・九州に分布〔関口AC6(3)〕.
チュウガタシロカネグモ Leucauge blanda
(L.KOCH,1878)
成体は6〜8月,メス10〜13mm,オス8〜10mm,本州(神奈川県以南)・四国・九州・南西諸島〔東海84,森林87〕.
日当たりのよい山麓や草地に水平円網を張る.刺激に敏感で,網の支点に逃げると同時に,腹背にある褐色条斑が黒色色素を増し,太くなる.〔中平AT23/24〕.
沖縄でも個体数が多く,日当たりのよい所に多い〔下謝名AT28〕. 集団化した幼体が迷網部の糸を共有していた〔新海明K73〕.
メスの網の占座点にて,雌雄向かい合い,第3・4脚で吊り下がって行われる.互いに第1・2脚をからみ合わせ,体は背面の方に倒し,口器も接触させているので,雌雄の体でV字形が出来る.
オスは左右交互に触肢をメスの外雌器におしあてる.一方の触肢をあてている時間は30秒,使用していない方の触肢は頭上に真直ぐ伸ばしている.左右の触肢をそれぞれ5回おしあてるとオスはパッと離れ,クルッと向きをかえて立ち去ろうとした.メスが第1脚でオスの背中をトントンと打つと,オスは振り返り,メスに接近,V字形.右触肢を40秒おしあてた後,離れ去った〔中平AT28〕.
横浜市,小田原市,鎌倉市に生息〔谷川K66,k67〕. 三浦市小網代にて1994年9月25日に雌成体3頭〔谷川K69〕. 5mm球形の卵のう〔伴K70〕.
チビシロカネグモ Leucauge crucinota (BOES. et STR.,1906)
山地下草の間に造網する〔中平AT23/24〕.
沖縄にて,樹木間の暗地の石間等に小型の水平円網を張る.刺激には敏感〔下謝名AT28〕.
トガリシロカネグモ Leucauge decorata
(BLACKWALL,1864)
オス3.5-4.1mm,メス6.6-10.4mm,腹部末端がとがる.西表島で採集.ウガンダ・インド・中国・オーストラリアまで広く分布〔谷川AT95〕.
オオシロカネグモ Leucauge magnifica
YAGINUMA,1952
成体は7〜9月,メス13〜15mm,オス8〜12mm,本州・四国・九州・南西諸島.渓流上の樹間に水平円網を張る.腹部の黒すじは刺激を与えると太くなる〔東海84〕.
産卵期は6月下旬〜9月だが,卵のうの形と卵数は不明である.渓流上を飛んでいるカゲロウ,カワゲラなどを捕まえる〔森林87〕.
網の直径30〜70cm〔学研76〕. 少し暗い,湿気の多い森林内や,谷川のほとりに造網する〔中平AT23/24〕.
暑い日は第1脚・第2脚を垂らして,体温調節をしている〔新海明K77〕.幼生はカンスゲ下部で越冬し,3月カンスゲ上部に7〜8cm程の水平円網を張り,6月カンスゲを離れる.9月子グモは再びカンスゲ上部で造網し,そのまま越冬する〔加藤AT83〕.
晩春から夏にかけては渓流上の網が大きくなり,他のクモ(タニマノドヨウグモ,アシナガグモ,ヤサガタアシナガグモ)の互いの網のワク糸をも足場として利用する.
網の破壊,主の追い出しなど様々な干渉が生ずる〔吉田真AT83〕.
網は「川岸」にも「渓流上」にも存在する.網へ侵入する例は「渓流上」でみられた.他のタニマノドヨウグモやアシナガグモの網は「渓流上」に多い.
植物被度の多い方形区にかたよって造網しているのは他の2種より網が小さいためだろう.被度の小さい区のクモの体長はやや小さい.
餌の少ない方が網への滞在時間が短い.成体メスの体重維持のために餌は1日3〜10calと推定した.餌の平均乾重は1.63cal/匹だから,1日2〜6匹でまず十分となる.
餌の多い区では0.3〜0.9時間でこの餌量になるが,餌の少ないところでは1日張っても不足である〔吉田真AC27S〕.
渓流上では,アシナガグモ,オオシロカネグモの侵入による干渉は非常に多い.タニマノドヨウグモの網には侵入が少ない〔吉田真AT70〕.
親は子グモの侵入を許さず,子は親の網に侵入しない〔吉田真AT77〕.
子グモは川岸でふ化し次第に周辺地へ分散する.あとから生まれた子グモは,川岸が先に生まれた子グモによって占められている為,周辺地への分散が促進される.
川岸では利用可能な造網場所のほとんどが使用される.初秋には子グモの密度が高く,長期間,網密度がほぼ一定に保たれる〔吉田真AC26(1)〕.
成体でマーキング(水彩絵具)による個体識別を行い,個体間干渉を調べた.
網数が一定に保たれる(利用可能な足場は殆ど利用されている)のに対し,個体数が多い.アブレた個体は移出するが,網の奪い合いの結果は身体の大きい方が勝って網を得る.
しかし,侵入者はあとで自分の網を張る.網の奪い取りは自分の網を張る過程で他個体と接触してしまった為に解発された行動だからであろう〔吉田真AT65〕.
餌が多い程,重い卵のうを数回産み,早く死亡する.餌の少ない個体は長期間生存して何回も産卵する.餌条件のいい渓流上に造網した個体は卵のうを産んで早く死に,空間を別個体が利用する〔吉田真AT63〕.
渓流上では網にカゲロウとユスリカが高くかかり,ハアリ・アブラムシは低かった.タニマノドヨウグモも同様だった〔吉田真AC46(2)〕.
6月28日,飯能市北川で網に落下したムラサキシキブの花をメス成体がラッピングし捕食した〔平松K77〕.
コシロカネグモ Leucauge subblanda BOES. et
STR.,1906
成体は6〜8月,メス9〜11mm,オス6〜8mm,全土.渓流より山道に多く,木や草の間に水平円網を張る〔東海84〕.
水のない山道にも普通に生息している〔森林87〕. 刺激により腹背の縦斑が太くなる〔八木沼68〕.
高知では,北部山地のクモで,南部平地で未見〔中平AT23/24〕. 八丈島・青ケ島の優占種〔植村AC12(3/4)〕.
萱嶋によると,日食(80%)の時,シロガネグモは歩脚をすっかり縮めた〔高島AC12(3/4)〕.
山野にやや水平の円網を張り緑色の腹部を現して静止せること多し.7,8月頃多く見らる.北海道・本州・九州に分布す〔関口AC6(1)〕.
幼体の網にかかったナミザトウムシをシリアゲムシが強奪〔新海明K59〕.
オオヒメグモの網内でクモを捕食〔八幡明彦K76〕分泌物による交尾栓(座間市1989年8月5日採♀)あり〔池田K62〕
キララシロカネグモ Leucauge subgemmea BOES. et
STR.,1906
成体は7〜9月,7〜9mm,草原,山地の草間に水平円網を斜めに張る.金色の腹部は刺激を与えると褐色に変化する〔東海84〕.
メス6〜9mm,オス5〜7mm〔森林87〕.
草間に水平無こしき円網を張り,網の一端の葉裏に姿をかくしていることが多い.また個体によりキレ網を張る場合がある〔新海69,中平AT23/24〕.
円網・キレ網・両者の昼間型(こしきから一本の呼網が住居とつながる).葉に粗目に糸を張って住居としている.個体によっては小さな円網である.食事はこしきで行う.獲物がかかるととびだしてきて捕える〔中平AC15(2)〕.
突然体色変化する.生態詳細あり〔植村AC15(1)〕.
キンヨウグモ Menosira ornata
CHIKUNI,1955
成体は8〜10月,メス8〜10mm,オス6〜7mm,北海道・本州・四国・九州.3〜4令幼体までは水平円網を張るが,その後は網を張らず,近くを通る昆虫を捕える〔東海84〕.
針葉樹,広葉樹をとわず生息し,夜間に葉先から1〜2本の糸をひき,その上端に静止している.また他のクモ (アシナガグモ類Tetragnatha
spp.やサンロウドヨウグモMeta menardii)の網に侵入し,その網の主を補食している個体も確認している〔新海77〕.
長野県各地で採集(787m〜1300m),雌9・0mm,雄6・0mm.1937年7月富山県の雄,1938年8月新潟県の雌にて岸田が記載した.千国仮称アズミグモ〔千国AC14(1)〕.
メス成体が擬死した〔平松K76〕.自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
サンロウドヨウグモ Meta japonica TANIKAWA,1993
=Meta menardi
(LATREILLE,1804)
成体は1年中,メス11〜14mm,オス9〜11mm,北海道・本州・四国・九州.鐘乳洞内に多いが岩場の暗所にもみられる.15〜30cmの水平円網を張る.白色球形の卵のうを作る〔東海84〕.
Meta menardi
(LATREILLE,1804)と同定されてきたが,検討の結果新種であった.埼玉県大滝村産の標本で記載,メス10〜13mm,オス9〜10mm,〔谷川AC42(2)〕.
産卵期は一定でなく,秩父では8月に多数の個体が卵のうを保護しているが,富士熔岩洞窟では10〜11月に,東京付近では2月にまどいの状態の子グモがみられる〔新海77〕.
攻撃ラッピングを行なう捕食行動と網構造(15cm径・横糸14.6・縦糸17.0・枠糸1.1)〔吉田真・新海明AC42(1)〕.
木の洞穴などの暗所に生息する〔八木沼AC15(2)〕. 1941年6月18日,メス13・8mm,30cm径の円網〔小松AC7(2)〕.
チビクロドヨウグモ Meta nigridorsalis
TANIKAWA,1994
オス4.5-5mm,メス5-6.6mm,水平円網を張り,腹背が黒い.1993年7月25日に三重県熊野市で井原庸が1♀発見.和歌山・広島・鳥取で記録.8月24日亜成体2♂は飼育により9月12日・9月14日に成体〔谷川AC43(1)〕
ヤマジドヨウグモ Meta reticuloides
YAGINUMA,1958
成体は8〜10月,メス6〜10mm,オス5〜7mm,本州・四国・九州・南西諸島.湿った崖地に円網を斜めに張る.腹部の色彩には変異がある〔東海84〕.
正常水平円網,崖地,岩場,渓流に小型の網を張る〔新海79,81〕. 個体によりキレ網を張る〔中平AT23/24〕.
1963年7月24日三重県美杉村にて右横腹に乳白色の卵を産みつけられていた.ヒメバチの一種Polysphincta varicarinata UCHIDA
et MOMOI が羽化〔橋本AC18(2)〕.
メス1955年11月16日大阪府牛滝山,オス1957年8月24日熊本県菊池水源(4・6mm)にて記載〔八木沼AC15(2)〕.
タニマ・メガネ・キタドヨウと異なり攻撃ラッピングによる捕食行動を行なう〔吉田真AC39(1)〕自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
チクニドヨウグモ Metleucauge chikunii
TANIKAWA,1992
沖縄県西表島の標本で記載,栃木県・長野県・三重県・屋久島・西表島さらに台湾に分布,メス8〜12mm,オス6〜8mm,成体は7〜8月〔谷川AC41(2)〕.
西表島で5月に雄,5・7月に雌〔谷川K70〕.
タニマノドヨウグモ Metleucauge kompirensis BOES. et
STR.,1906
成体は5〜8月,メス11〜18mm,オス8〜10mm,全土〔東海84,谷川AC41(2)〕. 正常水平円網〔新海79〕.
渓流に大型の網〔新海80〕. 谷間の渓流上に,水平無こしき円網を張り,平行背位に占座している〔新海69〕.
京都市北山で8月,メスが18時頃から造網を開始し,翌朝6時頃から破網,日中はイタドリ上などで静止.8月14日以降は姿を消した.小型個体(11〜12mm)が大型個体(14.5mm以上)よりも遅れて造網し,遅れて破網.網は「渓流上」に集中し,他個体の網や糸を足場に使い,植物被度の小さい方形区に偏る(網が大きいため)〔吉田真AC27S〕.
八王子城址で直径2mの網を造網〔新海K67〕.
子グモには造網せず親の網に侵入し餌を盗むもの,親の網を足場として造網するものがいる.親の網の外で造網したものには餌がかかっていない.親は子グモの侵入を許す.親は夕方住居から出て網を破壊し,新たに網を作るので子グモは全部追い出される〔吉田真AT77〕.
網に残された餌を子グモが盗むが,アシナガグモと競合しているので,網に多くの餌がかかっている場合のみ,盗みに成功している〔吉田AT85〕.
種内干渉が非常に多い.繁殖の最盛期とみられる7月には各個体が造網を開始してから1時間程の間に網を持たない個体の侵入(干渉)が頻繁に起こり,3分の2程の網が完全に破壊されてしまった〔吉田真AT70〕.
水面近くに造網し,第1脚を水にいれて垂れ下がり,アメンボを捕った〔辻本AT9〕. 渓流水面上に水平円網を張る〔八木沼AC15(2)〕.
自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
キタドヨウグモ Metleucauge yaginumai
TANIKAWA,1992
成体は6〜9月,メス10〜13mm,オス8〜10mm,北海道・本州(高地).渓流,草原,崖地に造網する〔東海84〕.
北海道上川郡愛山渓の標本で記載,北海道・長野県・群馬県の高地で記録,メス8〜11mm,オス5〜6mm,成体は7月〔谷川AC41(2)〕.
「山間の渓流付近に水面近くに垂直円網を張り,トビケラ等を補食して生活する(吉倉41)」〔新海69〕〔八木沼AC15(2)〕. Meta segmenta
(CLERCK)とは別種であった〔八木沼AT89〕.
メガネドヨウグモ Metleucauge yunohamensis BOES. et
STR.,1906
成体は5〜7月,メス10〜15mm,オス8〜10mm,北海道・本州・四国・九州.渓流や河原の樹草間に大型(最大2m,通常は0.5〜1m)の水平円網をはる〔東海84,谷川AC41(2)〕.
個体数は下流に行くにしたがって減少するが,日本中の河川の渓流域から河口まで広く分布.
その他,都市の公園や寺社などの池でも採集される.卵のうは確認されておらず,産卵期も6〜7月と思われるがわかっていない.クモは網の一端の枝の下に脚をのばして静止し,獲物がかかるのを待つ.
獲物は主として川の上をゆっくり飛んでいる昆虫で,ユスリカ,カゲロウ,カワゲラ,アブラムシなど,大きさに関係なく,網にかかった昆虫はすべて捕える.横糸と横糸の間隔が広いので獲物のほとんどは1本の横糸だけで捕えられる〔森林87〕.
正常水平円網〔新海79〕. 渓流に大型の網〔新海80〕.
11月30日,雪虫が網にたくさん(17頭)捕獲〔平松K77〕.刺激により網目状斑を生ずる〔新海AT51/52〕.
山間の渓流にみられる.水平円網を張る〔八木沼AC15(2)〕.
ユノハマドヨウグモ.7,8月頃に多く,水辺に水平的なる丸網を作りてその中央に静止し居るを常とす.樺太・北海道・本州・四国・九州・台湾・朝鮮に分布〔関口AC5(3)〕.
幼体がフタスジサラグモ♀成体の網に侵入し,餌を強奪〔新海明K60〕.
ジョロウグモ Nephila clavata
L.KOCH,1878
成体は9〜11月,メス20〜30mm,オス6〜10mm,本州・四国・九州・南西諸島.夏から秋にかけて家の周囲から山地まで最も普通にみられる.
樹間にきわめて目の細かい蹄型円網を張る.
産卵期は10月で,樹皮,建物の周囲,木の葉などに白色の卵のうを作る.卵はつぎの年の5月にふ化し,約3ケ月間で体長30mmの成体になる〔東海84〕.
脚部斑紋型(南にいくほど黒化する)の地理的分布〔徳本AC45(2)〕.
北海道からは採集されていないが,青森県の下北・津軽両半島の先端まで生息していることから,今後は北海道から採集の可能性がある.
世界のジョロウグモ属の中では最も北に分布している.
産卵期は10〜11月で,白色楕円形の卵のうを樹皮の上,建物の壁や柱,広葉樹の葉などに作る.落葉広葉樹の葉の表面に産卵した時は,その葉がおちないように葉柄の部分と枝を糸でしばっておく.
1卵のう中の卵数は400〜1500個.卵は産卵後,数時間でいったん発生が止まり,そのまま越冬して,翌年5月から再び発生が進み,5月下旬にふ化する.
このクモの網が他のクモと異なる点は,横糸の数が多いこと,縦糸が周辺に行くに従って分岐していること,さらに枠の部分から中心に向かっても2本にわかれた縦糸があることである.
クモは常に網の中心よりやや上にいて獲物を待っている.獲物がかかるといきなりかみついて,それから糸を巻くが,こうした捕虫行動はアシナガグモやトリノフンダマシと同じで捕帯の量の少ないクモの特徴である.
オスは交尾が終わるとメスに食べられることがある〔森林87〕.
八丈島には1965年にはいたが,1989年以降はいない〔徳本K76〕.石川県における垂直分布とその要因の考察.分布上限の厳寒月平均気温の推定値は-0.4℃,年平均気温の推定値は11.2℃.それぞれ前後に1.1℃程度の範囲に収まる〔徳本K77〕.わずか4ケ月以内で体重にして50-700倍,体長にして7-20倍も増加する.日当り捕食量は9月中旬以降急劇に増加する.摂食量/平均体重の値は夏期に減少する.大型餌の割合はクモのサイズとともに増加するが,小型餌をコンスタントに摂食する.都市部では20-30%しか抱卵しない場所もあった.大型の飛翔昆虫が少ないことが原因と思われる.抱卵♀のT脚長と卵数には強い正の相関が見られた.卵数が最終脱皮直後のサイズでほぼ一義的に決まることを示す.
♀網当り♂数は9月頃から増加,9月中旬頃までは一様分布(♂間で排他的関係),9月下旬以降はランダムから集中分布に移行する.
中心オスは周辺オスよりサイズが大きく,滞在日数も長かったが,9月下旬以降は違いが曖昧になった〔宮下直AT97〕.
野外網室内で7月から9月まで餌供給量を変えて(7/18から8/4まではショウジョウバエを日当り3-10匹[富食],1-4匹[中間食],0匹[貧食].8/9から雌には1日おきにミールワームかコオロギ[富食],小コオロギ[富食の1/3量],4日に一度ショウジョウバエ5匹[貧食].雄には一日おきにショウジョウバエを10匹,5匹,1-2匹と差をつけた),成長を調査.その結果,体長に大きく差が出たし,貧食は1ケ月以上成熟が遅れた.野外個体群のサイズのバラツキと同様だった〔宮下直AC40(1)〕.
餌捕獲個体数および摂食時間をVTRと見取りセンサスで推定.体長2mm以下の小形餌は数で80%以上、摂食時間の30%以上を占めていた.小形餌はコンスタントに捕食されていた〔宮下直AC41(2)〕.
網場所の質を判断し,移動して採餌効率を上げることができるかどうかを確率分布をもとにシミュレーションした〔宮下直AT98/99〕.
10月14日に座間市谷戸山公園と芹沢公園で♂の同居網数が約50%〔諏訪哲K62〕.
金沢市では9月中旬から10月中旬は♀個体数が安定しており,地域や異年次比較に適した時期である.10月下旬に産卵のため一時個体数が減る.生残個体は腹部が肥大するが第2回目の産卵には至らない〔徳本K64〕.
産卵後の採集位置は卵のう抱えか卵のう横12例,網央12例,網端1例,条糸上6例,ケージ天井・側面16例,卵のうとの位置関係不明10例〔近藤AT89〕.
横浜・小田原産(南部)と赤湯産(北部)を南北を交換して越冬させた.晩秋から初春にかけては南北で発生に差異なし.船橋市では4月下旬に南卵は胚反転中期に,北卵はふ化直前に達した.5月下旬までに南卵はふ化したが,北卵は第1回脱皮終了.一方,赤湯では5月に入って発生が進行し,5月下旬に南卵はふ化を開始したが,北卵のふ化は完了していた〔近藤AT87〕.
低温処理実験〔近藤AT93,AT95〕. 14L,10Dで卵のうから出た子グモを室内飼育した〔近藤ほかAT97〕.
内灘砂丘のニセアカシア純林で秋の成体の移動を調査.産卵までは雌成体はあまり移動がない.10月下旬以後には林外縁部から林内部へ移動した個体が増加〔徳本AT87〕.
高知県で,10月頃,樹葉裏や枝に産卵,翌5月頃出現する〔中平AT23/24〕.
富山県内灘の海岸砂丘のニセアカシア純林で,林縁部での生息密度が高く,占座位置は80〜180cm,卵のうは成体造網位置より低く10〜80cmである.卵のう付着面は南や西を向かない.付着位置の幹直径は6〜10cmであるが,林縁では1mの高さで直径が5cm以下の樹が多く,卵のうの低位置集中および葉上への産卵の要因となっている〔徳本AT79〕,
卵のうの長径と短径の積と卵数の関係式Y=3・32Xが得られた.1卵のう当たりの卵数平均は約400.81年から82年の推定成体達成率は0.0131で,期待値0・005よりかなり高い.ずれの原因は不明である〔徳本AT83〕.
卵塊内の卵数推定値を使い,越冬卵の生残率を調査した.卵塊数生残率が0・3,卵数生残率が0・4となった〔徳本AT85〕.
夜の8時頃から産卵活動.樹皮にシートを張り,9時半卵を産み始める,卵塊を糸で覆い,明け方の4時頃までかかる.卵のうは木の皮やゴミがつけられる.一粒の卵は約1mm,17×14mmの卵塊に1400粒.卵寄生するナガヒョウホンムシがいる.5月16日ふ化,21日脱皮,脱皮したクモは再び集団生活をし,6月1日出のうして団居,8日脱皮(第2回)して団居,13日バルーニング,6月中下旬に脱皮(第3回),6月下旬から7月上旬脱皮(第4回),7月中旬脱皮(第5回),円形に近かった網は馬蹄形に近くなる.7月中旬朝9時半から10数分かけての脱皮(第5回)を観察する.7月下旬第6回脱皮,雌雄の別が分かる.8月上旬第7回脱皮,オスは成体となる.脱皮後30数時間後,精網を張り,左右の触肢を代る代る10数回精液を吸い取る.40〜50秒間.オスはメスの網に入る.9月上旬メス第8回脱皮をして成体となる.オス同士の闘争がある.脱皮途中でオスはメスに近ずき交接する.1回は10秒そこそこ.片方10数回ずつ挿入する.飽食させると脱皮回数は9〜10回(メス),7〜8回(オス),欠食では8回(メス),6回(オス)である.野外ではメス8回,オス7回であろう〔千国83〕.
オスはメスの最終脱皮まで約1ケ月間餌をとらない〔千国AT79〕.
網は10月25日〜11月30日の1ケ月間に16回(1〜5日間隔,平均2日)更新された.3分の1〜3分の2が暖かい夜,降雨後に更新される〔新海AT79〕.
雨が降ると一斉に網の半分ほどを「雪かき式」で数本の縦糸を残してたたんでしまう〔新海明K74〕.
他のコガネグモに比べて縦糸が多い.ジョロウグモの「分枝」糸は,縦糸を下がりながら1本の縦糸を張り,中心に戻ってくる時にもう1本の縦糸を引き出す型である.それに加えて「二分割」という特殊な縦糸増加の機構がある.足場糸を張る時に,所々元は1本の縦糸をはじいて2本にわけていくのである.従って縦糸はゆるく張られる必要がある.足場糸はこのような縦糸の緩みを引き締める役目をしている〔新海AT82〕.
足場糸と横糸を張る時の脚の造網動作は同じである〔福本AT60〕.
成熟直前のオスの網は粘糸を欠く小さな篭状の不規則網である.成体となったオス(金沢市では8月下旬)は翌日,網を放棄し,メスの網に入る.オスの出入りは激しく,未成熟オスも出入りする.メスが網を放棄するとオスは離散する.メスの網の位置は不定期に変わる.メスの網を訪れるオスは0〜9頭.オスのいる期間は1〜16日.成体メスではオスの滞在期間は55.6%が1日である.10月,オスが6日以上来ないメスの網は20%しかない.メスのいない網にもオスが入り,中心に占座していた.オスの網への侵入にはメスの存在は不可欠ではない〔徳本AT77〕,
網の高さは分散直後(金沢では6月中旬)は2〜3mの所に多いが,次第に1〜2mの高さに集中する.10月下旬になるともっと高い所に位置する網が増える〔徳本AT75〕,
樹冠被度とクモ密度は様々である.被度の高い割に密度の低いのは竹林や社寺林地域,その逆は庭木の多い住宅地域である〔徳本AT73〕.
地理的変異について.北の個体ほど早く成体となる(秋田1.5ケ月程度,平塚2.5ケ月程度,名護4.5ケ月程度)ので小さく,2回目の産卵は可能ではない.名護で2回目に産卵された個体は冬を越せずに死亡するであろう〔栗原AT77〕,
越冬卵はふ化の為に低温接触を要する.越冬卵は胚盤形成期である.秋田個体群を平塚野外条件下に移したところ,12月下旬に発生が開始した.平塚個体群は3月中旬であったので,秋田個体群には平塚の低温が発育可能な高温として作用したものであろう.つまり,卵休眠の深さに地理的変異がある〔栗原AT70〕.
沖縄では11月〜12月に卵が成熟し,12月中旬〜3月中旬まで産卵される.卵は2月中旬〜4下旬にふ化し,産卵数も522+43個で年2回産卵する.沖縄での産卵のピークは1月上旬でふ化のピークは3月中旬である.第1回産卵のふ化日数は70日前後,第2回産卵のふ化日数は45日前後である.腹幅/腹長で除した値が0.5より上であれば成熟卵を保有していると判断できる〔下謝名AT55〕.
沖縄では網面積が小さく,横糸・縦糸も少ない.冬が来る前に成長を完了せざるえをえない本州産に比べて,長く遅い成長がこれに関係していよう〔カルタン&宮下直AC47(1)〕.
胚は-10℃にさらされてもふ化できる〔近藤AC45(2)〕.
埼玉県では6月下旬にマダラジガバチモドキによく狩られている〔南部AT59〕.
クモの体背面にある補助網に食物のかすや脱皮殻などが吊される.補助網は更新しないので,長く同じ場所に造網した個体では補助網の方が大きい.補助網はクモ体保護装置である.網の祖型がヒラタグモの住居網の様であるならば円形住居が補助網となり,触糸が主網となったのであろう〔中平AT37〕.
交接の際,触肢で外雌器上方を3〜4秒間,連打する.その後挿入する.挿入し,そこを中心に触肢を外側方向へ回し,最後に逆転させて止める.交接時間は10時間以上〔笠原AT35〕.
1934年10月21日,雌の網に雄を投じる.雌がハエを捕獲した後に雄が接近,30秒ほど交尾〔細野43〕.渓流上の網内にタニマノドヨウグモ,アシナガグモ,オオシロカネグモが侵入して網を張り(迷網部),主網で餌を盗んだり,迷網の自分の網で餌捕獲している.ジョロウグモは迷網部にはやってこないので,侵入者のよい造網足場になっている.放浪個体が侵入する例もある.2時間以内の侵入が多い〔吉田真AC35(1)〕.
東勝公によると,10月28日に400卵を産卵,12月3日に2回目の産卵,卵は小さく,凡そ1/3位で,半数がふ化.小松敏宏によると,成体のクモも空中飛行をする〔高島AC11(3/4)〕.
9月中旬に山形県赤湯で採集した雌は11日-21日後に産卵,さらに23-32日後に第2回目の産卵(卵塊や卵は小さい)〔近藤AT91〕.
潜在的に2回ないし3回の産卵ができる〔近藤AT98/99〕. まどい後期に小さな個体が共食いされた〔田中弘美・近藤AT91〕.
初期には背甲の前縁から裂けて後方へ開くが,後期には後縁で裂けて前方へ開くという〔関口AC9(1/2)〕.
脱皮を中心とするジョロウグモの一生の記録〔千国AC6(1)〕.
幼体(体長7mm)の網に与えた5mmのクロヤマアリに蟻酸をかけられ,退散.10分後,与えたアリを糸をはじいて落とした.ひと月後,10mmの幼体に2mmのアリを与えたらかみついて食べた〔小野K39〕.
金沢大学植物園で,7月下旬から8月上旬にルリジガバチに狩られる.コシブトジガバチモドキ,マダラジガバチモドキに幼体が狩られた記録もある.9月に雌亜成体がオオモンクロベッコウ?に狩られたのを目撃〔徳本K66〕.
野外での死亡要因を特定できた例は少ない.カマキリやスズメバチなど肉食昆虫による♀の捕食2例,ハエトリによる♂亜成体捕食1例,♀による♂の捕食6例,♂との闘争で死亡1例,♀亜による♀亜の捕食1例〔宮下直K66〕.
脱皮の際,頭胸部のフタが腹部に近い方から離れる型で,コガネグモ科ではジョロウグモがこの型である.他にはアシダカグモ類,エビグモ類〔高野K40〕.
年を越す個体もある〔鈴木成生K65,徳本k66,初芝伸吾K77〕. 筑波では8月後半から9月半ばまでアシナガグモに網を乗っ取られる〔宮下直K66〕.
しおり糸を紫外線照射によって調べたら,成熟♀の方が幼体のそれよりも分解しやすいことが分かった〔大崎AC43(1)〕.
しおり糸の弾性破壊強度は体重の2倍〔大崎AC47(2)〕.千葉県清澄山でロードセンサスにより1974年から1993年の個体数の変動をまとめた.100m当り24.0から1.3頭まで変動した.変動と相関する気象条件は見い出せなかったが,1980年頃に調査4地点でピークを示した〔新海明K69〕.
金沢市内の定点「緑が丘」で1977-1989年までの間に生息数が激減した.170-270頭だったのが1984年から減り始めた.1988年には0になった.マツノマダラカミキリ駆除剤の空中散布(1980年から毎年)や市街地では草本層・低木層の減少によるのだろう〔徳本AT95〕.
石川県の金沢城址で秋に成体が樹上性のモリアオガエルに捕食される〔徳本K69〕. 迷網を切ったらすぐに張り直す〔谷川K73〕.
富士山麓では珍しい.1994年10月9日に須走で1頭の雌のみ〔新海明〕
8/26から11/26まで鎌倉市で移動を調査.59%が4日以上同じ場所に造網し滞在した1日のうちに移動するクモの割合は10%だった〔谷川K74〕.
シロカネイソウロウグモが居候〔小菅ほかK77〕.まどいの子を落下させるとやがて上がってくるが,最後から2番目の幼体は逆に下がって最下位のクモの後から糸を手繰って登る〔大崎AC48(2)〕.
オオジョロウグモ Nephila maculata
(FABRICIUS,1793)
成体は6〜10月,メス35〜50mm,オス7〜10mm.日本最大のクモでトカラ列島以南に分布〔森林87〕.
成体メスは5cm.亜成体でも3cm.オスは1cm程度.局地的に生息.網は1重で地上2m以上の所に多い.8月上旬,奄美で交接の例を見た.オスが3頭侵入していた〔大河内AT49/50〕.
生息地が限定され,網は蹄型円網で1枚のようだ.糸は成体になるにつれ金色〔木庭AT41/42〕.
「マダラジョウロウグモ」として,渡瀬線以南のクモ〔萱嶋AC14(1)〕. 屋久島で1幼体を記録(1990年7月15日)〔谷川K61〕.
1940年5月に2メス,ミンダナオ島にて採集〔仲辻AC7(2)〕.
網は径・幅ともジョロウグモより大きい.横糸数は幼体期も成体期もほとんど増加しない.成体のbarrier
webは主にクモの背面部にのみ存在.幼体のそれは円錐形で粘性はない.次第に成長に伴いbarrierの糸数は減少.二分割糸はない.1動作で2本の縦糸を引く行動,分枝,足場糸を残すことは見られた.亜成体の作った網でかくれ帯・分枝なし・糸数少のものがあった.下謝名(1969)もかくれ帯を観察している.こしき上部の横糸は成体になっても欠失していない〔新海明AC34(1)〕.
体長1mmほどの幼体は小葉の表面に網を張っていた(1997年4月3日沖縄県本部半島で)〔新海明K73〕.
ツワブキの葉面に造網した幼体は1葉1クモで一様分布を示し,「深い」葉を好んだ.除去実験をすると翌日には葉の38%が,2日後には43%が再占有される.これは円網種での造網場所の種内競争を示す〔宮下直ほかAC47(1)〕.
バイト先行だが,ジョロウと異なり,餌をこしきへ持ち帰る際に後ずさり(バック・オフ)する〔新海明K54〕.
1987年7月19日に中城公園で雄が雌の背面からかける婚礼ベールを観察〔新海明K57〕.
腹背にはV字状の黄色斑紋,歩脚は黒色だが,腹背が黒いもの(液浸するとV字状斑が見えてくる),歩脚に黄色の環斑があるものが見られる〔谷川K65〕.
宮下直(1996)が発見したオオジョロウグモの高い移動率を検証.西表島で成体の個体別に移動を調査した.30-70%が24時間後には移動してしまう.1ケ所に滞在する時間は12時間以上24時間未満が62%.かなり遠くへ移動する〔谷川K73〕.
葉面に張った水平網上で餌を取った幼体が網の上面で餌の捕食を始めた〔谷川K74〕.
アゴブトグモ Pachygnatha clercki
SUNDEVALL,1823
成体は9〜4月,5〜6mm,北海道・本州.冬期水田の枯葉やワラの中から多数採集される.幼体は網を張るといわれるが日本では確認されていない〔東海84〕.網の形状,補食習性等すべて不明〔新海77〕.
成体になると網をはらなくなる〔学研76〕.
宇都宮市峰町の水田(6月にスミチオン乳剤散布)で9〜10月に最高密度,1u当たり4〜6個体,関東以北に多い〔浜村AC22(2)〕.
チヨコアシナガグモ Tetragnatha bituberculata
L.KOCH,1867
雄6.7mm,雌6.8-7.8mm.西表島にて4月に雌雄.模式産地はオーストラリアのブリスベーン.ニューギニアにも分布〔谷川AC45(2)〕.
トガリアシナガグモ Tetragnatha caudicula
(KARSCH,1879)
成体は6〜8月,メス12〜15mm,オス10〜12mm,本州・四国・九州・南西諸島〔東海84〕.
井草田や稲田に多い.3月上旬,メス幼体,オス亜成体が出現.無こしき円網を水平〜垂直に張り,平行背位〜垂直下位に占座する.昼間は草葉裏に垂直下位の姿勢で潜む〔中平AT23/24〕.
9月3日に産卵,長径10mm,短径4mmのだ円形で,卵のうの上には濃い黄色の密にねじれた糸の房を付着(30卵)〔鈴木勝K43〕.
ヒルギアシナガグモ Tetragnatha chauliodus
(THORELL,1890)
オス11.4mm,メス13.8mm,西表島の水田で採集.ビルマ〜台湾まで分布〔谷川AT95〕.
ハラビロアシナガグモ Tetragnatha extensa
(LINNE,1758)
メス8〜12mm,オス6〜9mm,北海道・本州(高地)に分布〔八木沼86〕.
ミドリアシナガグモの項参照〔吉田真AC30(1)〕.
5月10日18時前後の10分間,オスの大顎はメスの大顎をひろげ,支え,かまれない様にしている.また,オスの第3脚はメスの腸部にある.オスは真直ぐな姿勢,メスは腰をまげた姿勢で第1脚をあげている.触肢は3分前後,挿入,これを数回繰り返す.交接後,オスはメスのすきをみて逃げる〔野口AT22〕.
イリオモテアシナガグモ Tetragnatha iriomotensis
OKUMA,1991
雄6.6-7.2mm、雌8.0-8.6mm.西表島の12月-1月の雌雄で記載〔大熊AC40(2)〕.
沖縄本島与那にて12月27日雄を採集.奄美大島各地で年末年始に雌雄を採集.一見ヤサガタアシナガグモに似ている〔谷川K70〕.
ヤサガタアシナガグモ Tetragnatha japonica BOES. et
STR.,1906
成体は4〜10月,メス10〜13mm,オス9〜10mm,全土.水田に多く,水平円網を張る.年2〜3回発生〔東海84〕.
渓流上ではタニマノドヨウグモの網に侵入するが,タニマノドヨウが消失すると好んで同種の網に侵入し,網を奪う.
10月に幼生がジョロウグモの網に寄宿する例も多い.オニグモ,ズグロオニグモ,クサグモの網での盗み食いもある.アシナガグモも同様〔吉田真AT70〕.
親は子の侵入を許さず,子は他種の網に侵入して,造網したり餌を盗んだりしている〔吉田真AT77〕.
幌内川では上流の森林域に分布,アシナガグモとの共存域ではやや低い所に造網する.
これは足場として草を使う割合が高いためである.下流のミドリアシナガグモ(正しくはハラビロアシナガグモ)との共存域では造網の高さの平均はほぼ同じで足場としては両種とも草を使う.
個体数は夕方から,こしきに居る個体が増え,7〜9時にピーク,それ以降翌朝まで次第に減る.日中は網を持たない個体が多くいる.
網にかかる餌のピークはクモ出現のピークとずれ,6時にある.アシナガグモの方は8時だが,共存の条件としては重要でないかもしれない〔吉田真AC30(1)〕.
熊本にて,交接期は9月頃,朝早く網を張る姿がみられ,やや日当たりの悪い所では一日中網を張っている.水湿地・杉林・クマザサの多い所に造網〔木庭AT15〕.
宇都宮市の水田では場所によって最高密度は7月に出現したり9月に出現したりする.11月以降水田には出現しないので越冬は水田外であろう〔浜村AC22(2)〕.
夏季山野或いは人家の近くに水平又は傾斜せる丸網を張る.網の一端なる葉,小枝等の裏面に2対ずつ前後に歩脚をそろえて潜み居ること多し.
本州・四国・九州・朝鮮・台湾に分布〔関口AC5(3)〕. ♂が顎をからませた交尾を観察(1991年9月21日8:10,伊勢原市)〔池田K63〕.
薬剤(合成ピレスロイド剤)感受性がキクヅキコモリ・セスジアカムネグモ・ニセアカムネグモに比べて高かった〔田中幸AC48(2)〕.
オナガアシナガグモ Tetragnatha javana (TORELL)
西表島冬季(2月)水田畦畔の最優占種であった〔村田AC48(1)〕.
トゲナガアシナガグモ Tetragnatha laqueata
L.KOCH,1871
成体は1〜4月,5〜6.5mm,小笠原諸島.全歩脚に長い刺がある.サモア,ソシエテ諸島との共通種〔東海84〕.
キヌアシナガグモ Tetragnatha lauta
YAGINUMA,1959
成体は4〜9月,4.5〜6mm,本州・九州.草間に四角形(縦糸4本,横糸4〜6本)の網を張る〔東海84〕.
東大千葉演習林内で観察.水平円網で,縦糸5本,横糸17または31本(粘性はあまり強くない).円網種と比べて,@枠糸が張られない,A足場糸は張ったり張られ無かったりする〔新海明K56〕.
山麓の日当りのよい場所に非常に細い糸で目の荒い垂直円網を張る(傾斜するものもある)〔保育86〕.
幼体の網は垂直よりやや傾き,縦糸4本で横糸8-10本だった〔新海明K58〕
リュウキュウアシナガグモ Tetragnatha makiharai
OKUMA,1977
オス6.5〜8.6mm,メス8.2〜10.6mm.6月に成体.沖縄・奄美大島に分布.セイロンアシナガグモ(南西諸島)とは分布が重ならない〔大熊AC27S〕.
オオアシナガグモ Tetragnatha mandibulata WALCKENAER,
1841
アシナガグモに似る.奄美・沖縄・台湾に分布.オス11・2mm,メス14〜15mm〔大熊AC21(2)〕.
西表島冬季(2月)水田畦畔の優占種であった〔村田AC48(1)〕.
ヒカリアシナガグモ Tetragnatha nitens
(AUDOUIN,1827)
汎世界種.ヤサガタアシナガグモに似る.メス9〜15mm,オス8・5〜12・5mm.沖縄・奄美・台湾に分布〔大熊AC21(2)〕.
名護の海岸でモクマオウの小葉を利用して卵のうを被っていた.母グモはガードしていた〔池田K74〕.
アシナガグモ Tetragnatha praedonia
L.KOCH,1878
成体は5〜10月,メス13〜15mm,オス10〜12mm,全土.池から渓流まで広く分布している.水平円網を張る〔東海84〕.
産卵期は環境によって異なり,水田・渓流周辺の餌の豊富な場所では1年に2〜3世代が生ずると思われるが,条件の悪い地域では年1世代で,6〜8月に産卵する.卵のうは葉の裏や木の枝の間などに作る(個体によっては糸で空中に吊るすことがある).5mm前後の卵のうは全体としては白色だが,表面に黒色の糸がゴミのようについている.1卵のう中の卵数は70〜150個.水辺にはえている草の間に水平円網を張り,中心に脚と体をまっすぐに伸ばして静止する.昼間は網の一端の葉裏にひそんでいることが多い.獲物がかかると,長い脚を使って数本の糸で巻きつけるだけで,オニグモのように捕帯を出すことはない.オスの上顎は長く強大だが,交尾の際,メスの上顎にからませてメスにくわれるのを防ぐ〔森林87〕.
刺激により樹状斑が明瞭になる〔新海AT51/52〕.
福岡の水田性クモ類の発生消長から,2令幼生の出現は5〜12,1,3月,オスは4,6〜9月に出現,年2〜3化と推定〔大熊AT68〕.
縦糸を張ってから外側から中心へ向かって横糸を張るが,横糸張りの時の脚動作の解析がある.第4脚で糸いぼから糸をすき出し,横糸を縦糸につけた後,次の縦糸へ移る前,クモは半回転して外向きになる.これは横糸同士の間隔のチェックの為の動作であり,片方の第1脚で前に張った横糸に触れ,また半回転して内向きに戻る.これを繰り返す〔福本AT78〕.
親は子の侵入を許さず,子は他種の網に侵入して,造網したり餌を盗んだりしている〔吉田真AT77〕.
幌内川の上流の森林域にヤサガタアシナガグモと共存し,ヤサガタよりやや上流域に居る.共存域ではヤサガタアシナガグモ(10〜50cm)よりやや高いところ(50〜200cm)に造網する.これは足場の選択と関連し,本種は枝先を使うことが多い.6月23日〜8月3日の調査期間で両種とも亜成体または成体〔吉田真AC30(1)〕.
タニマノドヨウグモの網に残された餌を盗む〔吉田AT85〕.
盗みのみによって餌を得た個体,盗みと自分の網での捕獲による餌を得た個体,自分の網でのみ餌を捕獲した個体.盗みが起こる状況は@自分の網を持ちながら隣接するドヨウの網に侵入,Aドヨウに網を壊された後,B網を持たず休息していたクモが侵入〔吉田真AT93〕.
京都市北山にてヤサガタアシナガと一緒にしての調査である.「渓流上」に造網する.植物被度の小さい方形区では他個体の糸を足場によく利用している.オオシロカネの餌量の2/3である.個体間干渉ではもっとも劣位である.他種の餌盗みはかなり広汎にみられる〔吉田真AC27S〕.
ジョロウグモの網を乗っ取る〔宮下直K66〕. オニグモの網内で餌(双翅類)を盗んでいた〔新海明ほかK71〕. 成熟期は6月〔木庭AT15〕.
メスは第3・4脚で吊り下がる.互いに大顎をかみ合わせ,メスの腹部は湾曲してその先端がオスの腹柄付近に付く.オスは第3脚でメスの腹部を抱く.オスは時々力をいれて,メスを引き寄せる.触肢を左右交互に外雌器に挿入.使用していない触肢は背上高く挙げている.左右,左右と4回とりかえた.所要時間9分.オスは逃げ,メスはオスを追ったが,もどって静止〔中平AT28〕.
捕食行動を観察した.自然状態ではユスリカ等体長3mm以下の双翅類昆虫を捕食.下水溝の上に張られた網にかかった270頭の餌のうち64・4%が網から逃れた.逃げた餌のうち,89・1%は自力で脱出したもので,他は網の引き(Plucking)によって落ちたものである.通常,網の引きによって餌の所在を確認し,走り寄って上顎で餌をくわえ(Seizing),網から引き離して(Pulling
out),餌をこしきに運び,摂食した(Seize-Pull
out戦略).大型の餌捕獲には適応していない.与えられた大きな餌に対して,クモはSeize-Pull
out戦略を含む3つの戦略を使用した.鱗し類は多くの場合,Bite-Wrap戦略によって,ガガンボとトンボはSeize-Pull
out,Bite-Wrap,Wrap-Biteの3つの戦略によって捕獲された.Bite-Wrap戦略においては,餌はまずBiteによって固定され(immobilization),その後で糸を巻きつけられた(Wrapping).これに対してWrap-Bite戦略においては,餌はまずWrappingによって攻撃され,その後でBitingが行われた〔吉田真AC35(2),AT87〕.
1958年8月2日山口市にて村井工一採集亜成体メス左上顎が半分大,再生肢であろう〔八木沼AC20(1)〕.
昭和13年4月27日,成体メスがカスリヒメガガンボLimnophila japonica雌を捕食〔湯浅AC4(3)〕.
居候生活もする.8月中旬ジョロウグモの網を侵略していた.また2m径の或クモの丸網に18頭ものアシナガグモが集まっていた〔植村AC2(3)〕.
八重山群島で円網の中心に枝を利用した心棒付き円網を2例観察.亜成体のクモがこの網を張る〔大利K39〕.
雄成体がジョロウグモのこしきに占座し,かけた蟻を取った〔新海明K58〕.
縦糸数本をつかみ手繰り寄せながら前へ進み,糸束を飲み込むことを繰り返して自分の網を食べる〔中平92〕.
シナノアシナガグモ Tetragnatha shinanoensis OKUMA et
CHIKUNI,1978
長野県須砂度の標本で記載〔大熊・千国78〕. 八王子城址で採集〔熊田K60〕自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
ウロコアシナガグモ Tetragnatha squamata
KARSCH,1879
成体は5〜7月,メス7〜9mm,オス5〜7mm,全土.山地の渓流から都会の街路樹までみられる.小さな水平円網を張るが,徘徊して捕虫することもある〔東海84〕.
産卵期は5月下旬〜6月で,葉の裏に白色か淡緑色の綿あめのような6〜7mmの卵のうを作る.1卵のう中の卵数は35〜70個.網は垂直に近いものもあり,張る角度は一定していない.また網から離れた葉上で捕食していることもある〔森林87〕.
刺激により腹部の金緑色鱗状斑が収縮するため,樹状斑が明瞭になる〔新海AT51/52〕.
水平〜垂直に造網する.占座姿勢も平行背位〜垂直下位.5〜6月に白色,球形,小型の卵のうを,昼間の住居である葉裏につける.卵数50内外.卵粒は直径0・5mmで白緑色〔中平AT23/24〕.
7〜8月に葉裏で,卵のうを口器で保持していた〔山川・熊田73〕.
秩父では,6〜7月に産卵し,広葉樹の葉裏に綿アメ状の淡緑色の卵のうを作る〔新海・原AT65〕.
都内の桑園では80%を占める優占種である.クワノメイガの1〜3令幼虫をよく捕食しているが,Cーindexで解析すると両者の分布はランダムである.また個体数変動は対応していない.他の餌もよく取っている為であろう〔国見・大熊AT70〕.
耐寒性があり,冬期,ヤツデ・アオキ・タラヨウ等の常緑樹の葉裏に防寒装置もなく生活している〔植村AT5〕.
倉敷市にて桃や桜の葉面に6〜11mmの偏円形の卵のうを産み守る.卵は0・6mm径の淡緑色.1卵のう中に41,102〔白AC7(3/4)〕.
シコクアシナガグモ Tetragnatha vermiformis
YAGINUMA,1960
成体は5〜8月,6.5〜8mm,本州・四国・九州・南西諸島.河原の草間に多く,その他に水田,草原などにもみられる.水平または斜めに円網を張る〔東海84〕.
水平から垂直まで色々な角度に円網を張る.アジアからアフリカまでの熱帯・温帯地域に広く生息している〔森林87〕.
ミドリアシナガグモ Tetragnatha pinicola
L.KOCH,1870
成体は6〜8月,メス8〜10mm,オス5〜6mm,北海道・本州(高地)・四国(高地).高原の木や草の間に水平円網を張る.1000m付近では最も多い種類〔東海84〕.
液浸にすると中央の樹状斑が明瞭になる〔保育68〕.
幌内川では下流の市街地に分布.ヤサガタアシナガグモとの共存域では水面のすぐ上で造網する.7〜8時に個体数がピークとなり,空網は減少する.6月23日〜8月3日で様々な令がいる(ミドリアシナガグモはハラビロアシナガグモの誤り)〔吉田真AC30(1)〕
シナノアシナガグモ Tetragnatha shinanoensis OKUMA &
CHIKUNI,1978
成体は5月中旬〜6月中旬,メス5.9〜7.3mm,オス5.1〜6.0mm,北アルプス標高800m前後の山地の雑木林に住み,水辺と関係しない.雑木の下枝(地上数10cm前後)に水平円網を張る.一見ミドリアシナガグモに似る.林内の小動物を捕食.年一世代.幼体は10月中旬〜11月中旬に亜成体となり越冬する〔大熊・千国AC28(1)〕.
エゾアシナガグモ Tetragnatha yesoensis
SAITO,1934
成体は5〜8月,メス7〜10mm,オス6〜8mm,北海道・本州.〔東海84〕.
メスではウロコアシナガグモとの区別が難しい.オスでは上顎が太くて長いこと,腹部の赤色斑がないことで区別できる.北海道・本州・九州に分布〔森林87〕.
刺激により樹状斑が明瞭になる〔新海AT51/52〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
キイロハラダカグモ Tylorida striata
(THORELL,1877)
山麓の低木の間に,水平〜垂直に無こしき円網を張る.個体によりキレ網を張る.網の支点にある木の葉の裏に糸を不規則に張って住居とし,平行背位に占座している.交接も食事も住居で行う.網に獲物がかかると,ここからとびだしていって捕らえて帰る.腹部は黄金色.刺激すると褐色の網目が拡大し,全体が汚い褐色に変化する.体色変化はオスや幼い個体ほど著しく現れる〔中平AT23/24・14〕.
交接で,V字形にならずに一直線になる〔中平AT28〕.
○ヒラタグモ科 Urocteidae
ヒラタグモ Uroctea compactilis
L.KOCH,1878
成体は1年中,8〜10mm,全土.家の周囲,塀,壁などの隅に白色の円盤状の住居を作る.住居の周囲には受信糸を引き,それに触れた昆虫を捕える〔東海84〕.
産卵も3〜10月の間に不定期に行うが,6〜9月が最も多い.白色で円盤状の卵のうを3〜4個,住居の中に作る.1卵のう中の卵数は10〜40個.白色多角形の住居は上下2枚の幕でできていて,クモはその間に入っている.上の幕には食べかす,ゴミ,脱皮殻などが付けられ,下の幕の縁からは10〜20cmの受信糸が伸びている.長い受信糸は30cmにも及ぶ.昆虫がこれに触れると,クモは住居からとびだしてきて,腹部を持ち上げて第4脚で大量の糸を引出し,包みこんで捕らえる〔森林87〕.
3月に住居の中に1〜4個の卵のうを作る.夜間徘徊しているものもみられた〔山川・熊田73〕.
腹部斑紋のくびれの程度の親子関係を調べた結果,遺伝的関連が示唆されたが,遺伝様式は単純ではない〔清水AT62〕.
造網法について,最初に作るものは体を覆いかくすための上幕と,体を支えるためのほんのわずかな拡がりを持つ下幕である.そして順次触糸を引き,下幕を拡くし,上幕を広く厚く整形していく.不都合が生じないかぎり,最初の住居網を捨てず,成長するにつれ,糸を張り添える.上幕へごみをつづりつける〔中平AT37〕.
熊本にて産卵は6〜7月,卵は淡黄色で30〜40個〔木庭AT15〕.
腹背の環状の斑紋は,切れているものが案外多い(46・24%).韓国産の個体は,日本産のものよりも切れているものが多い.タイリクヒラタグモでは,はっきりと切れている〔白AT3〕.
巣の構造は床,天蓋,触糸に分けられる.床はやや凹所に位置し下へは密着していない.1枚の布.触糸(成熟メスで5〜20本)は床の各頂点辺りから出発し,30〜40cm伸びる.触糸は軸糸と支柱(7mm毎に左右に配置)から成る.クモは糸を引っ張る様にして待機している.軸糸はやや空間にある.触糸に虫が触れるとクモは触糸にそって走り出て,かみつかずに捕帯でからめる.その後,かみつき,地面から引きはがして決まった所で食事をする.脱糞も決まった所でする.6月下旬より秋にわたって数回産卵,次々とふ化し,一回脱皮して幼体となり,そのまま越年して翌年春四散する〔小松AC4(3)〕.
スズメに捕食されたようだ〔笹原K59〕都市環境指標種〔新海98〕.
○ホウシグモ科 Zodariidae
ドウシグモ Doosia japonica (BOES. et
STR.,1906)
成体は5〜8月,3〜4mm,本州・四国・九州・南西諸島.カシ,サクラ,クスなどの樹皮上を徘徊する.その他,神社や寺院の石燈篭からも採集される〔東海84〕.
「晩秋から早春にかけて,小さい袋の中にかくれて越冬する(岸田40)」〔新海69〕.
昭和13年の冬,深沢治男が芝公園の樹皮下で成体の雌雄を採集〔植村AT5〕.
西南の役の頃,佐賀にてデーニッツにより発見.老木の樹皮下,晩秋から早春にかけて糸製の袋中で越冬〔岸田AC5(2)〕.
5月12日,八王子城跡の松の大木の樹皮下より〔小野K39〕.
ホウシグモ Storena hoosi
KISHIDA,1935
成体は7〜9月,8〜10mm,四国・九州・南西諸島.昼間は落葉の中,倒木や石の下にひそみ,夜間徘徊して獲物を探す.局地的に多産する傾向がある〔東海84〕.
卵のうや網,補食については不明〔石野田AT49/50〕.
1989年8月21日,鹿児島県蘭牟田池で♀成体,♂亜成体を採集.その後,10月12日と10月25日に脱皮.腹部から先に抜ける〔稲葉K60〕.
○ミズグモ科 Argyronetidae
ミズグモ Argyroneta aquatica japonica
(CLERCK,1758)
成体は1年中,9〜15mm,北海道・本州(青森県・京都府)・九州(大分・鹿児島県).水中の水草間に糸で空気室を作り,そこに空気の泡を腹部と脚によって運びこんで生活する.水生昆虫,イトミミズ,線虫をとらえ,空気室に持ち帰って食べる習性がある〔東海84〕.
ヨーロッパ北部から日本まで広く生息.春から秋にかけて色々な大きさの個体がみられるが,産卵期は6〜7月に集中している〔森林87〕.
亜寒帯から温帯の湿原の池で7月平均気温26〜16℃,周りにヨシ,ミズゴケ,スゲが生え,水生昆虫やミズムシが豊富で大型の魚類のみられない池にいる〔桂・西川AT79〕.
クモの基本姿勢は1cm前後の気室に腹部をいれ,頭胸部と2対の歩脚を水中に出し,背面を下に静止する.夜中に活発になる.気泡が体につかなくなると溺死する.2匹を管ビンに入れると共食いする.水がないと葉の間に簡単に糸を引きまわし網を作った〔西川・八木沼AT70〕.
飼育下で8月4日に作られた卵のうからは8月27日多数の子グモが出のう.9月13日の卵のうからは24日に出のうした.子グモは次第に逃げ出して消失.親グモは10月19日溺死〔八木沼AT78〕.
厚岸臨海実験所付近の湿地内の小池(面積は1坪たらず.深さ1m半)にて1933年頃,北大学生・石塚星郎が発見,1941年に斉藤三郎が同池を訪れ採集した〔常木AC12(3/4)〕.
ウメバチモ葉間に円天井様の薄い網を作り,水面近く浮かび腹部を水面上に出し,第4脚及び腹部の長毛に気泡を十分に含ませて,更に第3脚を気泡にそえ,他の脚で水をかき,先に作った網に到達して気泡を放散す.この動作を繰り返す.住居中では下向きになり腹部を貯蔵空気中に入れ,頭胸部と前2対の歩脚は水中に突出しているか,又は脚をまげて住居内の空気中に完全に入りこんでいる.日中は巣の傍に他の動物が近寄らない限り静止し,夜間に水草を伝って活動す.先人によれば一定の生殖期間なく,オスは小型の住居を作り,次いでメスとの間に連絡を作り交尾を行う.卵はメスの住居天井内面に白線で結着され,やく3週間でふ化し,子グモは更に約2週間,母グモの住居内で生活する.数年生存し,夏は水面近くに営巣し,越冬に際しては深所に線を張り営巣し,更に口を閉塞するといわれる〔斉藤三AC6(4)〕.
営巣過程を観察〔萱嶋AT93:AC45(2)〕. 交尾行動を観察〔畑守AC47(2)〕. ソ連の湖水のフトミズヒラマキガイから成体・幼体発見〔小野K59〕.
京都市深泥池では酸性・溶存酸素量の少ない水域から採集.雌は1ケ月間隔で産卵〔桝元AC45(2)〕.
pHが4.5,DOが0.32-1.09mg/lの水質に生息,DOは魚が住めない域,この低値はミズゴケによる環境形成作用で維持されている〔桝元らAC47(2)〕
飼育下で日周活動を調査した.幼体とメス成体は夜行性で,活動時間は総時間数の5%以下,6月の成体オスは日中も活動.生活史では3-4月に採集した雌は,翌春まで3-4個の卵のうを産卵,雄は8月までに死亡した.幼体はふ化後3日で出のうし,バルーニングはせずに泳いで分散した〔桝元らAC47(2)〕.亜種とする〔Ono02a〕.
○ナミハグモ科 Cybeidae
従来ミズグモ科に含まれているが,形態・生態面からミズグモ科からは遠く,コモリグモ科上科の基本となるべき位置にいる.網の種類と補食法から造網性クモ類を三大別した.ナミハグモ系統とは,A系統ナミハグモ→コタナグモ→クサグモ・ヤチグモ・イソタナグモ・ミズグモ,B系統ナミハグモ→コモリグモ・ササグモ・キシダグモ・ホウシグモのふたつ.コタナグモからハタケグモに分かれる系もある〔新海AT66〕.
ザラナミハグモ Cybaeus communis YAGINUMA,1972
中川で採集〔山川・熊田79〕
ヒバナミハグモ Cybaeus hibaensis
IHARA,1994
オス3.5-5.0mm(9-12月),メス4.1-5.3mm(9-4月),広島県比婆郡,島根県東部,岡山県西部に分布〔井原AC43(1)〕.
アキコガタナミハグモ Cybaeus hiroshimaensis
IHARA,1993
オス2.6-3.5mm(10-3月),メス2.7-4.2mm(10-3月),山口・広島・島根県西部に分布〔井原AC42(2)〕.
イワミコガタナミハグモ Cybaeus gonokawa
IHARA,1993
オス2.9-3.5mm(10月),メス3.0-4.0mm(10-4月),広島・島根県中央部に分布〔井原AC42(2)〕.
イツキメナシナミハグモ Cybaeus itsukiensis
IRIE,1998
オス3.6mm(5月),メス4.3mm(8-11月),熊本県五木村折瀬洞産,眼を欠く〔入江AC47(2)〕.
タカネナミハグモ Cybaeus kirigaminensis
KOMATSU,1963
長野県霧ケ峰で1961年10月16日に小松がメス(6・0mm),オス(5・0mm)採集.晩秋から春に成体.霧ケ峰のpleteauの湿地の石の表面上に生息.砂粒を付着させて2対のtouch-threadをもったV字型の住居を作る.管の底は地面に付き,穴があいている.捕らえようとすると,この穴からcreviceににげた〔小松AC18(1)〕.
キウチナミハグモ Cybaeus kiuchii
KOMATSU,1965
成体は1年中,4〜5mm,本州・四国.鐘乳洞内に多いが,落葉下,倒木下にも生息する.管状住居を作り,その上に土をつけて擬装する.朽木の隙間に卵のうを産んで保護する〔東海84〕.
1961年11月23日徳島県のオス(4・5mm)にて記載〔小松AC19(2)〕.
ナミハグモ Cybaeus mellotteei (SIMON,1886)
個体数は少ない〔新海69〕.
ヒメナミハグモ Cybaeus miyoshii
YAGINUMA,1941
昭和15年11月23日,愛媛県宇和島滑床の松林にて三好保徳採集,3・7mm〔八木沼AC6(4)〕.
カチドキナミハグモ Cybaeus nipponicus
(UYEMURA,1938)
成体は1年中,9〜12mm,本州・四国・九州.崖地,岩場のくぼみに管状住居を作り,その上に土をつけて擬装する.両方の入口から1〜3本の受信糸を引く〔東海84〕.
伊豆七島の地上徘徊性種として冬期にデーニッツサラグモと共によく採集された〔国見AT87〕.
V字幕からは左右へ2本ずつ受信糸がでている.卵のうはV字幕の内,住居孔の近くに取り付けてある〔中平AT14〕. 冬期,雌雄成体を採集〔植村AT5〕.
熊本にて,産卵は6月頃,冬期も成体.糸は巣の内側の中ほどが,ほとんど張られてなく,わずかな土の窪みになっている.そこがクモの居所だが,食餌をまっている時は左右いずれかの入口近くにきている〔木庭AT19〕.
カチドキナミハグモとCybaeus mellotteeiは区別できる〔八木沼AC6(4)〕. Bansaia 属として記載,
1937年11月深沢治男が芝公園にて採集した雌雄成体にて.ナミハグモはC.melloteeiは同種〔植村AC3(4)〕.
ノジマコガタナミハグモ Cybaeus nojimai
IHARA,1993
オス2.6-3.2mm(10月-11月),メス2.9-3.7mm(10-6月),鳥取県東部・兵庫県北西部・岡山県北東部に分布〔井原AC42(2)〕.
ニッパラナミハグモ Cybaeus obedientiarius KOMATSU,1963
鐘乳洞内にて採集〔新海69〕.
1951年8月8日,東京都日原洞にて小松採集メス(4・9mm)にて記載〔小松AC18(1)〕.
キビコガタナミハグモ Cybaeus okayamaensis
IHARA,1993
オス3.2mm(10月),メス2.8-3.4mm(10月),岡山県南東部に分布〔井原AC42(2)〕.
ヒジリナミハグモ Cybaeus sanctus
(KOMATSU,1942)
庭石の下より採集.住居は管状住居に土,砂等を付着させたせの〔新海69〕.
水のしたたる程の湿気の多い所に生息.土砂をもってかがられる2〜3cmのV字管形住居,各孔口より2条,長さ10〜15cmの触糸を出し,支え糸で岩面上に固着する.卵のうは約5mm径の白色碁石状,岩面に密着する〔小松AC7(2)〕.
シンカイナミハグモ Cybaeus shinkaii
(KOMATSU,1970)
湿った崖地・岩場に住居を作り,入口から触糸を引く〔新海77〕.
シンゲンナミハグモ Cybaeus shingenni KOMATSU,1968
約3mmの縦穴の中を徘徊していたものを採集〔新海69〕.
落葉の下に生息する〔新海70〕.
イナバナミハグモ Cybaeus tottoriensis
IHARA,1994
オス4.4-5.4mm(10-1月),メス4.6-5.8mm(10-11月),鳥取県,岡山県北部に分布〔井原AC43(1)〕.
イズモコガタナミハグモ Cybaeus tsurusakii
IHARA,1993
オス3.1-3.5mm(9月-10月),メス1.3-1.8mm(年中),広島県北東部・島根県東部・岡山県北西部に分布〔井原AC42(2)〕.
ヨシアキナミハグモ Cybaeus yoshiakii
YAGINUMA,1968
1968年10月27日大阪府にて採集,前中眼を欠く.落葉下に生息,ツルグレン装置で抽出〔八木沼AC21(2)〕
ニチコナミハグモ Dolichocybaeus nichikoensis
KOMATSU,1968
1967年9月27日,熊本ニチコcaveにて小松メス(4・54mm)にて記載〔小松AC21(2)〕.
ヅナガグモ Dolichocybaeus ishikawai,KISHIDA
=Cybaeus ishikawai
(KOMATSU,1961)イシカワナミハグモ
高知県龍川洞にて採集.〔小松AC5(3)〕.
○タナグモ科 Agelenidae
イナヅマクサグモ Agelena labyrinthica
(CLERCK,1758)
成体は7〜9月,メス12〜15mm,オス10〜12mm,北海道・本州(高地)・九州(高地).草間の地表近くに棚網を張る.幼体期は全体黒色をしている〔東海84〕.
宮崎県にて雑草地,地面付近に造網し,7月に個体数が激減する〔石野田AT89〕.
宮崎県にて9月中旬以降オスがみられなくなる.1500m以上の高千穂の峰でも霜や雪を全くみない海水より約5m程はなれた高鍋の海岸でも,成熟時期は7月下旬から8月上旬にかけてである.7月下旬〜10月中旬に成体,9月下旬〜10月に卵.7〜8月交接期.交接は午前中に多くみかけた.オスの使用する精球は片方である.交接期の性比は1・0.卵のうはオワン状円形である.1個体1個,稀に2〜3個.卵色は産卵後数日すると薄い青緑色.3種とも亜成体終期になるとメスは全く定住性となり,造網は夕刻,古網の上に新しい糸を追加し,また網の面積を拡大してゆく.これに比し,オスはメスを訪ねる為の移動性を示し,次第に不完全で小さい網しか作らないようになる〔石野田AC16(2)〕.
長野県浅間・美鈴湖,8月26日,卵のうはクサグモより大きく横に長い.外壁まで丈夫な袋状にしあげる〔大利K37〕.
クサグモ Agelena limbata
THORELL,1879
成体は7〜10月,15〜17mm,北海道・本州・四国・九州.庭木,生垣に管状住居のある棚網を張る.近年生息環境の悪化によって数は激減している.葉の間に多面体の卵のうを作る〔東海84〕.
成体は7〜9月,網は生垣や樹木の枝ぶりの良い所に作り,コクサグモのように庭木の上や樹木の先端に張ることはほとんどない〔森林87〕.
秋に卵のうの中で2令になる.16Lの長日条件下ではよく出のうしたが,12Lの短日条件下では出のう率が低い〔栗原AT70〕,
越冬初期から冬至までは短日条件で出のうが抑制されるが,その効果は次第に消失する.日長を感受してタイムスケジュールは越冬初期のある期間に決定される.冬至後はスケジュールどおり日長による影響がなくなり,低温によって出のうが抑えられ,出のうの準備がされる〔加藤AT81〕.
冬期初期の臨界日長は13時間である.それより長日では出のうする.2令から成体までの発育は高温区(25℃)で早く,低温区(15℃)では産卵しなかった.また短日区(10L)の方が長日区(16L)よりも早く産卵した〔栗原AT79〕.
秋田個体群,神奈川個体群,宮崎個体群について日長条件を変えて(4区)飼育し成体までの発育日数を調べた.秋田群では24℃長日・短日では差異がなく,20℃長日では令を短縮して日数を早めたが,短日ではかなり遅延し,成体達成率も低下.神奈川群では24℃短日条件の場合も遅延した.宮崎群では差がなかった.全区にわたり短日区でばらついた.長日条件が生育にプラスになるという光周性が北方で発達していることを示唆する.秋田では気温が低くても長日条件によって早く生育する性質を得た〔加藤AT89〕.
名古屋市における生活史を調査.幼体は3月下旬から4月上旬に出のう.6回脱皮して成熟した.雌雄は同時期に成体になり産卵は8月中下旬.網は常緑樹に作られた.産卵数は産卵直前の体重と相関があった.餌条件のためだろうが、雑木林の方が開けたところより大きい〔田中幸AC41(1)〕.
柏市のマションの生け垣で12月19日にすでに5齢(出のうを1齢)〔宮下直K67〕.
東京都では3月下旬から4月上旬に出のう,分散後2〜3週間毎に脱皮し,7月下旬には成体となる.交接は8月中旬,10月上旬までメスの卵のう保護がみられる.2令での消失率(0.731)が3令(0.350),4令(0.455)に比べて高い.脱皮は7回.令期間は低温により延長するが,10〜22日間である.網面積は成長と共に大きくなるが,網面積からの令推定はできない.ただ脱皮前に小さくなり,脱皮後に大きくなる傾向がある.これは摂食量と関係している〔松井AT79〕.
口径4〜8cmのビンで飼育すると網は層状となる.ただし個体差もある.25℃内外で造網能力は最大,雌雄で差はない〔阪南高AT51/52〕.
約9割のクモは毎晩,糸を出しながら歩きまわっているが,その糸で穴をふさぐのではない.約7割のクモが穴を修繕する.土台の棚網だけでなく,迷網にも穴があるとふさぐ率は高くなる〔津田AT35〕.
幼体は食事法を観察するのによい.三重にて5月2日に造網していた幼生を採集,5月15日に第1回脱皮,背甲・腹部にクサグモ特有の模様が入る.5月30日第2回,6月17日第3回(オスの特徴を示す),7月3日第4回脱皮で成熟〔橋本AT31〕.
網糸に粘性がないが,平網の上部にある不規則網に迷いこんだ昆虫は容易に逃げることはできない.秋ふ化した子グモは卵のう内で越冬,2月下旬分散,低木・路傍の草上に造網を開始する.8月頃成熟,オスはメスの網を訪れ,トンネルの入口で交接する.木の葉を2〜3枚箱型に綴り,その内面に幕を張って産室とし,その中に多面体の卵のうを吊し,母グモが保護する.卵のう幕は厚く,10本内外の剣状突起がでて,産室幕に固定されている.卵のうの表面には枯葉等の小片が綴りこまれている〔中平AT23/24〕.
外のうは多角立体で厚く強靭,内のうは柔軟で球形,産卵は9〜10月〔中平AT20〕.
宮崎で8月10日〜30日の調査で柑橘樹に平均11頭の網がある〔石野田AT15〕.
♀の外雌器を♂が分泌物でふさぐ交尾栓を作る.約60-70%は完全だった〔桝元AC41(2):AC43(2)〕.
熊本で7月上旬〜8月上旬に交尾〔木庭AT15〕.
宮崎にて8月中旬〜9月中旬に交接,8月中旬〜10月成体,9月〜10月中旬卵.交接期の性比0・59.10月上旬以降オスがみられない.卵色は産卵後数日すると薄い青緑色となる〔石野田AC16(2)〕.
日食(80%)の時,巣を修繕する動作をした.萱嶋による〔高島AC12(3/4)〕.
与えたヤマシロオニグモの周囲を周り脚をかみきり,糸で巻いた〔加藤AC2(2)〕. トビナナフシやマツカレハをよく捕食〔萱嶋K20/21〕.
埼玉県松伏で,9月下旬〜10月下旬にふ化.脱皮して越冬する.翌年2月下旬〜3月に子グモは自ら卵のうに4〜6個の穴をあけ,頭胸部を先にして出のうし,まどいを行う.共食いはない.出のう後6日目,晴天・無風の朝6時〜8時に空中飛行,第2令・3令は頭胸部は濃赤褐色・腹部は黒褐色,第4令頭胸部背甲羅に黒褐色の対斑,腹部にやはず状の白斑,第8令頭胸部の地色は赤褐色,第9令(成体,最終脱皮は7月8日),8月中旬〜下旬に交接(オスは右第1脚は上下に振るわせ,メスを招く動作,メスが反応するとオスはメスの住居に入り込む.トンネル内で交接.メスは交接後,オスを食べた).8月中旬〜9月上旬に住居をすて,アオキやマサキの葉に産卵,晴天の夜間.卵色は白色〜青色,1卵のうに80〜100卵〔鈴木K40〕.
埼玉県で幼体を採集,東京で飼育.7月24日最終脱皮,オスの触肢は亜成体の1令前で判別可能〔小野K39〕.
卵のう内の卵をアオズムカデが捕食しているようだ〔栗原K46〕. 脱皮中の♂成体がヒメアリに襲われ,ひん死〔池田K63〕.
体長5mmのクサグモの網のアブラムシをシリアゲアリの一種が横取り(6月8日,東京都田無市)〔宮下直K69〕.
11月10日,奥多摩の卵のう周囲の枯葉内にコバネナガカメムシ42個体.クサグモの卵のうには影響なし〔鈴木勝K47〕.
どの齢でも網場所の移動率が低い(日当り移動率は0.0-0.7%),半数の個体がまったく餌が採れなくても網場所に留まる〔田中幸AT97〕.
染色体数は♀2n=40♂2n=42〔鶴崎・井原・有田AC42(1)〕.
コクサグモ Agelena opulenta
L.KOCH,1878
成体は8〜10月,10〜12mm,全土.生垣,草間,樹枝葉上に棚網を張る.網の奥には管状住居があり,通常はその入口にいて獲物を待つ.獲物がかかると糸をかけ住居内に持ち帰って食べる.石の表面に卵のうを産みつけて保護する〔東海84〕.
成体は8〜11月で,産卵期は9〜11月で,木の葉,樹皮,石垣などの表面に薄い円盤状の白色卵のうを作り,親はその上にのって保護する.卵はそのまま越冬して翌年4月下旬にふ化する.1卵のう中の卵数は90〜130個.刈り込まれた庭木の上,生垣,樹木の枝,草の上などに10〜20cmの管状住居つきの棚網を張る.クモは住居の入口にいて,昆虫がかかるととびだしていき,かみついて捕らえる.獲物が大きすぎた時は,その周囲をぐるぐる回って糸をかけてからかみつく.捕らえた獲物は必ず住居に持ち帰って食べる〔森林87〕.
体長と網面積に相関はない〔浅間ほかAT92〕.
音さの振動に反応しなかった〔中平83〕.アメリカシロヒトリの天敵としてクサグモより桑園に定着性があり,捕食率も高く,有効である〔萱嶋AT53〕.
1967年から1970年に桑園の実験区(全クモを除去後,6月1日にコクサグモ200頭放す.自然条件より多い)と対照区(全クモを除去)を比較した.1ケ月後の定着率は各年それぞれ32・5%,52%,42%,53・5%で,それ以降はさほど変化しない.対照区の自然移入したクモの数は6〜21頭,平均13頭である.アメリカシロヒトリの巣網数は対照区では実験区の2〜3倍以上の数があった.効果は1年目より翌年の方が大きく表われた.また年内では7月よりも8月・9月の方が差が大きかった〔萱嶋AC24(2)〕.
オスがトンネル状住居入口に近付くとメスは少し前脚の一部を現す.オスは前脚の先端をメスの脚上に重ね,脚をたたく.メスも前脚を振る.子供が手をたたきあっているようだ.メスが急に動かなくなると,オスはメスの前脚をくわえて引出し,網の中央で転がし,メスを仰向けにして交接する.イナズマクサグモも同様とのこと〔植村AT40〕.
成熟はクサグモよりも1ケ月程遅れ,中には11月に産卵し,卵のうを保護しながら越年するものもある.樹葉を2〜3枚綴り合せたり,網の住居部をそのまま産室とし,卵のうは,葉上に,或いは住居幕につける.卵のうは円盤状で白色.表面には枯葉などの小片を綴りこんである.1産室中の卵のうは1〜2個.1卵のう中に25〜120個.卵体で越冬.2月下旬ふ化,3月中旬第1回脱皮,4月に分散〔中平AT23/24〕.
産卵は10月下旬〜11月下旬.筒状の卵室内におかれる〔中平AT20〕.
卵室幕にはこまかく砕いた塵芥,住居幕には粗大な塵芥を綴りこむ.木の葉,草の実,食物のかす,羽毛,木片など色々である〔中平AT14〕.
卵のうの観察.129卵.ふ化は3月〔中平83〕.卵のう内,卵外壁に寄生する微小な蜂Hemiteles
sp.がある.幼虫は脚がなく,成虫は4月に羽化する〔石野田AT10〕.
クサグモより数が多く,半月から一ケ月成長が遅れる.8月下旬から9月上旬に成熟する.農薬散布時にはシェルターに逃げ込むので個体数は減らない〔萱嶋AC21(1)〕.
宮崎県国富・佐土原・高鍋にて9月下旬〜10月交接,9月下旬〜1月中旬成体,11月下旬〜2月中旬卵.交接時の性比0・26.11月下旬以降まったくオスがみられない.1個体卵のう1個(卵数平均95個,5〜190),2個(平均83個,17〜188),3個(平均64個,4〜154).卵色は産卵後数日すると美しい燈色になる〔石野田AC16(2)〕.
宮崎県新富町,10月4日雄が精網を作成〔石野田K57〕. 昭和12年6月13日東京都にて幼体がツルギアブ科一種を捕食〔湯浅AC4(3)〕.
室内飼育下では捕食率が悪くなり,発育が遅れる傾向がある〔萱嶋K20/21〕.
生存曲線はU型(生存率一定),天敵はクモ類(センショウグモ,オオセンショウグモ,ムナボシヒメグモ,ムナアカフクログモ,チリイソウロウグモ,クサグモ)と寄生蜂.同ステージでもサイズによって生存率が違うことがあった〔田中幸AT93〕.
卵のう保護の効果を調査するため,メス除去区では30日間の生存率が保護区の100%から65%に低下した〔田中幸AT95〕.
コタナグモ Cicurina japonica
(SIMON,1886)
成体は1年中,3〜4mm,本州・四国・九州.倒木や落葉の下,下水道,洞穴などの湿った場所に生息し,管状住居のある小さな棚網を張る〔東海84〕.
産卵期は2〜3月で岩や土の表面にドーム状の白色の卵のうをつける.卵数は10個前後である.腹部は通常淡黄色で斑紋はないが,黒色の対斑を持つ個体もいる〔新海69〕.
墓地の地下約1.5mの棺桶の中の死体上を歩行していた〔茅根AT63〕. ドイツ南西部でも発見された〔八木沼AT97〕.
フイリコタナグモ Cicurina maculifera
YAGINUMA,1979
洞窟に生息する.7月20日に採集した5個体を15〜18℃で飼育した.餌は5〜6日ごとにショウジョウバエを与える.産卵回数は5〜13回(平均8.5回),卵のう中の卵数は8〜24(平均14.8個)である.産卵間隔は6〜36日(平均23日).産卵から出のうまでの期間は46〜90日(平均64.8日),出のう率は61.5%である.出のう後50日以内に急速に減少する.卵から成体になるまで雌雄とも400日以上かかる.寿命は103〜669日(平均380日)〔入江AT81〕.
出のう後5回の脱皮で雌雄とも成体,生息密度は1m2当り47個体と高い〔入江AT95〕.
ヒメアカクサグモ Cicurina parvula KISHIDA ?
高知県龍川洞で採集〔小松AC5(3)〕.
コタナグモの一種 Cicurina
sp.
鹿児島県志布志町,片野洞(凝灰岩洞)に生息.個体群密度は47頭/u.メス4.0mm〜6.8mm,オス4.0mm〜5.2mm.メス・幼体は年間を通して出現するがオスは8月から12月に出現,亜成体オスは6月から出現し,9月までに最後の脱皮を行い,成体となる.8〜12月の性比は100:25でメスが多い.6月18日に採集し,18℃恒温条件で飼育したメスは1〜2回の産卵,1卵のう中の卵数は20個〔入江AC27S〕.
ホラズミヤチグモ Coelotes antri
(KOMATSU,1961)
体長8〜9mm.湿った岩場,崖地に生息し,鐘乳洞の入口付近には特に多い.岩や土の隙間に管状住居を作り,入口から大きな棚網を張る(最広部20〜30cm).岩かどに作られたものは管状住居と棚網部が一緒になったような複雑な網を張る(C.insidiosusの網と全く同じである).産地は五日市町養沢・奥多摩町日原・倉沢・御岳山〔新海77〕.
湿った崖地にシート状の網を張る〔山川・熊田79〕. 1966年9月15日,亜成体雄palpの異常発育個体を垂水採集〔八木沼AC20(1)〕.
ヤマヤチグモ Coelotes corasides (BOES. et
STR.,1906)
成体は8〜11月,9〜13mm,北海道・本州・四国・九州.草間,樹葉上,崖地などにクサグモと同じ棚網を張る.似た別種が多い〔東海84〕.
北アルプス(蝶ケ岳・常念岳・燕岳)では近似種が垂直にすみわけている.ヤマヤチグモは海抜700〜1000m,ヒメヤマヤチグモ(仮称.小型である)は1000〜1400m,シナノヤマヤチグモ(仮称.中型である.オス触肢膝節が長大)は1400〜1800mに住む.ヤマヤチに比べて近似種は主として草間に住む.幼生期は草木の根元や広い葉の表面にシート状の網を張って捕食し,成体近くなると草間に棚網を張る.秋に成熟すると枯葉を巻いて住居を作り,雌雄同棲生活を始める〔千国AT70〕.カンスゲに年間をつうじて生息する.冬期,カンスゲの根元に落葉などを丸めて,その中で過す〔加藤AT83〕.
1月,樹皮下でメス成体を採集(イホグモCoelotes luctuosus)〔植村AT5〕.
網の形状にクサグモ型とヤチグモ型の2種類あり(新海1969),2種を1種としている可能性あり〔新海K29/32〕.
ウスイロヤチグモ Coelotes decolor NISHIKAWA,1973
本州(東京・群馬・近畿・中国)で採集〔新海77〕.
ヤチグモ(クロヤチグモ) Coelotes exitialis
L.KOCH,1878
成体は1年中,9〜15mm,本州・四国・九州.崖地,岩場の割れ目に管状住居を作り入口に小さな棚網を張る〔東海84〕.
神奈川県大山にてヤチグモを採集〔植村AC1(1)〕.
雌成体は初春と夏,雄成体は夏のみ.卵のうは4・7月に,ふ化卵のうは6月に観察された.雌雄を問わず,キカマキリモドキ1齢幼虫がしがみつく.卵のう寄生である.ヒメカマキリモドキ幼虫はより小形のクモにつりつく.2種のカマキリモドキで18科のクモに寄生した〔平田AC48(2)と私信〕.
フタバヤチグモ Coelotes hamamurai YAGINUMA,1967
本州(中部・関東・東北)に分布〔新海77〕.
中川・札掛で採集〔山川・熊田79〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
シモフリヤチグモ Coelotes insidiosus
L.KOCH,1878
成体は1年中,8〜12mm,北海道・本州・四国・九州.メガネヤチグモと同じ習性.似た別種が多い〔東海84〕.
床下や庭先に放置した石の下,積んだ薪の地面に接する所などにトンネル状の住居を有する棚網を張る.幼生ないし亜成体で越冬,亜成体は5月中旬頃,住居部に1〜2個の卵のうを置く〔中平AT23/24〕.
1月樹皮下でメス成体を採集〔植村AT5〕. 12月に熊本でオス成体を採集〔木庭AT19〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
ヒメシモフリヤチグモ Coelotes interunus
NISHIKWA,1977
オス6.2mm,メス7.2mm,北海道・本州に分布.箕面(大阪)で記載〔西川AC27S〕.
アズマヤチグモ Coelotes kitazawai
YAGINUMA,1972
成体は1年中,8〜9mm,本州.草間の地表近くに管状住居を作り,入口に棚網を張る〔東海84〕.
メガネヤチグモ Coelotes luctuosus
(L.KOCH,1878)
成体は1年中,11〜15mm,北海道・本州・四国・九州.家の周囲,石垣,崖地などに管状住居を作り,入口周辺に小さな棚網を張り出す(漏斗網とよばれる)〔東海84〕.
冬でも成体または亜成体を採集できる(カキネグモT.corasides)〔植村AT5〕.
長野県にて初夏ふ化した子グモは母グモの巣内あるいは独立生活により7mm程に発育し,越冬して翌年は独立,秋または翌年早春に成熟して交接する.オスはメスを探して徘徊する.からみあいが数回繰り返された後,メスは脚をちぢめてうずくまる.オスはメスの径節をくわえて暗所に運ぶ.オスはメスをくわえたままハンモック状の簡単な網を張り,交接する.腹面を向かい合わせ頭部を互い違いに交叉する.ふ化した当年や翌年春は漏斗網だが,3年目の成体メス網は網の上方部の発達が悪く,下方に垂れて舌店網となる.歩行中の節足動物が触れると飛び出て力まかせにくわえこむ.母グモは5月下旬より産卵,卵のうは径1cm程の碁石形で表裏2枚の白布に包まれ,淡黄色18〜50卵を含む.管壁を破りその奥に夜間より朝にかけて産卵,穴は閉じられる.初秋まで数回(7,8回)産卵するが,3回以降の卵は若グモに卵のうの上から液汁を吸飲されて自然界ではふ化しない.ふ化まで約1ケ月.脱皮しても母グモの巣内に留まる個体がある.母グモは自分の子を攻撃しない.母グモのかみくだいた餌に群がって食べる時もある.子グモ同士は敵対しないが相互に協力もしない〔小松AC7(1)〕.
2月下旬および4月上旬に採集した雌が産卵,捕獲した餌を子グモに与える.徐々に分散してゆくが,1ケ月以上の同居で最高4回脱皮した〔谷川・堀由起子AT90〕.
11月下旬に行った実験で,オスの求愛行動は以下の通り,探索,接近,@ドラミング,A脈動,B体叩き,C抱き上げ,D網上徘徊,Eマウンティング,F抱きおこし,G身づくろい,H挿入,I移精,分離.求愛から分離までは2時間,または22時間40分であった.なお,最終脱皮後すぐには♀は交尾しない.交尾はO-DV型,オスはメスの住居内で交尾後メスをガードした.メスは複数のオスと交尾可能だったが,交尾後一定期間(10-11日間)が経過すると,オスの求愛を拒否する.オス同士が組み打ちになる闘争が見られ,より大きいオスが勝った〔中山美和・池田・稲葉AT98/99〕都市環境指標種〔新海98〕.
ヒメヤマヤチグモ Coelotes michikoae
NISHIKAWA,1977
7〜11mm,箕面(大阪)で記載.本州・四国に分布〔西川AC27S〕.
ミカドヤチグモ Coelotes micado STRAND,1907
Coelotes mollendorffi
(KARSCH)として,地上の石下等に漏斗状の巣を作る.黄褐色で体長15mm以上,1月積雪の下からメス成体を採集〔植村AT5〕.
ヤエヤマヤチグモ Coelotes yaeyamensis
SHIMOJANA,1982
成体は10月,メス8.6mm,オス6.1mm,八重山諸島・沖縄.森林内の落葉層や朽木,石の下で採集される〔下謝名AC30(2)〕.
カミガタヤチグモ Coelotes yaginumai
NISHIKAWA,1972
3月28日に大阪府茨木市で採集したメス亜成体腹部から幼虫が出て,ハセガワセダカコガシラアアブ Oligoneura
hasegawai SCHULINGER であった〔西川AT91〕.
ヨドヤチグモ Coelotes yodoensis
NISHIKAWA,1977
5〜8mm,京都・大阪に分布.箕面(大阪)で記載〔西川AC27S〕.
イソタナグモ Litisedes shirahamensis OI,1960
=Paratheuma shirahamensis
(OI,1960)
成体は2〜8月,6〜8mm,本州(千葉県以南)・四国・九州・南西諸島.海岸の岩場に生息する.岩の隙間,くぼみに管状住居を作り,入口から棚網を張り出す〔東海84〕.
1956年6月10日,和歌山県白浜にて雌,1959年6月3日,同雄.満潮線付近のれきの間に群棲する〔大井AC17(1)〕.
ウシオグモ科の一種であり,Paratheuma属である〔八木沼AT97〕.
モグラグモ Moguraclcurim honesta
KOMATSU?
宮崎,金胴ケ池畔の地表下10〜15cmの堆積土中で2頭とれた.れきの下40cmの所に造網していた例がしられている〔松山他AT43〕.
ホラズミツリタナグモ Speleocicurina cavicola
1941年メス12mm,習性不明〔小松AC7(2)〕.
イエタナグモ Tegenaria domestica
(CLERCK,1758)
成体は9〜12月,メス10〜12mm,オス8〜10mm,北海道・本州・四国・九州.個体数は少ない.漏斗網を張る〔東海84〕.
福岡県の畜舎の優占種のひとつ,病原微生物は付着していなかった〔中島ほかAT90〕.
1940年6月,北満洲黒河山地帯で採集オス8・5mm〔仲辻AC7(1)〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
○ハタケグモ科 Hahnidae
ハタケグモ Hahnia corticicola BOES. et
STR.,1906
成体は1年中,2〜3mm,北海道・本州・四国・九州.畑のくぼみ,芝生,草原の地表面に棚網に近い形の網を張る〔東海84〕.
5月に交接がみられた〔山川・熊田73〕.
雌雄共に亜成体で越冬.3月頃より,畑地・路傍の地表にあるくぼみを利用して,小さな棚状の網を張り,その下に住む.網糸には粘液球が数珠状についている.クサグモ幼生も芝草のはえた地表に造網する(トンネル状住居のある)が,本種は裸地である.弱く破れ易く,露を宿しやすい〔中平AT23/24〕.
雌の捕食はショウジョウバエにかみつく方法.7月5日から41日間に9個の卵のうを作成(No.8とNo.9はふ化せず).白色和紙状で泥を付着させる.クラッチ数は9,9,5,5,5,5,4.卵直径は0.6mmの球形が多い.ふ化までは平均12日,第1脱皮までは4.5日.2月14日に成体になった個体の履歴は7/8に産卵・7/20ふ化・7/25第1脱皮・10/26第2脱皮・11/9第3脱皮・1/21第4脱皮・2/14最終脱皮〔佐藤幸K72〕.
地表に接して(2〜4mm),模式的には2〜3cmの直径の円状だが,立体的である.「地表にへばりついた不規則網」というべきだろう〔中平AT25〕.
地表30cmの枝先に成体が群れていた(1992年4月4日15:30,横浜市旭区矢指)〔木村正吾K65〕.
○コモリグモ科 Lycosidae
コモリグモ科の系統を論ずる形態的特徴として,@前列眼の配列状態,A後牙堤歯の数,B第1脚腿節内側面先端の刺の数,C第1脚けい節内側面の刺の配列状態,D第1脚しょ節背面基部の聴毛の有無,E第1脚付節背面基部の聴毛の有無を重要とした.生態的特徴としては網の形成状態・生息場所など.その結果,造網習性を残すPirata属は最も原始的な属であり,TrochosaとLycosa属,ArctosaとTricca属およびAlopecosaとXerolycosa属は近似した属とみなせる.Xerolycosa属はこの中で最も特殊化した形質を持ち,派生的存在である.他方,Pardosa属は日本産コモリグモ中最も進化した形質を示し,その活動的習性からも,最も進化した属と考えられる〔田中AT87〕.
ニセキクヅキコモリグモ Alopecosa cinnameopilosa
SCHENKEL,1963
メス12・7mm,オス7・7mm.4〜5月,宮城県伊豆沼,沼の周辺(湿地)に生息,谷川明男採集.外見がキクヅキコモリグモに似る.〔田中AT89〕.
宮城県伊豆沼・内沼では沼の岸辺,特に芦原の水際に多い.4月下旬に雄成体出現,1週間後に雌成体.成体出現・卵のう形成のピークは5-6月(越冬世代.ひと周り大きい)と8月.5月の緑色の卵のうは直径6mm,厚さ5mm.卵数は平均130個(90-150前後).卵のう形成後22日で出のうし,4日間母親の腹部でまどい.亜成体越冬.雄は腹部震動,TU脚で地面をたたきながら接近,雌の脚や体をたたきながら乗り上がり,交尾.左右1回ずつ数秒間.雌は1回交尾〔谷川K57〕.
北海道十勝海岸部の湿地のトラップ調査では,7月上旬に♂のピーク,8月以降は成体取れず〔松田・柴田95〕
チリコモリグモ Alopecosa pulverulenta
(CLERCK,1758)
成体は5〜7月,メス9〜13mm,オス7〜9mm,北海道・本州(高地).尾瀬,八ケ岳などの高原の草間を徘徊する大型のコモリグモ.ヨーロッパと共通種〔東海84〕.
北海道十勝海岸部の湿地のトラップ調査では,5月下旬に♂のピーク〔松田・柴田95〕
ハタチコモリグモ Alopecosa moriutii
TANAKA,1985
メス成体(9.9〜12.8mm)は3〜7月,オス成体(6.8〜8.9mm)は3〜5月.メスに赤褐色から黒褐色まで色彩変異あり.北海道・本州.野原,河の土手の草地で採集される.卵のう形成は6月,一卵のう内に40〜180個.生殖器はアシマダラコモリグモに近似〔田中AC33(2),AT88〕.
秋田市向浜の砂防林にて採集・タイプ標本〔福島K72〕.
アシマダラコモリグモ Alopecosa hokkaidensis
TANAKA,1985
メス成体(9.5〜15mm)は6〜9月,オス成体(8.6〜10.8mm)は6月.北海道.標高1000〜2000mの草間,石間で採集される.卵のう不明.ハタチコモリグモに似るが,背甲側面に明るい黄色のバンドを欠く〔田中AC33(2),AT88〕.
スジブトコモリグモ Alopecosa virgata
(KISHIDA,1909)
成体は5〜7月,メス9〜13mm,オス7.5〜9mm,本州.林内の地表を徘徊する.個体数はきわめて少ない〔東海84〕.
雄9-11mm,雌10-13mm.雌雄は似ていない.山地の林内や草原を徘徊する大形のコモリグモで局地的に多産する.北海道・本州(東北・中部の高地)〔千国89〕.
関東平野北西部のコモリではLs0(草地・日向・乾燥)選好性〔藤井AC47(1)〕. 関東平野北西部の生態.低密度ないし低活動性〔藤井AC46(1)〕.
タイリクコモリグモ Arctosa cinerea
(FABRICIUS,1777)
メス14-16mm,オス11-13mm,斉藤が千島列島から記録して後,滋賀県と長野県の河原で採集された.河原の砂地に穴を掘って住む〔田中穂AT91〕.
管状住居の口径は1-3cm,深さは5-6cm,斜めまたはU字状.管口に身をのり出して待ち伏せ,捕らえると管庭に運び込み,管口を閉じてから食べる.夜間徘徊もある〔千国AT91〕
カガリビコモリグモ Arctosa depectinata BOES. et
STR.,1906
メス6mm,オス5mm.本州・九州〔八木沼86〕.
畑の周囲に生息し,地面のへこみに管状住居を作り,その中にひそむ.住居の表面には土の微粒がつけてあるので,周囲と見分けがつきにくい.成体は6〜8月,各地に広く生息していると思われるが,採集記録は少ない.腹部上面に赤色斑紋〔森林87〕.
Lycosa depectinataとして,崖地を徘徊していたものを採集〔新海69〕. 埼玉で3〜7月に畑地だけで採集された〔藤井AT85〕.
関東平野北西部の生態.低密度ないし低活動性〔藤井AC46(1)〕.
関東平野北西部のコモリではもっともBs0(裸地・日向・乾燥)選好性〔藤井AC47(1)〕. 5〜6月に成体が見られる〔新海K40〕.
1回の交接で2回産卵する〔鈴木勝K42〕. 母グモは未受精卵を食べる〔鈴木勝K44〕.
エビチャコモリグモ Arctosa ebicha YAGINUMA,1960
成体は10〜6月,12〜14mm,本州・四国・九州〔東海84〕.
産地に多く,草間,石の下などを徘徊する.3〜5月にかけて卵のうを保持したメスは3〜4cmの穴に潜む.入口の周りには草やワラなどが糸でかがってある.〔新海69〕.
穴をほって潜む〔東海84〕. このクモは子守行動を示さない.子クモは母グモにとりつこうとしないようだ.母クモの腹部にもknobbed
hair(コモリグモのメスの成体にある.Rovnerは子守に関する意義を認めている)を欠く〔藤井AT79〕. 3〜7月,埼玉で林縁部に多い〔藤井AT85〕.
関東平野北西部の生態は死んだ植物体上・日向・止水の条件域に生活〔藤井AC46(1)〕.
見つけ取りではDd0(腐草地・日陰・乾燥)選好性〔藤井AC47(1)〕.
秩父では,4〜6月に産卵する.ふ化した子グモは数日間住居内に散っているが,親が住居を出る時はほとんとが背面に乗り,もうしばらく保護される〔新海・原AT65〕.
卵のうを保持すると地表のくぼみに定着する.産卵期(3月中旬から5月上旬)にはいかいしているものはオスか卵のうを持たないメスである.住居は入口を小数の糸でかがり合わせたものでクモは頭部を入口に向けている.子グモを腰背にのせて歩く〔有田AT43〕.
卵のうを落とすと,しおり糸を引きながら探す.卵のうと紙綿玉を区別できるが,表面を滑らかにすると見分けられない.感覚器は歩脚末端にあり,2本の上爪を取り去ると見分けない個体が増える.また触肢は付・径節が重要である〔有田AT26/27〕.
自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
フジイコモリグモ Arctosa fujiii
TANAKA,1985
成体は3月下旬〜8月,メス5.6〜8mm,オス5〜5.8mm,本州.森林内の湿った落葉層に生息.卵のうは3月上旬〜6月に見られ,平均卵数は50個.形態はダイセツコモリグモ,ヒコサンコモリグモに似る〔田中AC33(2)〕.
成体は3月下旬〜8月,卵のう形成は5〜6月.南限は三重県〔田中AT88〕.
埼玉にて,3月〜8月に川辺草間,川辺カシ林,コナラ林縁,ヒノキ成樹林床では優占種〔藤井AT85〕.
関東平野北西部の生態は昼夜活動性.死んだ植物体上・日陰・雨水のみの条件域に生活〔藤井AC46(1)〕.
見つけ取りではDd0(腐草地・日陰・乾燥)選好性〔藤井AC47(1)〕.
求愛なしにオスは近くを通るメスに飛びつく,夜間の交接はほとんどない〔藤井AT91〕自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
ヒコサンコモリグモ Arctosa hikosanensis
TANAKA,1985
成体は4〜8月,メス5.6〜6.3mm,オス5.1〜6.3mm,九州.森林内の湿った落葉層に生息.卵のう不明.フジイコモリグモに似る〔田中穂AC33(2),AT88〕.
ネッタイコモリグモ Arctosa laminata YU et SONG,1988 メス6.3mm,オス6.9mm,カガリビコモリグモに似る.南西諸島・中国南部に分布〔田中穂AT94〕
カワベコモリグモ Arctosa kawabe
TANAKA,1985
メス成体(7.9〜13.5mm)は4月中旬〜8月・9月上旬,オス成体(6.5〜9.5mm)は4月上旬〜6月と9〜10月.北海道・本州・四国・九州.河岸の石の下に生息.卵のう形成は5〜6月で平均卵数80個〔田中AC33(2),AT88〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
ミズタコモリグモ Arctosa kobayashii YAGINUMA,1960
水田を徘徊していたものを採集,石の下などに潜む〔新海69〕.
クロココモリグモ Arctosa subamylacea (BOS. et
STR.,1906)
関東平野北西部の生態.低密度ないし低活動性〔藤井AC46(1)〕.
Bs1,Bs2,Ls1,Ls2に生息.草地・日向・湿性環境〔藤井AC47(1)〕石川県の水田に普通〔富樫一次・高順一郎AC40(2)〕.
シッチコモリグモ Hyglolycosa umidicola
TANAKA,1978
札幌を基準産地として記載,青森・山形・新潟・栃木・長野県のほか,千葉・神奈川でも記録された〔谷川K65〕.
東京都秋川市横沢でも記録〔池田〕.
ハラクロコモリグモ Lycosa
coelestis (L.KOCH,1878)
成体は12〜7月,メス13〜15mm,オス11〜12mm,本州・四国・九州.草原,山道や地表を徘徊する.産卵期は5〜6月で卵のうを作ると地中に潜って保護する〔東海84〕.
雌成体を室内飼育したところ,5-6月と7-8月に産卵した.8-9月に一部の雌は3回目の産卵をした.平均卵数は202個(1回目)と77個(2回目).7月19日に出た幼体は雄6-8回,雌7-9回の脱皮で成熟〔宮下AC46(1)〕.
関東平野北西部の生態.低密度ないし低活動性〔藤井AC46(1)〕.
イソコモリグモ Lycosa ishikariana (SAITO,1934)
= Lycosa fujitai UYEMURA
1939
成体は6〜8月,メス15〜23mm,オス10〜17mm,北海道・本州(日本海沿岸,太平洋側は青森県のみ).
海浜性のクモ.砂浜に10〜20cmの穴をほって住居を作り,昼間は入口をふさぐ.夜間は住居からでて近くを通る昆虫や海浜性動物を補食する〔東海84〕.
1982年,井上尚武が茨城県鹿島町下津浜ほかで採集〔小野AT98/99〕.井上尚武によれば、1982年以降も茨城県内各地の海岸(1990年8月那珂湊市阿字ヶ浦海岸や高萩市花貫川河口など)で発見〔池田私信〕.新潟,瀬波砂丘に生息.侵食による砂丘の減少で減っている〔工藤AT68〕.
春の快晴の時にメス成体は穴の入口で逆立ちし,第3・第4脚で卵のうを支え,まわして陽光にあてている.9月中旬から1カ月間オオモンクロベッコウに狩られる〔馬場AT79〕.
鳥取砂丘での調査では,成体は6月中旬〜8月中旬まで観察されない.メスの繁殖巣は海浜植物群落中に多いが,それ以外の期間は植物からはなれた所に多い.分散直後(5月下旬〜6月上旬)には全域にみられる.巣作りは砂堀り,穴側面の裏打ちを繰り返して堀り下げ,5〜7cm程度掘ると裏打ちしなくなる.風雨を防ぐ為,フタをするが,その時は周囲の砂をかきよせ,糸を使って膜を作る.フタには0.5〜1mmの空気穴が2〜3個あいている.卵のうを持ったメス成体の巣は入口をドーム状のフタで覆う.放射糸がないので餌をとらないのだろう.主な餌はゴミムシ類である.糸に餌が触れると,クモはその方向へ飛び出し,餌をくわえてあお向けになる.静止後,糸をたどって巣に戻る.餌を捕えてもあお向けにならない場合もある〔吉田AT74〕.
藤田〔AC4〕は巣穴作成の準備行動として自己掃除行動を報告しているが,巣穴堀りにつながらないことが多く,単なる自己掃除である.脚のすべてを上顎と触肢で,眼域を触肢で掃除した〔上田AT67〕.
1954年,鳥取砂丘では砂丘から淀江まで広く分布している.線状分布型,塊状分布型に分けられるが,個体数が少ない場合は散状分布型とよぶ〔福本AT8〕.
1988年,人為破壊のため,鳥取砂丘では激減していた.西端は米子市弓ケ浜だった〔福本AT94〕.
石川県加賀市海岸では環境破壊のため激減,生息域が海浜植物帯と重複.調査の適時は巣孔数最高の5月下旬から6月〔徳本AC47(2)〕.
石川県海岸線の全個体の1950年−1998年の間で相対的生息個体数の減少率は0.228〔徳本AC48(2).減少率ではなく,生残率では?(池田注)〕.
昭和12年10月3日福井県坂井郡三里浜にて藤田衛採集の雌雄成体で記載.付属肢長はオスの方が長い〔植村AC6(4)〕.
成体は径15〜28mmで底まで一定の径の縦穴住居(長さ15〜30cm)を作る.オスや幼体の径や長さは短い.越冬中は蓋をしている.第1脚,大顎,触肢で砂を掘る.7cm位に30分かかる.上部内面に糸を張る.上る時は縦糸を,下る時は横糸を左右に張る.10分で周囲を張り終わる.蓋は砂を糸でつづりあわせて作る.蓋の中央には穴をつける.産卵期は3月下旬〜4月上旬で卵のうは青鼠色,球形偏平で大きさは13cm位ある.糸いぼに付けて保持.4月下旬〜5月上旬頃ふ化して子グモは母グモの腹部背面に乗る.オオモンクロベッコウに狩られる〔藤田AC6(4)〕.
9月5日青森県鷹架で高野伸二採集,太平洋岸から初めて〔高野K39,K40〕.
カニとちがい,穴の外側に円状に土を掘り出していく.7月1日夜産卵,偏球の卵のう,卵数は74個〔鈴木勝K47〕.
求愛・交尾行動を飼育して観察,@定位接近段階(オスはメスのしおり糸をたどり巣穴に接近),A求愛前期(♂はT脚で♀に接触,巣穴の外に誘い出す),B求愛後期(相互の接触,♀が♂を激しく叩くことがある),C交尾〔畑守AC43(2)〕
セスジコモリグモ Lycosa japonica
(SIMON)?
体長10mm内外.背甲と腹背に縦斑を持つ.地中に潜って(深さ2〜3cm)越冬する.メスは亜成体でオスは成体〔植村AT5〕.
マツシタコモリグモ Lycosa matsushitai
NAKATSUDI,1943
1♀に基づくが,基準標本が失われている.TANAKA(1990)は母島から記録・記載している.♂は未知〔小野AC43(1)〕.
父島にて採集(八木沼70).
スズキコモリグモ Lycosa suzukii
YAGINUMA,1973
岸田久吉が秋田県大館市で大正4年に採集し記載論文を準備したが未発表〔福島K72〕.
モズの早にえとなる.他にもジグモ,クサグモ,イオウイロハシリグモ,Lycosa ruber(アカドクグモ)あり〔加藤AC5(2)〕.
1936年5月23日,長野県諏訪郡北山村にて卵のう付のメスを学童が採集した.飼育下で7月13日にふ化しない卵のうを捨てた.199卵.エンマコオロギ,クサグモ,ウヅキコモリグモを捕食し余分はかみ殺して捨ててしまう.7月23日から25日頃,卵のう製作の為に長卵形の住居を製作,7月28日に2回目の産卵をし,8月23日子グモが親の背に移った.子は親の食事には参加しないが,水を与えると背を離れ,飲み終えて戻る〔小松AC2(1)〕.
産室を作るコモリグモ Lycosa
sp.
5月中旬に一斉に産卵を開始し,その後には産卵がみられない.産卵期には落葉層内に産室を作って引きこもり,卵のうを糸いぼにつけながら出歩くことがない.卵のうから出た子グモはしばらく産室内に留まるが母親に関心を示さず,室内全体に散らばっている.〔藤井AT63〕.
ハリゲコモリグモ群 Pardosa laura complex
イナダハリゲコモリグモ,ハタハリゲコモリグモ,キタハリゲコモリグモ,タテスジハリゲコモリグモ,ハリゲコモリグモ,テジロハリゲコモリグモの6種の求愛行動を表す記号(諏訪1984による):求愛姿勢に関する六型;Rl(低位の姿勢),Rm(中位の姿勢),Hh(T脚をM型にした高位の姿勢),Pp(T脚を挙げた姿勢),Pa(触肢を交互に振る姿勢),Ps(触肢を同時に振る姿勢).前進動作に関する二型;Bp(触肢を交互に押し下げながら体を低くする動作),Pv(触肢を同時に押し下げ,激しく震わせる動作).歩行様式に関する六型;Al(触肢をいろんな方向へ動かしながら歩行),U(波状歩行),Lc(凸型歩行),Lr(落ち着きのない歩行),Ap(触肢を振り挙げた歩行),Lj(ちゅうちょした,ぎざぎざの歩行)〔田中・諏訪AC34(2)〕.
イナダハリゲコモリグモ Pardosa agraria
TANAKA,1985
成体は5〜9月,メス4.5〜7.8mm,オス3.0〜4.9mm,沖縄を除く全土.水田・畑で採集される.平均卵数45個.ハタハリゲコモリグモやハリゲコモリグモに近似し,生殖器構造でも区別が困難.オスの触肢の前端に白いpubesceneを欠く〔田中AC33(2)〕.
求愛行動型はPp,-,Uである〔田中・諏訪AC34(2)〕. ハリゲのT型である〔池田〕.
関東平野北西部の生態は昼行性.生きた植物体上・日向・流水の条件域に生活〔藤井AC46(1)〕.
イナダはLs1,Ls2,Ds1,Ds2に生息.草地・日向・湿性環境〔藤井AC47(1)〕北海道十勝海岸部の湿地では,♂は7月にピーク,若虫で越冬し初夏に成体〔松田・柴田95〕.
脱皮回数が夏世代は雄5回,雌5-6回.越冬世代は雄7-9回,雌8-9回〔宮下AC46(2)〕.
アマミドクグモ Pardosa amaminensis
(NAKATSUDI,1943)
奄美大島産の1♀でLycosa属で記載,TANAKA(1993)が転属した〔小野AC43(1)〕
ウヅキコモリグモ Pardosa astrigera
L.KOCH,1878
成体は1年中,メス7〜10mm,オス6〜8mm,全土.草間,落葉上,地表を徘徊する〔東海84〕.メス7〜10mm,オス5〜8mm.市街地の庭や公園,郊外の雑木林,芝生,畑,果樹園などに生息.山地や高湿の所にはほとんど見られない.産卵期は4〜11月と長いが,4〜6月と9〜10月にピークが見られる.卵のうは白色か灰白色でややつぶれた球形.1卵のう中の卵数は30〜80個〔森林87〕.
クモ卵を用いて染色体を調査,2n=28(♂)および30(♀),XXO型,オスの配偶子にはn=13及び15〔松本AC27S〕.
卵のうの赤道面のつぎ目は産卵後ある日数に母グモによってはがされ,その数日後,はがした部分に上顎で穴をあけ,子グモはこの穴から出のうする.産卵直後の卵のうは灰白色だが,やがて灰緑色に変わる.吉倉によれば,ふ化後数時間で脱皮をし,うごめき,7〜10日で脱皮し,第1若虫になり出のうする.拡のうは第1前幼虫の時である〔有田AT58〕.
親が卵のうを拡のう・開のうしないと生育できない.離のうは卵のうが空になることやカビにより起こる.はいは卵のう外でも発生し,着のう中のメスの背中にも乗る.模型の腹にも反応する〔藤井AT68〕.
母グモは卵のう内で子グモがふ化する(着のう後3.6日,卵のう外で発生した子グモによる))と卵のうを拡のうし,1回目の脱皮(着のう後4.5日),2回目の脱皮(10日後)をしてから,開のうする.蒸し殺した卵のうでも拡のう,開のうすることから,母グモには温度条件で調節される体内時計がある.形成日の違う卵のうの交換実験で,開のうを促進する刺激は卵のう内の子グモの「もがき」(2回目の脱皮後),開のうを抑制する刺激は子グモの歩脚の波動運動(1回目の脱皮後次第に盛んになる)であろう〔藤井AT77〕.
個体数は埼玉県において4月と10月にピークを示し,夏世代(4月に産卵された)の成体は越冬世代(8月に産卵された)より小型,夏世代の脱皮回数は7回前後,越冬世代は9回前後.1度の交接で2〜3回産卵し,あとの卵のうの産卵数・ふ化率は低下する.越冬世代の方が産卵数が多く,卵のう期間,団居期間とも長い.メスの補食量は脱皮・交接・子グモの保護終了の後に高くなる.オスの補食量の増加は脱皮直後のみ.雌雄とも脱皮前日は補食しない.死亡率の高い令は2〜3令,亜成体〜成体の間である.亜成体の越冬場所はおき草の下,わらの中,落葉の下など.3月下旬成体となり,4月産卵,産卵後24日程で出のう,7日間母グモの背中で団居,その後分散する.6回脱皮,7月中旬成体となる.8月の卵のうは18日程で出のう,5日間団居,その後7〜8回脱皮して,亜成体で越冬する〔鈴木勝AT77〕.
関東平野北西部の生態.昼行性.むきだし土壌上・日向・雨水のみの条件域に生活〔藤井AC46(1)〕. 広い環境選好性〔藤井AC47(1)〕.
北海道十勝海岸部では1化性,ピークは5月下旬〔松田・柴田95〕.
乾燥した開けた草地に生息,4月-9月初めに成体・卵のう,1卵のう中の卵数は40-140個〔田中穂AC42(2)〕.
餌が少ないと脱皮回数が増加し,発育期間が長くなる〔浜村AC27.宮下68による〕.
9月初旬の2齢幼体を3種の日長条件で飼育した結果,成熟までの日数が16Lで90日(脱皮回数は6-9回,平均7.7回),12Lで144日(脱皮回数は7-10回,平均9.3回),8Lで126日(脱皮回数は8-10回,平均8,8回)だった.3齢と亜成体期間が長くなった.日長の影響は発育の後半に現れ,短日では齢期の延長・齢数の増加により発育が遅延した.サイズは発育日数と正の相関をした〔浜村・浜西洋AT97〕.
10月に老齢幼体を採集し,調査.13Lと14Lの間に臨界日長がある〔浜村AT98/99〕.
気温の高い時(31〜34℃)は体温があがり,太陽の直射を避ける.また徘徊時間も下がる〔藤井AT70〕.日射により体温は常に変動するが,地表気温の低い時ほど陽所にいる時間が長く,体温の方がかなり高い(地表19.5℃の時の体温24.6℃).走行速度は30℃付近で最高値(秒速26cm).致死体温は50℃〔藤井AT75〕.
開けた場所にいるために年によって鳥に捕食される.そんな時,ハリゲU型が林縁から進出してくる〔藤井AT85〕.
マーキングによる個体識別で行動を追跡したところ,一定範囲内でランダムな動きをすると推定された〔前田AT68〕.
春産卵後一両日中に卵のうを除去すると,卵成熟が促進され,普通3週間後に再び産卵する.卵母細胞の大きさも除去後増大する〔吉倉ほかAT68,AC27S〕.
棚網を捨てて,コモリグモはどんな能力を獲得したか.卵1個の大きさはタナグモと比較して,さほど大きくなっていない.同種または異種のコモリグモ小型個体をよく補食し,徘徊路は錯綜し,なわばりを持たない.徘徊は餌の探索ではなく,アリやゴミムシとの衝突,強風からの避難が要因である.成体オスのみが,15分中,17.2〜18.3%という徘徊時間を示し,他は4〜6%と小さかった.本質的には待機型狩猟者である〔藤井AT62〕.
トビイロウンカよりツマグロヨコバイやショウジョウバエを多く補食する傾向がある.えさの密度や混合比が変化すると,接触の回数が変化し,好き嫌いの度合も変化する.世代は長いので,増殖率の高い虫の天敵としては有効ではない〔宮下AT53〕.
キャベツ畑害虫への効果.捕食量は苗株当りコナガ幼虫10匹程度で飽和.春作ではコナガに秋作ではコナガとアブラムシにクモ放飼による密度抑制効果があった〔浜村AC45(2)〕.
ユスリカ20頭を与えたところ75%以上の捕食率を示した〔村田浩平AC45(2)〕.
乾燥地を好む.幼体・亜成体・成体で越冬.早いものは2月上旬に卵のうを保持している〔中平AT23/24〕.
福島にて,越冬ドクグモの分布(ウズキかどうか分からない)と温度や明るさを調査した.明るく暖かい所にクモは集まる.21〜24℃の所が良い.行動できる限界は12℃である〔古内AT17〕.
都立四中生徒・丸山工作によるとムツボシベッコウバチが主にドクグモを狩り,他にもハエトリ1種,ワシグモを狩る〔高島AC8(3)〕.
飼育下のサソリモドキが捕食した〔佐藤AC6(3)〕. 1回の交接で3回産卵〔鈴木勝K42〕. 母グモは未受精卵を食べる〔鈴木勝K44〕.
ヤマハリゲコモリグモ Pardosa brevivulva
TANAKA,1975
成体は5〜7月,メス4.5〜7.5mm,オス4.5〜5.5mm,北海道・本州・四国・九州.林内の落葉中に多い〔東海84〕.青森にて林地性〔諏訪AT85〕.
ハタハリゲコモリグモ Pardosa diversa
TANAKA,1985
メス成体(5.1〜7.9mm)は4月下旬〜9月,オス成体(4.3〜5.0mm)は4月下旬〜7月.本州.山に隣接する薮や草原で採集される.平均卵数40個.ハリゲコモリグモやイナダハリゲコモリグモに近似〔田中AC33(2),AT88〕.
求愛行動型はPa,Pv,Lrである〔田中・諏訪AC34(2)〕. 石川県でピットフォールトラップで局地的に♂が多産した〔徳本AT97〕.
クサチコモリグモ Pardosa graminea
TANAKA,1985
成体は4〜5月,メス4.5〜5.4mm,オス3.8〜4.0mm.本州(現在のところ茨城県と埼玉県).主に開けた草地に生息.卵のう形成は5月上旬,平均卵数30個.メスの外雌器はヤマハリゲコモリグモに近似するが,オス触肢付節先端に爪がない〔田中AC33(2),AT88〕.
関東平野北西部の生態.昼行性.生きた植物体上・日向・雨水のみという条件域に生活〔藤井AC46(1)〕.
カラコモリグモ Pardosa hedini
SCHENKEL,1937
オス4mm,メス5.4mm,乾燥した草地に生息,成体♀は6月下旬-8月と10月下旬,成体♂は6-7月初旬に見られる.本州北部・韓国・中国に分布〔田中穂AT93〕.
ヒメコモリグモ Pardosa herbosa JO et PAIK,1984
=Pardosa umida TANAKA
1985
成体は6月下旬〜9月上旬,10月.メス4.3〜5.8mm,オス3.8〜4.3mm,北海道・本州.湿った草地に住む.卵のう形成は9月上旬に見られ,卵数は約35個〔田中AC33(2),AT88.
キタハリゲコモリグモ Pardosa hokkaido
TANAKA,1986
オス4・5〜5・2mm,メス4・9〜8mm,メスは4月下旬から8月,オスは4月下旬から7月に出現.卵のう形成は6月または5月下旬から8月,1卵のう中の卵数は15〜40.北海道・本州に分布し,森林およびその周辺に生息.求愛行動は,諏訪将良によると,メスに対面したオスは20〜30秒間,姿勢を低める.その姿勢のまま,触肢を数回,す早く交互に振り上げる.頭胸部をもちあげて,両方の触肢を振り上げてメスに接近していく.再び姿勢を低める.この行動型を繰り返す.諏訪によりV型とされた種である.求愛行動型はRl,Rm,-,Apである〔田中・諏訪AC34(2)〕.
イサゴコモリグモ Pardosa isago TANAKA
1977
メス6.35mm,オス5.20mm,本州・四国・九州に分布.兵庫県青垣町で記載.キシベコモリグモと同様の生態,卵のう形成時期・卵数は不明〔田中AC27S〕.
タテスジハリゲコモリグモ Pardosa laevitarsis
TANAKA,1986
オス4・2〜4・8mm,メス4・6〜6・8mm,メス3〜9月,オスは3〜5月,南西諸島に分布.海岸付近の草地や山の裸地に生息.卵のう形成は3〜7月.1卵のう中には約35卵.求愛行動は(諏訪による)メスに対面したオスは50〜60秒間,体を低める.次にかぎ型の触肢をまっすぐ上に挙げ,降ろし,体を持ち上げ,二,三歩歩く,蛙が飛ぶように.二,三秒のそのような歩行を繰り返した後,再び体を低めてメスに対面する.求愛行動型はRl,-,Lcである〔田中・諏訪AT34(2)〕.
ハリゲコモリグモ Pardosa laura
KARSCH,1879
成体は4〜8月,メス5.5〜7.5mm,オス5〜7mm,全土.〔東海84,森林87〕.
越冬個体群の活動指数(落としわな捕獲数÷方形区捕獲数)を求めると,成体オスが最高,成体メスでは卵のうを持つと下がる〔諏訪AT68〕.
3つの型があり,求愛行動の違いによる性的隔離が行われている.「別種として記載されることになった,lauraは以下のU型に相当する」.野幌ではT型(オス触肢に白毛なし)は草地に多く,V型(オス触肢に白毛あり.第1脚しょ節末端に黒褐色の環なし)は林縁部・林地に多い.ただしV型卵のう持ちのメスは林縁部・草地に多い.発育段階によって生息場所が変わるのだろう.T型のオスの出現は5月下旬,ピークは6月下旬で7月上旬以降まで生存する.V型はこれより10日前後早い〔諏訪AT75〕.
北海道産のV型は本州では中部以北の高山地帯に,本州産のV型は東北北部では平野部にそれ以南では山間部から高山地帯に分布し,すみわけられている.また同属の他種では南へ行く程成体出現時期が早まるが,この型では札幌産が5月上旬,青森産が5月下旬と遅い.これは種間の差異に相当する〔諏訪AT81〕.
関東(土浦・秦野)の春個体群(越冬個体群)が夏個体群より背甲幅が大きいことからT型・V型は年2化性,U型は差がなく1化性と推定される.札幌ではどれも1化性である.U型では背甲幅に逆ベルグマンの法則がみられる.逆ベルグマンの法則から推測してU型は年平均気温9〜15℃の地域(関東から青森)では1化性であろう.年平均気温15℃以上の九州では越冬個体群が関東のそれより小さく,年3化の可能性がある.道北ではV型は2年で1化も考えられる.背甲幅からの推測である〔諏訪AT77〕.
オスの求愛行動には違いがある.T型は片方の触肢をあげた低位や高位の静止姿勢から,体を低めてすばやく波状歩行でメスに接近する.U型は第1脚を高く持ちあげた高い静止姿勢から,触肢を交互に下に下げつつ体を低め,第1脚を上下左右に動かしながらメスに接近する.V型は低い静止姿勢から,触肢を斜め上方に交互に上げながら体をあげてメスに接近する.オスは異なる型のメスにも求愛するが,メスは異型のオスを受け入れない〔諏訪AT70〕.
卵持ちのメスは開けた地区に集中する傾向がある〔諏訪AT66〕.
早春2月頃,活動を始める.4〜6月に卵のうを保持するものが多い.メスは亜成体,オスは成体で越冬するものが多い〔中平AT23/24〕.
U型はヒノキ幼樹林床では優占種だった〔藤井AT85〕.
青森にてU型は乾燥雑草地性,T型は湿潤草地性,W型とヤマハリゲは林地性〔諏訪AT85〕.求愛行動型はHh,Bp,Alである〔田中・諏訪AC34(2)〕.
石川県の水田に普通〔富樫一次・高順一郎AC40(2)〕.
エゾコモリグモ Pardosa lugubris
(WALCK.,1802)
成体は5〜8月,メス5〜6mm,オス4〜6mm,北海道・本州(高地).1000m以上の高原や樹林内に生息し,地表,落葉上を徘徊する.ヨーロッパと共通種〔東海84〕.
コンピラコモリグモ Pardosa lyrivulva (BOES. et
STR.,1906)
♀成体は佐賀県で6mm,オスは未知.原記載以来採集なし〔田中AC42(2)〕.
カコウコモリグモ Pardosa nojimai
TANAKA,1998
成体は3・5-6月,メス5.8-8.4mm,オス4.5-5.3mm,本州(静岡・大阪・岡山・島根)・九州(熊本).ハリゲコモリグモに似る.雄触肢(ショ節の前半に黒毛)の爪が1個〔田中AC47(2)〕.
リュウキュウコモリグモ Pardosa okinawensis
TANAKA,1985
成体は3〜8月,メス4.7〜7.6mm,オス5.1〜5.4mm,南西諸島.山地の裸地や海岸近くの草地に生息.卵のう形成は3月と6月,平均卵数35個〔田中AC33(2)〕.
ヒガシコモリグモ Pardosa oriens
(CHAMBERLIN,1924)
オス4.6mm,メス4.2mm,海岸近くの草地や山地の開けた場所に生息.成体は3-9月,産卵期は3-4月と7月.九州・南西諸島および中国に分布.Orinocosa属として記載された〔田中穂AT93〕.
タカネコモリグモ Pardosa paramushirensis (NAKATSUDI,1937)
高山性のクモ〔新海69〕.
仲辻により千島列島パラムシル島の1♀で記載された.北海道旭岳産(7月)の雌雄(♂6.2mm,♀7.8mm)で再記載.約標高2000mに生息,成体は7月から9月半ば,7月に卵のう形成,平均卵数50個〔田中AC42〕.
キクヅキコモリグモ Pardosa pseudoannulata (BOES.et STR.,1906)
=Lycosa
pseudoannulata (BOES. et STR.,1906)
=デーニッツドクグモ Lycosa doenitzi BOES. et
STR.,1906(Pardosaに転属〔八木沼86〕
成体は7〜10月,メス10〜12mm,オス8〜9mm,全土.水田に多い.稲の間や草間に生息し,ツマグロヨコバイなどの水田害虫を補食する〔東海84〕.
厚木の水田では個体数のピークが8月下旬に現れ,卵のう保持個体は7〜10月中旬までみられた.中でも7〜8月下旬に多い〔山野・木戸AT64〕.
11月の♀成体を25℃で16L8D,10L14Dで飼育,自然条件では産卵しなかったが,16Lでも10Lでもすぐ産卵した〔宮下和AT98/99〕.
8月17日,ツチガエルに補食された.卵のうはカエルの前脚でかきおとされる〔中平AT64〕.
水辺・水を落とした稲田等,湿気の多い土地に最も普通.発生がまちまちで,各段階のものを一時に採集できる.4月下旬〜5月下旬,9月下旬〜10月上旬に卵のうを形成するものが多い.
たくみに水上を走り,水草を伝って水中にもぐりひそむ〔中平AT23/24〕.
西表島無農薬水田で越冬生態調査.朝夕2回の活動期あり.野外でトビムシ捕食を観察.飼育下でウンカやヨコバイもよく捕食した〔村田AC47(2),AC48(1)〕関東平野北西部の生態.低密度ないし低活動性〔藤井AC46(1)〕.
Ls1,Ls2に生息.草地・日向・湿性環境〔藤井AC47(1)〕. 幼体に向かって蟻Lasius
nigerの近種が糸をかけられながらも外して何度もとびかかっていった〔岡野AC9(1/2)〕.
水田で切株を伝って3〜4分も潜水する〔植村AC8(1/2)〕.
宮崎県下北方村で水深1cmの水底の小石に抱きつき2時間30分も潜水していた〔白AC7(3/4)〕.
5月28日,埼玉県高坂で採集した卵のう保持個体は,5月30日シャーレ側壁にそって楕円形住居を作成,出のう.6月7日頃子グモ分散.7月15日再び子グモを背にのせて出現〔高野K35〕.
キシコモリグモ Pardosa riparia
(C.L.KOCH,1848)
オス4.2-5.5mm,メス4.6-5.8mm,6月初めに成体,卵のう形成は不明,北海道と尾瀬に分布〔田中AC42(2)〕
ヌマチコモリグモ Pardosa suwai
TANAKA,1985
メス成体(6.4〜8.8mm)は5〜7月,オス成体(6.4〜8.2mm)は5月.北海道.卵のう形成は5月下旬〜6月下旬.平均卵数80個〔田中AC42(2),AC33(2),AT88〕.
十勝海岸部の湿地では成体または亜成体で越冬し,翌春早くに繁殖を開始〔松田・柴田95〕
キシベコモリグモ Pardosa yaginumai
TANAKA,1977
成体は1年中,メス6.2〜9mm,オス5〜7.5mm,北海道・本州・四国・九州.河原の石の下を徘徊する〔東海84〕.
大阪府河内長野市で記載.昼間は石上を動きまわっているが,振動に気づくと,敏速に石の隙間ににげこむ.卵のうは淡黄色で円盤状,5〜8月頃に卵のう形成,1卵のう中の卵数は30〜90個.イサゴコモリグモやP.monticola群と近似〔田中AC27S〕.
関東平野北西部の生態.低密度ないし低活動性〔藤井AC46(1)〕.
テジロハリゲコモリグモ Pardosa yamanoi
TANAKA,1986
オス4・3〜5mm,メス4・9〜6・3mm,4〜8月,本州・九州に分布.草原の湿地に生息.1卵のう中に30卵.求愛行動は,諏訪将良によると,メスに対面したオスは姿勢を低めるとすぐにかぎのついた触肢を両方同時にずっと振り上げる.30秒間触肢を動かした後,交互に触肢を押し出し(1〜2秒),体を低めたまま不連続に2〜3歩前進する.脚を動かさずに体だけを使って前進し,次に退く.約10秒間,オスはちゅうちょした足取りを繰り返して,体を低めて休む.また触肢を両方同時に振り上げる.このような行動型を繰り返した後に交接する.諏訪により壱岐型とされた種である.求愛行動型はPs,Bp,Ljである〔田中・諏訪AC34(2)〕.
ハテコモリグモ Pirata boreus
TANAKA,1974
北海道十勝海岸部では湿潤地に優占する.7月11日から成体♀が出現,秋まで取れる〔松田・柴田95〕.
クラークコモリグモ Pirata clercklii (BOES. et
STR.,1906)
イモ・コガタとともに林床,荒地,畑地を徘徊する.幼体の時は地表に網をはっており,虫が網(不粘糸)に入ってくるととらえにゆく〔山川・熊田79〕.
埼玉で3〜7月,川辺草間と川辺カシ林でクラークとイモが採れた.コナラ林床ではコガタが優占種〔藤井AT85〕.
関東平野北西部の生態.クラークとコガタは昼夜活動性でイモは夜間に多く採れた.クラークは生きた植物体上・日向・止水の条件,イモは生きた植物体・日向・流水,コガタは死んだ植物体上・日向・雨水のみの条件域に生活〔藤井AC46(1)〕.
クラークはDs2に生息.腐草地・日向・湿性環境〔藤井AC47(1)〕
ヤマトコモリグモ Pirata japonicus
TANAKA,1974
岡山で26℃,相対湿度85%,16Lで飼育したところ,脱皮回数は5〜8回,産卵から出のうまで約12日,2令期約17日,3令期約10日,4令期約11日,5令期約14日,6令期約18日,亜成体期約18日である.餌量が多い程,各令期間が長い傾向がある.団居期間は半日から6日間で,団居をしない個体もあった.メス10個体中,4回も産卵した個体が3頭ある.後の卵のう程,産卵数が減り,ふ化率も低下する.1個目の卵数34.90+11.26(卵のう内死亡率0%),2個目26.71+14.24(26.20%),3個目26.33+11.90(60.76%),4個目10.67+10.21(78.13%)〔前田AT66〕.
京都市の京大農学部農場で,水田と畦畔共に多い.秋にピークのある1山型の消長を示し,観察によって年2世代と推定〔山野AC27S〕. イモコモリグモPirata
piratoides BOES. et STR.に等しい〔田中AC29(1)〕.
カイゾクコモリグモ Pirata piraticus
(CLERCK,1758)
草間を徘徊する.幼生期はシート網を張り管状住居を作る(有田67)」〔新海69〕.
ノルガルドによれば卵のうを持つメスの温度選好は変化する〔諏訪AT66〕.
幼生期にシート(クサグモの幼生が地表に張った網に似る)とトンネル部(土塊のかげ,くぼみに作る.短く作り方も粗雑)を持った網を作る〔有田AT43〕.
山形県赤湯町にて幼体から成体にかけて空中移動する優占種〔錦AC20(1)〕.
北海道十勝海岸部の湿地では,6月から成体が出現し,7月11日はピ-ク,1化性〔松田・柴田95〕
イモコモリグモ Pirata piratoides (BOES. et
STR.,1906)
クラーク・コガタともに林床,荒地,畑地を徘徊する.幼体の時は地表に網をはっており,虫が網(不粘糸)に入ってくるととらえにゆく〔山川・熊田79〕.
埼玉で3〜7月,川辺草間と川辺カシ林でクラークとイモが採れた.コナラ林床ではコガタが優占種〔藤井AT85〕.
関東平野北西部の生態.クラークとコガタは昼夜活動性でイモは夜間に多く採れた.クラークは生きた植物体上・日向・止水の条件,イモは生きた植物体・日向・流水,コガタは死んだ植物体上・日向・雨水のみの条件域に生活〔藤井AC46(1)〕.
イモは石川県の水田に普通だが、特に南部に多い〔富樫一次・高順一郎AC40(2)〕.
イモはBs1,Bs2,Ls1,Ls2に生息.草地・日向・湿性環境〔藤井AC47(1)〕
チビコモリグモ Pirata procurvus (BOES. et
STR.,1906)
水辺などの湿った草間を徘徊するが,土のくぼみ,石の下などに管状住居をつくり,小さなシート網を張る場合もある.産卵期は石の下に袋状住居を作り潜む〔新海69〕.
成体メスは半径25cmの範囲に留まり,一定の草むらから他に移動しない個体が多い.昼間は土の間隙などに静止する〔前田AT68〕.
林縁部に多いが林床部にもっと多い〔藤井AT85〕. 関東平野北西部の生態.昼夜活動性.死んだ植物体上・日向・雨水のみの条件域に生活〔藤井AC46(1)〕.
見つけ取りでは死んだ植物体上に広く生息〔藤井AC47(1)〕. 伊豆七島の地上はいかい性種として夏期にイタチグモと共によく採集された〔国見AT87〕.
エゾカイゾクコモリグモ Pirata shibatai
TANAKA,1995
成体は6〜7月,メス7.8-9.8mm,オス5.8-7.4mm,北海道豊頃町大津湿地で採.カイゾクコモリグモに似るが,背甲に側斑がある〔田中AC44(1)〕
キバラコモリグモ Pirata subpiraticus (BOES. et
STR.,1906)
成体は5〜10月,メス6〜8mm,オス5〜7mm,北海道・本州・四国・九州.水田に多い.草間を徘徊したり,地表の隙間に管状住居を作る.同属に12種以上いる〔東海84〕.宇都宮個体群では,背甲幅は連続しており,令を判別できない.成体の出現ビークは7月前半と8月前半である.メス成体は10月まで生存する.越冬世代は体が大きく(背甲幅2mm以上),夏世代は小さい.卵のう中の卵数は12〜105個で,平均は53・51個であるが,7月以前には多く,8月以後のものは少ない.大型の越冬世代の卵数が多い.餌量の十分な個体の産卵回数は3回と推定される.次第に卵数は減る.夏世代は出のう後5〜6回の脱皮で成熟し(25℃,餌はキイロショウジョウバエ),越冬世代は7回脱皮で成熟した(成体は9令となる).出のうから成熟までの日数は夏世代では53〜83日,越冬世代では126〜156日である.最終脱皮後の摂食量を比較するとオスでは大差ないが,越冬世代メスでは脱皮直後に1日15匹以上摂食した.夏世代はその半分であった〔浜村AT55,AC23(2)〕.
幼体期の補食量には波があり,各令とも脱皮後2〜4日目に補食量が多くなった.各令の総補食量は令が進むにつれ,多くなる.夏世代の幼体の総補食量は平均キイロショウジョウバエ約110個体であった〔浜村AC27S〕.
農薬の空中散布区(6月と8月)でも高密度を保っている.捕食能力も高くウンカ・ヨコバイ類の天敵として役立っているであろう〔浜村AC22(2)〕.
関東平野北西部の生態.低密度ないし低活動性〔藤井AC46(1)〕.
キバラはLs1に生息.草地・日向・止水環境〔藤井AC47(1)〕石川県の水田の最優占種〔富樫一次・高順一郎AC40(2)〕.
コガタコモリグモ Pirata tanakai BRIGNOLI
= Pirata exiguus TANAKA,1974
クラーク・イモとともに林床,荒地,畑地を徘徊する.幼体の時は地表に網をはっており,虫が網(不粘糸)に入ってくるととらえにゆく〔山川・熊田79〕.
埼玉で3〜7月,川辺草間と川辺カシ林でクラークとイモが採れた.コナラ林床ではコガタが優占種〔藤井AT85〕.
関東平野北西部の生態.クラークとコガタは昼夜活動性でイモは夜間に多く採れた.クラークは生きた植物体上・日向・止水の条件,イモは生きた植物体・日向・流水,コガタは死んだ植物体上・日向・雨水のみの条件域に生活〔藤井AC46(1)〕.
見つけ取りではD(腐草地)選好性〔藤井AC47(1)〕.
ナミコモリグモ Pirata yaginumai
TANAKA,
関東平野北西部の生態.生きた植物体上・日向・流水という条件域に生活〔藤井AC46(1)〕.
ナミはBs2,Ls2に生息.裸地草地・日向・流水環境〔藤井AC47(1)〕.
アシグロコモリグモ Pirata yesoensis
TANAKA,1985
雌雄4〜6mm,メス6月下旬〜9月,オス6〜8月,北海道.草原の湿った場所に生息.卵のう形成は8〜9月頃,平均卵数30個.コガタコモリグモに近似,第1脚の膝・けい節が黒色であることが区別点〔田中AC33(2),AT88〕.
ヒノマルコモリグモ Tricca japonica
SIMON,1888
成体は5〜8月,メス7〜10mm,オス6〜9mm,全土.林内の落葉中に生息し,土壌性の動物を補食する〔東海84〕.
雄6.2-9.1mm、雌6.5-11.4mm.栃木・千葉・新島・近畿・四国・九州・トカラ列島・西表島〔田中穂AC39(1)〕.
埼玉で3〜7月,低湿地周辺に多い〔藤井AT85〕. 関東平野北西部の生態.死んだ植物体上・日向・止水という条件域に生活〔藤井AC46(1)〕.
ヒノマルは湿性環境に生息〔藤井AC47(1)〕. 1回の交接で2回産卵〔鈴木勝K42〕.
ナガズキンコモリグモ Trochosa aquatica
TANAKA,1985
成体は5〜8月,メス5.6〜9mm,オス5.8〜7.7mm,本州・九州.水田の小さな窪みや林内の落葉層から採集される.卵は不明.メスの外雌器にヘルメット様のフードがある〔田中AC33(2),AT88〕.
アライトコモリグモ Trochosa ruricola (DE GEER,1778
)
成体は5〜7月,メス10〜12mm,オス8〜9mm,北海道・本州.平地から山地までひろく生息.産卵期は地中に入る〔東海84〕.
メス10〜13mm〔森林87〕. 埼玉3〜7月で林縁部に多い〔藤井AT85〕.
関東平野北西部の生態.生きた植物体上・日向・雨水のみの条件域に生活〔藤井AC46(1)〕.
見つけ取りではLs0,Ls1,Ds0,Ds1(草地・日向・乾燥・止水)選好性.イナダよりやや乾燥地に多い〔藤井AC47(1)〕.
雄7.7-10.4mm雌10.3-15.1mm、80-180卵.〔田中穂AC36(2)〕.
カラフトコモリグモ Trochosa terricola
(THORELL,1856)
雄8.2-10.0mm、雌8.8-10.6mm.5・7・8月に成体.北海道・青森・栃木・長野.卵のう形成時期は不明〔田中穂AC36(2)〕糖蜜に定着性が強いが,かなり接近しないと糖蜜の存在を認知できない〔永井・小林AT75〕.東京未記録.
キタコモリグモ Trochosa vulvella (STRAND,1907)
ウゼンコモリグモ L.joshidaia
KISHIDAはシノニム.アライトコモリグモ L.rulicola(DE
GEER),カラフトコモリグモL.terricola(THORELL)との区別点は困難で同一種かもしれない.アカコモリグモとして記録したが,その名は取り消す〔植村AT5〕.
モリコモリグモ Xerolycosa nemoralis
(WESTRING,1861)
雄4.7-6.0mm、雌5.4-8.6mm、5-8月に成体.北海道から本州(冷帯林以上)〔田中穂AC39(2)〕.
○キシダグモ科 Pisauridae
シノビグモ Sinobius orientalis YAGINUMA,1967
=Cispius orientalis
YAGINUMA,1967
本州・四国に分布〔八木沼77〕.新属Sinobiusとする〔八木沼AC40(1)〕.
シノビグモの生活史まとめ〔貝発AC37(1)〕.
渓流の湿った下層のシダ類や下草の根元,石やリターの下に生息.わずかの環境変化で突然死し,飼育しにくい.産卵は昼夜を問わない.1時間程度.床から5mm程の高さに3cm平方の目の荒い足場を作る(10分),足場上で産座を作る(10〜20分),産座の外縁から高さ2mm程の壁を作る(20分),産卵(5分,卵数は55〜75個),卵のうの上を作る(10分),卵のうを足場から引き剥がし,産座の外縁を壁の方へ折り曲げる(7分),卵のう(楕円形,4〜5mm)を糸いぼにつけて運ぶ〔貝発AT85〕.
生活史は5月下旬から7月中旬に子グモが出のう.4〜6令で幼体越冬し,翌年の10月頃,9令程で成体となり,そのまま成体越冬に入る.三年目の5〜6月に産卵し,オスは6月中旬,メスは7月下旬に一生を終える.2年1化性.交接は主に越冬あけの4月.オスがメスのすきをみて急襲するレイプ型.オスが急襲し頭胸部に馬のりになっておさえつけ,メスが従順になるとそのつまで向き合い,メスが腹部を横へねじって片方ずつ触肢を挿入する.交接時間は7〜9分.母グモは卵のう作成後,卵のうを糸いぼにつける.1〜2日徘徊後,岩かげで不規則網を張り,その中で26〜27日間保護.出のうした子グモは卵のう上に乗る.1〜2日たって母グモは子グモの乗った卵のうを糸いぼにつけたまま網を離れて徘徊し,さらに1〜2日後,岩かげに小さな不規則網を作って卵のうを置き,保護生活を終える.子グモは網上でまどいに入るが,半日〜1日後に分散.母グモの産卵回数は1回〔貝発AT87〕.
成長過程を調べた.18日でふ化,8日で1令,3〜5令で幼体越冬,翌年8令で成体.3〜5令の段階で小きざみに脱皮したものは9・10令まで進んだ.幼体はコケやリター中,ブッシュの根元に,亜成体・成体は川原の石間に住み,1日中ほとんど動き回らない.交接は最終脱皮後約1週間目から可能.同一ペア,異なるペア,関係なく繰り返される.出のうに際して親が卵のうを開く.卵のうを糸いぼにつけての徘徊は卵のう保護を行う狭い岩陰への出入りのため.バルーニングや精網は未観察〔貝発AT89〕.
南米のキシダグモ科のRhoicinaeの仲間は腹端に卵のうを保持する〔八木沼AT85〕.
1965年5月4日,三重県平倉川にて橋本理市採集の雌(7・8mm)と雄(6mm)で記載〔八木沼AC20(2)〕.
幼体だったが,北海道(定山渓)にも生息する〔谷川K69〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
Dolomedes属について
成体では網を作らないが,第2令・3令幼体では植物の葉上に管孔のついた店網状のものを作って棲み,之にかかった昆虫などを食う習性があることは注意すべきである.第4令以上ではこの習性を失い,網を張らず,その辺を徘徊して狩猟をなし,或は水辺に行って,小さい虫や魚を捕らえて食う.一般にオスはメスよりも多少とも小形,非力である.成熟するとオスはメスに食餌を渡しておき,メスがその方に熱心な間に,その腹面に回り,メスと互い違いの向きになり,精束を交付する.オスの精液移入をスジホソハシリグモで観察.多角形の斜向の小網を作り,その上部に精門から小滴として精液をたらす.次にそれを動かして立派な水滴状にならしめる.最後に,触肢を交互に之にあてがって吸い上げてしまう.性的交際を遂げてから永い日を経るとメスは体が肥大する.そしてやがて産卵期になる.メスは夜間地上に下敷きを紡ぎ,その上に産卵した後,全体を柔らかい卵のうで包括し,之を平素は口器につけて携行する.食事する時は一時之を他に離しておく.第2令が卵のうから出るようになれば,いわゆるnursey
webを植物体上に作って,出た子の紡ぐ糸と共で,子グモのつどいが出来上がる.寿命は種類や生息地ちよってちがうであろうが,小生が今まで見てるところでは両性とも少なくとも2〜3年らしい.成熟したものが越年することは日本では見られぬようである.日本産ハシリグモ15種はイワウイロハシリグモ
Dolomedes sulfureus L .KOCH 1877, オキナワハシリグモ D . okinawaensis KISHIDA 1924,
ヒゲナガハシリグモ D .higenaga KISHIDA 1912, ヘリシロハシリグモ D .horishanus KISHIDA 1912,
ススグロハシリグモ D .mizhoanus KISHIDA 1935, キクメハシリグモ D .stellatus KISHIDA 1912,
コハシリグモ D・annulatus KISHIDA 1912, スヂアカハシリグモ D .saganus BOES.et STR . 1906,
スヂブトハシリグモ D .pallitarsis DOEN. et STR . 1906, スヂボソハシリグモ D .angustivirgatus
KISHIDA 1912, ハシリグモ(アヲグロハシリグモ) D . raptor BOES. et STR . 1906, ホシモノハシリグモ D
.japonicus BOES. et STR .1906 , スジチャハシリグモ D .fimbriatoides BOES. et STR .1906
, オホスジチャハシリグモ D .ohsuditia KISHIDA 1912, スヂボケハシリグモ D .hercules BOES.et STR .
1906〔岸田AC1(4)〕.
コハシリグモ Dolomedes annulatus KISHIDA
イオウイロハシリグモの色彩変異で,頭胸部・腹部にまだらの模様があるもの〔森林87〕.
スジブトハシリグモ Dolomedes pallitarsis DOEN. et
STR.,1906
成体は6〜9月,メス18〜20mm,オス16〜18mm,北海道・本州・四国・九州・奄美.習性はイオウイロハシリグモに似るが,水辺に多く,水面を走ることもある〔東海84〕.
メスに気づくと突然止まる.第1脚を前方に伸ばし,先端を振動させ,地面をなでるように左右へ振って進む.オスがメスの脚に触れるとメスは床をなでる.数回繰り返された後,オスは脚をふんばって体を高く持ち上げる.受け入れる場合はメスも体を高める.そしてメスは触肢や脚を儀式的に清掃する.オスはメスの腹端の方から侵入し,その背に乗る.メスは体を低め,オスはメスの背の上で回り,腹端の方へ向き直り,第1・2脚でメスを抱え,右(左)にひねって横倒し(または仰向け)にひっくり返し,左(右)触肢を当てる.数秒後,触肢を変える〔中平AT89〕.
5月23日,コウホネ葉上でモツゴの幼魚(33mm)を捕食.撮影した〔赤羽K69〕. オオモンクロベッコウに狩られる〔中村AC5(2)〕.
徘徊性のクモにして田園・草間等に普通.成熟するメスは卵のうを上顎にて運搬する〔関口AC〔(1)〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
アオグロハシリグモ Dolomedes raptor BOES. et
STR.,1906
成体は7〜9月,メス23〜27mm,オス12〜15mm,本州・四国・九州.渓流の石の下にいて,驚くと水中に逃げる〔東海84〕.
7月14日に採集した亜成体前期♀が7月21日に脱皮して,亜成体後期に入った.この♀はその後,8月26日,翌年5月6日に脱皮,5月30日の脱皮でようやく成体になった〔中平AT92〕.
出生後,雄は2年目に成体になるが,雌では2年目に成熟する個体,亜成体後期に越冬し3年目に成熟する個体,亜成体後期に脱皮5回,越冬を二度行って4年目に成熟する個体がある〔中平92〕.
5mm以下と5mm以上の個体で活動に違いがある.5mm以下の個体は時刻に関係なく動き回り,中にはトンネル内のくぼみに住居を作るものもある.住居を作ったクモはその中に留まる傾向がある.5mm以上の個体は24時間ほとんど動かず,省エネルギー型,18時から22時にかけては移動が見られた.餌となるガガンボ等小昆虫の日周活動との関係が示唆される〔浅間ほかAT87〕.水中に37分間ももぐりつづけた〔下謝名AT41/42〕.兵庫にて8月26日,水田の畦近くの稲に子グモの集団がいて親にかみついていた.かみついた腹部から体液が出ていたので,親は死んで間もない〔西田AT17〕.
雄が亜成体雌にT脚を挙げて求愛した〔板倉K59〕.
岸田のキクメハシリグモはアオグロの変異かも.♂のT脚が♀に触れると,♂は強引に♀の背中に乗り,♀の体や脚を打つ(なだめ行動).するとまもなく♀の動きが止む.♂はT脚で♀の腹背を探り,腹端から腹面に侵入.挿入する.数秒後,♀は♂をはね飛ばす.♂は触肢や脚を清掃後,再び求愛.♀が♂を拒否し,捕食することもある〔中平AT95〕.
自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
スジアカハシリグモ Dolomedes saganus BOES. et
STR.,1906
成体は8〜10月,メス11〜15mm,オス10mm,全土.山道の草の上で,足をのばして獲物を待っている〔東海84〕.
調査したクモの56%は植物体の最上位の葉や枝の分岐点で発見.造網時期は分散直後から6,7齢まで,その後は糸を引き回した足場を作る.網は管状の部分と両側に広がる扇状の部分から成る.網に粘着性はない.網は餌捕獲に効果がある〔板倉AT93〕.
自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
イオウイロハシリグモ Dolomedes sulfreus
L.KOCH,1878
成体は7〜9月,メス20〜28mm,オス14〜16mm,全土.草や低木の葉上で獲物を待っている大型のクモ.危険を感じるとすばやく草間に逃げ込む.卵のうは口器につけているが,ふ化が近付くと草間に不規則に糸をはって卵のうを置き,子グモがかえり,分散するまで見張りをする.色彩や斑紋には変化が多い〔東海84〕.
成体は6〜9月,産卵期は7〜9月で肌色で球形の卵のうを口にくわえて保護する.1卵のう中の卵数は80〜230個.獲物が近付くと,いきなりとびかかり,歩脚で押さえつけるようにしてかみつく.昆虫,蛙,ミミズなどを捕らえ,外国では小さな魚を水面近くにおびきよせて捕るものも知られている〔森林87〕.
スジブト型の卵のうから生まれた幼体はスジブト型とイオウイロ型に分かれた〔中平AC27S〕.
出のうした2令幼生の斑紋は同一であるが,成長に伴い変化して,成体ではスジブト型とイオウイロ型に分かれる〔中平AT75〕.
スジボケ型の卵のうから出たイオウイロ型メスとスジブト型オスを交合して産まれた子グモはイオウイロ型とスジブト型に分かれた.その相互交配の結果も同じである〔中平AT73〕.
1〜2cmの金魚を採ることがある〔八木沼AT51/52〕.
メスは「ひき糸」として普通の「しおり糸」(引きっ放しの糸)ではなく,1〜3cm毎に地表に固定された「さそい糸」を引く.オスは「さそい糸」を認めると触肢で叩きながら,ためらわずに進む.そして第1脚をメスに触れる.20cm前後まで近付けば,視覚的にメスはオスを認めるが,黒エナメルでオスの目を塗りつぶしても糸によって求愛行動は可能である.交合の際のメスのオス受け入れ態勢とは,オスの第1脚が触れても動かず,全歩脚を屈して体側に引き付け,転がされ易くなることである〔中平AT71・68〕.
オスはメスの存在に気づくと,第1脚を前方に伸ばし,先端を振動させ,上下左右に振りながら,メスの方へ進む.メスの近くで止まる.メスの脚先に触れる.触れられたメスがオスの脚を払えば拒否,受け入れる場合はしばらくじっとしていたあげく,メスは脚を体側に引きつける.メスの体に直交するようにまたがり,第1脚でメスの腹部を抱えて引き,腹面を上に傾けて数秒間挿入する.スジブトは行動敵にも異なる〔中平AT89〕.
ニホンアマガエルを捕獲,食す例がある〔大野AT49/50〕.
歩行動作を8mmで分析した結果,「三支点歩行」である.第1脚は手としての機能が高い〔福本AT39〕.
熊本にて7月上旬には卵のうを抱えている〔木庭AT15〕. 吉田嗣郎によると抱えた卵のうを除去すると代替物は抱えない〔池田K73〕.
亜成体で越冬〔植村AT5〕. 7月24日,出のうした幼体(1令とした)を25℃の短日・長日下で飼育したところ(餌はキイロショウジョウバエを2〜3日に1回.
頭数は次第に増加),長日では15頭中4頭が成体となった(110〜130日間.7〜10回脱皮).短日では5〜6令から令期間の延長が起こって,発育が停滞した.
この中の3頭を長日下に移したところ,1頭は成体となったが,移さなかったものは死亡した.
体長はメス11・8mm,オス10・7mmで野外より小さいが,栄養条件が単一のためだろう〔宮下AC35(1)〕.
飼育した出のう幼体15頭のうち1頭は5月16日に雄の亜成体となったが,次の脱皮6月11日でもまだ亜成体だった.そして6月22日の脱皮で成体になった〔中平AT92〕.
オオモンクロベッコウに狩られる〔中村AC5(2)〕. 昭和12年6月3日東京都にて幼体メスがヒメジョオン上でヒラタアブの一種Sphaerophoria
cylindrica雌を捕食, スジホソハシリグモとして昭和14年6月18日神奈川県にて幼体メスがクワキヨコバイEpicanthus
guttiger雌を捕食〔湯浅AC4(3)〕. スジボケハシリグモ D.hercules BOES. et
STR.として,山形県赤湯町にて幼体から亜成体にかけて空中移動するクモの最優占種〔錦AC20(1)〕.
ユウマダラエダシャクを食べなかった〔高野K26/28〕. スジボケ型にカノコガを与えたがかかえただけでかみつかず,そのうちガは逃げた〔高野K35〕.
母グモが未受精卵を食べた〔鈴木勝K44〕. 石川県の金沢城址で夏に成体が樹上性のモリアオガエルに捕食される〔徳本K69〕.
イシガキアオグロハシリグモ Dolomedes yawatai
ONO,2002
成体は10月,メス28mm,オス11mm,石垣島.アオグロハシリグモに似るが大型.飼育で雄を得た八幡明彦に献名〔Ono02a〕.
ヒゲナガハシリグモ Hygropoda higenaga KISHIDSA,1936
西表島で水面上で待ち伏せ〔胡沢K66〕.
アズマキシダグモ Pisaura lama BOES. et
STR.,1906
成体は5〜6月,10〜13mm,北海道・本州・四国・九州.地上や草間を歩きまわって獲物を取る.
ハシリグモ類より小さくて歩き方は少し遅い.求愛の時にオスがメスに餌を渡す習性がある.卵のうは口器につけて持ち歩くが,
ふ化する頃には簡単な住居を作って卵のうを置き,見張る.色彩斑紋に変化が多い〔学研76〕.
郊外の雑木林から山地の草間まで広く生息する.成体は5〜7月,産卵期は5月下旬〜6月で白色球形の卵のうを口にくわえて持ち歩く.
卵がふ化する頃,植物の葉の間に簡単な住居を作って卵のうを置く.親はその近くで子グモが卵のうから出て分散していくまで守る.
1卵のう中の卵数は80〜130個〔森林87〕. タテスジ型,キスジ型,ヤマジ型,アズマ型はオスの触肢構造が一致し,同種である.
キシダグモについては保留しておく〔有田・八木沼AT63〕. 卵のうを口器につけてはい回しているが,子グモのふ化が近付くと,卵のうを草葉に吊るし,
そこから下方へ多数の糸を引いて,子グモのための住居を作った後,去っていく〔中平AT43〕. 出のうに際して母グモが卵のうをかみ破る〔板倉K58〕.
落葉中で亜成体で越年する.タテスジ型は幼体だった〔植村AT5〕.
5月中旬から下旬に飼育下で婚姻贈呈を観察.オスはイエバエを糸で包んでギフトとする.オスが差し出したギフトをメスは口器をつけて食べ始める.
オスは脚を振動しながら,触肢をあてがう.数10秒から数分で左右交替.ギフトがある限り続き,4〜5時間かかることもある.
メスが餌を持っている場合はギフトを受け取って,交接が終了した後に餌を食べる.
ギフトを持たないオスは交接できない.一度交接したが途中でメスに捕食された.雌雄とも何度も交接する〔板倉K55〕.
オスはしおり糸に接触し,接近した.鱗翅目幼虫はWRAPPしなかった,ギフトの大きさにより交接時間が変わり,2時間以上交接することもあったが,
精子量は交接の初期に十分な量が移精されていた〔板倉AT97〕. 茶園でチャハマキ幼虫をよく捕食する〔国見・菰田祐三子AT97〕.
ハヤテグモ Perenethis fascigera (BOES. et
STR.,1906)
成体は6-8月,メス10-11mm,オス9-10mm.本州南部,四国,九州以南.山地の草間を徘徊〔千国89〕.
「キャベツや白菜の畑を徘徊する(萱島66)」〔新海69〕.
愛知県西尾市に多産,婚姻給餌行動を観察した.アズマキシダグモとの相違点はギフトを持たないオスもメスのしおり糸に反応すること,餌のカスでもギフトにすること,メスの体に触れるとラップし始めること〔板倉AC47(2)).ギフトが大きいほど交尾時間が長い,乾燥したギフトでも有効,ギフト捕食中でもオスが立ち去ることがある〔板倉AC48(2)〕河川敷の乾燥した草地に生息.婚姻給餌する〔板倉K76〕.
○ナガイボグモ科 Hesiliidae
オキナワナガイボグモ Hersilia okinawaensis
TANIKAWA,1999
岸田(1959)は沖縄からナガイボグモ Hersilia savignyi
LUCAS,1836を報告.八木沼(1986)は沖縄からH.claturata TOHRELL,1895を報告したが,これはBAEHR &
BAEHR(1993)によりsavignyiのシノニムとなった.しかし,これらsavignyiとされた種は新種だった.沖縄島に分布.メス5.3-6.9mm,オス4.3-5.4mm.7月に採集.樹幹に張った網上に住む.ヤエヤマナガイボグモと生殖器以外の区別は困難〔谷川AC48(2)〕.
ヤエヤマナガイボグモ Hersilia yaeyamaensis
TANIKAWA,1999
池原・下謝名(1975)はナガイボグモを西表島・石垣島からH.savignyiとして記録.しかし,これは新種だった.西表島に分布.メス4.9-5.8mm,オス3.8-5.0mm.通年採集.樹幹に張った網上に住む.樹幹の卵のうを上で保護する〔谷川AC48(2)〕.
○イヅツグモ科
ナガイヅツグモ Anyphaena ayshides
YAGINUMA,1958
成体は6〜8月,メス7〜8mm,オス6.5〜7mm,北海道・本州・四国・九州.樹木の枝や葉上を徘徊する〔東海84〕.
外見が酷似している別種あり〔千国AT87〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
イヅツグモ Anyphaena pugil
KARSCH,1879
成体は4〜6月,メス6〜7mm,オス5〜6mm,全土.木の葉や草間を徘徊する.針葉樹に特に多く,冬期はスギの樹皮下に袋状住居を作り越冬する〔東海84〕.
クモ卵で染色体を調査,2n=26(♂)および28(♀),XXO型,オスの配偶子n=12および14〔松本AC27S〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
○アワセグモ科
アワセグモ Selenops bursarius
KARSCH,1879
成体は7〜8月,メス11〜13mm,オス7〜8mm,本州・四国・九州・南西諸島.古い家屋に生息する〔東海84〕.成体は7〜9月.屋内徘徊性のクモだが,野外の樹皮下,植木鉢の下などにも見られる.昼間は天井の隙間や物陰にひそみ,夜間歩き回ってハエ,カ,小型のゴキブリなどを捕らえる.本州(神奈川県以西の太平洋岸),四国,九州,沖縄に分布〔森林87〕.1992年5月10日の夜間,京都府洛北の鷺森神社の杉2本に39頭が集中,体長12-4mmで成熟に数年を要すると思われる〔新海明K65〕.長崎で,8月21日に産卵.黄色の78卵を簡単に糸で固定し,その外に紙状の保護糸を張る.29日に第1回脱皮,9月2日卵のう内をはい回る〔大利AT30〕.
○アシダカグモ科
コアシダカグモ Heteropoda forcipata
(KARSCH,1881)
成体は1年中,メス20〜25mm,オス15〜20mm,本州・四国・九州・南西諸島.崖地や岩場の割れ目,鐘乳洞の入口付近,樹皮下などに生息.夜間徘徊して獲物を探す〔東海84〕.夜間に徘徊してカマドウマ,コオロギ,ガなどの昆虫を捕る〔森林87〕.地中の梢深い所で亜成体で越冬していた〔植村AT5〕.メス26mm内外,オス20mm内外.野外殊に人家を離れたる路傍,又は森林中に発見せらる.夏期成熟す.本州・四国・九州に分布〔関口AC6(3)〕.1987年7月丹沢大倉で夜間,樹皮上でセミを捕食〔池田〕.ベッコウバチに狩られる〔中平K67〕.
スギの樹皮下やクヌギの倒木を起こしたところ,越冬中の♀成体がいた〔後藤好正K67〕.
神奈川県松田町寄の天王山で卵のうをガードする雌を観察(1994年7月23日)〔池田K71〕. 高知県にて8月24日,ベッコウバチに狩られた〔中平K67〕.
胚は20℃がふ化限界だった〔近藤ほかAC45(2)〕.
アシダカグモ Heteropoda venatoria
(LINNE,1758)
成体は1年中,メス25〜30mm,オス15〜20mm,本州(千葉県以南)・四国・九州・南西諸島.屋内に生息して夜間徘徊し,ゴキブリ,ハエなどの屋内害虫を捕らえる.産卵期は6〜8月で,円盤状の白色の卵のうを口にくわえて持ち歩く.北上傾向を示す〔東海84〕.産卵期は5〜8月で白色の最中のような卵のうを口にくわえ,触肢と第3脚で抱くようにして持ち歩く.1卵のう中の卵数は300〜600個.最少で188個,最多で900個の記録がある〔森林87〕.1951年8月23日,八丈島・三宅島からも既知〔高島AC13(1)〕.感覚毛は第2回脱皮以後明瞭になり,第4回脱皮後発達が目立つ.第10回脱皮で成体となるが,産卵後にも脱皮が行われる〔萱島AT73〕.産卵期の6月と8月,低温の1〜2月は補食しない.多い時には月に19頭のゴキブリを補食する.1頭の吸収消化に要する時間は6〜8分〔萱島AT70〕.0.5〜1ルクスでよく隠れ場所から出てくる.一箇所に長く留まり,餌の来るのを待つ.補虫動作は敏捷で餌を目で捕らえている.明るすぎるとクモは普通の補虫動作ができなくなる.産卵の時期の遅いものほど,卵期が短い〔萱島AT68〕.卵のうを持つメスを補食しているメスを見つけた〔中平AT55〕.三重県にて15mm位の左半身がまっ黒で,右半身が淡褐色の個体発見〔八木沼AT55〕.オスの脱皮を飼育条件で調査した.給餌は2〜3日に一度で,自然条件より小型となった.7月に産卵された卵よりふ化して第1回脱皮まで24日間,第2回は不明,第3回は第1回脱皮から30日後,以下25〜36日後に第4回,29日後に第5回,10月より越冬体勢に入り7カ月後,第6回,その後は19〜37日間隔で成体になるまで9回脱皮した1頭と10回脱皮した2頭がある.約ふ化後13カ月程で成体となる.交接後,大部分のオスは冬までに死亡するのだろう〔新海AT45〕.7月9日の卵のうに653頭の子グモがいた〔大利AT29〕.いろいろな段階で越冬する.5月中旬〜9月上旬に,直径30〜40mmの白色・円形もなか状の卵のうを体下に抱く.卵は1・7mm内外で球形.1卵のう中に800〜900卵.1ケ月後にふ化する〔中平AT23/24〕.静岡県下田町にて,1944年6月12日に産卵された卵の内,1頭が飼育下で1945年9月9日に最終脱皮をして(ふ化後10回目)メスとなり,1週間後に交尾をした.自然状態の個体よりやや小型〔関口AT9(3/4)〕.午前1時より1時間かかって最終脱皮をした.吊り下がらずに脱皮した例では不成功.成長の全期間,背甲が後縁で裂けて前方へ開く.オスは脱皮後4日位で精液移入,精液網は硝子面と桟にまたがって作られた.交尾は宵7時から9時頃(明け方の例もある),2時間から3時間30分行われる.オスは第2脚を上下に振る.メスの体に触れた際にメスが攻撃または逃避の態度を示さなければ,オスは前進,向い合うメスの前方からその背面に乗り,頭胸部をメスの腹部背面に持って行って,触肢がメスの生殖孔に達する様に斜めに位置する.触肢は左右交互に用い,交互にメスの反対側に行って10から30秒を要して精液を射入する.交尾後,雌雄は離れ,メスがオスを食することはない.オスは何度か交尾をした後,飢餓のメスに食われるか,自然死し,ふ化後2年目にして冬を前に死ぬ.メスは10月末に積藁や天井裏の隙間に入って越冬,翌年4月末に活動し始め,5月上旬に与えられる餌をよく取るようになる.1942年8月29日に交尾して翌6月3日に産卵,同9月5日に交尾して翌6月9日に産卵と,翌年6月上旬から8月下旬に産卵,通常早朝,垂直な壁面を利用して300から400卵を含む黒白色のモナカ状の卵のうを作り,卵のう内でふ化し一回脱皮するまで卵のうを保持する.出のうに際しては自ら卵のうの口を開いて押し出す.子グモは10から15日間隔で脱皮を繰り返して成長する〔関口AC9(1/2)〕.飼育下では垂直面に産卵した卵塊は流れ落ちてしまう.卵のう製作過程はまず片側(下側)が張られ,卵塊がその上に産みつけられ,次に上側が絹布で覆われ,最後に触肢で周囲に残った絹布の縁が始めに作られた絹布の下側にまつわりつけられる.卵のうの余分の縁を折り返す時に糸を用いない.これはウヅキコモリグモも同様.親グモは保持している卵のうを時々回転させる.188,189,202,344,431,436卵.産卵後12日目で動き始めたクモ(10日目にふ化した)の7個体中4個体までが,傍の発生の遅れた卵にかみついて共食い(コガネグモにも見られる).13日目で15個体までがふ化した.それ以降10日間卵のう内に留まり,脱皮して活動的となって2,3日後に親グモが大顎と触肢で開のうする.風通しのよい家屋の庇の突端などで開くのだろう.母グモは2,3日して死ぬ.子グモは共食いをする〔関口AC8(4)〕.飢餓,寒気に対する抵抗力を有するが房総以西に分布する〔関口AC8(3)〕.無精卵を食べた〔胡沢K60〕.オオモンクロベッコウに狩られる〔中村AC5(2)〕.天保年間の乾物標本あり〔加藤AC1(4)〕.飼育中に産卵.6月2日午後11時,垂直な壁面に長径55mmの糸を張りめぐらす.中央部30mm位を厚く張る.11時30分しばらく休む.頭を下にして産卵.その後,糸を上からかける.最後に下のへりをはがして上へ折りかえしてコイン型となる(〜午前0時半)〔松浦K45〕.出のうした子グモでは雌は腹部が太く,腹部上面中央に淡褐色の横斑があり,雄では腹部が細く,腹部両側に淡褐色の点斑がついている.また雄では触肢付節に雌にない不鮮明なすじがある.9年7ケ月飼育下で生存した雌について記す.1969年5月15日産卵された.6月20日〜22日ふ化,6月29日〜30日脱皮.チャガラタマバエ(仮称)をよく補食.第2回脱皮7月26日(脱皮殻の頭胸部長1・5mm).ショウジョウバエとチャガラタマバエを補食(占座円の直径7・4mm.歩脚の先端を結んだ円を占座円とする).第3回脱皮8月18日(脱皮殻頭胸部長2mm,占座円直径14・3mm.以下同様).脱皮前は補食しなくなる.第4回脱皮9月30日(2・4mm,25・3mm).ショウジョウバエとオオクロバエを補食.室温5℃以下で補食しなくなる.2年目,3月2日ショウジョウバエを補食した.翌日から10頭ずつ与え?.5月ゴキブリの幼体を7日に一度与えた.第5回脱皮5月13日(2・6mm,31・9mm),毎日食べ残さない程度にイエバエかゴキブリ幼生を与えた.第6回脱皮6月16日(5mm,45・1mm).第7回脱皮7月8日(6・9mm,61・3mm).ゴキブリ亜成体を補食.第8回脱皮7月28日(8・6mm,72mm).ピョンととぶようになった.第9回脱皮8月27日(9・9mm,84mm).第10回脱皮(10・1mm).外雌器が成熟したが雄と同居させても交接しなかった.11月20日頃から越冬,3月5日にゴキブリを補食.ゴキブリの後脚剛毛で口器に傷を負う.3年目は1日2頭のゴキブリ成体(後脚腿節以下切断)を与える.5月10日,雄は雌を見ると求婚(触肢と2脚の動作),真夜中に精網を作り,精子を導入,その後10分求婚し,交接した.5月16日午前5時すぎ,産座を作り始めた.産卵.卵のうを抱えたのは7時2分だった.7月4日,出のう,約250頭.風を利用して分散していった.10月6日に第11回の脱皮をした(頭胸部長12・3mm)〔萱嶋K47〕.4年目,昨年使用した雄が精網を作った.雌に求婚し,交接した.その時,空の触肢も挿入した.5月14日産卵,7月1日出のう,300頭.7月3日飼育箱の蓋を開けると5分の間に空に分散した.7月20日再び産卵,8月14日出のう.10月2日第12回脱皮(13・1mm)〔萱嶋K48〕.5年目,ずっと使用していた雄を入れたが雌に補食されてしまった.5月19日産卵,6月28日出のう,193頭+無精卵100個,6月30日分散,雌は体力が弱り,オオクロバエを補食.元気が回復するとクロゴキブリを補食(7時間で食べ尽くす),7月19日産卵,無精卵で硬化していたため産座に付着しないが雌は卵のうを作った.空の卵のうを抱えてオオクロバエを食べた(普通,抱卵のう中は食べない).8月3日オオクロバエを与えると卵のうを捨てた.10月5日第13回脱皮(15mm).6年目,4月14日(12日に粗い網を作ったが途中で中止)雄が精網(丹念に点検してから精液を出した)を作り,交接した〔萱嶋K50〕.メスの脱皮回数は13回で,10回脱皮後に成体になる.オスは9回脱皮(最初の1年目で6-5回の脱皮をする),8回目の脱皮で成体になる〔萱嶋AT91〕.
都市環境指標種〔新海98〕.
ツユグモ Micrommata roseum
(CLERCK,1758)
成体は10〜8月,メス12〜15mm,オス8〜10mm,北海道・本州・四国・九州.冬期は落葉中に,夏期は草間を徘徊する.1000m以上の高原に多く,平地では稀〔東海84〕.ふ化は7〜10月,幼生越冬だが,幼生の体長に個体差が大きい.10月下旬,赤斑が出る.産卵後のメスも赤変化する.オスの成体は7月頃多い.草の葉に脱皮殻がついているので,脱皮室は作らないのだろう.産室は葉を生葉をまいて作る.葉の種や枚数(1〜3枚)は様々で,まき方も簡素なものから複雑なものまで色々ある.産室の上部から偏平な卵のうを吊るす.膜は薄く半透明で緑色の卵が見える.母グモは卵のうを産室内で保護する.ふ化後,10日前後まどいをして分散する〔藤沢AT43〕.6月頃,木の葉をかがり,笹の葉を折り曲げて産室を作り,自身もとじこもって卵のうを守る〔中平AT23/24〕.マルバハギの梢葉を寄せて球状の卵室を作ったり,笹の葉でちまき状の卵室を作ったりする.母グモも卵室にいて卵のうを守っている〔中平AC15(2)〕.メス15mm内外,オス10mm内外.初夏の草原に多く,葉上を敏速に徘徊して生活す.夏期成熟す.本州・四国・九州に分布〔関口AC6(3)〕.
9月初旬,福島県産の幼体(体長7-8mm)を室内飼育,4回脱皮して12月に成体雄になった.腹部は最初は真緑色だったが,10日目から黄緑色となりタテすじの赤色が目立ってきた〔小野K69〕.
カマスグモ Thelcticopis
severa(L.KOCH,1875)
成体は5〜8月,メス19〜22mm,オス15mm,本州(近畿地方以南)・四国・九州・南西諸島
.樹枝,葉上に生息.夜間,徘徊して獲物を捕らえる.幼体にはカブラヤグモという別名がある〔東海84〕.
樹林の葉の密に重なり合った所に住む.脱皮の時は木の葉や草の葉をかがって室を作り,中で行う〔中平AT23/24〕.
脱皮室は禾本科植物の葉2枚を寄せて作る〔中平AC15(2)〕.
1975年6月,カシの葉を2枚向かい合わせた間に葉面に接着させて作成した袋で卵のうを置き,ガードしていた.118卵〔中平83〕.
○フクログモ科 Clubionidae
コマチグモ属 Chiracanthium
ムナアカコマチグモ Chiracanthium digitivorum DOEN. et STR.,1906
伊豆大島で採集〔新海69〕.
アカスジコマチグモ Chiracanthium erraticum
(WALCK.,1802)
成体は7〜8月,メス7〜9mm,オス5〜7mm,北海道.草間,葉間に生息,葉を数枚集めて住居を作る〔東海84〕.
石川県,長野県根子岳の山腹で7月メス成体を採集〔谷川・堀K55〕.
アシナガコマチグモ Chiracanthium eutittha BOES.et
STR.,1906
成体は6〜8月,メス11〜14mm,オス9〜11mm,本州・四国・九州・南西諸島.ススキや木の葉に住居を作る〔東海84〕.
6月頃,広葉樹の葉を2〜3枚ひき寄せて綴り,或いは笹の葉を折りまげて産室とし,自身もとじこもって卵のうを守る〔中平AT23/24〕.
咬まれた場合,痛みは30分位で収まった〔谷川K66〕.
カバキコマチグモ Chiracanthium japonicum BOES.et
STR.,1906
成体は7〜9月,メス12〜15mm,オス10〜13mm,北海道・本州・四国・九州.夜間草間を徘徊して獲物を捕える.産卵期は7〜8月で,ススキの葉を曲げて住居を作りその中に産卵する.子クモはふ化後,第2回脱皮がすむと親グモを食べる.日本では最も毒性の強いクモで,かまれると半日から1日程痛む〔東海84〕.
郊外から山地まで植物の葉上に生息.ススキの葉に多く,昼間はススキの葉をまげたり,他の植物の葉を集めて作った住居の中にひそんでいる.夜間に活動して昆虫を捕らえる.住居は昼間用の他,脱皮用,交尾用など,そのたびに別のススキの葉で作りかえる.成体は6〜9月.産卵期は7〜9月.1卵のう中の卵数は80〜220個,最少で48個の記録がある.卵は約10日でふ化し,子グモは数日間,親グモの周りに集まっている.第1回目の脱皮がすむと,子グモは一斉に親グモの体に食いつき,早くて3〜4時間,長くても半日で親を食べてしまう.〔森林87〕.
葉をまげて作る住居は時期により構造に違いがある.高知で6月中旬の「大きく口の開いた空室」は多くはオスの脱皮室である.6月中下旬の「密室」(産室より小型)は@若メス又は若オスの脱皮室,A若メスと成オスの同居(仕切幕はメスである),B成体雌雄の同居(交合室).同時期の「交合控室」は成オスの住居で口をおおう糸幕は薄い.6月下旬〜7月上旬の「成メス住居」ではメスがオスを待つ,オスの控室より幕が厚い.同時期の「産室」には外壁に糸かがりのしてあるもの,脱皮室を利用したもの等がある.オスは5月下旬〜6月上旬に成熟し,メスは6月中下旬に成熟する.オスはメスの前方からメスの体の下に反転して仰向きにもぐり込み,雌雄胸板を接した形になって交合する.メスは2回以上交合する.脱皮室兼交合室は産室ではない.産室には内壁に裏打ちがある.メスの最終脱皮後,産卵まで1カ月.100個内外の卵を産み,母グモは卵のうの上で守る.一週間後,母グモは牙で卵のうの上面をかみ破る.一週間後,子グモがふ化している時,開のうする.7月下旬〜8月上旬にふ化し出のうする.約一週間後脱皮する.脱皮後1〜2日して母グモの体に取付きそれを吸う.ふ化後,母グモと同居していなかった子グモは脱皮後に母グモと同居しても母グモを食わずに分散した.卵のうがルリアリに攻撃されることがある〔中平AT41/42〕.
亜成体メスは糸でしきりを作る.最終脱皮が終ると,成体オスは仕切りを咬み破り,交尾する.触肢の側胚葉をメスの生殖口にひっかけてから,移精針が伸びる〔新海明・吉田嗣郎・伊藤浩見AT98/99〕.
コマチグモの葉のまき方にも種々ある〔小澤K64〕.
袋面は北を向く〔秋元維那K77〕.冬期,幼体が枯葉や落葉から採集される〔植村AT5〕.軽井沢にて8月19日,巣内のカバキの腹部に2〜3mmの白い幼虫が取りついていた.5〜7日後にはクモを食い殺した.このイワタツツベッコウ
Homonotus iwatai は本種やエドコマチグモ C .rufulum KISHIDA やC . kompiricola DOENITZ
の巣に侵入し,クモを襲い,頭胸部背面に乗り,
片側の歩脚の1本をくわえ他端の歩脚間に自分の尾端をもって刺す.40〜60秒/回で1〜8回,まひは10分以内(多くは5〜6分)で消失する.蜂は一度触角を掃除してから巣内を歩き,クモの腹部背面に乗り産卵する.卵塊や子グモがある場合には卵のうの上からかみ,或いは食うことで全滅させる.一度産卵されたクモが再び蜂の侵入を受けた場合は2度目のハチによって最初の卵はかみとられて,新しく産みつけられる.産卵個所は腹部前端.幼虫は10mm長,3mm幅になり,クモの巣内面に懸垂して繭を作る.羽化までは10日間.成虫は7月中旬から8月上旬(越冬した幼虫が羽化したもの)と8月下旬から9月中旬に出現するという.最初の期に出現した成虫の一部は年内に成虫となるが,残りは越冬するので,翌年の7月には初夏の世代と夏の世代が混在することになる.しかし,そのような区分ではなく,越冬幼虫の羽化時期の変異によるものではないか.寄生率は浅虫における1934(7・8月)年は7・6%,1935年(7・8月)は3%,福島県川俣町(1934年,8月)では4・2%,大阪府では23%という.本種は処女生殖をする,この幼虫に寄生する蜂やクモを狩る蜂,卵寄生蜂がいる〔関口AC6(4)〕.
初夏の候主として禾本科植物の葉を折りて住居を作り,8月末に産卵す.母グモはふ化せる子グモの餌食となる奇習あり.北海道・本州・四国・九州・満洲に分布〔関口AC6(1)〕.
昭和14年7月24日,井之頭公園で百数十頭の子グモが母グモを食うのを初めて観察〔植村AC5(1)〕. 自宅で咬まれた〔諏訪哲K62,伊田信明・池田K67〕.
ヤマトコマチグモ Chiracanthium lascivum KARSCH,1879
=サチコマチグモ Chiracanthium
gratiosum SAITO〔八木沼77・BR>l
成体は7〜9月,メス9〜11mm,オス8〜10mm,全土.ヨシ,カヤ,ススキなどの葉を曲げて住居を作る〔東海84〕.
室内飼育(25℃)により,1卵のう中の60頭につき,各令期の摂食量と成長量を求めた.U令(13.7日)の1日あたりの摂食量は0・0364mg(摂食数0・35頭,成長量0.0234mg),V令(10.45日)は0.0878mg(0.50頭,0.0559mg),W令(13.09日)は0.1652mg(1.07頭,0・0853mg),X令(20.44日)0.2332mg(1.70頭,0.1081mg)でY令となる.P/F値は令の進行とともに下がるが,大体成長量の倍が摂食量である〔浜田AT55〕.
ヒメカマキリモドキ幼虫が卵を食べて育ち,産室内で繭を作って羽化する〔新開孝K67〕.
6月頃,チガヤ等の葉をまいて産室を作り,自身もとじこもる〔中平AT23/24〕.
沖縄にて10月,横10mm,縦42mmの産室に,直径8mm位の卵のう.0・6mm大の乳白色の卵が126個あった〔下謝名AT28〕.
1963年6月10日,三重県上野市で産室内のクモの腹背に幼虫が寄生,ベッコウバチ科のHomonotus iwatai
YASUMATSUであった〔橋本AC18(2)〕.
ヤサコマチグモ(ウスキコマチグモ)Chiracanthium unicum BOES. et
STR.,1906
成体は5〜7月と9〜10月の2回.メス6〜8mm,オス5〜6mm.年2化性のクモと思われる.樹木や草の葉の上を徘徊する.夜間草の上を徘徊する.本州・四国・九州〔森林87〕.
高知県春野町で8月14日,庭木のルリヤナギの葉を縦に二つ折りにして住居を作ったメスと,それを訪れるオス.メスはまだ若い〔中平AT64〕.
神奈川県平塚市にて10月20日,卵のう(1令幼体と未ふ化卵)を守る母グモ(11月30日死亡)を取る.室内の管びんで子グモを飼育.26日2令となる.ふ化した21頭中,3頭死亡している.ショウジョウバエの腹をつついて半殺しにして与える.11月5日9頭,9日4頭と減る.11月12〜13日3令.ショウジョウバエを取れるようになる.11月27日4令,12月17日5令,12月30日6令,1月14日7令でオス成体となる.餌は毎日与え,6時〜23時まで照明,室温は30℃以上だった.5月食欲減退し,6月11日死亡〔稲葉ほかK54〕.
大磯町にてハコネウツギの葉の筒状住居に♂成体,すぐ隣の葉の筒状住居には♀亜成体〔池田K63〕.
フクログモ属 Clubiona
冬期ミノムシのミノを越冬巣として利用するものがかなりある〔徳本・鍛冶AT82〕.
アカギフクログモ Clubiona akagiensis
HAYASHI,1985
5〜10月,メス7.2mm,オス6.8mm,本州.標高1000〜1400mの落葉樹林内の低木下リーフ層より採集される〔林AC33(2)〕.
北海道から記録〔林AC43(1)〕
キタフクログモ Clubiona amurensis
MIKHAILOV,1990
メス4.4mm,オス3.9mm,3月に北海道上士幌町のダケカンバの樹皮下で越冬していた.♂を初記載する.既知分布域はソ連のアムール地方である〔松田AT97〕.
台湾産フクログモの一種 Clubiona aservida ONO,1992
台湾で,3月に♂,10月に♀採集〔小野AC43(1)〕
バンドウフクログモ Clubiona bandoi
HAYASHI,1995
オス4.4mm,メス5.3mm.徳島・愛媛・高知から記録.小野〔AC41〕がClubiona kasanensis
PAIKと同定したのは本種だった〔林AC44〕. 韓国産種に同定〔小野AC41(2)〕.
ダケカバフクログモ Clubiona basarukini
MIKHAILOV,1990
メス4.8mm,3月に北海道上士幌町のダケカンバの樹皮下で越冬していた.既知分布域はサハリン〔松田AT97〕.
台湾産フクログモの一種 Clubiona bonicula ONO,1994
♂のみ採集〔小野AC43(1)〕
カシワフクログモ Clubiona coerulescens
L.KOCH,1867
北海道上士幌町カシワ林にて落下した殻斗内に1♀(体長8.5mm)が住居を作る.中国・ソビエト・ヨーロッパに分布〔松田AT96〕
コフクログモ Clubiona corrugata BOES.et
STR.,1906
広葉をまいて(数枚集めて)産室を作る.高山では石の下に袋状住居を作る場合がある〔新海69〕.
多摩川河口の河川敷では6-8月に葉面を巻いて生息.雌雄同居は6-7月.宮城県名取川河川敷にもいる〔池田98〕.
マダラフクログモ Clubiona deletrix O.P.-CAMBRIDGE,1885
日本からはClubiona maculata
SONG et CHEN,1979 として記録された(八木沼・新海AT74). 中国・台湾からも記録〔小野AC43(1)〕.
多摩川河口の河川敷では4月に雌雄が採集〔池田98〕.
ミチノクフクログモ Clubiona diversa
O.P.-CAMBRIDGE,1862
メス4mm内外,オス3〜3.5mm,山麓帯のクマザサの落葉中で採集.宮城県にて5〜6月頃採集〔片岡AC27S〕.
エゾフクログモ Clubiona ezoensis HAYASHI,1987
北海道・極東ロシアから記録〔林AC43(1)〕
カギフクログモ Clubiona hummeli
SCHENKEL,1937
神奈川県(平塚市,座間市),広島県および韓国で記録された〔池田K62〕.日本産の正体はカギフクログモ Clubiona
pseudogermanica SHENKEL,1936と判断した〔林AC43(1)〕.
イハラフクログモ Clubiona iharai
ONO,1995
広島県山県郡芸北町長者原にて,6月26日雄が採れた.体長4.6mm,雌は未知〔ONO,AC44〕.
ハコネフクログモ Clubiona ikedai
ONO,1992
箱根町大涌谷の10月の雌雄で記載.雄5.9mm,雌7.2mm〔小野AC41(2)〕.
シマフクログモ Clubiona insulana ONO,1989
西表島で12月に♂採集,台湾でも記録.♀は未知〔小野AC43(1)〕
ヤマトフクログモ Clubiona japonica
L.KOCH,1878
成体は1年中,メス8〜13mm,オス8〜10mm,本州・四国・九州・南西諸島.夜間に樹葉間や草間を徘徊する.冬期樹皮下に袋状住居を作る〔東海84〕.
座間市でヒノキ等のわら巻き(地上160cm)に多い〔諏訪哲K62〕
ハマキフクログモ Clubiona japonicola BOES. et
STR.,1906
成体は5〜9月,メス7〜9mm,オス6〜8mm,全土.水田に多いが,草原,山道の草間などにも生息する.昼間は住居に潜み,夜間徘徊する〔東海84〕.
台湾・日本・中国・韓国・シベリア・タイに分布〔小野AC43(1)〕. 産卵期は5〜6月と8〜9月,2回の発生が見られる(中平61)〔森林87〕.
多摩川河口の河川敷でも5月と8月に卵のうガード(卵室は葉をちまき状に巻く)が確認された.ヨシ原の冠水する方にいる〔池田98〕.
高知県で5月20日採集の卵のうにイワタクモヒメバチの幼虫4頭がとりついていた.卵を食べるのである.22日午後8時さなぎ化し,30日朝羽化した.岩田75によれば,寄生数は1〜9個,産卵は産房の外から行われ,卵は7〜10日で成体となる,6月羽化した個体は宿主がいるが,7月羽化個体はどうなるのかとある.ハマキフクロは成体・産卵の時期が5〜6月,8〜9月である.年2世代であろう.ヨツボシショウジョウグモにもこの蜂は寄生する.1卵のうの卵数は50〜100個〔中平AT74〕.
普通,水辺に多く,イネやマコモの葉を巻くことが多い.3月下旬,亜成体〔植村AT5〕.
産室の作り方は,適当なススキ葉の辺に糸を付着させ,その糸を引きながら,下方へ下がり,ある点に付着させる.葉の辺を糸でかがっていく.葉の先端の途中まで糸でかがり,先端を上方へまげてゆく.糸で付着する〔大利AT29〕.
6月5日18時10分,東京都にて,交接.オスは全脚でメスを抱きかかえ,腹部を震わす.メスは硬直状態.19時50分,オスが離れると,メスは動き出し,脱皮室に入る.オスはメスの巣をでてゆく.メスは巣内を往来した後,綿密な巣作りを始める〔大利AT29〕.
イネ,チガヤ等で産室を作る.それが枯れるにつれ,母グモは脱出し始める.62%が脱出した.葉がねじれて空間がせまくなるためか〔中平AT22〕.
枯草の根元等で,幼体ないし亜成体で越冬.オスは成体が多い〔中平AT23/24〕.
禾本科植物の葉をちまきに巻いて卵のうを置き,母グモ自身もその中にとじこもっている〔中平AC15(2)〕.
宇都宮市峰町の水田(6月にスミチオン乳剤散布)で,8〜11月成体,越冬は幼体で,本田内の土壌中や畦畔で行う.9月末から10月にかけて1u当たり4〜5頭の密度〔浜村AC22(2)〕.
倉敷市にて産室に4型あり.1卵のう中に59,64,65,79,84,85,89,89,94,126卵〔白AC7(3/4)〕.
ヤハズフクログモ Clubiona jucunda
(KARSCH,1879)
成体は5〜8月,7〜8mm,全土.夜間に樹皮上や草間を徘徊する.冬期樹皮下に袋状住居を作る〔東海84〕.
フクログモの中では最も黄色い.冬は樹皮の下から採集される〔森林87〕.
千葉県立東葛飾高校で10月上旬に松に巻いたわら巻きを2月に調査,優占種であった.ほぼ亜成体越冬〔浅間AT89〕.
松江で右側の前側眼,後中眼,後側眼の3眼が欠失した個体が採集〔景山AT40〕.
カヤシマフクログモ Clubiona kayashimai ONO,1994
台湾産♀4mm,♂は未知〔小野AC43(1)〕.
ヒメフクログモ Clubiona kurilensis BOES. et
STR.,1906
成体は1年中,メス7〜9mm,オス4〜6mm,北海道・本州・四国・九州.水田に生息.イネ科植物の葉を折って住居を作る〔東海84〕.
関東北部の水田にはハマキフクログモよりも多い.冬期,ヨシの切り口や河原の石の下などで採集できる.5月初旬に採集したメスは5月14日産卵,袋巣を作り,その中で卵のうを作る.5月29日ふ化.まどい個体数は20頭.6月4日卵のう内で1回目の脱皮.6月6日出のう,分散.親はここまで卵のうを守る.7日,葉下に隠れ姿がみえなくなる.8月30日,31日メス成体3頭,オス成体2頭を発見.4ケ月程度で成体になる.年2〜3世代と推定〔林・千国84,AT84〕.
台湾産フクログモの一種 Clubiona kuanshanensis ONO,1994
♀のみ,シフテイングで採集された〔小野AC43(1)〕
クマダフクログモ Clubiona kumadaorum
ONO,1992
神奈川県足柄上郡山北町で10月採集の雄をもとに記載.雄5.5mm.雌は未知〔小野AC41(2)〕.
クロサワフクログモ Clubiona kurosawai
ONO,1986
長野県軽井沢から6月1日,♂♀で記載,台湾からも記録〔小野AC43(1)〕.
トビイロフクログモ Clubiona lena BOES. et
STR.,1906
成体は5〜9月,7〜8mm,本州・四国・九州.草原,河原や山道の草間に生息する.個体数は多い〔東海84,森林87〕.
早春クヌギ林の落葉中にて採集できる〔林AT83〕.
高知県鏡村で6月5日,ヤブマオの葉を筒状に巻いて産室とする.卵のうは直径7mmの白色円盤状.袋は大変薄く,卵粒が透いて見えた.卵数58〔中平AT64〕.
シイの落葉を2枚綴り合わせて,その間に偏平な袋を作り,越冬していた.7mm前後の亜成体〔植村AT5〕.
山形県赤湯町にて幼体から成体にかけて空中移動する優占種〔錦AC20(1)〕. ウロコアシナガグモを捕食〔池田K66〕.
キフクログモ Clubiona lutescens WESTRING,1851
大野正男による.東京都内産.詳細不明〔新海AC27S〕.
マダラフクログモ Clubiona maculata SONG et CHEN,1979
=Clubiona deletrix
O.P.-CAMBRIDGE,185
1979年記載の新種.大阪府立大学構内にて越冬中のオオミノガのミノから成体まで各段階の個体が多数みられた〔田中・西田AT75〕.
ニシカゼフクログモ Clubiona mandschurica
SHENKEL,1953
オス(5.6-6.4mm),6月に秋田県・石川県から記録,中国・韓国にも分布〔小野AC43(1)〕.
マユミフクログモ Clubiona mayumiae ONO,1993
Clubiona propinqua (林1987)やClubiona
pseudogermanica (MIKHAILOV,1991)
は誤同定.北海道定山渓から10月マレーズトラップで♀採集,北海道・韓国.極東ロシアに分布〔林AC43(1)〕.
ヨモギフクログモ Clubiona neglectoides BOES. et
STR.,1906
6月オス成体採集(群馬県),佐賀県,新潟県で記録〔林AT83〕.
カギフクログモ Clubiona pseudogermanica SHENKEL,1936
Clubiona hummeli
(PAIK,1990)やClubiona salictum (NAMKUNG et KIM,1987)
は誤同定で実は本種と判断した.筑波山から9月マレーズトラップで♂採集,5月に♀採集.日本・韓国・中国に分布〔林AC43(1)〕
オガタフクログモ Clubiona ogatai
ONO,1995
オス5.3mm,メス6.2mm.愛知県北設楽郡設楽町段戸裏谷(960m)で9月に雌雄採集された.クマダフクログモに近縁〔ONO,AC44(1)〕
マイコフクログモ Clubiona rostrata PAIK,1985
=Clubiona maikoae
HAYASHI,1985
成体は4〜6月,メス6mm,オス5.2mm,本州.標高400〜1400mの落葉樹林内の低木下リーフ層より採集される〔林AC33(2)〕.
神奈川県(二宮市,座間市)では平地でも採れる〔池田K62〕.
トヨヒラフクログモ Clubiona sharkeyi
HAYASHI,1994
北海道定山渓から10月マレーズトラップで♀6.5mm採集〔林AC43(1)〕.
ブシフクログモ Clubiona subinterjecta
SYRAND
北満洲・黒龍江岸に自生しているアシ類似の葉を巻いて生息,メス6・5mm〔仲辻AC7(1)〕.
台湾産フクログモの一種 Clubiona taiwanica ONO,1994
♀のみ,スイーピングで採集された〔小野AC43(1)〕
タニカワフクログモ Clubiona tanikawai ONO,1989
西表島で3月に♂♀採集,台湾でも記録〔小野AC43(1)〕
キタカゼフクログモ Clubiona trivialis
C.L.KOCH,1843
7月オス成体採集(北海道羊蹄山1700-1800m),ヨーロッパからシベリア・北アメリカに分布〔小野AC43(1)〕.
ムナアカフクログモ Clubiona vigil
KARSCH,1879
成体は6〜8月,メス10〜12mm,オス8〜9mm,全土.夜間に樹葉間や草間を徘徊する.冬期樹皮下に袋状住居を作る〔東海84〕.
スギ,ヒノキなどの樹皮の隙間で越冬しているのがよく見られる.郊外から山地まで生息.成体は5〜9月,産卵期は6〜8月で植物の葉をまげてその中に産卵する.1卵のう中の卵数は30〜70個.昼間は葉の上に袋状の住居を作ってひそむ〔森林87〕.
5月6日,ミカンの葉巻の中に産卵.卵袋の上に被うように守る〔大利AT38〕. 越冬個体はメスは亜成体,オスは成体がふくまれていた〔植村AT5〕.
腹柄に巻き付きヒメカマキリモドキ幼虫が寄生〔新開孝K67〕.
ヤギヌマフクログモ Clubiona yaginumai
HAYASHI,1989
群馬県高崎山で6月24日♂♀で記載,伊豆市山・台湾(体長4mm)からも記録された〔小野AC43(1)〕
ウコンフクログモ Clubiona zilla DON.et
STR.,1906
成体は11〜4月,メス2.5〜3mm,オス2〜2.5mm,本州・九州.冬期は針葉樹の樹皮下に袋を作る.夏期生態不明〔東海84〕.
ウエムラグモ科 Liocranidae
コウライタンボグモ Agroeca coreana NAMKUNG,1989
雄3.5mm、京都市にて記録〔林AC41(2)〕.
東京都五日市横沢入で,2月に♂成体〔新海・笹岡K66〕.
カムラタンボグモ Agroeca kamurai HAYASHI,1992
雌雄2mm、5月に京都市にて記録〔林AC41(2)〕.
ミヤマタンボグモ Agroeca montana HAYASHI,1986
群馬県赤城山から記載〔林86〕.
オビジガバチグモ Castianeira shaxianensis
GONG,1983
奈良・愛知・鳥取・大阪で記録.♂は未知〔八木沼AT98/99〕.
イタチグモ Itatsina praticola (BOES. et
STR.,1906)
成体は4〜6月,9〜11月,7〜9mm,全土.落葉,土壌中を徘徊する〔東海84〕.
成体は4〜6月と9〜11月の2回ある.2化性かどうか不明.卵のう・卵数も不明.落葉の間,土壌のすき間,石や倒木下で生活する.落葉の表面に糸で住居を作ることもある.獲物はトビムシ,ワラジムシ,昆虫の幼虫などで体の堅い動物は好まない〔森林87〕.
タンボグモとイタチグモは同種〔八木沼AC4(3)〕. 伊豆七島の地上徘徊性種として夏期にチビコモリグモと共によく採集された〔国見AT87〕.
BOES.etSTR. (1906)はワシグモ科としてTalanites dorsilineatus (タンボグモ)をイタチグモ科としてAgrocea
praticola を記載したが,
同物異名であろう.岸田はdorsilineataはワシグモ科ではないとしてItatsina属とした(1930).成熟するのは秋で10月頃落葉に卵のうを産みつける〔植村AC3(1)〕.
ツヤグモ Micaria claripes DONITZ et STR.,1906
=イナズマウラシマグモ
トビイロケアリの生活する地区に生活する.硬い卵袋を石の下面に作る.第1脚を振って歩く.夜間,アリを攻撃するようだ〔小松AC17(2)〕.
オトヒメグモ Orthobula crucifera BOES. et
STR.,1906
成体は1年中,1.5〜2mm,本州・四国・九州・南西諸島.落葉,地表を徘徊する.5〜6月産卵する〔東海84〕.
アンネンムナアカグモは原記載としない〔八木沼AT73〕. アンネンムナアカグモOedothorax anneni KISHIDA
として記載〔安念AC6(4)〕. 都内各地のベートトラップにスソグロサラグモと共に多数捕らえられた〔山川K38〕. 石や石垣の上で採集〔安念AC6(3)〕.
イナズマウラシマグモ Phrurolithus claripes (DOEN. et STR.,1906)
草間を徘徊する〔新海69〕.
成体で3mm内外,体は黒褐色で腹部に2対の白色帯状斑紋も持つ.尾端にも1対の白点がある.地上の石下などに住んでいる.歩行の時は第1脚を上下に振る.3月上旬亜成体を採る〔植村AT5〕.
ツヤグモ Micaria claripes DONITZ et
STR.として,トビイロケアリの生活する地区に生活する.硬い卵袋を石の下面に作る.第1脚を振って歩く.夜間,アリを攻撃するようだ〔小松AC17(2)〕.
神奈川県箱根,大涌谷の個体群で体長平均メス3・08mm,メス2・43mm〔池田89〕. 埼玉県秩父東京大学演習林でも採集された.関東では山地性〔池田98〕.
コムラウラシマグモ Phrurolithus komurai
YAGINUMA,1952
成体は11〜6月,4〜5mm,本州.落葉中,倒木や石の下などに生息する〔東海84〕.
アカアリの巣上部をおおう石の下面で採れる〔小松AC17(2)〕.
1月21日,丹沢一の沢林道付近の樹皮下で越冬,他にキハガカニグモ,コマツエンマグモ,昆虫も見られた〔熊田K38〕.
ツキミノウラシマグモ Phrurolithus luna
KAMURA,1994
オス2.3mm,メス3.5-4.1mm,2月に西表島産で記載〔加村AC43(2)〕
ヤマネコウラシマグモ Phrurolithus lynx
KAMURA,1994
オス2.4-4.0mm,メス3.2-4.4mm,2-3月に西表島産で記載〔加村AC43(2)〕西表島で1月に雄,1・3月に雌〔谷川K70〕.
ウラシマグモ Phrurolithus nipponicus
KISHIDA,1914
成体は5〜7月,メス3〜3.5mm,オス2.5〜3mm,本州・四国・九州.落葉,土壌中を徘徊する.アリの巣の付近に多い〔東海84〕.
神奈川県平塚市で6月24日交接,6月28日卵のう作成,7月2日ふたつめの卵のうを作る.7月19日1頭出のうし,7月21日3頭出のうした.同日に採集した他のメスの個体で5つ卵のうを作ったものもある.1卵のう中の卵数は平均2個であった〔杉崎K52〕.
乾燥に弱い.小田原市個体群で平均体長メス3・13mm,オス2・44mm.成体は5〜7月,産卵は6〜7月,飼育下で産卵する卵のう数は3〜5個,卵のう長径6・5〜7・5mm,出のう数は4〜6頭.越冬態は亜成体〔池田・稲葉〕.
1991年5月18日,川崎市生田緑地で1♀に3♂がからんでいた〔熊田K63〕.
ヤバネウラシマグモ Phrurolithus pennatus
YAGINUMA,1969
成体は5〜8月,3.5〜4.5mm,本州.6〜7月に個体数が急増し,各地で普通に見られる時期がある〔東海84〕.
厚木で採集した雌が7月24日に産卵(卵塊は黄色で偏平な卵のう,シートの表面に土くれが付着されていた),7月31日ふ化,8月10日出のう(4頭).7月30日産卵,8月6日ふ化,8月16日出のう(7頭)〔鈴木勝K46〕.
捕食行動;餌の方向に向き直りとびかかるが,取り逃がすことも多い.ショウジョウバエ1頭を40〜60分で食べる.食欲がない時はハエが脚の上を通っても取らない.脱皮行動;ドーム型の脱皮室を作る.脱皮前には1〜3脚を前方へ伸ばす.体を上下動させるとやがて背甲が外れる(頭の先の方から外れる).体を丸め腹部を抜く.脱皮殻を外す.37〜51分かかる.交接行動;オスはメスを探す時,触肢を地面にたたくように震わせている.メスを見つけるとオスはメスの後方から体によじ登る.交接時間は左右合わせて2時間程.一度交接したオスでも交接するが,一度交接したメスはオスから逃げた.7月29日,千葉県内浦山でウラジロガシの根の奥に産卵しているメスがいた.本種はしおり糸を引かない〔稲葉AT87〕.
小田原市の個体群の平均体長オス2・90mm,成体は6〜8月,産卵は7月中旬〜8月中旬.産卵する卵のう数は2個まで確認.卵のう長径は7〜8mm,出のう数は5〜8頭,卵のう内で3回脱皮していると思われる.越冬態は幼体〔池田・稲葉〕都市環境指標種〔新海98〕.
キレオビウラシマグモ Phrurolithus coreanus
PAIK,1991
小田原個体群で平均体長メス2・61mm,オス2・16mm.成体は5〜7月(ウラシマグモより一週間早い),産卵期は6〜7月(ウラシマグモより一週間早い).飼育下で産卵する卵のう数は3〜5個.卵のう長径6〜7・5mm,出のう数3〜4頭.越冬態は亜成体.ウラシマグモと同所的に生息するが生殖器から明らかに別種〔池田・稲葉〕.
韓国でメスにより記載された.オスの出現は5月初旬,メスは5月中旬〔池田AT98/99〕.
ヒトオビウラシマグモ Phrurolithus unifasciger (BOES.et STR.,1906)
五日市町養沢で採集〔新海77〕.
ヒトオビトンビグモではないか〔池田〕.
ネコグモ Trachelas japonicus BOES. et
STR.,1906
成体は1年中,3〜4mm,北海道・本州・四国・九州.草間,落葉中,果樹園や茶畑の地表を徘徊する〔東海84〕.葉裏に管状に近い袋状住居を作る〔新海69〕.
金沢の調査で越冬巣としてオオミノガのミノをよく利用している〔徳本・鍛冶AT82〕. クサグモの古巣で越冬中のものあり〔松山他AT43〕.
7月12日長崎,葉巻の中に産卵〔大利AT38〕.
○シボグモ科Ctenidae
シボグモ Anahita fauna
KARSCH,1879
成体は5〜9月,メス9〜11mm,オス8〜10mm,全土.草原,林内の地表,落葉中,石の間などを徘徊する.産卵期は7〜8月,葉上や落葉に卵のうを作る〔東海84〕.
市街地の公園から山地まで広く生息〔森林87〕.
直径約10mm.卵のうは内のう(卵のう)と外のう(卵室)の二重構造.外のう下面の円形の幕(直径約20mm)を作り,その上に上方に口の開いたつぼを作る.この内のうに卵を200個ほど産みこむ.内のうの口を閉じ,外のうの上幕を作り,母グモは卵のうを抱えて守る〔中平AT74〕.
6月中旬頃産卵,7月中旬に子グモが出る〔中平AT23/24〕.
ヤエヤマシボグモ Ctenus yaeyamaensis
YOSHIDA,1998
オス11.0mm,メス12.7mm,八重山諸島(石垣島・西表島),台湾に分布.Ctenus(ミナミシボグモ属)は日本初記録〔吉田哉AC47(2)〕.
○ミヤマシボグモ科Zorodae
ミヤマシボグモモドキ Zora nemoralis
(BLACKWALL,1861)
成体は5〜7月,メス3.5〜5mm,オス2.5〜3.5mm,本州.1000m前後の高原の草間,落葉中を徘徊する〔東海84〕.
シボグモモドキ Zora .spinimana
(SUNDEVALL,1833)
成体は5〜7月,メス5〜6mm,オス4〜4.5mm,北海道・本州.1000m前後の高原の草間,落葉中を徘徊する.局地的に多産する傾向がある.ヨーロッパ共通種〔東海84〕.
利尻島の笹原の地面を徘徊.北海道では平地に普通〔熊田K44〕.
○ワシグモ科 Gnaphosidae
マユミテオノグモ Callilepis nocturna
(LIMMAEUS,1758)
メス5・2mm,オス4・4mm.北海道で6月に成体.欧州に広く分布.フタホシテオノグモによく似ているが,触肢・外雌器で区別できる〔加村AT89〕.
5月に♀をベートトラップで記録〔小野AC43(2)〕
フタホシテオノグモ Callilepis schuszteri
(HERMAN,1879)
メス5・6〜7mm,オス4・4〜4・9mm.韓国・中国・欧州に分布.5月下旬〜7月に成体〔加村AT87〕.
ハエミノチャクロワシグモ Cladothela auster
KAMURA,1997
雄6.0mm,雌6.2-9.1mm,西表島を模式産地として記載.石垣島・波照間島にも生息.2-3月に雌雄成体.10月の雌もいる〔加村AC46(2)〕
エダイボグモ Cladothela boninensis
KISHIDA,1928
雄7.7mm,雌6.6-9.1mm,小笠原諸島を模式産地として記載.6月に雌雄成体〔加村AC40(2)〕
チャクロワシグモ Cladothela oculinotata (BOES. et STR.,1906)
= Drassodes
oculinotatus BOES.et
STR.,1906
雄6.0-7.8mm,雌6.4-8.5mm,千葉・東京以西〔加村AC40(2)〕成体は5〜8月,7〜9mm,本州・四国・九州.林内の落葉中,山道の草間,地表を徘徊する〔東海84〕.
ヒメチャワシグモ Cladothela parva
KAMURA,1991
雄4.6-5.5mm,雌4.7-5.4mm,京都市京大農場を模式産地として記載.6-7月に雌雄.東京・大阪・奈良・兵庫・愛媛・福岡・西表島に分布〔加村AC40(2)〕
ムナキワシグモ Cladothela unciinsignita (BOES. et
STR.,1906)
雄4.3-6.7mm,雌6.0-8.0mm,東京・大阪・三重・兵庫・福岡・佐賀〔加村AC40(2)〕
アカクロワシグモ Drassodes depilosus DOEN.et STR.,1906
伊豆大島で採集記録.以来記録なし〔新海69〕.
イサゴワシグモ Drassodes lapidosus
(WALCKENAER,1802)
成体は6月,メス12・4mm,オス10mm,北海道・本州(長野県等の高地)〔林AT85〕.
北海道大雪山黒岳約2000mからベ-トトラップで7月に雌雄を記録,ヨーロッパ産とほんの少し違いがあるが変異の範囲〔小野AC43(2)〕.
ウブゲワシグモ Drassodes pubescens
(THORELL,1856)
メス8.8mm,長野県菅平にて7月29日採集,ヨ-ロッパおよびチベットにも分布〔加村AT100〕
トラフワシグモ Drassodes serratidens
SCHENKEL,1963
成体は1年中,メス11〜13mm,オス8〜10mm,本州・九州.草原,山道などの地表,落葉上を徘徊する〔東海84〕.
エビチャヨリメケムリグモ Drassyllus sanmenensis PLATNICK et SONG,1986
エビチャケムリグモ
Zelotes praeficus
L.KOCHとされたものである〔八木沼86〕.オス5・4〜6・8mm,メス4・6〜8・2mm,北海道・本州・四国・九州・中国に分布.5〜11月に成体採集〔加村AC35(2)〕.
幼体に蟻卵を与えると食べる〔稲葉K57〕.
ヤマヨリメケムリグモ Drassyllus sasakawai
KAMURA,1987
オス5・2〜7・1mm,メス5・6〜7・9mm.本州・九州に分布.4月下旬〜8月に成体〔加村AC35(2)〕.北海道からベートトラップで記録〔小野AC43(2)〕.
チクニヨリメケムリグモ Drassyllus shaanxiensis PLATNICK et
SONG,1986
中国産の♀により記載された.♂の報告は千国1989による.メス3.9-6.4mm,オス6.4mm.長野県・東京都・福井県から記録〔加村AT95〕.
北海道からベートトラップで7月にメスを記録〔小野AC43(2)〕.
ヒメヨリメケムリグモ Drassyllus yaginumai
KAMURA,1987
オス4・8〜5・9mm,メス5・3〜7・2mm.京都で6〜7月に成体採集〔加村AC35(2)〕.
アカギメキリグモ Gnaphosa akagiensis
HAYASHI,1994
オス5・9mm,メス7・4mm.群馬県赤城山・森林公園で5月に成体採集〔林AC43(2)〕.
カワラメキリグモ Gnaphosa kamurai OVTSGARRENKO,PLATNICK et SONG,1992
=Gnaphosa
alberti SCHENKEL,1963として再記載.北海道,本州の河原の石の下に生息〔加村1988〕. 日本産のものは新種だった〔加村AC42(1)〕.
沖縄県名護市の海岸で満潮線と植物の生え際の玉砂利に生息〔谷川K60〕. 北海道からベートトラップで記録〔小野AC43(2)〕
メキリグモ Gnaphosa kompirensis BOES.et
STR.,1906
成体は1年中,8〜10mm,全土.地表徘徊性〔東海84〕.
石や落葉の間,地表を歩き回る.河原の石の隙間に特に多く見られる〔森林87〕.畑地の塵芥・土塊下に住む.初生クモ・幼体・亜成体で越冬〔中平AT23/24〕.
北海道からベートトラップで記録〔小野AC43(2)〕
アシハラメキリグモ Gnaphosa primorica OVTSHARENKO,PLATNICK et
SON,1992
千葉県柏市手賀沼湖畔にて雄発見.単眼2個の奇形だった〔小野・工藤泰AC45(1)〕.
モリメキリグモ Gnaphosa potanini SIMON,1895
Gnaphosa silvicola
KAMURA,1988として記載〔加村88Akitsu97〕. 群馬県から記録,モンゴル・ソ連東部など東アジアに分布〔林AC43(2)〕.
シベリアメキリグモ Gnaphosa sticta
KULCZYNSKI,1908
北海道の約2000mの高地からベートトラップで記録,シベリア東北部にも分布〔小野AC43(2)〕
キタグニハイタカグモ Haplodrassus
cognatus (WESTRING,1862)
成体は7月,雌10.4mm,,北海道上士幌町.全北区に広く分布する〔加村AC44(2)〕.
カズサハイタカグモ Haplodrassus
kanenoi KAMURA,1995
成体は5月,雌6.4-9.6mm,雄6.4-7.1mm,千葉県木更津市から3月雌雄成体〔加村AC44(2)〕.
ハイタカグモ Haplodrassus
signifer (C.L.KOCH,1839)
成体は5月,メス7・6mm,オス5・9mm,北海道.全北区に広く分布する〔林AT85〕.
ヒトオビトンビグモ Hitobia unifascigera (BOES. et STR.,1906) =Poecilochroa
unifascigera (BOES.et
STR.,1906)
成体は6月と9月,メス5・4〜6・4mm,オス3・9〜4・2mm.樹上生活をすることが多いようだ〔加村AT85〕.
新属Hitobiaを立てた〔加村AC41(2)〕.
シノノメトンビグモ Hitobia asiatica (BOES. et STR.,1906)
= Callilepis asiatica
BOES. et STR.,1906
= Berlandia asiatica
雄3.9-4.3mm、雌5.6-7.8mm.東京・神奈川・静岡・石川・大阪・岡山・山口で7-8月に記録〔加村AC41(2)〕
フタオビトンビグモ Hitobia yasunosukei
KAMURA,1992
雄は未知.雌は6.0mm.沖縄県本部半島で6月に採集.千国の図鑑のトンビグモの一種〔加村AC41(2)〕.
ヨツボシワシグモ Kishidaia albimaculata
(SAITO,1934)
成体は7〜8月,メス7〜9mm,オス6〜6.5mm,北海道・本州・四国・奄美大島.山道の落葉上,地表を徘徊する.個体数は比較的少ない〔東海84〕.
オス5〜6・5mm.成体は6〜8月.草の間,落葉の中,地表を歩き回るが,ワシグモ科には珍しく葉の上にいることが多い.草の葉を曲げて産室を作る〔森林87〕.
韓国にも分布〔加村AT87〕.
梶が森にてカバキコマチグモの脱皮室の空いたのに産卵して守る(6月26日).イタドリやヒヨドリバナの葉を折り曲げて,出入り口のある住居兼産室を作り,その奥に卵のうを置いて守る(7月3日)〔中平AT43〕.
ヒタキグモ Leptodrassus nipponicus KISHIDA,1913
品川で採集記録(1939年)〔新海69〕.
タカネツヤグモ Micarina alpina
L.KOCH,1872
オス3.6mm(9月),メス4.3mm(7月),大雪山黒岳,約2000mでベートトラップで記録,全北区に分布〔小野AC43(2)〕.
ヒゲナガツヤグモ Micaria dives
(LUCAS,1846)
メス2.6-3.0mm,オス2.8mm.触肢が長く,腹部側面に白班.ヨーロッパと中国に分布.兵庫県で記録〔加村AT95〕
ヤマトツヤグモ Micaria japonica HAYASHI,1985
〔林1985,Proc.Jpn.Soc.syst.Zool〕
チビツヤグモ Micarina pulicaria (SUNDEVALL,1831)
オス3.9mm,北海道羅臼岳で8月〔加村at100〕.
8月,大雪山,約900mでベートトラップで記録,全北区に分布〔小野AC43(2)〕.
ヤマトフトバワシグモ Odontodrassus hondoensis
(SAITO,1939)
〔加村,1987Proc.Jpn.Soc,syst.Zool〕
ミナミフトバワシグモ Odontodrassus javanus
(KULCZYNSKI,1911)
南硫黄島から6月に♀を記録〔加村AT95〕.
タソガレトンビグモ Phaeocedus braccatus
(L.KOCH,1866)
オス4・2mm.岡山県苫田郡奥津町・長野県諏訪市から記録.7月に雄成体採集〔加村AC44(1)〕.
ホシジロトンビグモ Sergiolus hosiziro (YAGINUMA,1960)
=Poecilochroa hosiziro
YAGINUMA,1960
メス6・1〜7・9mm,オス5・1〜5・3mm.韓国にも分布.6月に雌雄成体採集(京都・大阪・神奈川)〔加村AT87〕.
Sergiolus(ブチトンビグモ)属に転属〔加村AC47(2)〕.
マエトビケムリグモ Sernokorba pallidipatellis (BOESENBERG et
STRAND,1906)
=Zelotes pallidipatellis (BOES.et
STR.,1906)
成体は5〜8月,6〜8mm,本州・四国・九州.山道の落葉上,地表を徘徊する〔東海84〕.
メス6〜8mm,オス5〜7mm.成体は5〜6月と9〜10月.産卵期,卵のうの形,卵数は不明である.昼間は落葉,倒木,石の下などにひそんでいる.獲物に出会うと前脚でかかえこむようにして捕らえる〔森林87〕.
新属Sernokorbaを立てた〔加村AC41(2)〕.
トラフグモ Scotophaeus striatus KISHIDA
丹沢で採集〔山川・熊田73〕.
タイプ標本がない.トラフワシグモと同種の可能性がある.学名は無効とする〔八木沼AT82〕. 5cm位の分厚いタナ網を張っていた〔松山他AT43〕.
ナンゴクケムリグモ Trachyzelotes kulczynskii
(BOSENBERG,1902)
雄3.7-4.3mm,雌4.2-6.0mm.2-3月に雌雄成体.西表島・石垣島・与那国島に分布〔加村AC(2)〕.
カバキケムリグモ Urozelotes rusticus (L.KOCH,1872)
=Zelotes rusticus
(L.KOCH,1872)
=Drassodes pater BOESENBERG et STRAND,1906
=ハイバラワシグモ Drassodes rotundifoveatus BOES. et STR.,1906
メス8-9mm,オス7-8mm,成熟期は7-8月,本州・九州.人家付近の地表を徘徊〔千国89〕.屋内徘徊性のクモである.カバキコマチグモの色と似るがやや淡色.(British
Sp.112にあり)〔新海77〕. 6〜7月頃,家の中を調査すると得られる〔林AT82〕.
Urozelotes属に転属.ハイバラワシグモは佐賀・金毘羅産で記載された〔加村AC47(2)〕.都市環境指標種〔新海98〕.
クロチャケムリグモ Zelotes asiaticus (BOES. et
STR.,1906)
成体は1年中,メス7〜8mm,オス5〜6mm,本州・四国・九州.山道の落葉上,地表を徘徊する〔東海84〕.
北海道からも記録,韓国・中国にも分布〔小野AC43(2)〕.沖縄県・西表島でも採集された〔加村AC48(2)〕.
メス5〜8mm,オス4・5〜6mm,落葉の間,地表を歩き回る〔森林87〕.
メキリグモに次いで採集例が多い.春から秋にかけて乾いた落葉の中で得る〔林AT82〕.
京都市深泥池湿原にて成体は春・秋,亜成体は春に出現,春の幼体は小さく,夏にかけて大きく,秋には再び小さな個体が現れる.飼育の知見と合わせて,5〜7月に産卵,17〜34日後出のう,幼体は秋の終わりまである程度成長し(2-5齢),越冬に入る.翌春,成長を始め,夏に亜成体,秋に成熟し(8回脱皮),成体越冬の後,春に交接し,その後産卵.2年1化〔加村AT87,AC42(2)〕.
神奈川県平塚市で6月24日に採集,飼育下で7月11日産卵.親は18日死亡,31日7頭出のう(2令),8月19日脱皮して3令となる.9月8日4令脱皮,9月21日5令脱皮,10月4日6令脱皮〔渋谷K52〕.
タイリクケムリグモ Zelotes cavaleriei SCHENKEL,1963
6月20日雌採集,屋内徘徊性〔林AT82〕.
ドナンケムリグモ Zelotes donan KAMURA,1999
オス4.3mm,メス5.4mm,与那国島で採集〔加村AC48(2)〕.
チビケムリグモ Zelotes exiguus (MULLER et
SHENKELL,1895)
メス3.5mm,福岡県にて採集,ヨーロッパおよび中国に分布〔加村AT100〕
ツヅラケムリグモ Zelotes flexuosus
KAMURA,1999
オスは未知,メス4.5-6.4mm,沖縄島で採集・記載.一見ケムリグモらしくない,ミヤコケムリグモやリュウキュウケムリグモに似る〔加村AC48(2)〕.
ミヤコケムリグモ Zelotes gladius
KAMURA,1999
オス4.6-4.9mm,メス4.8-6.6mm,池間島・都島で採集・記載.一見ケムリグモらしくない形態で,リュウキュウケムリグモやツヅラケムリグモに似る〔加村AC48(2)〕.
コブシケムリグモ Zelotes hayashii
KAMURA,1987
オス5・4mm,北海道糠平で7月採集.メスは未知〔加村87“AKITU"85〕.
メス7mm,7-8月に採集された〔加村AC43(2),小野AC43(2)〕
イリオモテケムリグモ Zelotes iriomotensis
KAMURA,1994
オス4.7-7mm,メス4.9-8.5mm,西表島にて採集〔加村AC43(2)〕.石垣島・波照間島で採集された.ニシカゼケムリグモに似る〔加村AC48(2)〕.
西表島で3・4・12月に雄,3・4月に雌〔谷川K70〕.
ワシグモ Zelotes nipponicus YUHARA ?
井之頭公園にて採集記録(1940年)〔新海69〕.
ヒロズケムリグモ Zelotes potanini
SCHENKEL,1963
メス6・5mm,オス4〜5・2mm.滋賀県で7月成体採集.中国に分布〔加村AT89〕.
リュウキュウケムリグモ Zelotes ryukyuensis
KAMURA,1999
オス4.6-5.8mm,メス4.4-6.5mm,沖縄島・池谷島で採集・記載.一見ケムリグモらしくない.ミヤコケムリグモやツヅラケムリグモに似る〔加村AC48(2)〕.
クロケムリグモ Zelotes tortuosus KAMURA,1987
Z.davidi
SCHENKELとしたもの〔八木沼86〕.オス4・0〜5・3mm,メス4・2〜7・0mm.本州・九州に分布.9〜2月,福岡では4〜5月に成体採集〔加村87“AKITU"85〕.
ニシカゼケムリグモ Zelotes
zephyrus KAMURA,1999
オス6.1mm,メス5.5mm,与那国島で採集・記載.イリオモテケムリグモに似る〔加村AC48(2)〕.
○ササグモ科 Oxyopidae
草間,樹葉間をすばやく徘徊し,驚くとジャンプして逃走する.卵のうは葉の表面に作り,親はその上で保護する〔東海84〕.
クリチャササグモ Oxyopes badius
YAGINUMA,1967
成体は5〜8月,メス7〜9mm,オス6〜8mm,本州・九州〔東海84〕.
幼体はササグモとよく似る.樹木や草の葉に生息するが,スギ,マツなどの針葉樹林に局地的に多数が生息していることがある.高度1000m前後の場所ではササグモより多くなる〔森林87〕.
産卵期は7〜8月〔新海69〕. 針葉樹の葉の間に卵のうを作ることが多い〔新海・原AT65〕. 松の害虫マツカレハ(Dendrolimus
spectabilis)幼虫に対しては,幼虫1令期の補食率が高い.2令では補食能力は1令の2分の1,3令では効果がないと思われる〔松井AT71:AC39(1)〕.
東大の田無演習林の調査による.年1回の発生と考えられるが,個体数のピークは2回みられる.秋(9〜10月.マツ10本当たり20頭)は繁殖によるもの,春(4〜5月.マツ10本当たり10頭)のそれは林床等の越冬場所から樹上へ移動してくるものだろう.オスの出現は5月中旬,メスは6〜10月下旬で,卵のう保持は7〜10月上旬.マツ樹上に最も多い〔松井AT66〕.
シマササグモ Oxyopes macilentus
L.KOCH,1878
成体は7〜8月,メス9〜13mm,オス8〜10mm,本州(紀伊半島)・四国南部・九州南部.〔東海84,森林87〕.
ササグモ Oxyopes sertatus
L.KOCH,1878
成体は5〜8月,メス8〜11mm,オス7〜9mm,本州・四国・九州・南西諸島〔東海84〕.
山麓から産地にかけて生息.成体は6〜8月,産卵期は7〜8月で,草の葉上に白色の卵のうを作り,親は保護している.1卵のう中の卵数は40〜70個.夜間は葉の裏にとまってじっとしている.昼間活動して,ハエ,カ,カノコガ,カゲロウなどの昆虫を捕らえる.葉の裏にとまって,第1脚を上げ,昆虫が近づいて来るのを待っていることが多い.獲物が近付くと瞬間的にとびついて捕える.危険を感じると葉の表から裏,裏から表にすばやく移動し,その後,草間をジャンプして逃走していく〔森林87〕.
1983年7月15日,川崎市桝形山で成体メス4頭がツヤクロジガバチに狩られて壷の中にあった.他の獲物はマミジロハエトリ・ネコハエトリ・シャコグモ〔池田K56〕.
オスの体細胞では染色体数は21本でXO型.核型進化を考察するのに分染法では成功しなかった〔五十嵐・近藤AC27S〕. 産卵期は7〜8月〔山川・熊田73〕.
福岡の水田性クモ類の発生消長からオスは11月にも出現すると推定しており,年2化の可能性がある〔大熊AT68〕.
第1脚が棒にふれると必ず上昇する(下降拒否を示す).屈曲角度90度以上の点で頭を下にして待ち伏せ姿勢を取る.上昇途中で背面ジャンプする時,よく跳ぶ.全眼を塗りつぶすと背面ジャンプができなくなるが,後中眼が残れば可能である〔有田AT48〕.
卵のうの表面に残る母グモの牙でひっかいたような後は,カバキコマチグモ同様出のうを母グモが助ける証拠ではないか〔中平AT43〕.
宮崎の野外では,7月初旬頃から成体になり,8・9月に産卵する.出のうまでの期間は10〜15日で,中には20日を過ぎるものもある.越冬は幼生.室内飼育(ショウジョウバエの最適温度で,クモには十分に餌をやる)では6月に成体になるものが多く,6月に産卵するものもある.すると7〜10日で出のうし,11月に成体となってしまう.そして翌年の1・2月に産卵する.この卵からふ化した個体は6月に親となる.
スギタマバエの天敵として有効である(対照区に比べて60%余の効果があった).スギタマバエの生活の場(林の周辺)と一致するし,捕食選好も合う.ササグモはかみついては次々に捕獲する.農薬に対して敏感で退避が早い.人工増殖ができる〔萱島AT21〕.
熊本では7月頃,産卵.チガヤ・ススキ・ササ等の葉をやや内側に曲げ,その中に卵を産み,上を糸でおおう.これが巣立ちするのは4月上旬で,それまでは親グモは成体のまま越冬するようだ〔木庭AT15〕.
宮崎にて7月28日,ナスの葉の間にオスが,大地に垂直な網をはっていた.縦20cmで垂直な糸は2本,中央にコガネグモ様のかくれ帯があり,そこに頭胸部を下に静止する.そこから3本の信号糸を葉の方へひいている〔石野田AT16〕.
葉上や葉を折りまげて卵のうを取り付ける〔中平AC15(2)〕.
朝鮮にも分布.禾本科植物の葉を「への字」に折り曲げて葉裏に卵のうを産み,その上にメスがうづくまって守る〔白AC2(3)〕.
○カニグモ科 Thomisidae
ズダカカニグモ Alcimochthes limbatus
SIMON,1885
雄3.0-3.5mm,雌3.8-4.4mm.西表島で記録.頭胸部が四角形で特異な形態.台湾・ヴェトナム・マレー半島にも分布〔小野88〕.
キハダカニグモ Bassaniana decorata (KARSCH)
=Oxyptila decorata
KARSCH
属名をBassanianaとする〔小野85〕.
成体は6〜9月,5〜6mm,北海道・本州・四国・九州.落葉樹の幹に多い.樹皮の下や隙間に逃げ込む〔東海84〕. 冬期は樹皮下にて越冬する〔新海69〕.
木肌の荒いはげ易いクス・ニッケイ・ムク・ヤナギ・ヘラ等の木の幹に多い.熊本で交接期は4月.南向きの樹皮中に越冬〔木庭AT19〕.
未受精卵でも母グモは食べないで保護しつづける〔鈴木勝K44〕.
イボカニグモ Boliscus tuberculatus
(SIMON,1886)
雌雄とも腹部に多数の小突起のある微小なカニグモ.雄はカニグモ類では最小.本州・四国・九州・琉球列島・台湾・タイ・ビルマ・シンガポール・ジャワに分布〔小野88〕.
イネ科の葉先を折り曲げて作った卵のう室内で卵のう(30卵)をガードしていた〔中平92〕.
コカニグモ Coriarachne fulvipes
(KARSCH,1879)
成体は6〜9月,4〜5mm,本州・四国・九州・南西諸島.樹枝葉間を徘徊する〔東海84〕.
冬期は樹皮下で越冬する〔新海69〕. 樹皮下に見られる.韓国にも分布〔小野88〕.
松の幹に多い.プラタナスの樹皮下で亜成体越冬(コキハダカニグモ)〔植村AT5〕.
タルグモ Cupa typica (BOES. et
STR.,1906)
雄は未知,雌4.4mm.原記載以来採集例がない.佐賀県湯の原神社のみ〔小野88〕
ミナミタルグモ Cupa zhengi ONO et SONG,1986
琉球列島から中国に分布〔小野88〕.
シロツバカニグモ Diaea subadulta BOES.et
STR.,1906
樹皮または葉上に生活する.腹部背面に大形の白色葉状斑を持つ.頭胸部背面にも白色の縦斑がある.プラタナスの樹皮下で亜成体越冬(コノハエビグモ)〔植村AT5〕.
ギョウジャグモ Diaea gyoja ONO,1985
=Diaea dorsata
(FABRICIUS,1777とされてきたが別種)〔小野88〕
成体は7〜10月,メス5〜6mm,オス3〜4mm,北海道・本州(中部地方以北).産地の樹の幹や葉の上にいる.旧北区に広く分布するが,日本では多くない〔東海84〕.1953年9月5日,中房温泉から燕岳登り口(1700m)で雌6mm採集.千国仮称ナカブサカニグモ〔千国AC14(1)〕.
コハナグモ Diaea subdola O.P.-CAMBRIDGE,1885
=Misumenops japonicus (BOES.et
STR.,1906)ではなかった
成体は6〜9月,メス4〜6mm,オス3〜4mm,全土.ハナグモ同様の習性〔東海84〕. ユノハマハナグモ
Misumenops yunohamensis (BOES.et STR.,1906)は本種と同種である〔八木沼86〕.
ハナグモに似ているが,腹部の形は丸く,まんじゅう形.色彩もクリーム色の地に3対の黒点があるだけで,連続した模様はない〔森林87〕.
7mm.ユノハナハナグモ(3mm)に類似.夏季,草間に普通.7,8月頃成熟す.本州・四国・九州に分布〔関口AC6(4)〕.
石川県内でバケツトラップ内に落下していたクモの最優占種〔高順一郎・富樫一次AT100〕.
昭和13年4月17日,東京都で成体メスがカスリヒメガガンボLimnophila japonica雌を,
昭和14年7月8日,東京都で成体メスがミバエの一種Chaetostomella nigripunctata 雌を捕食〔湯浅AC4(3)〕.
アシナガカニグモ Heriaeus mellotteei
SIMON,1886
成体は6〜9月,メス6〜8mm,オス5〜6mm,本州・四国・九州.草原や山道の草の葉や花の上にいる〔東海84〕.
6月に成体になり,オスは亜成体で越冬した〔山川・熊田73〕. 雄4.6-4.9mm,雌6.1-7.6mm.6-9月に成体〔小野88〕.
夏季野外の草間に時々見られる.本州に分布す.メス6mm,オス5mm内外〔関口AC6(4)〕. 自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
ダイトウマルガタワカバグモ Loxobates daitoensis
ONO,1988
雄3.2-3.3mm,雌5.6-7.6mm.北および南大東島から記載〔小野88〕.
アマギエビスグモ Lysiteles coronatus (GRUBE,1861)
=Lysiteles takashimai
(UYEMURA,1937)
成体は5〜9月,3〜5mm,北海道・本州・四国・九州.山地の木の間や草の間,花の上にいる〔東海84〕.
東シベリアからThomisus coronatusとして記載.斉藤のOxyptika nigirifrons, Xysticus
sapporoensisは本種.雄2.7-3.2mm,雌2.5-4.3mm.5月から9月まで成体.他に韓国・シベリアにも分布〔小野88〕.
1937年5月6日,伊豆天城山中にて高島春雄採の成体メスでOxyptila属として記載〔植村AC2(4)〕. 自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
タカネエビスグモ Lysiteles maius
ONO,1979
雄2.4-3.4mm,雌3.0-4.4mm.潅木から採集.北海道・本州(長野以北)・ネパールに分布.成体は5-8月〔小野88〕.
ダイダイエビスグモ Lysiteles miniatus
ONO,1980
雄3.3mm,雌3.4mm.頭胸部が橙色.奄美大島・西表島に分布〔小野88〕.
オオクマエビスグモ Lysiteles okumae
ONO,1980
雄3.3mm,雌2.8-3.8mm.愛媛県の雌雄で記載.伊豆半島・愛知にも分布.成体は5-6月〔小野88〕.
ヒメハナグモ Misumena vatia
(CLERCK,1758)
成体は5〜7月,メス8〜10mm,オス3〜4mm,北海道・本州(本州での採集記録は4ケ所のみ).高原の草の葉や花にいる〔東海84〕.
オス3〜5mm,成体は5〜10月〔森林87〕. 雄3.1-3.8mm,雌5.4-10.9mm.ユーラシア北部から北米まで分布〔小野88〕.
長時間かけて体色を変化させる.白色から黄色へ可逆的に〔新海AT51/52〕. 長野県上田市の草原で採集〔K40〕.
1989年箱根仙石原のススキ原で♀〔谷川K59〕.
クマダハナグモ Misumenops kumadai
ONO,1985
成体は5〜9月,メス3・5〜4・5mm,オス2・3〜3・5mm,本州・四国・九州に分布.小型のハナグモで記録は少ない.腹部は黄色または淡黄白色〔森林87〕.
5月のみ成体.本州・九州・琉球に分布〔小野88〕.
ハナグモ Misumenops tricuspidatus
(FABRICIUS,1775)
成体は4〜10月,メス6〜8mm,オス3〜4mm,全土.草木の葉や葉の上に第1,第2歩脚を開いて静止し,チョウ,ハエ,アブなどが近付くと,かかえ込むようにしてすばやくかみつく.
毛虫や他のクモを取ることもある.個体数は多い.幼生や秋に成熟するメスには腹部に褐色斑のないものがいる〔東海84〕.
ヨーロッパ,シベリア,中国,日本など旧北区に広く分布する.都会の庭から産地まで見られるが,日当たりの良い河原,草原に特に多い.
6〜7月と9〜10月に最も多く成体があらわれ,産卵もその期間に集中している.1卵のう中の卵数は100〜200個.
横行性のクモで,花や葉の間を巧みに歩きまわり,葉の裏にいる昆虫の幼虫を捕えることも多い〔森林87〕.
福岡の水田で2令幼生が3〜12月にわたってみられ,年2化の可能性がある〔大熊AT68〕. 7月に卵のう保護がみられる〔山川・熊田73〕.
5月に出のうした幼体は雄3-4回,雌4-5回脱皮で6-7月に成体,6月に出のうした幼体は雄4-6回,雌6-7回脱皮で8-9月に成体,
7月に出のうした幼体は雄5回,雌6-7回脱皮で9-10月に成体,4月の雌成体は1-2回産卵,5-8月の雌成体は1-3回産卵〔宮下AC47(2),K76〕.東京都内ではアメリカシロヒトリの巣網内の優占種である〔国見AT81〕.
都内の桑園の優占種のひとつであり,クワノメイガ数の変動に対応した個体数変動がみられ,若令個体は1〜3令幼虫を,壮令・成体は4〜5令幼虫を補食している〔国見・大熊AT70〕.
福島・宮島(1970)によると,高温条件下(30℃)では低温(25℃)の場合より発育期間が短縮し,脱皮回数が少なくなる傾向がある〔浜村AC27〕.
糸を流して2点間を結び移動する例がある〔有田AT43〕. 春から夏にかけて,ヒメジョオンの花に多い.3月,メス亜成体,オス成体を採集〔植村AT5〕.
花弁の裏側に隠れ,ハナアブ,シジミチョウ等が来ると,すばやくでてきて捕える.時に花弁の上に静止〔木庭AT19〕.
6月6日,10時前後,メスの体はオスの糸により,動けなくなっている.触肢は時々,口部へもっていく.
そのとき,先端近くで水玉のような輝く物が現れる.触肢を変える時,オスはメスの右側から左側へと移動する〔野口AT22〕.
獲物が近付いたり,警戒する時は,第1脚・2脚をそろえて斜め前方へのばし,左右へゆっくり動かす習性がある.
6月頃,木や草の葉を裏側に少し折り曲げた中に産卵し,卵のうを守る〔中平AT23/24〕.
豊田地区の桑園でアメリカシロヒトリの初期幼虫を補食するが,大きくなるとクモの方が逃げる〔萱嶋AC21(1)〕.
真夜中に卵のうから10cmたらずの所から2本の糸を引き,傍で見張る.蚊より小さな虫がそれにふれた時,すばやく出ていってつかまえて食う〔堀AC8(1/2)〕.
昭和12年5月10日,東京都で成体メスがハナアブ Eristalomyia tenax雄を捕食〔湯浅AC4(3)〕.
福島正三・宮藤守雄による生活史の研究(1970.飼育による)がある〔K39〕.
ドウナガカニグモ Monaeses aciculus (SIMON,1903)
琉球列島・台湾・ヴェトナム・ネパールに分布〔小野88〕.
1895年にSIMONが記載.岸田(1914)のウゼングモ Monaeses
simoniは別属だろう.南西諸島や台湾,ネパール,ベトナム北部に分布〔小野AT87〕.
マツモトオチバカニグモ Oxyptila matsumotoi
ONO,1988
東京都井の頭公園の雌雄で記載.成体は4・5・9・10月.雄は2.4-2.6mm,雌は2.7-3.3mm.落葉下から採集される〔小野88〕.
アズマネザサの枯葉面で卵のう(0.55cm円形)をガードする母グモを発見.7月20日に20頭が出のう〔工藤泰K69〕.
ニッポンオチバカニグモ Oxyptira nipponica
ONO,1985
成体はメスは1年中,オスは3〜6月と9〜12月,2〜3mm,北海道・本州・九州に分布.ツルグレン装置で抽出される〔小野85〕.
クロスジオチバカニグモ Oxyptila nongae
PAIK,1967
韓国産.雄3.1-3.3mm、雌3.3-3.9mm.6-8月に山形県から山口県にかけて得られた〔小野AC45(1)〕.
キタオチバカニグモ Oxyptila sincera
KULCZYNSKI,1926
雄3.5mm,雌4.3mm.北海道・群馬・長野から採集.カムチャッカ・アラスカ・カナダにも分布〔小野88〕.
ホシズナワカバグモ Oxytate hoshizuna
ONO,1978
雄7.1-9.0mm,雌9.1-11.3mm.4m高の樹上から得たことがある〔小野88〕.
Oxytateは熱帯系のクモである.沖縄・石垣島・西表島に分布.小野により記載された〔八木沼AT71〕.
ワカバグモ Oxytate striatipes
L.KOCH,1878
成体は4〜10月,8〜12mm,全土.低木の葉の上にいることが多い〔東海84〕.
山麓から山地にかけて多く生息する.産卵期は5月中旬〜7月で,葉の裏に淡黄色の卵のうを作り,その上にのって保護する.1卵のう中の卵数は40〜60個.夕方5時頃になると葉の表面に上り,第1脚を高く持ちあげて飛んでくる昆虫を待っている.羽音がすると,その方向に体を向け,持ちあげている第1脚を左右上下に動かすので,この脚に感覚器官があると思われる〔森林87〕.
4〜5月,若葉の上で獲物を待機する.庭木等のサクラの若葉に特に多く出現し,サクラの蜜腺に集まるオオクロバエやトビイロケアリ等をさかんに捕食する.第1脚を八字状にひろげて斜め前方へかかげ,獲物を感ずると,それを左右へゆっくりと動かす習性がある.成熟したオスは,樹葉の裏に接して,三角形の幕状の精網を作る〔中平AT23/24〕.
長崎にて6月10日,葉裏で卵のうを守る.淡黄色の卵で40個程.糸で固定し,その上に腹ばいになっている〔大利AT29〕.
昭和10年5月26日,栃木県にて幼体メスがクワハムシFleutiauxia armata雌を捕食〔湯浅AC4(3)〕.
オスは求愛ダンスや脚をふることなどなく交尾した〔中平92〕.
ヘリジロツケオグモ Phryarachne ceylonica (O.P.-CAMBRIDGE,1884)
雄2.9mm,雌7.6mm.石垣島・西表島で記録.雄は3月亜成体〔小野88〕.腐敗臭がある.しかし,センチニクバエとイエバエがクモに誘引されるかを実験し,空容器との差はなかった〔千田・深見・宮下直AC48(1)〕.
カトウツケオグモ Phrynarachne katoi
CHIKUNI,1955
成体は5〜8月,メス7〜9mm,オス不明,本州・九州.低木の葉上にいる.警戒して脚を縮めると鳥のふんのように見える〔東海84〕.
葉裏にひそんで獲物を待つ.気にいった場所があるとかなり長い器官そこにいるようである〔森林87〕.
雄2.4mm,雌8.7-12.6mm.岐阜・岡山・長崎・宮崎・熊本・沖縄を所検.韓国にも〔小野88〕.
1953年9月7日,長野県下伊那郡川路村,雑木林中の楢の表皮の凹陥部に静止,関川作楽氏採集,雌7mm.千国仮称トリノフンカニグモ〔千国AC14(1)〕.
1975年4月29日,対馬の海岸の低木(マルバウツギと思う)の葉上より採集.ハエの多い場所へ持っていったが,ハエが特に誘引されることはなかった.ハエやガ,シジミチョウを食べ,50日間生存,産卵しないまま6月20日に死亡〔高野K40〕.
1989年8月26日,奄美大島で2頭の幼体を採集,飼育で2回脱皮・11月6日に♀成体,6回脱皮で2月26日に♀成体〔谷川K60〕.飼育記録〔南部敏明K77〕.
ガザミグモ Pistius undulatus KARSCH,1879
=Pistius truncatus (PALLAS,1772)
成体は5〜7月,メス9〜11mm,オス5〜6mm,北海道・本州・四国・九州.草や低木の葉の上出,長い脚を広げて獲物を待ち伏せる.樹皮の下で越冬する〔東海84〕.
雄3.6-5.3mm,雌8.5-12.1mm.韓国・中国にも分布〔小野88〕.
成体で越冬し,春に1個卵のうを作る.卵のう内の数は30〜40個位である〔山川・熊田73〕. プラタナスの樹皮下で亜成体越冬〔植村AT5〕.
タンバカニグモとして樹間・草間に時々みられる.6,7月頃成熟.本州・四国・九州及び欧州に分布〔関口AC6(4)〕.
1937年6月1日,成体オスが亜成体メスの腹背につかまっている.ほぼ1日半後に脱皮したメスの腹下に回り交接した〔小松AC2(2)〕. 正しくはPistius
undulatus KARSCH,1879〔小野85〕. 自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
ガザミグモの一種 Pistius sp.
長野県・愛知県で採集,♂が未確認〔千国AT95〕
トガリシロスジグモ Runcinia acuminata
(THORELL,1881)
雄3.0-4.2mm,雌6.3-8.4mm,奄美大島以南の草地に生息.ニューギニア・タイ・オーストラリアにも分布〔小野88〕.
シロスジグモ Runcinia albostriata BOES.et
STR.,1906
成体は6〜8月,メス9mm,本州(暖地)・四国・九州・南西諸島.南方系のクモ.草の葉や花の上にいる〔東海84〕.
雄1.3-1.5mm,雌4.6-6.0mm,沖ノ島および鹿児島以南の草地に生息.韓国・中国・台湾・タイにも分布〔小野88〕.
チクニエビスグモ Synaema chikunii
ONO,1983
長野県(千国採集,6〜7月)と北海道(熊田氏採集,7月)より採集された.フノジグモと色彩・生殖器が異なる〔小野AC31(2)〕.
フノジグモ Synaema globosum (FABRICUS,1775)
=Synaema globosum japonicum
KARSCH,1879
成体は6〜8月,メス5〜6mm,オス3〜4mm,葉や花の上で獲物を待ち伏せる〔東海84,森林87〕.
雄3.5-5.3mm,雌4.9-8.2mm.成体は6-8月.スペインからユーラシア中部まで分布.日本では北海道から九州まで〔小野88〕.
地色が赤,黄,灰白色とある.葉先を折りまげて作った産室で卵のうを保護する〔中平AT35〕. 幼体では黄色のものが多い〔森林87〕.
クロオオアリを捕食することがある〔中平AT43〕. 草間に普通,7,8月頃成熟し,欧州・支那・満洲・本邦に分布〔関口AC6(4)〕.
昭和11年8月14日,山梨県静川村にて母グモと白色卵のうを採集,内に48頭の子〔深沢AC1(4)〕.
イタドリの葉を巻き,葉面に糸で吊床を作成,その上に産卵.母は分散が終わるまで卵のうをガードする〔細野43〕.自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
チクニエビスグモ Synaema chikunii
ONO,1983
成体は6〜8月,メス5〜6mm,オス4〜4.5mm,北海道・本州・四国・九州.山地の樹の間や草の間にいる〔東海84〕.
コキハダカニグモ Takachihoa truciformis (BOES.et STR.,1906)
=Oxytate truciformis
BOES.et STR.,1906
属名をTakachihoaとする〔小野85〕.
成体は5〜7月,メス2.8〜4.2mm,オス2.2〜2.4mm,九州・南西諸島〔小野AT72〕. 台湾にも分布〔小野88〕.
アマミアズチグモ Thomisus kitamurai NAKATSUDI,1943
奄美大島龍郷で7月22日1♂で記載〔小野AC43(1)〕.
雌を初記載.雄2.6-3.0mm,雌10.4-12.0mm.雄は7月前後に出現.琉球列島に分布〔小野1988〕.
オオジョロウグモの網上で網主を捕食していた〔新海明K74〕
アズチグモ Thomisus labefactus
KARSCH,1881
成体は6〜9月,メス6〜8mm,オス2〜3mm,本州・四国・九州・南西諸島.花の上で獲物を待っている〔東海84〕.
シロアズチグモやウスジロアズチグモは色彩変異〔小野88〕.
山麓から山地にかけての草間に生息する.個体数はあまり多くなく,1日の調査で1〜2頭しかみられない.
産卵期は7〜8月で,チガヤ,ヨシなどの植物の葉をまげて産室を作る.1卵のう中の卵数は80〜100個.
草間を歩き回ったり,花の中や下面にひそんで,飛んでくるチョウ,アブ,ハエなどの昆虫を捕える.オスはメスより非常に小さく,早く成熟して,
亜成体のメスの腹部にのって生活し,メスが成体になるのを待って交尾する〔森林87〕. 8月にササの葉をまいて,中に卵のうを作る〔山川・熊田73〕.
ユズリハの葉をまいて中に卵のうを作り,ガードしていた.9月20日ふ化,25日出のう,10月7日コマチグモが親を捕食したようだ.子20頭を確認,
10月11日子グモはすべて分散〔熊田理恵K57〕.
雌雄の脱皮回数の違いを飼育で調査.9月13-17日に出のうした2齢幼体は越冬前に1回脱皮し,越年して4月から3回の脱皮で雄が5月に成熟,メスは5回の脱皮で6月に成熟した.第一卵のうからの出のう数は平均171.3個,第2卵のうからの出のう数は平均16.5個であった.寿命(平均)はメスが151日,オスが160日〔宮下和AC48(2)〕.
長時間かけて(24時間)体色を白から黄色へ可逆的に変化させる(黄色のダリア上にて)〔大利AT35〕.
8月16日,滝山で淡黄色の個体が机上の管びん内で,22日白色になっていた.黄色のキクイモ上にはなしたが変化せず,産卵し,9月9日に死亡〔高野K39〕.
捕獲法は消極的で第T・U脚を大きく広げ,獲物の虫が目と鼻の先まで来てからパッと捕らえる.自分で補食できたのは自分の体長と同じか,大きいものだけであった〔小野K43〕.
オキナワアズチグモ Thomisus okinawaensis
STRAND,1907
Strandが沖縄と台湾から記載した2種のアズチグモはどちらも本種.雄2.4-3.1mm,雌7.0-11.6mm,宮古島・石垣島・西表島・与那国島.台湾・タイにも分布〔小野88〕.
シロアズチグモ Thomisus onustus (WALCK.,1805)
Thomisus albus
(GMELIN)として,8月頃,チガヤ等の葉を折りまげて,ササグモとハマキフクログモの中間のような産室を作る.母グモは卵のうを守り,にげない〔中平AT23/24〕.
アズチグモの色彩変異〔小野88〕.
ウスジロアズチグモ Thomisus onustoides BOES.et STR.,1906
=キリシマアズチグモ Thomisus
labefactus bimacuratus BOES.et
STR.,1906
庭木の草花のがくの所や花弁などに潜むが,多くは山地の草原のオミナエシ・ヤブガラシ等の草花に多い.幼生程,体色が白く,成体になるにつれ淡黄褐色じみてくる〔木庭AT19〕.
アズチグモの色彩変異〔小野88〕
ハナナガトラフカニグモ Tmarus hanrasanensis
PAIK,1973
雄3.6-4.9mm,雌6.1mm.雄は石川県・福岡県にて5月下旬-6月上旬〔小野88〕.
韓国・日本に分布,秋田県手形山で採集例.稀産種.オスは未知〔小野AC27S〕.
コトラフカニグモ Tmarus komi
ONO,1996
西表島古見を模式産地に記載.3月に雄成体(2.6mm),雌は幼体.〔小野AC45(2)〕.
アマミセマルトラフカニグモ Tmarus makiharai
ONO,1988
奄美大島を模式産地に記載.11月4月に雄成体(4.4mm),雌は未知〔小野88〕.
トラフカニグモ Tmarus piger
(WALCK.,1802)
成体は5〜7月,メス6〜7mm,オス5〜6mm,北海道・本州・九州.草の葉の上に脚を伸ばしていて,アリを取る〔東海84〕.
7月に卵のうを1個作る〔山川・熊田73〕. 欧州〜中国・韓国・日本に分布〔小野AC27S〕.
昭和13年5月24日栃木県にて成体メスがクロヤマアリ職蟻を捕食〔湯浅AC4(3)〕.
セマルトラフカニグモ Tmarus rimosus
PAIK,1973
成体は6〜8月,メス6〜7mm,オス5〜6mm,北海道・本州〔東海84〕.
草の上,樹木の枝や葉の上を歩き回ってアリを捕らえる〔森林87〕. クモの1・2脚にアリが触れた瞬間に捕獲〔新海明K73〕.
韓国・日本に分布.ススキ原に特に多く,第1・2脚を下に伸ばした垂直姿勢で静止.成熟したメスは生葉をまいて産室を作り,卵のうを保護〔小野AC27S〕.
三浦半島で,トラフカニグモと同所に混棲しているが出現期に差がある〔熊田K45〕.
タイワントラフカニグモ Tmarus taiwanus ONO,1977
台湾鳳山にてメス記載〔小野AC27S〕.
ヤギヌマノセマルトラフカニグモ Tmarus yaginumai
ONO,1977
雄3.9-5.2mm,雌4.9-5.2mm.三宅島・本州(神奈川県厚木市以南)・四国・九州〔小野88〕.
高知県梶ケ森でオス記載,7月に成体.高知県および静岡県伊豆石廊崎で採集例あり.セマルトラフカニグモより小さい〔小野AC27S〕.
ホンクロボシカニグモ Xysticus atrimaculatus BOES.et
STR.,1906
雄は未知,雌6.3-9.6mm.ヤミイロカニグモやシナカニグモに似る.佐賀の金毘羅が模式山地.長野・福岡・熊本でも記録〔小野88〕.
和名をホンクロボシカニグモとする.本州・九州.クロボシカニグモとされていた種は種が別である〔小野85〕. Xysticus lateralis
atrimaculatusとして,赤湯町にて幼体から成体まで空中移動する優占種〔錦AC20(1)〕. オビホソカニグモは本種か〔八木沼AT73〕.
Xysticus trizonatus KISHIDAとして記載〔安念AC6(4)〕.
カニグモ Xysticus audax (SCHRANK,1803)
雄4.7mm,雌,4.8mm.5・7・9月に成体〔小野88〕.
クロボシカニグモ Xysticus bifidus PAIK,1973
種名改称.八木沼のクロボシカニグモはこの種である〔小野85〕.
雄3.0-4.3mm,5.7-8.9mm雌.4-8月まで成体.湿地に多い〔小野88〕.
1個目の卵のうから出た幼体雄は5回脱皮,2個目の卵のうから出た幼体雄は4回脱皮,雌はいずれも5回脱皮で成熟〔宮下AC46(2)〕.
千葉県我孫子市内の水田畦畔や雑草地に普通.幼体の発育経過は出のう時期により異なる.8月下旬以降に出のうした場合は年内には成熟せず,翌年春4-5月に成熟する.
5-7月に採集したメス成体は平均84日生存し,2-3回卵のうを産出した.総卵数の平均値はメス当たり182個.野外では年2世代と1世代が混在する〔宮下AC48(1)〕.
ヤミイロカニグモ Xysticus croceus
FOX,1937
成体は4〜6月,メス6〜8mm,オス5〜7mm,全土.下草の葉の上で獲物を待ち伏せる.冬は落葉や石の下にいる〔東海84〕.
郊外の雑木林から山地にかけて多く,都市部でも広い林が残っている公園にはよく見られる.産卵期は5〜6月で,葉の上に丸い座蒲団のような白色の卵のうを作り,8本の脚でかかえるように守っている.1卵のう中の卵数は70〜120個.草の上を歩き回って獲物を探す.その他,樹木の枝や葉の間,落葉の中などにも見られる〔森林87〕.
6〜8月に葉をまいて卵のうを作る〔山川・熊田73〕. ムネアカオオアリやクロオオアリを捕食することがある〔中平AT43〕.
木の根元付近に3cm四方の紙状網をはって生息.粘性はない.産卵場か〔大利AT28〕. 崖の石下にて越冬中の亜成体メスを採集〔植村AT5〕.
1卵のう中に109卵,89卵を観察〔松本K42〕. 以下の記録は総てヤミイロカニグモXysticus ephippiatus
として:落葉等をのう状にして夏季産卵すれども成体は四季をつうじて雑草下に見るを得べし.北海道・本州・四国・九州・支那に分布〔関口AC6(1)〕.
栃木県にて昭和10年5月26日に成体メスがホソサビキコリ Lacon fuliginosu雄(?)を,
東京都にて昭和12年5月25日成体メスがシマハナアブEristalis cerealis雄を, 昭和12年6月13日成体メスがスジチャタテPsocus
tokyoensis 雄(?)を, ハンノキハムシAgelastica caerulea 成虫, ルリハムシChrysomela aenea成虫を,
ハギツルクビオトシブミCycnotrachelus roelofsi 雌を, クロオオアリCamponotus herculeanus japonicus
雄を, 昭和13年4月28日東京都にてリンゴアブラムシ?Myzus maliscutus有羽胎生成虫を,
昭和14年6月18日東京都にてクロヤマアリFormica fusca var .japonica 職蟻を捕食. 他にテントウムウシHarmonia
axyridis 幼虫, クワキヨコバイEpicanthus guttiger 成虫, ヨトウムシ?Barathra brassicae幼虫,
ハムシダマシLagria nigricollis成虫を捕食〔湯浅AC4(3)〕. キバネツノトンボAscalaphus
ramburi成虫を捕食〔石沢AC1(1)〕.
ダイセツカニグモ Xysticus daisetsuzanus
ONO,1988
雄3.9-4.7mm,雌4.4-4.5mmで大雪山産で記載.直径7mmの卵のうに31卵.地表の石上を徘徊〔小野88〕.
ヤマヤミイロカニグモ Xysticus dichotomus
PAIK,1973
雄が6月下旬から7月下旬.雌は未知.ヤミイロカニグモに似る.韓国で記載された.群馬・鳥取・大分・宮崎で記録〔小野88〕.
シナカニグモ Xysticus ephippiatus
SIMON,1880
成体は6〜8月,メス6〜12mm,オス5.5〜7.5mm,北海道・本州・四国.習性はヤミイロカニグモに似る〔東海84〕.
メス7〜12mm.腹部に黒色斑紋がないので他種と区別しやすい.カニグモ属の中では最も大型で13mmに達するものもいる〔森林87〕.
日本から中国にかけて分布し,日本では北海道から沖縄まで分布する.先島産の個体は小型.西表島で3月,多良間島で5月,本土ではほぼ6〜8月が成体出現期.本土では年1回だが,先島では2回発生もありうる〔小野K47〕.
琉球列島にも分布.他には韓国・中国・モンゴル・シネリア.潅木や草地から採れる〔小野88〕. 自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
アヅマカニグモ Xysticus insulicola BOES.et
STR.,1906
成体は5〜8月,メス6〜9.5mm,オス4〜5.5mm,本州・四国・九州.習性はヤミイロカニグモに似る〔東海84,森林87〕.
草地および路傍植物で見られる.北海道・本州・九州・韓国にも分布〔小野88〕.
鳥取市にて1961年5月12日,有田立身採集の個体は左半身が雌,右が雄(palp不完全)だった.不完全な雄をモザイク的にもった雌性の強い間性混入型のgyandromorph〔八木沼・有田AC20(1)〕.
タイリクカニグモ Xysticus jacuticus
UTOCHKIN,1968
シベリアから記載された種で,大雪山の標高1980mで1雄を記録〔小野88〕.
チシマカニグモ Xysticus kurilensis
STRAND,1907
雄4.5-5.8mm,雌5.3-9.0mm.北海道から本州(岐阜まで).6-8月に成熟.原記載以来確実な記録がなかったが,日本各地から見られた〔小野88〕.
シギカニグモ Xysticus rostratus
ONO,1988
北海道産にて記載.雄5.0-5.7mm,雌7.0-8.1mm.雄は6月下旬〔小野88〕.
オオヤミイロカニグモ Xysticus saganus BOES.et
STR.,1906
成体は6〜8月,メス8〜10mm,オス5〜6mm,北海道・本州・四国・九州.習性はヤミイロカニグモに似る〔東海84〕.
メス7〜10mm,オスはヤミイロカニグモより小さい〔森林87〕.
令査定に当っては背甲幅よりも眼間幅の方が個体変異が小さく,伸縮の変化も少ない.眼間幅が0.5〜0.9mmが若令幼生,1〜1.3mmが幼生,1.4〜1.7mmが亜成体,1.8mm以上が成体.飼育下では5令意向急激に死亡したが原因不明.餌量が少ないと小さい〔秋田AC28(2)〕.
1991年7月30日交尾を観察,雄は糸かけをした後,45分間交尾.翌日も28分交尾した〔佐藤幸K73〕.
雌雄モザイク発見(約1/4が雄性)〔有田AT29〕.
ヨコフカニグモ Xysticus transversomaculatus BOES. et
STR.,1906
佐賀県金毘羅産1雌で記載〔小野88〕.
雄成体は5〜9月,3〜3.5mm,北海道・本州.海岸付近の低地の草間にいるが少ない〔ONO,AC44(1)〕. 宮城県名取川河川敷にて雌雄生息〔池田98〕.
オビボソカニグモ Xysticus trizonatus
ANNEN
成体は5〜9月,メス6〜8mm,オス不明,本州・四国.樹の幹の上にいるが少ない.樹皮の下で越冬する〔東海84〕.
本州・四国・九州に分布〔小野88〕. 自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
○エビグモ科 Phirodromidae
キンイロエビグモ Phirodromus auricomus
L.KOCH,1878
成体は5〜8月,7.5〜8.5mm,本州・四国・九州・南西諸島.草や低木の葉の上をすばやく歩いている〔東海84,森林87〕.
福島県郡山市・東北歯科大学にて11月10日に巻いたアカマツの巻きわらより全地点で50%以上を占める優占種(2月10日にサンプリング),4・5〜5・0mmの個体が約40%を占めるが,幼体も多く各段階のものが得られた〔窪田・栗城AT89〕.
千葉県立東葛飾高校で10月上旬にマツにわら巻きをして2月に調査,ほぼ亜成体越冬で,性比は363:34でメスが多かった〔浅間AT89〕.
エビグモ類は脱皮の際に頭胸部の腹部に近い方から離れる形式である.他にはアシダカグモ類,ジョロウグモだけである〔高野K40〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
コガネエビグモ Phirodromus aureolus
CLERCK,1758
成体は6〜8月,メス5〜6mm,オス4〜5mm,北海道・本州・四国・九州.草や木の葉の上や枝の間を徘徊する〔東海84〕.
キエビグモ Phirodromus flavidus
SAITO,1934
成体は6〜8月,メス6〜7mm,オス5〜6mm,北海道・本州・四国・九州.山地の葉の上にいる.暖地では稀〔東海84〕.
冬期落葉の下より採集〔新海69〕. 自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
トビイロエビグモ Phirodromus fuscomarginatus
DEGEER
北満洲黒河山地にて1940年6月にオス5・5mm採集〔仲辻AC7(1)〕.
エビグモの1種 Phirodromus japonicus
愛媛の柑橘園での最優占種〔八木沼AT20〕.
エビグモ Phirodromus roseus
KISHIDA,1913
成体は6〜8月,メス7〜9mm,オス6〜8mm,北海道・本州・四国.他の種同様,葉の上で生活する〔東海84〕.
キンイロエビグモの色彩変異〔八木沼86〕.
キタエビグモ Phirodromus rufus WALCK.
北満洲黒河山地帯にて1940年6月,メス4・5mmを採集〔仲辻AC7(1)〕.
キハダエビグモ Phirodromus spinitarsis
SIMON,1895
成体は5〜8月,6〜8mm,北海道・本州・四国・九州.樹皮の上で生活し,特にスギやマツの幹に多い.動作はすばやい.冬期は樹皮の下にいる〔東海84,森林87〕.
樹皮のような淡い茶色から刺激によって腹部後端が黒化する瞬間的体色変化をするが,くり返すと刺激しても黒化しない場合もある〔池田AT93〕.
樹皮上で♀の真上を♂が駆け抜けたが♀は微動もしなかった〔池田K65〕. 亜成体越冬〔植村AT5〕.
ハモンエビグモ Phirodromus sp.
相模原市北部の河原の磯の下から雄採集(1994年2月)〔木村知K67〕.
アサヒエビグモ Phirodromus subaureolus BOES.et
STR.,1906
成体は6〜8月,メス5〜6mm,オス4〜5mm,北海道・本州・四国・九州.木や草の上にいて動作はとてもすばやい〔東海84〕.
都心部のマンションのベランダ,家の周囲,塀や電柱,庭木から山地の樹上まで広く生息する.産卵期は7〜8月で,葉の上に白色の卵のうを作る.親はその上に覆いかぶさるようにして保護,指でつついても逃げない.1卵のう中の卵数は20〜35個.草や木の上をすばやく走りまわって獲物を探す.糸を流して移動することが他のクモより多く,市街地でも家の周りや庭木によく飛んでくる.春先には木々の間に次々と糸を流して渡っていく幼体をよく見る.獲物は長い脚でかかえこむようにして捕る〔森林87〕.
8〜9月に卵のう保護がみられる〔山川・熊田73〕.
若令幼体期には短日で発育が促進され,中令以後になると逆に長日で促進される.8月4日採集の若令個体を25℃,11Lの短日条件で飼育し,9月11日に25℃,16Lの長日条件下へ移したところ,10〜11月に成体となった.9月7日採集個体を25℃,自然日長で飼育すると冬期の発育遅延で休眠し,成熟前に死亡した.自然条件下では,若令期の夏季は長日によって発育が遅れ,秋季の短日によって長日型の反応に変化するが,冬季は短日と低温によって発育は停止し,春季の長日と気温上昇で発育が促進される.年1化性で,成体が一斉に出現するわけである〔浜村AT75・74・70〕.
7月に出のうした幼体を室内飼育した.越冬までに6-7回脱皮し,翌春4月から3回脱皮して6月に雄になった〔宮下K69〕.
7月頃,木の葉上に円盤状の卵のうを作り,守る〔中平AT23/24〕.
ヤドカリグモ Thanatus miniaceus SIMON,1880
=Thanatus formicinus
(CLERCK)
成体は10〜6月,6〜7mm,北海道・本州・四国・九州.草の上にいるが,秋冬には落葉上を歩くことが多い〔東海84〕.
メス6〜7mm,オス4〜5mm.下草の間を歩き回ることが多い.葉上や落葉中にもみられる〔森林8〕.
群棲していることが多く,5〜6月に1個卵のうを作る〔山川・熊田73〕.
ヤマトヤドカリグモ Thanatus nipponicus
YAGINUMA,1969
成体は4〜8月,メス6〜8mm,オス5〜6mm,本州・九州.草や木の葉の上に静止して獲物を待っている〔東海84〕.
スジシャコグモ Tibellus oblongus
(WALCK.,1802)
成体は6〜8月,メス10〜12mm,オス8〜10mm,北海道・本州・四国・九州.本州以南の低地では稀.草にいる〔東海84〕.北海道以外では1000m以上の高地〔森林87〕.
シャコグモ Tibellus tenellus
(L.KOCH,1876)
成体は6〜8月,メス9〜11mm,オス6〜8mm,本州・四国・九州・南西諸島.低地に多い.葉上に脚を伸ばしている〔東海84,森林87〕.
8月頃,草葉上面に産卵,卵のう上にのって見守るが,雨降りには,母グモは葉裏にまわって雨滴を避ける〔中平AT23/24〕.
網の葉の住居内のオオツリガネヒメグモを捕食〔池田泉K63〕.
○ハエトリグモ科 Salticidae
ヤマジハエトリAelurillus festivus
L.KOCH,1834
成体は4〜7月,メス6〜7mm,オス5〜6mm,北海道・本州・四国・九州.山地の地上をはね歩いていることが多い〔東海84〕.
旧北区系のクモである.山道で採集され,ミチオシヘのように足先を飛んでいる姿を見かけることが多い.日本新記録〔片岡AT51/52〕.
5mm程の黒色のアリを捕食〔松本K40〕. 自然環境指標種Aランク〔新海98〕.
タニカワヨリメハエトリ Asemonea tanikawai
IKEDA,1996
西表島を模式産地に記載.雄3.4mm,雌3.3-4.2mm.3月に雌雄成体.沖縄本島にも分布する.体色は緑色で腹背に8個の小黒点がある.類似種にカノウハエトリ(別属Onomastus)がある〔池田AC45(2)〕.
ムツボシハエトリ Bavia sexpunctata
(DOLESCALL,1859)
オス8.6mm,メス8.6-9.3mm,西表島から記録〔谷川AC42(1)〕.
西表島で12月に雄,1・8月に雌〔谷川K70〕.
キタツヤハエトリ Bianor aurocinctus
(OHLERT,1865)
北海道・大雪山から採集,松本誠治同定.その後,クロツヤハエトリ Harmochirus
nigriculusが記載された.この2種はわずかな違いなので日本の種はクロツヤハエトリの方と思われる〔池田97〕.
ヤマトヤハエトリ Bianor japonicus LOGUNOV,IKEDA et
ONO,1997
岡山のオスで記載(野嶋宏一採),2.7mm.Bianor aemulusに酷似する〔Logunovら97〕.
マダラツヤハエトリ Bianor maculatus
(KEYSERLING,1883)
オーストラリアで記載.沖縄本島と西表島で雌雄が採集〔池田AC47(2)〕.
マツモトハエトリBristowia heterospinosa
REIMOSER,1934
雄成体は6-7月が主,雄2.5-3.7mm、雌2.7-3.8mm.クラカタウ島で記載された模式標本と比較して同種と判断した.所検標本は東京・神奈川・愛知・岡山・広島・西表島〔池田AC44(2)〕.
Bristowia sp.として,神奈川県酒匂川の河原,三宅島,東京都日の出町から採集〔松本AT87〕.
1995年10月に東大演習林田無試験地で雌を記録〔宮下直・笹岡K73〕.
ツルギハエトリ Brumatus pococki (THORELL,1895)
=Plexippus pococki
THORELL,1895
オス4.9-5.3mm,西表島の水田の畦の草間から稀に採集された.ビルマが基準産地,ベトナムにも分布〔谷川AT100〕.
ネコハエトリ Carrhotus xanthogramma
(LATREILLE,1819)
成体は4〜8月,7〜8mm,全土.低木の葉の上に普通〔東海84〕.
5〜6月に木の葉を集めて産室を作り,中に入って卵のうを保護する〔新海69〕〔中平AT23/24〕.
オスは脱皮2〜3日前の亜成体メスの巣に行き,待つ.すでに別のオスがいる場合にはオス同士の闘争となる.先住効果はなく,背甲幅の大きい方が勝負に勝つ〔吉田裕AT83〕.
5月に多摩で,亜成体メスの巣に対し,小屋がけしているオス,巣の外で待機しているオスを観察.交接をすませた後,オスはメスと同居せず,去るものと思う〔斉藤慎AT84〕.
横浜市内では4月下旬がホンチの採集時期,10cm×8cmくらいの2枚のバルサ板上に出すとよく闘う.負けると戦意を失う〔前川隆敏AT98/99〕.
年1世代.5月下旬(〜8月上旬)卵のう形成,7月上旬2令幼生分散.1卵のう当たり卵数平均36.2+3.4.最大3回産卵し,第1回目の産卵数が40.9+4.7で多い.,5〜6回程度脱皮し,翌年の3月中旬成体へ脱皮.雄性先熟.令と背甲幅は1令0.71+0.01mm,2令0.84+0.01mm,亜成体2.09+0.08mm,成体(オス)2.56+0.08mm,成体(メス)2.28+0.08mm.九州大学での調査〔吉田裕AT75〕.
葉の先端を巻き,複雑な平面式住居.長崎で樹皮下の住居で成体越冬が観察できる〔大利AT33/34〕.
樹皮下・樹上の枯葉中に袋状の巣を作り,亜生体越冬〔植村AT5〕. 脱皮が近づくと,各歩脚のふ節が黒ずんでくる〔前川・池田K63〕.
大和市で1992年5月11日クワの葉上で交尾〔池田K65〕.
求愛誇示と威嚇誇示は求愛誇示のときオスの「顎出し」によって区別できる.メスのみに顎出しを行うものの,麻酔で静止しているオスにもマウントし,挿入しようとする.巣内のメスには顎出しはしない〔前川隆敏AT98/99〕.
海老名市で9月23日・10月2日に採集した♂亜成体を25℃で長日区(16L8D)と暗黒区(1L23D)に置き,餌を与えた.1月3日までの間で成体になったのは長日区で2頭,暗黒区で3頭〔池田・前川K65〕.
2頭の♀に交尾・産卵させ,出のうした幼体(6頭,12頭)をキイロショウジョウバエで飼育したところ,5齢までになった.小さい2齢幼体が3齢になったときのサイズは大きい幼体の2齢と同じ.サイズと捕食量には関連があり,サイズが大きいほど多く捕食した(正のフィードバック).日当り捕食量は成長に伴い,しだいに増加した.3齢では捕食量が多いほど齢期間は短くなった.雌雄とも8齢で成体になるのと推測した〔前川・池田K66〕.
卵のう中の脱皮を加えると雌雄とも7回脱皮し亜成体で越冬,4・5月に最終脱皮をする.雄先熟.成体雌は5-8月に2-3回産卵,クラッチサイズは平均32個(後の卵のうほど減数し,3回目はふ化しなかった)〔宮下K71:宮下AC44(2)〕.
神奈川県海老名市で雌雄モザイク1頭(左半身が雌)を前川が採集した.雄として行動し、雌に対しては求愛を、雄に対しては威嚇行動をした〔前川・池田AC41(1)〕.
ヤガタハエトリ Euophrys erratica
(WALCKENAER,1825)
北海道で初記録(松田まゆみ91).雄成体は5-6月に採集.雄3.2mm、雌4.2mm.広島・岡山でも発見〔池田AC45(1)〕.
ウデグロカタオカハエトリ Euophrys frontalis
(WALCKENAER,1802)
オス3mm内外.北海道のみで記録.日本の他の地域の記録はEuophrys
kataokaiである〔池田AC45(1)〕. 旧北区に分布〔松本K40〕.
カタオカハエトリ Euophrys kataokai IKEDA,1996
=カタオカハエトリ Euophrys frontalis
(WALCKENAER,1802)
=カキイロハエトリ Euophrys herbigrada
(SIMON,)
メス5mm内外,オス3.3mm内外.笹やぶ,潅木の下部,落葉の中に多い.成熟は5〜7月頃.千葉・福島・岩手・宮城に分布.なお広く分布していると考えられる〔片岡AC27S〕.
カキイロハエトリとして,成体は5〜7月,メス3〜4mm,オス2〜3mm.1979年6月12日に神奈川県相模湖町で新海栄一が採集・記録〔森林87〕.
厚木・七沢で採集〔山川・熊田79〕. 野庭高校教室内でオスを採集(1990年5月19日)〔谷川K62〕. 八木沼健夫より,ヨーロッパのEuophrys
frontalisと同定されたが,日本産の種は新種であった.雄は5-6月に成体〔池田AC45(1)〕
イワテハエトリ Euophrys iwatensis BOHD. et
PROS.,1987
岩手県にて片岡佐太郎が雌雄を採集した標本で,新種記載された〔八木沼AT92〕.
北海道・東京・広島で記録.雄は5月に成体.ヤガタハエトリに酷似する〔池田AC45(1)〕
マミジロハエトリ Evarcha albaria (L.KOCH,1878)
=ランペルトハエトリ Hyllus lamperti BOES.
et STR.,1906
成体は5〜8月,メス7〜8mm,オス6〜7mm,全土.草の葉や倒木の上を徘徊し数は多い〔東海84〕.
ランペルトハエトリとして,雌雄7・5mm内外,山野の草間に比較的普通の種.本州・四国・九州に分布〔関口AC5(4)〕.
マミクロハエトリによく似る.特にメスでは区別困難〔池田〕. オオヅカアリの運ぶさなぎ・卵・幼虫を略奪する〔井伊伸夫AC27S〕.
蛾にとびついて糸で宙吊りになった後,第3・第4脚を使い,糸をたぐって後向きに上昇してきた〔有田AT51/52〕. 宮崎で5月頃産卵する〔松山他AT43〕.
葉を曲げてその中に平面式産室を設ける.長崎で7月頃産卵〔大利AT33/34〕.31卵〔大利26/27〕. 34卵〔大利AT29〕. Evarcha
albifrons KULCZYNSKI,1895(マエシロハエトリ)とHyllus lamperti BOS. et
STR.,1906(ランペルトハエトリ)は本種のシノニム〔八木沼AT92〕.
アシブトハエトリ Evarcha crassipes (KARSCH,1881)
Plexxipus属から転属〔八木沼AT92〕.
マミクロハエトリ Evarcha fasciata
SEO,1992
韓国で雄により記載された種.雌を初記載した.成体は雄5月,雌6月.雄6.2〜7.1mm,雌5.5〜7.5mm.静岡県天竜市以西から鹿児島県吹上浜まで分布.日本海側は石川県加賀市以西.マミジロハエトリに酷似する.雄は額に白帯がない.雌は識別困難だったが,交配実験で確認できた結果,第3脚と第4脚の蹠節長がW>Vならほぼ本種〔池田・斎藤慎AC46(2)〕.
福井市と加賀市で調査.7/26の卵のう中のふ化幼体数は29,31,39,44+,53,58.秋に成体雄と亜成体,春に成体雄,梅雨期に成体雌〔斎藤慎AC46(2)〕.
ホオジロハエトリ Evarcha flammata
(CLERCK)
成体は5〜8月,メス6〜7mm,オス5〜6mm,本州(山地).山地の地上や低木の葉上を徘徊する.北海道にも分布すると思われる〔東海84〕.Evarcha属の模式種だが,Marusikらの検討によれば日本産の種は新種だったという〔池田〕
ウデブトハエトリ Harmochirus insulana (KISHIDA,1914)
=Harmochirus brachiatus
(THORELL,1877)
成体は1年中,4〜5mm,本州・四国・九州・南西諸島.草や低木の上にいることが多い.枯葉に袋状の住居を作り越冬する〔東海84〕.
メス3.6-4.8mm,オス2.4-3.9mm〔Logunovら97〕.長崎にて,山間の木本系の葉裏に袋状住居.冬はその中で成体越冬〔大利AT33/34〕.
熊本にて,冬期,崖の石下から亜成体を採集〔植村AT5〕. ツバキ,ヒイラギ等潅木の葉裏に白い円形の絹布の巣を作り,その中で成体のままで越冬〔木庭AT19〕.
東洋区系のクモ.樹上生活,夏期は葉上を歩き回る.似た別種がいる(下草上,石下.冬期は枯葉に袋状住居を作り成体越冬する)〔小野K29/32〕.
日本産の種は日本固有種で,岸田久吉が滋賀県の老人島のメスで記載したオシマハエトリ Cirothecia insulanus
とみなされる〔池田96,Logunovら97〕.
クロツヤハエトリ Harmochirus nigriculus LOGUNOV et
WESOLOWSKA,1992
メス3.2-4.0mm,オス2.9-3.2mm.岡山から採集された.北朝鮮・ロシアにも分布.キタツヤハエトリ Bianor
aurocinctusに酷似する〔Logunovら97〕.
キレワハエトリ Harmochirus pullus (BOES. et STR.,1906)
=Bianor pullus BOES. et
STR.,1906
=Harmochirus nigrum
KISHIDA,1910
成体は1年中,メス2.5〜3.5mm,オス1.5〜2.5mm,本州・九州.落葉の間や地上を歩いていることが多い〔東海84〕.
プルシンスキーがBianorからHarmochirus属へ転属〔八木沼86〕.
岸田久吉の記載したH.nigrumは外雌器の形態から本種〔Logunovら97〕.
ナカヒラハエトリ Harmochirus kochiensis BOHD. et
PROS.,1987
オス3.03-3.46mm(4-8月),メス3.84-4.87mm(3-5月),キレワハエトリよりも腹部の色が薄い.福岡県の彦山ではキレワハエトリと同所的に生息する.秋田県・山梨県・三重県・高知県・福岡県で記録〔池田AC42(2)〕.
中平清採集の高知県梶ケ森産のメスで記載〔八木沼AT92〕.
アダンソンハエトリ Hasarius adansoni
(AUDOUIN,1827)
成体は6〜8月,メス6〜8mm,オス5〜6mm,本州・四国・九州・南西諸島.暖かい地方の室内の壁,天井などを徘徊する.海岸の堤防にいることもある〔東海84〕.
オスの求愛行動は第1脚を斜め前方にのばしたまま,ジグザグにメスの方へ寄っていく.メスのacceptance
postureは脚を縮めた姿勢で静止し,腹部末端を微妙に動かすもの.メスが第3脚を後方から前方へ移動させると,オスは前進をやめ,後退する.標本のメスに対してはオスの興奮状態による変化がみられる.斜め前方からメスの上に馬乗りになり,体を少し回して右側から入った場合には右の触肢を使う.1回の交接時間,交接回数は個体により差がある.2回が普通で4,5回を越えない.離脱動作は突然,横に跳躍して離れる,そのまま走り去る,後ずさりするのどれかである.メスがオスを餌とまちがえて傷つけることもあった〔井伊AT61〕.
成体オスのオスに対する誇示行動threat
displayは,Crane(1949)を参考に注視期,第1段階(左右運動前期,左右屈伸運動期,左右運動後期,前進),第2段階(闘争前段階),第3段階(闘争)と分けた.闘争は横に伸ばした触肢,第1脚,第2脚の先を激しくうちあうものだが,1〜2秒後どちらかが向きを変え,後方に逃避する.体の大きい方が勝つ傾向がある.無血であり,定型的である.故に儀式化された行動である〔井伊AT59〕.
メスは上下二重の住居を設け,オスの来訪を上の室で待つ.オスは長崎で6〜7月頃,よくはい回している.交接は上の室で,卵は下の室に産む.ふ化するまでメスは上の室にいて保護する〔大利AT33/34〕.
人家や庭木等の日当たりのよいとたろをはい回する.白色の触肢をうちふりながら歩いているが,驚くと触肢を顔面にピタッとつけて八字状斑を作る奇習がある〔中平AT23/24〕.
メスが産んだ卵を捕食,その後産んだ卵から子グモがふ化〔胡沢K60〕. 都市環境指標種〔新海98〕.
ジュウノジハエトリ Hasarius crucifer DOEN. et.STR.,1906
体長4mm.冬期,樹皮下で採集〔植村AT5〕.
住居は袋状,両側が開く.住居を作る時は,ある点を中心に自分の体を回転させて作る〔大利AT28〕.
デーニッツハエトリ Hasarius doenitzi
KARSCH,1879
成体は4〜10月,メス8〜9mm,オス6〜7mm,北海道・本州・四国・九州・奄美.草や低木の葉の間を徘徊し,数は多い.落葉の下で越冬する〔東海84〕.
クモ卵で染色体調査,2n=28(♂)および30(♀),XXO型,オスの配偶子はn=13および15.MITTAL(1964)によればアリグモ属以外のハエトリグモはXXO型である〔松本AC27S〕.
葉を2〜3枚重ねあわせその隙間に平面式住居を設ける.長崎で6・7月,住居内に産卵して,ふ化まで保護する.冬は樹皮下に平面式住居を設け,成体越冬が見られる〔大利AT33/34〕.
樹皮下に袋状の巣を作り,幼体で越冬〔植村AT5〕.
6月頃,笹や草の葉を2〜3枚ひきよせ,綴って産室として産卵し,保護する〔中平AT23/24〕.19卵〔大利AT26/27〕.
山野の草間または塀等に見うけられる普通の種類.本州・四国・九州に分布〔関口AC5(4)〕.
高知市で網上のコシロカネグモにとびついて捕食〔K40〕.Plexippoides属へ転属〔Bohd. & Pros.1987〕
コジャバラハエトリ Helicius cylindratus (KARSCH,1879)
カルシュがTelamonia
cyrindratusとして記載,Prosyznskiが立てたHelicius属の模式種である〔池田〕.
BOHD.&PROS.の1987年のコジャバラ雄とされた触肢はジャバラハエトリのもので千国89の写真も同様のミス〔池田〕.
ジャバラハエトリ Helicius yaginumai BOHD. et
PROS.,1987
プルシンスキーが1976年に記載したものでなく,1987年のものを原記載とみなす〔八木沼AT92〕.
チビクロハエトリ Heliophanus aeneus
(HAHN,1831)
成体は6〜8月,メス4〜5mm,オス3〜4mm,北海道・本州・九州.河原の草間,山地の葉の上を徘徊する〔東海84〕.
長野県常念岳の小屋付近(2500m)の高山植物葉上を徘徊,6〜7月に成体・幼体が採れる.雌5mm(糸いぼを含む),雄4・2mm.異名クロミハイトリ・クロキハイトリ・アシキハイトリ.千国仮称ジョオネンハイトリ〔千国AC14(1)〕.
タカノハエトリ Heliophanus flavimaxillis BOES.et
STR.,1906
成体は4〜6月,メス4〜5mm,オス3・5〜4mm.1984年に柴田文子が石川県で80年ぶりに採集.和名改称〔森林87〕.
ワカバネコハエトリ Euophrys anninotata BOES. et STR.,1906
エキスハエトリ Laufeia aenea
SIMON,1888
成体は11〜7月,3〜4mm,本州・四国・九州.幹の上を徘徊することが多く,スギなどの樹皮の下で越冬する〔東海84〕.
自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
トクノシマエキスハエトリ Laufeia sasakii
IKEDA,1998
成体は5月,オス4mm,徳之島のみ.外見はエキスにそっくり.メス不明.幹上徘徊〔池田AC47(1)〕.
オオハエトリ Marpissa dybowskii (KULCZNSKI,1895)
=Marpissa roemeri
STRAND,1906
=ヨシイエハエトリYoshiiyea agoana
KISHIDA
成体は6〜11月,メス10〜13mm,オス8〜10mm,全土.人家の外側の壁,板塀,大木の幹などにいる〔東海84〕.
塀の隙間などに袋状住居を作る〔新海69〕. 8〜9月に卵のうを作る.3〜4月にも成体がみられた〔山川・熊田73〕.
宮崎で8月下旬に産卵する〔松山他AT43〕. 樹皮下に大型の偏平なぶ厚い袋状住居〔大利AT33/34〕.
主として亜成体で越年するが,冬期,オス成体も採集された〔植村AT5〕. 1回の交接で2回産卵する〔鈴木勝K42〕.
母グモは未受精卵を食べてしまう〔鈴木勝K44〕. 富士山の富士屋旅館や長野県で,家屋の壁を歩行していた〔松本K39〕.
ヒマラヤスギの樹幹でアシヨレグモ幼体をくわえていた〔平松K67〕.
1987年にボーダノビチらが同定〔八木沼AT92〕ヨシイエハエトリは旧名である〔千国,私信88〕,北海道から本州まで分布する〔植村AC4(1)〕.
ヤハズハエトリ Marpissa elongata (KARSCH,1879)
=ヒロセハエトリ Marpissa hiroseae
(NAKATSUDI,1942)
成体は6〜8月,メス9〜11mm,オス8〜9mm,全土.イネ科植物の葉の上で生活する〔東海84〕.
千葉県北部には多いが,南部にいくにつれ少なくなる〔新海K29/32〕. Hyctiaに転属〔森林87〕.
ヒロセハエトリとして,伊豆諸島神津島の属島の只苗島(蛇島),
7月26日の1メスでHyctia属で記載,鳥取県船岡山でも発見とある.原記載以来記録なし〔小野AC43(1)〕.
模式産地で1994年に確認し,ヒロセハエトリはヤハズハエトリだった〔池田〕.
キタヤハズハエトリ Marpissa ibarakiensis BOHD. et
PROS.,1987
成体は6〜8月,メス8〜10mm,オス7〜9mm,北海道・本州(東北).寒地性.ススキやササの葉上で生活する〔東海84〕.
Hyctiaに転属〔森林84〕. メス8〜11mm,オス7〜8mm,宮城県・福島県・茨城県で記録〔池田AC42(2)〕.
茨城県金成で1966年6月25日に菅波洋平が採集した雌で記載された〔八木沼AT92〕.
オスクロハエトリ Marpissa magister
(KARSCH,1879)
成体は6〜8月,メス9〜11mm,オス8〜9mm,北海道・本州・四国・九州・南西諸島.イネ科植物の葉の上にいる〔東海84〕.
韓国・中国にも分布〔池田K63〕.
5〜6月にかけて木本科植物の葉を3枚ほどよせて,三角錐状につづり,あるいは広葉(ハンゲンショウ・ヨメナ)を柏餅状にして産室とする.産室の一部は外に開いている.交接も産室内.1室内の卵のう数は1〜3個.1卵のう内の卵数は30〜90である〔中平AT23/24〕.
交接姿勢はチャスジハエトリと同じ(オスが第1脚でメスの腹部を横倒しにして押さえつけ,メスの外雌器に触肢を触れる)〔中平AT28〕.
本種のメスとヤハズハエトリのメスは酷似しているが別種である〔千国・八木沼AT66〕.
禾本科植物葉を3枚程引き寄せて袋状につづり合わせ,この中で交合,産卵を行う.この室の一方は外に開いている.デーニッツハエトリも同様〔中平AC15(2)〕.
前川隆敏によれば,海老名市で9月30日に♀は卵のうから出のうした幼体68頭をガードしていた.9月下旬に♂は♀亜成体と同居し最終脱皮を待って交尾〔池田K63〕.
Hyctiaに転属〔森林87〕.
シナノヤハズハエトリ Marpissa pulchra
(PROSZNSKI,1981)
成体は6〜9月,メス9〜11mm,オス7〜9mm,本州(中部地方の高地).イネ科植物の葉の上を徘徊する〔東海84〕.Hyctiaに転属〔森林87〕.
ヤバネハエトリ Marpissa
pomatia (WALCK.,1802)
成体は6〜8月,9〜10mm,北海道・本州(高地).寒地性.山地の草原にいて,ススキの葉の上によくみられる〔東海84〕.
全身黒色の雌個体あり(岩手県早池峰山)〔伴K70〕.
ヨダンハエトリ Marpissa pulla
(KARSCH,1879)
成体は6〜7月,6〜7mm,本州・四国・九州.地上の落葉の上を歩いていることが多い〔東海84〕.
葉の先端を曲げて筒状の住居を作る〔大利AT33/34〕. オス成体がマミジロハエトリメス亜成体に脚そろえまでを行い,求愛した〔池田・稲葉AT93〕.
シラヒゲハエトリ Menemerus fulvus (L.KOCH,1878)
=Menemerus confusus BOES. et
STR.,1906
=アゴブトハエトリ Mememerus brachygnathus BOES. et
STR.,1906
成体は7〜9月,メス8〜10mm,オス7〜9mm,本州・四国・九州・南西諸島.雨戸,塀などにみられる〔東海84〕.
トビイロケアリの運ぶさなぎ,アミメアリのさなぎ・幼虫や蛾,オオヅカアリの幼虫・さなぎ・アリ等を略奪する.第3・4脚を地面より離さず,ただ伸ばす〔井伊伸夫AC27S〕.長崎で7・8月頃が活動期じ樹皮下の垣根などに平面式住居を設ける〔大利AT33/34〕.潅木に多い.獲物は普通,小甲虫や双し目だが,チャドクガの幼虫も捕らえる〔木庭AT19〕.高知にて,ジガバチモドキが狩る〔中平23/24〕.ハエトリグモとして,殆ど1年中人家の雨戸・塀・壁等に見らるる普通種.7,8月頃に多く成熟せるをみる.本州・四国・九州に分布〔関口AC5(4)〕.1回の交接で2回産卵〔鈴木勝K42〕.ボーダノビチらは,徳島県小松島の雌と大阪府の雌で
Menemerus fulvus (L.KOCH,1877) キハエトリ と同定している.Menemerus brachygnathus BOES.et
STR.,1906はシノニム〔八木沼AT92〕.
7/10産卵・7/30ふ化・8/13産室より脱出、この幼体のうち雄は1-2回脱皮して越冬し、3回脱皮をして7-8月に成熟.雌は1-2回脱皮後、越冬し、2-3回脱皮して更に越冬する.3年目の夏に1-3回脱皮して成体になった.雌の産卵回数は4-6回で、3年間に渡って産卵する個体もあった.平均産卵数は1回目が24個、2回目が18個、3回目が14個、4回目が12個、5回目が12個.一生の平均総卵数は72個だった〔宮下AC45(1)〕.
都市環境指標種〔新海98〕.
タイリクアリグモ Myrmarachne formicaria (DE
GEER,1778)
成体は5〜7月,メス5〜6mm,オス4〜5mm〔森林87〕.
ヤサアリグモ Myrmarachne innermichelis BOES. et
STR.,1906
成体は6〜7月,メス5〜6mm,オス4〜5mm,本州・四国・九州・南西諸島.木の葉の上や地上を徘徊している〔東海84〕.
クロアリグモとして,徘徊の途中で暮れると凹所(禾本科の樋状の葉,可塑性の小葉,古巣等)を求めて天幕を作り一夜の宿とする.
捨てられた巣の利用や他固体の巣を奪うこともある.床は紡がない.日当たりの良い草原や明るい森林に多い.微小昆虫や蚊等を餌とする.
著しい跳躍はしない.アリマキの甘露が付着した葉をなめることはあるが直接給餌されることはない.
長野県諏訪地方では6月下旬成熟し,オスは亜成体メス(カエデ・エンジュ・フジ等の葉を綴り合わせたりフクログモ捨てたチマキを流用して最終脱皮に備える)を探し,
同居する.メスは間に白幕を紡ぐ.オスの訪問を受けないメスは住居内で待つ.メスに対して大小の雌雄を配すると必ず小型の方が劣勢である.
7月に交接を観察した.1933年7月1日夕刻の例,巣内のメスに対してオスは大顎を拡げて巣口に突き入れる.
メスは食いかかるが大顎にくい止められる.オスはメス左側の脚下をくぐって頭胸をメスの腹側まで進める.
次ぎに自分の左側のT・U脚でメスの腹部をまたぐ.メス腹部を付属肢で自分の方へねじまげて相手の外雌器にあてる.2分後,
後退して右側へ潜入し同様の動作をする.更に左へ替え,右側に移る.この間9分位.突然オスは離れ,住居から出た.
オスはその後4日目に死ぬ.メスは7月12日に卵のう製作(日当たりの良い細かい葉の重なり合ったところ,フクログモ科の捨てたチマキ,
樹皮等し白糸で厚い壁の部屋を作る.その床布へ産卵する).円板状,30卵内外.出のうまで保護する.出のう後は徘徊するも食欲なく8月下旬には姿を消す.
越冬前に幼体はかなり成長する.10月下旬には姿を消し,1cm程の繭状の袋内に潜む.翌春5月(最も早い記録は1933年4月28日)にそこを出る.
トビイロケアリやクロヤマアリの徘徊する所に多いが,アリの巣への侵入や強奪等は見られない.アリに出会うと遠ざかる〔小松AC1(3)〕.
アリグモ Myrmarachne japonica
(KARSCH,1879)
成体は6〜8月,メス7〜8mm,オス5〜6mm,本州・四国・九州・南西諸島.広葉樹の葉上にいることが多い.アリとの関係はない〔東海84〕.
神奈川県大和市で6月20日,マサキ生け垣で亜成体♀の住居のそばで♂が待機する.♀は3日後に最終脱皮〔池田K66〕.
常時簡単なトンネル式住居を持つ.卵は赤色で20〜30個位,長崎で7・8月頃産卵〔大利AT33/34〕.
7月13日,綿密な袋状の産室で産卵.卵は更に密に糸で包まれ固定される.7月20日,26頭の子グモがふ化〔大利AT29〕.
冬期,アオキ・ヤツデ・タラヨウ等常緑樹の葉裏または樹皮下に偏平楕円形の袋を作り,亜成体で越冬〔植村AT5〕.
与えた餌のうち,ツマグロヨコバイを避けた.他の双し類,ハムシ幼虫とさなぎ,ウンカ幼虫は食べた.
アリ(トビイロケアリ,アミメアリ,オオハリアリ等)を避ける〔中平AT17,中平92〕.
MITTAL(1964)によると,ハエトリの性決定には2つあり,XXO型とアリグモ属のようなn=12(11常+1性)の型である.
アリグモはn=15(13常+2性)である〔松本AC27S〕. 7月2日,子グモが37体ふ化〔蓮沼K44〕.
雄間闘争において鋏角長差が小さいほど闘争はエスカレートするが,闘争時間には影響されなかった.頭胸幅は勝敗への影響が検出できなかった.雄の鋏角は雄の質を評価する装置として働く〔桝元AC48(2)〕.
クマアリグモ Myrmarachne kuma
KISHIDA
昭和12年6月17日東京都にて成体メスがユスリカの一種を捕食〔湯浅AC4(3)〕.
クワガタアリグモ Myrmarachne kuwagata YAGINUMA,1967
羽黒町で6月7日に雄成体〔八木沼AT92〕.
キヨトネオンハエトリ Neon kiyotoi IKEDA,1995
成体は6-12月,メス2.8mm,オス2mm,Neon robustus
LOHMANDER に酷似する.愛知県鳳来寺山に生息〔池田AC44(1)〕
コガタネオンハエトリ Neon minutus
ZABKA,1985
ベトナムで記載された.成体は1年中,メス1.7〜2.1mm,オス1.7〜1.9mm,本州・九州に広く生息〔池田AC44(1)〕
ニンギョウネオンハエトリ Neon ningyo IKEDA,1995
Neon pixii GERTCH et
IVIE,1955に酷似する.成体は5-6月,メス1.7mm,オス1.6mm,岡山県人形峠・邑久町,鳥取県河原町に生息〔池田AC44(1)〕
ノジマネオンハエトリ Neon nojimai
IKEDA,1995
5月16日,オス(2mm)のみ岡山県寄居町干拓地に生息,メスは未知〔池田AC44(1)〕メスは塩崎哲哉により三重県から採集された〔池田98〕.
ネオンハエトリ Neon reticulatus
(BLACKWALL,1853)
成体は5-6月,メス2.3〜3.3mm,オス1.8〜2.4mm,北海道・本州〔池田AC44(1)〕.
成体は5〜8月,メス3〜4mm,オス2.5〜3mm,北海道・本州.地上を徘徊する〔東海84〕.
コウライネオンハエトリ Neon rostratus
SEO,1995
福岡県からベルレーゼ装置によって採集された.韓国で記載された種.キヨトネオンハエトリに酷似するが体色が雌雄とも赤褐色であることと雄の触肢に穂状突起を欠く点が異なる〔池田AC45(2)〕.
オオクマハエトリ Nungia epigynalis
ZABKA,1985
ベトナムで雌で記載.石垣島・西表島で雌雄が採集〔池田AC47(2)〕.
カノウハエトリ Onomastus kanoi ONO,1995
沖縄本島を模式産地に記載.体色緑色.〔小野95〕.
3-4月には,やや湿った場所の広葉の下面には必ず生息するが夏には発見できなかった〔池田98〕.
アギトアサヒスジハエトリ Pancorius magnus
ZABKA,1985
西表島で記録.模式産地はベトナム.上顎が大きい〔池田AC45(2)〕.
チャイロアサヒハエトリ Phintella abnormis (BOES. et STR.,1906)
=Jotus abnormis
BOES.et STR.,1906
成体は6〜8月,メス6〜7mm,オス5〜7mm,本州・四国・九州・奄美.草の間や低木の葉上を徘徊する〔東海84〕.
長崎で6〜7月の産卵期にはテント式住居を作る.卵は黄燈色で住居内にバラバラに産み落とされる.子がふ化し始めると住居を破って出る.通常は袋状住居〔大利AT33/34〕.
北満洲黒河山地帯にて1940年6月,メス5mm採集〔仲辻AC7(1)〕. Phintellaに転属〔八木沼86〕.
キアシハエトリ Phintella bifurcilinea (BOES.et STR.,1906)
=Telamonia
bifurcilinea BOES. et STR.,1906
=Phintella typica
STR.,1906
Telamoniaから転属,Phintella属の模式種〔プルシンスキーAC32(1)〕.
鳥取県,長崎県から記録〔八木沼AT92〕. 成体は6〜7月,4〜6mm,全土.草や低木の葉上を歩きまわる〔東海84〕.
6月19日,狭山湖で採集した個体が飼育下6月25日に産卵(13卵),7月13日にヒメカマキリモドキが出ていた.前日までは卵があったが,13日には卵殻だけで食べカスは全くなかった.ヒメカマキリモドキの脱皮殻は卵のう内と外に二つあった.親グモの体に幼虫がいて,卵のう作成中に入ったものだろう〔蓮沼K45〕.Phintellaへ転属〔プルシンスキーAC32(1)〕.
夜間飼育箱の天井からしおり糸でぶら下がって眠る〔平松K73〕自然環境指標種Cランク〔新海98〕.
マガネアサヒハエトリ Phintella castriesiana (GRUBE,1861)
=Phintella difficilis
(BOES. et STR.,1906)
=Icius difficilis (BOES. et
STR.,1906)
成体は6〜8月,5〜6mm,全土.草地の地上や低木の葉上を徘徊する〔東海84〕.
イネ,チガヤなどに袋状住居(管状に近い)を作る〔新海69〕.斑紋の変異が多い〔松本K40〕. Phintellaに転属〔八木沼86〕.
ボーダノビチらは,宮城県,群馬県,和歌山県,長崎県から♂のみ本種に同定し,Sitticus bilineatus SAITO,1939
フタスジコハエトリ,Euophrys aninotatus BOS. et STR.,1906 ワカバネコハエトリをシノニムとしている〔八木沼AT92〕.
多分,マガネアサヒハエトリ Phintella castriesiana のオス〔池田〕
メガネアサヒハエトリ Phintella linea (BOES. et STR.,1906)
=Icius linea
(KARSCH,1879)
成体は5〜9月,メス5〜6mm,オス4〜5mm,全土.草地の地上や低木の葉上を徘徊する〔東海84〕.
福岡の水田で2令幼生の出現が3〜4月及び6〜12月,越冬は全ステージ,成体出現期は4〜10月「越冬と合わない(池田)」,年2化の可能性あり〔大熊AT68〕.
Phintellaに転属〔八木沼86〕.
ムロテハエトリ Phintella melloteei
(SIMON,1888)
ボーダノビチらは,北海道,大阪府,和歌山県,三重県から♀のみ本種に同定し,Sitticus pallicolor BOS.
et STR.,1906,Jotus difficilis BOS. et STR.,1906 マガネアサヒハエトリをシノニムとしている〔八木沼AT92〕.
多分,マガネアサヒハエトリ Phintella castriesiana のメス〔池田〕
アサヒハエトリの一種 Phintella pallidulus (NAKATSUDI,1943)
=Icius pallidulus
NAKATSUDI,1943
パラオ諸島バベルダオブ島で8月23日1♀で記載〔小野AC43(1)〕.
メスジロハエトリ Phintella versicolor
(C.KOCH,1846)
成体は6〜7月,メス5〜6mm,オス6〜7mm,本州・四国・九州.低木の間や生垣にいる.雌雄二型〔東海84〕.
葉裏に袋状住居を作る.多数群落を成すことが多い.冬はその中で越冬するが,産卵期にはテント状住居,これには両側に扉がある〔大利AT33/34〕.
冬期,樹皮下やピソン属の古巣中に袋状住居を作り,潜む〔池田84〕. 樹皮下または枯葉の中で越冬.幼体または亜成体〔植村AT5〕.
江上信雄「雌と雄の話」『動物学教室』1950(講談社)にクロスジハエトリとメガネハエトリはメスジロハエトリの雌雄であるとしている〔高島AC12(3/4)〕.
ボーダノビチらによると,Jotus munitus BOES. et STR.,1906の一部と, Aelurillus dimorphus DON. et
STR.,1906はシノニム〔八木沼AT92〕
マダラスジハエトリ Plexippus annulipedis
SAITO,1939
成体は12〜7月,8〜10mm,北海道・本州・四国・九州.山地の低木の葉の上を徘徊している.樹皮の下に袋状の住居を作り,中で越冬する〔東海84〕.
盛岡にて3月16日に杉皮下から,メスと共に採集したオスは4月22日〜25日に脱皮して成体となった〔片岡AT53〕.
東京都市山間部に生息,亜成体越冬の個体が多く,冬期樹皮下よりよく採集〔新海AC27S〕. Plexippoidesに転属〔Bohd. &
Prosz,87〕自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
アシブトハエトリ Plexippus crassipes (KARSCH,1881)
Evarcha属に転属〔八木沼77〕.
草上徘徊性,葉を集めて住居をつくる〔新海69〕.
葉を2〜3枚重ね合わせた隙間に平面式住居を作る.卵は黄燈色で約60ケ程を袋の中に産み,それを固定する.ふ化まで保護する〔大利AT33/34〕.
草間又は塀等にて見うけらるる.初夏より秋にかけて多し.本州・四国・九州に分布〔関口AC5(4)〕.
チャスジハエトリ Plexippus paykulli
(AUDOUIN,1827)
成体は5〜8月,メス12mm,オス7〜11mm,本州・四国・九州・南西諸島.暖地に多い.家屋の壁,窓ガラス,海岸の堤防などを歩きまわる〔東海84〕.
石川ー茨城県を北限とする.屋内に優占〔松本AT68〕.
天井や壁などに平面式産室を作る.卵は黄色で平均50個程を袋状に包み,固定安置し,ふ化まで保護〔大利AT33/34〕. 7月2日,46卵〔大利AT29〕.
22卵,40卵,28卵〔大利26/27〕. 5月17日,黄色の70卵,夕刻に続けて2度目の産卵〔大利AT28〕.
求愛行動の観察.6月16日,高知にて,水平面上にて,オスは第1脚を八字状に拡げて頭上にかかげ,メスの周囲をまわったり,前面を左右へ動く.第2脚は膝節で下に折り曲げて顔の横に縦に置いて,かすかに震わせている.メスは第1脚を膝節で軽く曲げ,狭い八字状に開いて頭上にかかげ,オスの動きを見守りながら静かに前進する.両者,この動作を続ける.突然メスが立ち止まり,全脚を高くして体を持ち上げる.オスはすかさず歩み寄り,メスの前方から体の下へ,クルリと反転しながら,もぐり込み,仰向けになった.約4分後,とび離れた.オスがダンスを再開したが,メスが攻撃し,逃走.6月9日,垂直面にて.オスは頭胸部を上方にグッとそらせ,第1脚を斜上に八字状にかかげ,かすかにふるわせながら,メスの周囲を廻る.周りながら時々,メスに接近.メスは腹ばい様で,オスの方を向く.2分後,オスはメスに近付く.向き合って30秒.オスが脚をつっぱり,体を高く持ち上げて,メスをまたいでその上に乗る.オスの第1脚でメスの腹部をグイと横倒しにして圧えつけ,メスの外雌器を左右の触肢で同時にツンと突く.オスはとび離れる.離れた所で,脚で顔をかくすようにしていた別のオスが,メスに求愛する.初めのオスが来るとダンスを中止して追い払う.1cmまでメスに接近した時,メスがオスを攻撃し,オスは逃走〔中平AT28〕.
都市環境指標種〔新海98〕.
ミスジハエトリ Plexippus setipes
KARSCH,1879
成体は5〜8月,メス7〜8mm,オス6〜7mm,本州・四国・九州・南西諸島.建物の壁,門柱,堤防などを徘徊する.関東地方のメスは暗色で南にいくと淡色になる〔東海84〕.
オオヅカアリの卵を略奪する〔井伊伸夫AC27S〕.関東では屋内に優位.山形ー宮城県以南に分布〔松本AT68〕.
前後左右に対して四支点歩行が基本である.支点の数が減少する場合も四支点歩行の変形とみなすことができる.支点が少ない程,速く大きく斜め方向に移動する.回転移動もどれかの脚端が支点になって行う〔福本AT48〕.
雌雄とも成体で越年する〔植村AT5〕. 雄がガガンボを捕食〔鈴木勝K47〕都市環境指標種〔新海98〕.
ケアシハエトリ Portia fimbriatus (DOLESCHALL,1859)
日本産の種はむしろ Portia quei
ZABKA,1985であるが,結論は留保する〔池田AC45(2)〕.
沖縄でジョロウグモ幼体,スズミグモ,シロカネグモを捕食.池原・下謝名「沖縄の陸の動物」1975に,「他のクモの網の端で待機し,近寄ってきたところを不意に襲う.コガタコガネグモ,ヤサガタアシナガグモ,オオシロカネグモ,チリイソウロウグモ,ヘリジロサラグモなどが犠牲」とある〔新海明K57〕.
狙われたジョロウグモが間の網を切った.襲いかかられたが,飛び降りて逃げた〔谷川K59〕.
林内の道沿いの巨岩のくぼみに産室あり.糸製のかご中央に吊った枯葉の下面に卵のうがあり,♀がガード〔谷川K63〕.
チクニハエトリ Pseudicius chikunii LOGUNOV et
MARUSIK,1999
ロシアのMaritime地区で採集されたメスで新種記載.
千国の図鑑でジャバラハエトリの一種Aとして紹介されていた種である.属には問題がある〔LOGUNOV & MARUSIK,AC48(1)〕.
イソハエトリ Pseudicius himeshimensis (DOEN. et STR.,1906)
=Menemerus
himeshimensis DOEN. et
STR.,1906
成体は5〜8月,メス9〜10mm,オス7〜8mm,本州・四国・九州.海岸の岩,堤防,テトラポッド,流木,漁船などの上を徘徊する〔東海84〕.
下田での調査によると,干潮時には潮間帯も徘徊する.飼育管びん中の雌雄は共食いした.産室は主に岩場の側壁の溝状の裂け目で幅0.5〜1cmの所を利用する.厚く強い外膜と,内膜の二重の半楕円形の産室を5,6個隣接して作る.産室作成後,中に閉じこもり1〜2日後,産卵する.飼育下では朝から午前中に行われた.卵は直径1.3mm球形.産卵後,振動で卵塊が崩れると,親は触肢及び第1脚で卵を集め,糸で互いに結ぶが,糸でくるむことはない.出のうするまで親は守る.交接は1度で2〜3回産卵出来る.産卵間隔は38〜76日である.産卵時期は5月上旬〜9月上旬である.産卵後,越冬する親グモがいる.野外(5月)の卵数は平均21個(8〜40個),飼育下(6月)では平均24個(16〜36個),2回目の卵塊では平均12個となり,半減した.第3回目の卵塊のふ化率は低下する.5月30日産卵された卵は,室温(10時に22〜24℃)で14〜19日後ふ化,その後13日で脱皮,脱皮は同調しない.3日後産室から出る.親が死んでも子グモは出られる.第2回目の脱皮からは住居(脱皮室)を作る.7月24日第1回脱皮の個体はその後,8月12日(第2回),8月28日(第3回),10月4日(第4回),11月越冬,翌年何回か脱皮して成体となる.越冬巣は海岸の岩場の岩石の割れ目に作る.成体は海浜性の小動物,フナムシ,ウミユスリカ,ハマトビムシ,ハエ,アリ,クモを補食,幼生の餌は不明である.優劣の明らかでない徘徊中の個体が出会うと,闘争が起こる.互いに向き合い,第1脚をV字型にあげて左右に小刻みに移動しながら近付く.両者の距離が10cm位になる前に片方が逃避することが多い.片方が飛びかかることもある.その瞬間,片方が逃げ出し,からみ合ったりしない.第1脚の長さにより優劣が決るようだ.この闘争はオスオス,オスメス,メスメス,どの間でも起こる.行動範囲が広く,なわばりは認められなかった〔小林・関口AT68〕.
神奈川県逗子海岸で1939年7月28日,雌雄成体・幼体・卵のうを見る〔細野AC5(1)〕. 新記録,和名をイソハエトリとする〔植村AC2(3)〕.
テトラポット近くの木板面の裏に集団越冬〔徳本K66〕. ユスリカを盛んに捕食〔中平92〕.ボーダノビチらはPseudicius属に転属〔八木沼AT92〕
コウライハエトリ Pseudicius koreanus
(WESOLOWSKA,1981)
中平清が高知市で1964年6月に採集した雌雄で記載〔八木沼AT92〕.
中平によると,実際の採集地は「高知県幡多郡大方町入野」の松原である.ウェソロウスカが1981年に北朝鮮から雌だけで新種記載した種.雌の体長は4.7mm,雄の体長は3.4〜4.3mm.北朝鮮産のタイプ標本と日本産の標本では外雌器が異なって見える.ボーダノビッチらは,これは図の描き方の違いによるものだろうが,新しい標本で再確認する必要があると言っている.〔池田〕.
トカラハエトリ Pseudicius tokarensis BOHD. et
PROS.,1987
鹿児島県トカラ列島中之島で1953年6月に筒井嘉隆採集で記載,原文のトカラ島は間違い〔八木沼AT92〕.
イナヅマハエトリ Pseudicius vulpes (GRUBE,1861)
=Euophrys undulatovittata BOES.
et
STR.,1906
成体は6〜9月,メス5〜6mm,オス4〜5mm,本州・四国・九州・南西諸島〔東海84〕.樹皮上徘徊性.冬期は樹皮下に潜む〔新海69〕.
冬期,越冬巣としてミノムシのミノを利用するものがかなりある〔徳本・鍛冶AT82〕.
前川隆敏の記録;大和市泉の森産♀で7月24日産卵,8月4日ふ化,8月中旬出のう〔池田K63〕山形県羽黒町の雄で,和名はキツネハエトリとする.ただし,ボーダノビチらはクラオキネコハエトリ
Euophrys undulatovittata BOS. et STR.,1906,イナヅマハエトリ Breda lambdaslgnata BOS.
et STR.,1906,クロカネハエトリ Euophrys breviaculeis BOS. et
STR.,を本種のシノニムとしている〔八木沼AT92〕.
カラスハエトリ Rhene atratus (KARSCH,1881)
=Dendryphantes atratus
(KARSCH,1881)
成体は5〜8月,5〜7mm,本州・四国・九州・南西諸島.草や低木の葉や細い枝の上をあるきまわる.生垣にもよくいる.オスの色彩には変化が多い〔東海84〕.
3月20日,寺内でモクコクの梢に作られたドロバチの巣内に袋を作り,越冬.亜生体〔植村AT5〕. 八丈島の優占種〔植村AC12(3/4)〕.
Rhene属へ転属.RheneからDendryphantesへ転属.再びRheneへ戻る.
ミナミカラスハエトリ Rhene setipes
ZABKA,1985
オス4.3mm,メス4.3-4.7mm,西表島から採集,♀を初記載〔谷川AC42(1)〕.
西表島で3月に雄,8月に雌〔谷川K70〕.
ヒメカラスハエトリ Rhene sp.
クサグモの網でチリイソウロウにかみついていた〔木村知K67〕.
カラオビハエトリ Siler collingwoodi (O.P.-CAMBRIDGE,1871)
=アオオビハエトリグモの一種
Silerella sp.
成体は1年中,雌雄は5〜6mm.頭胸部が緑色,腹部前方に赤と青の横帯を持つ〔森林87〕.
千国の図鑑のアオオビハエトリの1種〔池田AC45(2)〕.
アオオビハエトリSiler cupreus SIMON,1889
=Silerella vittata
(KARSCH,1879)
=アカガネハエトリ Siler cupreus
SIMON,1889
成体は6〜8月,5〜6mm,本州・四国・九州・南西諸島.葉,石,倒木などの上を第1脚を上げて動かしながら徘徊し,アリに似る.よくアリを捕える〔東海84〕.
オスは他個体に気がつくと,体を高く構え,第1脚を上方やや斜め前にのばし,すばやく前後に小刻みに振り,腹部も上下に振りながら,ジグザクに近付く.どちらかが第1脚を振るのをやめ,誇示姿勢(threat
posture)を取る.第1脚を下向きに折り曲げる,この姿勢をとった方が勝ちである.負けた方は逃げ,追い討ちや,闘いはない.鏡に向かってもこの姿勢を取る.メスや亜成体同士ではこの姿勢はとらない.第1脚を振り上げたままである.求愛を受け入れるメスはジグザクに近付いてきたオスに対して全脚を体の方へ引き寄せる.オスはメスの前へ第1脚で触れる.次第に近付き,触肢を触れ,メスの前面からすり上がるようにして上に登っていく.交接の体型,触肢の使い方,脚の位置はアダンソンハエトリと似ている.すぐに分かれてしまった時には,またオスは始めから求愛行動をする〔井伊AT66〕.
アリの捕獲法は,ゆっくり歩いているか,または止まっているアリの後方から近づきアリの腹部をかむもの.走りだしたアリはやがてけいれんして,立ち止まる.クモは前方へ移動し,触角を取り,アリの首の下をかみ,仰向けにして食す.他のアリと体を接触しないし,アリの巣には入らない.大型のアリ(クロオオアリ,クロヤマアリ,オオヅヘイアリ等)はよく補食され,小型のアリ(アミメアリ,トビイロシワアリ,ルリアリ,オオヅ働きアリ)はあまり補食されない.チャスジハエトリやアダンソンハエトリ(雌)のアリの捕獲法と異なる.シラヒゲハエトリに補食されることがある.幼虫を運ぶアリ(オオヅ働きアリ,ルリアリ,トビイロシワアリ)に前から近づき,さっと幼虫をくわえる.アリの運ぶ白い物にひかれるようだ.他のアリでも幼虫略奪がみられる〔井伊AT62〕.
アメイロケアリのくわえている幼虫をアリの真正面から襲いかかって略奪し,アリの列外に出て食する.食べ終えるとまた待ち伏せする〔城AT32〕.
ハヤシケアリやアメイロアリを狩る〔中平AT61〕. アブラムシの背中を触肢でたたいて出る蜜を飲み込む〔植村AT35).
通常,葉裏にトンネル式住居を作る.冬は袋状住居にて越冬する.長崎で6〜7月頃産卵,出口が1〜3ケ所もある大型のテント式住居を作り,その中で黄色の卵を住居内にバラバラ産み落とす.まれに簡単に糸でかがってあることも多い.ふ化まで保護する〔大利AT33/34〕.
アメイロアリの後方から襲いかかり,腹部を噛む.倒れたアリに前から近付き,触角を引く.胸部を消化.1頭につき,狩りから捨てるまで10分.トビイロシワアリ,ムネホソアリ,ヒメアリを捕食しなかった〔中平AT9(観察は岡本)〕.
オオズアカアリ,トビイロケアリ,アメイロアリを捕る.アリの群れの中にいるクモは,触肢を膝節で下方に折り曲げ,顔の前で小刻みに上下に打ち振り,第1脚は八字状に開いて頭上にかかげ,まねくように上下に振る.必ずアリに注目している〔中平AT23/24〕.
亜成体で越年する.樹皮下に多数,袋を作って入っている.プラタナスの樹皮下等〔植村AT5〕.
8月初めに出のう幼体を飼育,10月までに数回脱皮して越冬,5月より脱皮し6-7月までに成体となった.脱皮回数は3-5回.6月末に採集した♀9頭は1-2回産卵して越冬した.越冬中に半分が死亡し,うち1頭は7月に産卵した(3回目)〔宮下和AT97〕.
ボーダノビチらは鹿児島県の雌雄で同定し,アカガネハエトリの学名をアオビハエトリに当てているが疑問〔八木沼AT92〕.
学名には複雑な経緯がありKARSCHの学名を無効にしSIMONの学名を生かしたPROSZYNSKIの判断は当面の措置〔池田1998〕.
メグロハエトリ Silerella barbata BOES. et STR.,1906
伊豆大島に分布〔新海69〕.
Sitticus avocator (O.P.-CAMBRIDGE,1885)
三重県三重大学の♂で同定,Sitticus numeratus
BOS. et STR.,1906(シロカネハエトリ),Sitticus viduus (KULC.,)(ヒトリハエトリ)が本種のシノニム〔八木沼AT92〕
モンシロコゲチャハエトリ Sitticus fasciger
(SIMON,1880)
成体は1年中,メス4mm,オス3.5mm,本州.人家や物置の外側の壁板の上を徘徊していることが多い〔東海84〕.
長野県では5月下旬から活動開始,6〜8月が最盛期である.夏の終わりから秋にかけて成体となって越冬(壁や柱の隙間に巣袋を作る)した雌雄は翌年5月下旬から6月上旬に交接する.6〜8月に産卵,壁や柱の隙間の袋状の巣の中に1回に6〜10個ほど産む.産卵回数は3〜5回(2回,6回もあり),卵数は回を重ねるにつれ,減る.15日程して一斉にふ化する.10日程で一斉に脱皮,そのまま5〜6日間同居した後,出のうする.その後,分散し,1ケ月ごとに脱皮をして3〜4令で秋,越冬に入る.次の年の5〜9月に脱皮を繰り返して,成体となって冬を越す.産卵した雌雄は冬に死ぬ〔千国AT83〕.
都市環境指標種〔新海98〕.
ニセアサヒハエトリ Sitticus pallicolor BOES. et
STR.,1906
成体は6月,雌雄5〜6mm.全体に白色〔森林87〕.
シラホシコゲチャハエトリ Sitticus penicillatus (SIMON,1875)
=Sitticus patellidens
BOES.et STR.,1906
河原・河川敷・草原に多い.本州・四国・九州に分布〔八木沼86〕.旧北区に広く分布〔松本K40〕.
コゲチャハエトリの一種 Sitticus sp.
成体出現は7-8月〔千国89〕.
6月12日,相模川の河原の石の下で卵のうを抱えていた〔木村知K66〕. 金沢市では成体は7〜10月〔徳本K62〕.
アマミクチバハエトリ Spartaeus bani (IKEDA,1995)
=Mintonia bani
IKEDA,1995
奄美大島湯湾岳公園で6月25日に採れた雄(体長6.7mm)で記載,ムツバハエトリに近縁の多歯ハエトリである.雌不明〔池田AC44(2)〕.
徳之島三京で樹幹から雌雄採集(佐々木健志)された.属をSpartaeusに転属せざるを得ない〔池田AC47(2)〕.
コミナミツヤハエトリ Stertinius kumadai LOGUNOV,IKEDA et
ONO,1997
八王子市(熊田憲一採)のメス3mmで記載(7月25日).オスは未知.愛知(緒方採)・岡山(野嶋採)でも記録〔Logunovら97〕.
アメイロハエトリ Synagelides agoriformis
STRAND,1906
成体は12〜8月,4〜6mm,おもに地上を徘徊する.樹皮の下で越冬する〔東海84〕.
再記載〔ボーダノヴィッチAC28(2)〕.
オオクマアメイロハエトリ Synagelides annae
BOHDANOWICZ,1979
成体は8月.彦山で採集〔ボーダノヴィッチAC28(2)〕.
ヒメスジハエトリ Taravera trivittatus (SCHENKEL,196)
=Euophrys trivittatus
SCHENKEL
成体は5〜6月,雌雄2〜3mm.1985年5月18日に石川県
倉島で柴田文子が採集〔森林87〕.LogunovによりTaravera属へ転属された.性的二型がない〔池田AC45(1)〕
トサハエトリ Tasa nipponica BOHD. et
PROS.,1987
中平によると,実際の採集地は「高知県幡多郡大方町入野」の松原である.新属新種である.雌は未発見で,雄の体長は4mm程度,第1脚が最も長く(3.3mm),続いて第4脚が長い(3.2mm).頭胸部は明るい褐色で金属光沢を持ち,T眼列上に少し白毛と黄刺がある.腹背は暗灰色で黒っぽい矢はず模様があり,腹部側面には黄色の点が線状に並ぶが,大型個体ほど明るい.この属の記載種は2種だけだが,触肢には特徴があり,脛節突起の基部に鋸状の歯がある(Wesolowska,1981)〔池田〕.
1995年6月26日に茨城県土浦市宍塚大池で雄が採集.2日後に岡山県倉敷市でも雄が採れた〔池田AC44(2)〕.
タテスジハエトリ Telamonia vlijimi
PROS.,1984
対島産で同定,韓国・中国にも分布〔八木沼AT92〕.幼体は夜間,葉の裏に住居網を作って静止(池田1997).
アジアミカドハエトリ Thyene orientalis
ZABKA,1985
ベトナムで雄で記載.石垣島・西表島で雌雄が採集〔池田AC47(2)〕.
ムツバハエトリ Yaginumanis sexdentatus
YAGINUMA,1967
成体は5〜8月,6〜8mm,本州・四国・九州・南西諸島.山地の崖や岩場を徘徊していることが多い.樹皮の下に袋状の住居を作り,越冬する〔東海84〕.
メス7・3mm,オス6・4mm.本州・九州・奄美に分布〔八木沼AC20(2)〕. 自然環境指標種Bランク〔新海98〕.
エビスハエトリ Yaginumaella hygoensis BOHD. et
PROS.,1987
兵庫県西宮市で1962年7月8日に採集,ウススジハエトリの♀として送ったが,新種とされた〔八木沼AT92〕
ウススジハエトリ Yaginumaella ususudi (YAGINUMA,1972)
= P.incognitus DOEN.et
STR.
成体は5〜8月,6〜7mm,全土.草や低木の間を歩きまわっている.冬は樹皮の下に袋状の住居を作り,その中で過す〔東海84〕.
草上徘徊性〔新海69〕.
6〜7mm,成体5〜8月,平地から3000m級の高山まで生息しており,日本のクモの中では最も高低差が大きい.草や木の葉上,落葉や石の間を徘徊する.日本全土に分布〔森林87〕.
1989年5月27日15時07分〜16時43分まで左触肢で交尾〔板倉K59〕. 自然環境指標種Cランク〔新海98〕.